「グッ⁉ ウウウウッ⁉」
真由美と別れた涼は人気のない地下トンネルに倒れて腹部を右手で押さえつけ、呻き声を上げて苦しんでいた。すると涼の左腕が何か別の生物の腕のように変わり瞳も赤くなる。
「ウオオオォォッ⁉」
叫び声と共に意識を失う涼。意識を失い数十分程立つて涼が持つスマートフォンに着信音が響きその音で意識を取り戻す涼。連絡の相手は真由美であり、電話に出る。
「………も、もしもし」
「……涼。ごめん今、会えないかな?場所は…………」
真由美が指定した場所を聞いて、ゾッとした涼はすぐさま走り去った…………。
涼が向かった場所は病院であった。アンノウンに襲われた真由美だが、氷川やアギトによって事無きを得ており、意識を覚ましたのは病室のベッドの上であった。その時に氷川がやって来て真由美に腕時計を渡した。真由美は渡された腕時計に見覚えがありショックを受けてしまう……。彼女の心情を察した氷川は病室を出る。
「真由美」
「涼……」
すると氷川とすれ違いで涼が病室にやって来た。
「真由美? 教えてくれ。何があった?」
涼が心配して真由美に何があったかと聞くと真由美は持っていた腕時計を握りゆっくりと語りだした。
「……この時計ね…去年、お父さんの誕生日に私がプレゼントしたものなの…………。さっき警察の人が届けてくれたの。お父さん……死んだんだってッ! ………きっと……お父さんも
「
「…………知らないわよッ! …………人間じゃない見たこともない生物…………怪物に襲われたのよッ!………」
「……人間じゃない?」
真由美は嗚咽しながら涼に今日起こった事や父…………片平 久夫が怪物…………アンノウンに殺された事を話した。
「……どうして? …………どうして私だけが…………」
彼女は何故、自分と父がアンノウンに襲われる理由が分からなかった。そして、自分だけこんな理不尽な目に合わなければならないと苦悩し、涼は彼女にかける言葉がなかった…………。
警視庁、Gトレーラー内でG3ユニットは今回のアンノウンとアギトについて議論していた。
「じゃあ、またアギトに助けられたっての?」
「はい! 間違いありません。彼は明らかに僕と被害者の女性を庇ってました」
「でも、前にG3を破壊したのは…………」
「あなた、いつまでも過去の事を根に持ってのよ。男らしくないわね」
「なっ⁉ 小澤さんだって“アギトは敵だ‼” みたいなことを言ってたじゃないですか⁉」
小室の指摘が男らしくないと小澤から言われてムキになる小室だが……。
「あーうるさいうるさい。2度も助けてもらったらもう味方に決まってるでしょ!」
小澤の有無言わさずの一言には言い返せなかった。
「けど、こうなると何としても彼の正体を知りたいところね!」
「ええ!」
「…………名刺交換でもしたらどうですか?」
小澤と氷川がアギトに好感を持っていたが小室は不貞腐れながらぼやいた……。
後日、E組の英語の授業で黒板には自習と書かれており担当のイリーナはタブレット端末を操作しながら爪を噛みながら「ブツブツ……」と言っていた。先日の殺せんせーの暗殺失敗が殺し屋としてのプライドをズタズタにされ、それが尾を引いていており次なる暗殺のため四苦八苦していたのだ。生徒達はイリーナの態度に段々と難色を示していた。
「アハハ、必死だねービッチ姉さん」
カルマの煽りに反応はしないイリーナ。すると磯貝がイリーナに意見する。
「あの、先生。授業してくれないなら殺せんせーと変わってくれませんか? 俺達、一応今年は受験なので」
「はん! あんな凶悪生物に教わりたいわけ? 地球の危機と受験を比べる何て……ガキは平和で良いわね~。それにアンタらE組ってこの学校の落ちこぼれだそうじゃない。だったら今更勉強なんて意味ないでしょ?」
「「「ッ⁉」」」
(あーあ……言ってはいけない事、言っちゃったよ)
イリーナの言葉に生徒達はイラつく。翔一も若干生徒達同様の反応だが冷静であった。そんな事も分からずにイリーナは生徒達に提案する。
「そうだ‼ あんた達が協力し暗殺を成功したら1人500万円あげる。あんた達がこの先一生目にすることはない大金よ? 無駄な勉強よりもよっぽど有益な――」
イリーナの言葉を遮ったの彼女に向けて生徒達の中の誰かが投げ捨てた消しゴムだった。彼女は生徒達を見つめる。生徒達の目は冷たいものでとうとう彼らの限界が突破していたのだ。
「出てけよ」
「そうだ! 出てけ!」
「殺せんせーと代わってよ‼」
「そうだそうだ! 巨乳なんていらない‼」
(あれ? 誰か変なこと言ったぞ⁉)
生徒達の一部変なものが混じった罵詈雑言にイリーナは「殺すわよ⁉」と脅すがそんなものは生徒達には効かなかった。
(これが、噂の学級崩壊か……。いや~仮に金額が老後に必要な資金で約2,000万とかだったら話は少し変わってたかもしれん…………っていかんいかん。ん?)
翔一はこの状況には初めてなものでありイリーナの提案した金額が老後資金に必要な金額だったら目がくらんだかもしれなかったがクラスメイト達との信頼を選び邪念を捨てると彼にあるものが目に映る。それは教室の外で様子を見てた烏間で彼は状況に頭を悩ませていた。
(あー……烏間先生、おいたわしや)
翔一は体育担当の教師の烏間に内心同情した…………。
街中の人気のない路地裏にて男性は怪物に追われていた。男性に迫っていた怪物の正体はアングィス・フェミネウスであった。フェミネウスは真由美の始末は同族のマスクルスに任せて自分は別の標的を狙い始めたのだ。
「フフフ…………」
「ひっ⁉ く、来るな⁉ だ、誰かッ⁉ 助けてくれ⁉」
男性は助けを求めるがフェミネウスが発生した突風によりかき消され、そしてフェミネウスは不気味な笑みを浮かべ、両手でサインを切ると何か次元の穴ようなものが現れ、ブラックホールのように男性を吸い込んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」
穴に吸い込まれた男性はその中で悲鳴と共に凄いスピードで潜りすぐに出口に出た。出た先は遥か上空でその真下は線路、そして……走ってた新幹線に男性は激突した…………。
「なんなのよあのガキども! こんな良い女と同じ空間に入れるのよ? 有難いと思わないわけ⁉」
イリーナは職員室にて荒れていた。職員室には烏間もおり彼女の愚痴を聞かされていた。
「当たり前だ。彼らにとっては有難くないから軽く学級崩壊してるだろうが」
イリーナの愚痴に正論で返す烏間はそのまま言葉を続ける。
「いいから彼らにちゃんと謝って来い。ここで暗殺を続けたいのであればな」
「私は殺し屋よ! 教師何て経験ないのよ⁉ 暗殺にだけ集中させてよ‼」
イリーナは納得できない様子でそれを見かねたのか烏間は「ついて来い」とため息交じりに言い職員室を出た。彼女は渋々烏間の後を追う。
昇降口で靴を履き替え外に出た烏間はE組校舎の裏を歩き裏山に通じる獣道を歩く。イリーナも後を追うが彼女はヒールを履いており歩きづらい道だが我慢して歩く。すると烏間は前触れもなく止まり彼女を手で制する。
「そこから覗いてみろ」
烏間の言葉通りに覗くイリーナ。そこにはターゲットである来年に地球を爆破すると宣言した超生物、生徒達から殺せんせーと呼びがビーチベッドに横になってバインダーに挟まれた紙とペンを用いり何かを書いていた。ビーチベッドの隣には木製の机がありその上には大量の問題集や定規や分度器などが置かれている。
「なにしてんのよアイツ?」
「テスト問題を作ってる。どうやら水曜日6時間目の恒例らしい。ここにはコピー機がないから奴が一枚一枚、手書きしているんだ」
烏間の解説にイリーナふと疑問に思える部分があった。マッハ20で動く超生物にしては問題を書き写すにしては時間をかけすぎだと。
「やけに時間をかけているわね。マッハ20ならすぐに終わるものでしょ?」
「ああ。確かにその通りだ。しかし、奴は時間がかかる。あのテストの一枚一枚の問題が違うんだ」
「えっ……」
「生徒達に見せてもらったが驚いた。アイツは彼等の苦手教科と得意教科に合わせてクラス全員分の全問題を別々に作り分けている」
「なっ……⁉」
「高度な知能とスピードを併せ持ち、地球を破壊する危険生物。そんな奴の教師の仕事は完璧に近い」
イリーナは何も言う事は出来なかった。
「次だ」
烏間は再び歩き出し、イリーナはその背中を追う。色々と歩き回り、生徒達が校庭や教室で様々な事に興じている様子を見た。
「生徒達も見てみろ」
「……? ただ遊んでいるだけじゃないの」
烏間達が向かったのは校庭であった。校庭には白線で描かれたコートに集まっている生徒たちがボール遊びをしている光景だ。
「俺が教えた“暗殺バドミントン”だ。ナイフを動く標的に向けて正確み当てる為のトレーニングだ」
烏間の説明にイリーナは良く目を凝らすと生徒達の手には対先生用ナイフが握られていた事に気づく。
「暗殺など経験のない彼等だが賞金目的とはいえ、勉強の合間に熱心に腕を磨いてくれる」
暗殺者と学生。暗殺対象と教師。超生物によって生み出された奇妙な教室には誰もが2つの立場を両立しているのだ。
「お前はプロであることを強調するが…もし、暗殺者と教師を両立できないならここではプロとして最も劣るということだ。ここに留まり、奴を狙うつもりなら生徒達を見下した目で見るな」
烏間の正論にイリーナは俯くだけだった…………。
放課後、翔一は真魚と合流し真由美の住むアパートにやって来た。真由美が事故で入院したと聞いたが直ぐに自宅に戻っていたのだ。彼女の見舞いに彼等は学校帰りに顔を出すことにした。
「けど、びっくりした。真由美先生、事故で怪我したって………」
「ごめんね、家庭教師休んじゃって。まだ外に出るのが怖くって………」
真由美は二人の前では明るく振舞っていた。
「分かります、それ。ショックな事があると外の世界が全部怖くなっちゃうですよね。俺もそうでした」
「ショックな事?」
「あっ、真由美先生は聞いていませんか? 翔一君、海で事故にあってそれ以来記憶喪失なんです」
「記憶喪失?」
「はい、そうなんです」
翔一はいつもと変わらない笑顔で答えるとインターホンがなった。真由美は玄関に向かい扉を開くと氷川が立っていた。その右手には盛籠を持っておりその中にはリンゴが5つ程入っていた。
「刑事さん!」
「どうも、これはお見舞いです」
「すみません、こんなお気遣いまで!」
「いえ、気にしないで下さい」
真由美が玄関で氷川と話していると二人もやって来た。
「あれ? 氷川さん、こんにちは!」
「こんにちは!」
「どうも、君たちはどうして?」
「私達、真由美先生が事故で怪我したって聞いて学校帰りで寄ったんです」
「そうでしたか……」
「それにしても随分立派なリンゴですね。俺、剥いてきます。真由美先生、台所借りますね」
翔一の言葉に頷く真由美。氷川も自宅に上がりその間に翔一はキッチンにて果物ナイフでリンゴを剥いてる。
「昨日は助けて頂いて本当にありがとうございました」
「いや~そんなぁ、気にしないで下さい!」
「……? 何故、君が返事をするんです?」
リビングの椅子にそれぞれ座る3人。真由美は氷川に昨日のマスクルスに襲われ、助けた氷川に感謝し、そのことに翔一は思わず返事をしてしまう。なぜならマスクルスと戦ったのはアギトである翔一だった為、その事は学校等には秘密にしていたが学校終わりなのか彼は気を抜いてしまった。
(あ、ヤバい。学校終わりだったから油断した………誤魔化そ)
「あ、そんな事より、リンゴが剥きましたよ~」
何とか誤魔化そうとリンゴが盛られた皿を全員分を配る。
「私はいいから…」
「あれ? 食べないんですか?」
「私も後で……」
「……どうぞ」
「じゃあ、いただきます」
翔一はリンゴを齧る。そんな事をよそに氷川は真由美に昨日の事を話す。
「あんな事があった後です。すぐに忘れることは出来ないと思いますが…………」
「あの、もう一つ食べていいですか? リンゴ」
氷川が話そうとする瞬間に翔一が話の腰を折ってしまう。
「……二人共、すみませんが席を外していただけませんか? 大事な話なので」
「あ! すみません、気が利かなくて。じゃあ私たち帰ります。ほら行くよ! 翔一君!」
「アッハイ」
氷川アンノウンの事を話す為に部外者の二人に席を外すように頼む。真魚は荷物を持って翔一を連れ出そうとする。すると翔一は去ろうとするが一瞬立ち止まる。
「あのー」
「まだ何か?」
「真由美先生、元気出してください。必ず、あなたを守ってくれる人がいますから」
真由美がアンノウンに襲われたことを知っていた翔一は彼女に励ましの言葉をかけ、彼女の表情は穏やかなものだった…………。
「私の父が……ですか?」
「ええ、
氷川はアンノウンの狙いが普通の人間には無い力………超能力を持った人間を狙っている線を捨てきれなかった。なので彼女の父が超能力を持っていたのでは? と思い彼女に問うが返答は氷川の望む答えではなかった。
「いいえ……思い当たるような事は何も………」
「……すみません、無神経な事を聞いてしまって」
氷川が謝罪すると今度は真由美が彼に問う。
「刑事さん………何か知ってるんですか? やはり、父もあの怪物に殺されたんですか? 一体何が起こってるんです?」
「………分かりません。まだ何も……」
真由美の質問にアンノウンについても不明な点が多い為、氷川はこう答えることしか出来なかった…………。
氷川が真由美の自宅のマンションから出ると北條がそこにいた。
「氷川さん、またアンノウンが現れたそうです。前回の被害者の片平家の人間とは今回の被害者は無関係でしたがね」
「ッ⁉ …………分かりました。今回の被害者の家族の方にも護衛をつけるように手配しましょう!」
おそらくは真由美の護衛の交代の為だが彼は氷川にまたアンノウンの被害者が出たと教えに来た。氷川は上層部に別の被害者家族に護衛をつけるように電話をかける。しかし、北條は氷川にある事を語り始めた。
「分かりましたよ、
「僕の…過去?」
「G3の装着員として、貴方が本当に相応しいかどうかともう一度検討すべきだと上層部に掛け合ったんですが…拒絶されましてね。そこで、貴方の過去を調べさせてもらいましたよ。まさか…貴方があの
あかつき号事件……その言葉を聞いた氷川はいい顔はしなかった。そんな事を気にせず北條はあかつき号事件の概要……そして、氷川の過去を語る。
「約半年前、貴方は暴風雨の中で遭難したフェリーボート………あかつき号の乗員乗客をたった一人で救出した………最も一人だけ行方不明になった乗客はいたそうですが、それでも貴方が
北條はあかつき号事件での氷川の活躍を評価はしているがそこから彼や上層部についてもある事を指摘する。
「しかし、あの事件は警視庁にとっては忘れたい事件………謂わば封印しなければならない事件だったはずだ。本庁は口止め料として貴方をG3の装着員として抜擢した……違いますか? つまり貴方は賄賂を受け取ったに等しいんだ」
「…………失礼します」
あかつき号事件が警視庁にとっては封印しなければならない事件と語り、本庁は氷川に事件概要の口止め料=賄賂としてG3の装着員にしたと揶揄する北條。氷川は眉をひそめていたが彼の相手はせずそのまま歩き去った……。
真由美は涼と会った。彼が運転するバイクに後ろに乗る真由美。そして、彼らが向かったのは海浜公園であった。涼は公園のベンチに座り、真由美は空に浮かぶ半壊した月、海や鷗を眺め、鷗の鳴き声が響く。その様子を警視庁の北條とベテラン刑事の河野が見ていた。その理由はアンノウンから真由美を守る為の護衛であった。
「こうして見ると世の中って平和よね……。こないだのことが夢みたい」
「………心配するな。俺がついている」
「……うん」
涼は傷心していた真由美を励ます。彼女は今にとってそれは嬉しかったのか笑みをこぼす。二人は公園内を歩き回る。
「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
「ん?」
「前は答えてくれなかったけど、貴方が水泳を辞めた理由を知りたいの。貴方が私の支えてくれてるのは嬉しいけど……私も貴方のことを支えになりたいし」
「……もう、なっているさ。お前が俺を必要としてくれるならそれで……」
真由美は自分を支えてくれる涼に同じように支えたいと思っていた。しかし、涼は自分が水泳を辞めた理由を話すことに躊躇い、話を濁す。すると…………。
「逃げろォッ‼」
北條の叫び声に二人は反応したが突如として突風が襲った。
「「うわぁ‼」」
「シャァー……」
不気味な唸り声と共に現れたのはマスクルスだった。再び真由美の命を狙うため動き出したのだ。
(こいつが………)
涼は理解した。この怪物が真由美を襲った事を…………。
「早く逃げろォ‼」
北條と河野は無意味だと知っててもマスクルスに向けて拳銃を撃ちながら引き付ける。
涼は真由美を連れてその場から走り去った。
二人は走り去り近くの湾岸倉庫まで逃げてきたが北條達の追撃を振り切りマスクルスが彼らの前に現れる。
「シャァー……」
「この野郎ッ‼」
「涼ッ‼」
涼はマスクルスを押さえつける。だが、生身の人間にはアンノウンの前では無力に等しく直ぐに振りほどかれる。マスクルスは真由美を狙うが涼はもう一度押さえつける。
「真由美! 逃げろォ‼ 逃げろォッー‼」
彼の言葉に真由美は逃げた。しかし、マスクルスは彼女を狙わずに標的を涼に変える。涼を振り落としそして、その両手でサインを切ると突風が発生する。
「うおっ⁉」
涼の背後に次元の穴が出現し突風共に吸い込まれた…………。
「うおおおっ⁉」
涼は次元の穴に吸い込まれ出口を出た瞬間は空高く上空から落下する。しかもその先の近くに真由美もおりその様子を彼女は目撃する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」
涼はこのまま地面に激突…………
奇妙なことに涼は落下の寸前に光を発しながら止まった。そして、彼の姿は変わった。アギトに近い赤い複眼と2本角だが、角はそれと違い短いもので緑色の身体で腹部には緑色の石が付いたベルトに近いものが存在し人間とは全く別の生物に変わった。その姿はアギトに酷似していたが身体の色や生物的な見た目により別の存在だった。変わった瞬間、一時停止したためから落下の勢いは無くなり大したダメージではなかった。
「グウッ⁉ ………ウウウウ…………」
その生物は苦しみながらまた姿を変えて涼の姿に戻る。しかし、その瞬間は真由美は見てしまった。真由美は同様を隠せず彼の前から走り去った。まるで逃げるように…………。涼は彼女に自分の変わり果てた姿を見せてしまったことにショックを受けてただ見届ける事しか出来なかった…………。
その晩、涼は傷つきながらも公衆電話ボックスに赴き、あるところに電話する。
『もしもし』
「
電話をした相手は真由美であった。スマートフォンにも繋がらなかった為に公衆電話で連絡を取った。涼は彼女にあの姿の所為で水泳を辞めざるを得なかったと話した。しかし…………。
『同じじゃない……貴方も……私を襲った奴と………』
「違う! ………俺は………」
『聞きたくない!…………私を巻き込まないでッ‼ 全部貴方の所為なんじゃないの? 貴方が私の所に戻ってきてからじゃない⁉ お父さんが死んだのも…………私が襲われたのも…………私は普通に生きていきたいの! お願いだから私を巻き込まないでッ‼』
彼女から拒絶された。真由美からして見れば自分が襲ったアンノウンや涼が変わった姿は同じものと思っていた。そして、自分が襲われたのは涼の所為だと思い込んでいた。
「………分かった」
『涼………ごめんなさい。私には無理だから…………』
真由美の右頬には一筋の涙が流れていた。親しい人間が怪物と同じになった悲しみの現れでもあった。
「……気にするな。それで良いんだ………それで……良いんだ」
涼は拒絶されても彼女を責めなかった。それが普通の人間の反応だと理解していたのだ。そして……涼は電話を切った。
同じ夜、美雲は仕事帰りで踏切の音が響き、そこで立ち止まり列車が通過するのを待つ。すると…………列車が通過する間に途切れ途切れだが黒服の少年を目撃する。
「まさか……」
列車が通過し踏切が上がり渡ったがそこに少年の姿はなかった…………。彼女は少年を探すが見つける事が出来なかった…………。
後日、E組の休み時間に生徒達は談笑していた。次の英語の授業はイリーナの担当だった為かどうせ自習だと勘づいていた。すると、イリーナ授業開始前に教室に入って来て、黒板に英文を書いた。
「you are incredible in bed! repeat‼」
黒板に書いた英文を言っったイリーナは生徒達に復唱を促す。生徒達も啞然としてしまい、すぐに席に戻ると復唱する。
「「「ユーアー、インクレディブル、イン、ベッド」」」
「これは、私がアメリカでとあるVIPを暗殺した時にまずはそいつのボディーガードに色仕掛けで接近する為に彼に言った言葉よ。『ベットでのキミは凄いよ……♡』って意味よ」
(中学生に何てもん読ませてんだよ‼)
翔一を含む生徒達は誰しもが思った。するとイリーナの話は続く。
「外国語を短時間で効率的に習得する方法はその国の恋人を作るのが手っ取り早いと言われてるわ。相手の気持ちをよく知りたいから必死で言葉を理解しようとするのよね」
(成程………。確かに理にはかなってるな。しかし、どうしたんだろう? 前とは別の印象だ…………)
彼女の解説に翔一は関心し、様子がおかしいと感じていたが話を聞く。
「私は仕事上必要な時…そのやり方で新たな言語を身につけて来た。だから私の授業では、外国人の口説き方を教えてあげる。プロの暗殺者直伝の『仲良くなる会話のコツ』。身につければ、実際に外国人に会った時に必ず役に立つわ。私が教えるのはあくまでも実践的な会話術だけ………受験に必要な勉強はあのタコに教わりなさい。もし…それでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出て行くわ。……そ、それなら文句ないでしょ?…あと、悪かったわよ、色々」
今までの彼女の態度は一変した様子に生徒達は思わず笑った。
「何、ビクついてんのさ。昨日まで殺すとか言ってたくせに」
「なんか、普通に先生になっちゃったな」
「もうビッチ姉さんなんて呼べないね」
イリーナは生徒達の心を掴めた様だった。
「これじゃあビッチ姉さんなんて呼べねいよね」
「だね、呼び方変えないと」
「そうだね、考えてみれば先生に対して失礼な呼び方だったよね」
「あ、アンタ達……!」
イリーナは感涙していた。しかし、それは直ぐに終わった。
「じゃあ、ビッチ先生で」
「えっ……ねぇ、君たち。折角だからビッチから離れてみない? ホラ、気安くファーストネームで呼んでくれても構わないのよ」
どうやらビッチ呼びは彼女には不本意だったが生徒達にファーストネームで呼ぶように促すが…………。
「でもなぁ、もうすっかりビッチで固定されちゃったし」
「うん。イリーナ先生よりビッチ先生の方がしっくりくるよ」
「そんなわけでよろしく、ビッチ先生‼」
「授業してよ、ビッチ先生‼」
最初は穏やかに交渉しようとしていたイリーナも、ビッチビッチと連呼されとうとう堪忍袋の緒が切れてしまった。
「キ―ッ‼ やっぱりキライよ、あんた達‼」
(雨降って地固まるって奴か……)
何はともあれイリーナはこの暗殺教室に馴染んだようだった…………。
学校が終わり、三杉家に戻った真魚と翔一は私服に着替えて真由美と一緒に駅まで歩いていた。その理由は真由美が実家の鹿児島に帰るためであり二人はその見送りのためであった。真由美も実家にいる母親も一人にさせるわけにはいかなかったが、一番の理由はアンノウンに襲われないようにするためであった。三杉家でその話をしていて翔一は真由美にお土産と称し菜園でとれた大根を郵送で贈りますと言い、彼女の方は助かると喜んでいた。
「でも、寂しくなるなぁ。真由美先生がいなっちゃうと、ね? 翔一君」
「え? 何で?」
「って、寂しくないの?」
「だって、会いたくなったら会いに行けばいいじゃん」
真魚に寂しくないのかと聞かれた翔一はポジティブな言動であった。その様子を氷川は見ていた。すると氷川の携帯がなった。相手は勿論G3ユニットの小澤からだ。
「もしもし」
『氷川君! アンノウンが出現‼ G3出動よ!』
「分かりました‼ すぐに向かいます!」
氷川はその場を立ち去ると同時に翔一は足を止め、二人は不思議に思えた。
「翔一君?」
「俺、行かなくちゃ‼ 本当にごめんなさい!」
翔一は走り去ろうとするが一度止まり、真由美に声を掛ける。
「あ、真由美先生! 大根美味しかったら電話して下さい。また送りますから!」
そう言い、彼は再び走り去った……。
「ひっ⁉ 来るなぁ⁉」
アンノウン………フェミネウスが男性を襲っていた。自身の特殊能力の突風を発生させて不気味な笑みで恐怖に歪んだ男性の顔を覗いていた。男性は恐怖心に駆られて動きがとれなかった。男性に邪眼の鞭を打とうとしたフェミネウスは瞬間、動きを止め視線の方向を変える。それをチャンスと思った男性は足に力を入れてその場を全速力で走り去った。
フェミネウスの視界には駆けつけて来た翔一がいた。
「フフフ……」
また、不気味な笑い声を上げるフェミネウスに翔一は動揺せず、普段通りに行う動作のようにベルトのオルタリングを出現させる。
「変身‼」
そして、両端のスイッチを入れてアギトに変身。戦闘が開始する…………。
真由美と真魚は駅への道のりのトンネルを歩いていると真由美がふと呟く。
「変わってるね」
「え?」
「翔一君」
「あ、そうなんですよ」
トンネルに出た後、二人は翔一のことに語っていた。しかし、彼女たちの背後からトンネル内の出口からマスクルスの魔の手が伸びようとしていた。
「シャァー…………」
マスクルスは両手でサインを切った後、二人を襲おうとするが…………。
「いい加減にしろッ‼」
その言葉にマスクルスは立ち止まり後ろを振り向く。底には不気味にもトンネル内にて烏達が倒れ、そこから歩んできたのは涼であった。
「二度と真由美には触らせない‼ 二度と真由美の前には立たせない‼」
その決意の言葉と共にまた、烏達が倒れる。そこには涼とその隣に涼がなった生物…………否、戦士が現れそして、一つとなった……。アギトとは別の戦いも開始した。
「フッ! ハァ‼」
「シャァー‼」
「クッ⁉」
噴水広場のあるビル街にてアギトとフェミネウスは戦闘を繰り広げる。フェミネウスの鞭の攻撃に
「ぐわぁッ⁉」
「フフフ……」
フェミネウスはアギトの背後に回り込み鞭でアギトの首を締め上げる。アギトも抵抗するが両者のパワーは互角なのか鞭が解けないアギト。そんな時だった。
何かの発射音が響き、その正体はグレネードの弾頭の発射音でその音に反応したフェミネウスだが、手首に弾頭を喰らい、鞭を落としてしまう。
「ウウゥッ⁉」
フェミネウスは音がした方向を睨んだ。グレネードを撃ったのは氷川が装着したG3だ。そして、またグレネードを発射し、アギトを援護する……。
「フン‼」
「シャァー‼」
「グワーッ‼」
マスクルスと戦士の戦いは続いていた。マスクルスの杖による攻撃をいなしながら攻撃をかける戦士。しかし、パンチやキックといった攻撃はマスクルスにはきいていなかった。まるで本来の力が出ないように…………。その為、戦闘はマスクルスが優勢だった。杖の先端で戦士の首を締め上げ地面に叩き落とすマスクルス。戦士にとどめを刺そうとするが戦士は立ち上がる。そして…………。
「ウオオオオッ‼」
戦士の口が開き雄叫びを上げる。すると短かった角が伸び、鋭い先端部が現れる。マスクルスは危険と感じたか杖で戦士を叩こうとするが戦士の腕がガードし逆に回し蹴りを喰らった。
「ウオオオオオオッ‼」
雄叫びと共に口と牙が開き戦士の反撃が始まろうとしていた……。
「フンッ‼」
フェミネウスとアギト、G3の戦闘はG3はフェミネウスと戦っていた。その隙にアギトは
「フッ‼」
「シャァ‼」
武器を持たないフェミネウスは格闘戦にも強くG3は距離を取れず接近され、蹴りによりグレネードランチャーを落としまうが反撃の右手の一撃はジャンプで躱され距離を取られる。
しかし、アギトはその隙を見逃さずハルバードでフェミネウスに斬りかかる。しかし、フェミネウスに初撃は躱されもう一撃与えようとハルバードを振るうが両腕で防御される。その隙にアギトは右手から放つ一撃をフェミネウスの腹部に炸裂し怯む。ひるんだ隙にアギトは斬りかかるがフェミネウスは回避され高くジャンプする。
「ハァッ‼」
「ウッ⁉ ウウウウ⁉」
だが、アギトはそのすれ違い様にフェミネウスの頭部にハルバードを当てた。当てたといえどかすめた程度。頭部の蛇の髪の毛を切り裂いたものだった。切り裂いた蛇は消滅し再びハルバード構えるアギト。それに加勢する為に駆けつけるG3.
しかし…………。
「グゥゥゥッ‼」
フェミネウスは最後の悪足搔きか力を振り絞り突風を発生させる。
「「くぅぅぅッ⁉」」
「グゥゥゥ……」
不気味な呻き声と共に突風を目くらまし替わりに撤退した……。
「ウワッ‼」
「シャァー‼」
戦士とマスクルスの戦いにてマスクルスは徐々に追い詰められた。杖による攻撃も戦士は見切り、蹴りを入れて杖を利用してマスクルスをそのパワーで投げ飛ばす。マスクルスは反撃するも戦士はジャンプし距離を取る。
「ハァッ‼」
すると戦士は構え、右腕が黄色い刃が伸びた。両者は構え移動しながらにらみ合う。
「ウオッ‼」
「グワァ⁉」
そして、両者共ジャンプし、戦士の刃はマスクルスの腹部を切り裂いた。バランスを崩してマスクルスの隙を突き、戦士は飛びかかり、マスクルスの頭部にその牙で嚙みついた。
「ウオオオッ‼」
「グワァァァッ⁉」
マスクルス命の危険を察し、戦士を突き放し切り裂いかれた腹部を抑えながらその場から走り去った……。
「ハァ……ハァ………」
マスクルスは工事現場の資材置場まで逃走した。
「ハァッ‼」
しかし、戦士の追撃は続きマスクルスの前に現れる。マスクルスは杖を構えたが戦士に気圧され、猛攻撃を受ける。
「ウオオオッ‼」
「グワァッ⁉」
左右の拳から交互に放つ強烈な一撃に最後に回し蹴りにマスクルス資材の一部に倒れこむ。戦士は倒れ込んだマスクルスを踏みつける。マスクルスも蹴りで抵抗するがそのパワーから放たれた手刀に杖は真っ二つにされ戦士はマスクルスを持ち上げ、投げ飛ばす。
「ウオオオオオオッ‼」
戦士の口を開き、咆哮。マスクルスを執拗に攻撃する。そして、戦士の左右の踵から刃が伸びる。
「ウオッー‼ ハァッ‼」
「グゥゥゥ⁉」
右足からのかかと落としにてマスクルスの肩部に炸裂し、刃は背後から心臓部に突き刺さる。マスクルスの頭上に光の輪が発生し苦しみもがく。
「オオオオオオッ‼ ハァッ‼」
戦士はジャンプし距離を取った。そして……。
「グワァ――ッ⁉」
断末魔と共に爆発四散した。爆発を見届けた戦士は涼に戻った。だが、その表情は決して怪物を倒した歓喜の顔ではなくもう自分が人間ではなくなった辛く、重い顔だった…………。
駅に着いた真魚と真由美。電車が来ていよいよ別れの時が来た。
「さようなら」
「うん、さよなら」
別れの挨拶と共に真由美は電車に乗る。数分後に真由美を乗せた電車は発車した。その様子をマスクルスとの戦いを終えた涼が隠れて見ていた。
(さよならだ…………真由美)
涼は心の中で彼女に別れの言葉を述べるのであった…………。
文字数が安定しなさすぎて泣ける…………。