神様さえ、知らない場所へ『ダークソウル2』 作:Artificial Line
だが、ここはどこだ?
見たこともない景色、亡者でも不死人でもない人間たち。
そして頭上では太陽が煌々と照っている。
私は、どこに来てしまったのだ?
目の前には、背丈の倍ほどもある光の壁がそびえ立っていた。
ふと足元に白い、何かが二つ浮かび上がる。
独特な、金属同士が擦れあうような音と共に浮かび上がったそれは、もう何度もこの地で目にしてきたものだった。
なんのためらいもなく、それに触れる。
そして語りかける。
手を貸してくれと。
それに呼応したかのように、変化が起きる。
白いサインを中心としてあたりに魔法陣が浮かび上がり、二つの人影がその中から召喚された。
一人は赤い衣が目を引く騎士甲冑に身を包んだ男。
一人は黒いドレスに身を包んだ、魔法使いのような女。
そして脳内に言葉が浮かび上がってくる。
『放浪騎士アルバを召喚しました』
『魔女ジャーリーを召喚しました』
放浪騎士アルバ、それに魔女ジャーリーといえば旅の巣柄、手に入れた防具の主だった人物だ。
珍しいこともあるのだな、と内心苦笑する。
彼らに一礼をする。
ゆっくりと、今までの道筋を振り返りながら。
それに応えるかのように、彼ら、彼女らもゆっくりと一礼を返した。
光の壁に指を指す。
それを見た二人は、ゆっくりと頷いた。
「これで、終わりだ」
小さく呟いた言葉。
自分に言い聞かせた言葉。
光の壁に手を触れる。
最初は普通の石壁のように抵抗があったが、直ぐにそれもなくなり光の中へ入っていく。
光を超えた先に見えたのは、ホールのような大きな空間。
そして、自分より大きな体躯をした騎士が2人。
次いで、2人も光を超えてやってきた。
数瞬、互いに睨みあう。
そして、黒い甲冑を身にまとった巨躯の者が剣を引き抜く。
それに応えるように、自らも背にあずけていたクレイモアを手に取る。
さあ、始めよう。
私の旅に、終わりを。
最初に動いたのは白い甲冑を纏った巨躯の者だった。
一瞬で背丈の何倍も跳躍し、手に構える直剣を私たち目掛けて振り下ろしてきた。
3人ともそれを横へローリングして回避する。
すかさず反撃に出る。
アルバは手にしていた直剣で白い巨躯の者の左足目掛けて一閃する。
だがみすみすカウンターを取られる巨躯のものではない。
バク転で直剣を避け、すぐさま距離を取る。
私はクレイモアを両手で握り、黒い巨躯のものへ走り出す。
このように体格差がある敵を相手取るときは、懐に潜り込むのが定石だ。
あちらの白い巨躯のものはあの二人に任せれば良いだろう。
自分が相手すべきはこの黒い騎士だ。
盾を構えていた黒い騎士だが、自らの間合いに私が入った瞬間、凄まじい勢いで剣を横薙ぎにしてきた。
それをギリギリのところで前へローリングし、回避する。
懐に潜れた。
ローリングの勢いをそのまま利用し、黒い騎士の右足の関節部分をクレイモアの切先で突く。
鎧と鎧の間に滑り込んだ剣先はそのまま黒い騎士の肉を貫いた。
多少のダメージは与えられたか。
そう思ったのも束の間、頭上が黒い影で遮られる。
危険を感じ、咄嗟に横へ跳んだものの、回避しきれずに剣先が私の脇腹を引き裂いた。
鋭い痛みが腹部に奔る。
一度距離を取り、態勢を立て直すべきか。
バックステップで黒い騎士から距離を取り、懐に下げてある瓶を仰ぐ。
エスト瓶、不死人の宝であり、不死人の傷を一瞬で癒す。
エストの熱さが喉を下ると同時に、腹部の傷が塞がっていった。
ふと視界の隅で戦闘を繰り広げている彼らが目に入った。
アルバが前衛で白い騎士の注意を引き、ジャーリーが確実にソウルの結晶槍を叩き込んでいる。
いい連携だ、そう内心で感嘆する。
あちらは心配なさそうだ。
私はこの黒い騎士に集中すれば良い。
クレイモアを握り直し、駆け出す。
左手に持つ龍の聖鈴を触媒にし、ソウルの大きな共鳴で牽制しつつ一気に間合いを詰める。
ソウルの大きな共鳴。
一定のソウルと引き換えに大きな闇を放つ。
闇術は生命の理を乱すとして多くの人々から蔑まれる術だ。
禁忌とさえしている国もいくつかある。
だがそんなことはどうでもいい。
勝つためにはなんでも使う。
それが私が今まで亡者化させずに旅を続けてこられた理由の一つだ。
共鳴で黒い騎士の視界を潰しつつ、一気にジャンプをしてやつの背後へ回り込む。
そしてすかさず神の怒りを発動させる。
神の怒り。
ダメージ有りの衝撃波を周囲に発生
見た目で分かりにくいが雷攻撃。
背後をとっていたことで上手く膝の関節部分へ命中させることができた。
後ろから予想以上の衝撃をモロに喰らったことにより、黒い騎士が膝末く。
「サヨウナラ」
身体を回転させ、その勢いに乗せてクレイモアを振りかぶる。
刃は兜と鎧の隙間に潜り込み、そのまま黒い騎士の首を跳ね飛ばした。
首を失った身体は、グダっとその場に倒れふせる。
それを見届け、そのまま
彼らの加勢に向かおうとしたとき。
白い騎士の断末魔が轟く。
彼らの方向へ視線を移すと、ジャーリーの結晶槍によって風穴を空けられた白い騎士が消滅している所だった。
あの2人の騎士のソウルが体に流れ込んでくる。
だが、決して気は抜かない。
これで終わりではないだろう。
『この先に進めば、デュナシャンドラがあなたを襲うでしょう』
この場に来る前に、緑衣の巡礼が言っていたことだ。
吸収したソウルの記憶から得た情報だが、
今打倒した騎士たちは王座の守護者、王座の監視者と呼ばれていたらしい。
となれば、デュナシャンドラ、この荒れ果てたドラングレイグの王妃ではない。
『不死よ』
突如としてホール内に声が響き渡る。
『試練を越えし不死よ』
声の方へと視線を向けると、形容し難い″何か″がそこにいた。
『今こそ、闇とひとつに…』
女性のような丸さを連想させるような形状。
だが、それ以上に醜い。
まるで人の憎悪や愚かさを投影したかのような。
アルバ達の方へ顔を向ける。
彼らも私を見据え、ゆっくりと頷いた。
どうやら準備は出来ているらしい。
ジャーリーが杖を振るう。
すると彼女の周囲に小さな結晶が5つ出現した。
追尾するソウルの結晶塊
結晶により更なる威力を得たソウルの塊
放たれた塊は敵を追尾する。
「悪いが、もう少し手伝ってくれ」
私の、その小さな呟きに二人は再び頷く。
龍の聖鈴を用いてとある奇跡を発動する。
太陽の光の剣
古い太陽の奇跡
武器を太陽の光の力で強化する
太陽の光の力とは、すなわち雷である。
奇跡によってエンチャントされたクレイモアは、眩く輝いていた。
アルバがデュナシャンドラへ向かい指を指す。
終わらせよう。
この長い旅路を。
終わらせることのできない呪われた放浪を。
クレイモアを両手でしっか握り直し、異形へと駆け出す。
真正面からの突撃。
それをみたデュナシャンドラはおもむろに片腕を上げた。
そしてその先から、心を蝕むような閃光が発せられる。
何か来る!そう思考した刹那。
閃光の中から淡い紫のレーザーが私に照射された。
間一髪のところで横へローリングして回避する。
だが、奴は私の回避方向へ合わせてレーザーを横薙ぎにしてきた。
「クッ!」
なんとかそれも前方へ転がることで避けれたが、このままではジリ貧か。
そう考えたのも束の間。
レーザーの照射が途切れた。
いや、実際は途切れさせられたと言ったほうが正しいだろう。
『アァァァ!!』
悲鳴と呼ぶのもおこがましい咆哮を、異形が上げる。
ジャーリーの結晶槍がデュナシャンドラの腕を、文字通り消し飛ばしたのだ。
すかさずアルバが追撃に出る。
直剣を両手持ちにし、異形の眼前で跳躍する。
そして落下の勢いと自らの自重を利用して、深々と剣をその醜い体に突き刺した。
これは好機だ。
再び私は異形へと駆け出す。
そして、その勢いのまま奴の手前で横回転する。
回転によって加速された大剣の刃が深々と異形の肉を引き裂いた。
『ウォォォォ!』
再び、およそ人のものではない咆哮を上げる異形。
それを聞いたジャーリーは、まるで黙れとでも言うかのように。
奴の顔とおぼしき部位へ結晶槍を叩き込む。
もはや虫の息の異形。
どうやら仮染めでも王妃であることには変わりはないらしい。
生命力も、戦闘力もそこまで高くないようだ。
クレイモアを異形に突き刺し、そのまま縦へ引き裂く。
そして追撃にソウルの大きな共鳴を傷口へ叩き込む。
アルバも直剣で奴の肉を、縦へ、横へ引き裂いていた。
だがそれでも、まだ異形はさぞ苦しそうに藻掻く。
早いところ終わらせよう。
クレイモアを奴へ深く突き刺し、それを足場として一気に駆け昇る。
そして異形の顔と自分の頭がほぼ同じ高さまできたところで、
奴と目があった。
腰に指していたダガーを引き抜くと思い切り異形の眉間目掛けて叩き込む。
『グォォォォォォォォォオオ!!!』
醜い異形、王妃デュナシャンドラは凄まじい悲鳴を上げる。
そしてそのまま奴の身体がソウル化していき、完全に消滅した。
地面に落ちたクレイモアを拾い上げる。
そしてアルバとジャーリーの方へ身体を向け一礼をする。
ジャーリーは丁寧に一礼を返しながら、アルバは手を振りながら元の世界へ帰還していった。
……これで終わったのか。
私はクレイモアを背に預けると、正面に見える巨大な石窯のようなモノへ歩みをすすめる。
石窯と私が今いるフロアは大きな亀裂で隔たれており、とても人の身で渡るのは無理そうだった。
さてどうしたものかと思考したとき、地面が少しだけ揺れた。
思わず背のクレイモアへ手をやる。
何が起こるのかと警戒していた時、亀裂に佇んでいた無数の″何か″が動き出した。
直感でそれが何かを理解する。
旅の道中、何度か対峙してきた者たち。
巨人だ。
だが同時にこうも直感した。
こいつらは敵ではないと。
なぜだかはわからない。
だが、そう直感したのだ。
巨人たちは私の前へ集まると互いに肩を組み、石窯への道となった。
私はなんのためらいもなく巨人たちの背に脚を乗せ石窯へと向かっていく。
石窯へと到達すると内部には石で出来た椅子がぽつんと一つだけ存在していた。
私はその椅子がなんなのか知っている。
王座。
そう呼ばれているそれは、世界にソウルを満たすためのもの。
ソウルが満ちる事によって世界から不死の呪いは薄れる。
だがそれも一時的なものだ。
いずれ火は消え、また同じことが繰り返される。
結局呪いを解く方法など、ありはしなかったのだ。
そういえば、初めてマデューラに訪れたとき、あの青の騎士がこう言っていたか。
『ここに来れば、呪いを解くことができる、 そう聞いてきたんでしょう?嘘っぱちなんです、全部』
ははは、その通りだったな。
ソウルの技によって呪いの進行は確かに止まった。
だが、不死の呪いが消えることはなかった。
とにかく、私は疲れたんだ。
少し休んでも構わないだろう。
ゆっくりと、王座ヘ腰を落とす。
同時にだんだんと意識が薄れてきた。
意識が完全に途切れる合間、ふと昔の記憶が蘇る。
大王を打倒し、その身を燃やして世界を火で照らす騎士。
その姿は、遠い遠い過去の自分。
ああ、懐かしい。
なんと懐かしい記憶だろう。
私は、まだ忘れずにいられたのだな。
私の意識は、微睡みに沈んでいった。
無駄に長かったですね。
次回から異世界に主人公をぶち込んでいきます。
ちなみに主人公の装備は
異国のフード+10
レディアの黒ローブ+5
竜血の手甲+10
アーロンの具足+5
右手1クレイモア+10
右手2ダガー+10
左手1龍の聖鈴+5
でふ