神様さえ、知らない場所へ『ダークソウル2』   作:Artificial Line

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こちらの世界は最高だ。

そう、戦争でどれだけ人が死んでいようが、どこかで虐殺が行われていようが。

元の世界に比べたら、な。



http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im4592109
※ストレイドです。
良かったらドゾー


2日間

ホトトギスのさえずりと、鶏の鳴き声が早朝の王城に響いていた。

亡者の呻き声と、異型の雄叫びしか聞こえなかった前の世界とはまさに天と地の差である。

 

 

あれから2日。

 

城門の前には多くの兵士が騎乗して待機していた。

主となっている部隊は近衛隊だが、それを補助のように中央即応軍の兵士達が数名混じっている。

合わせて40名ほどだろうか?小隊規模の人数はいるだろう。

 

こんな早朝から私達は何をしているのかというと。

 

リリィ。

あのお転婆姫様が城塞都市へ視察に行くことになったのだ。

 

私達はその護衛になる。

 

なぜ最前線に姫様自ら赴くのかといえば。

 

理由は2日前まで遡る。

 

 

 

 

 

私とアリョーナは謁見の後、近衛隊の宿舎へ向かっていた。

中庭に敷かれた連絡通路を歩いている際。

何か見覚えのあるものが視界に入る。

 

「ん?あれは…?」

 

「お、おい!そっちは洗濯場だぞ!!」

 

通路を外れて、その何かを確認しにいく。

 

やはりか。

私の記憶に焼きついたものと"何か"は一致していた。

 

幾度となく灯したそれは、不死の安息の場であり、唯一の癒やしだった。

 

「なぜ篝火がここに……………?」

 

「お、おいってば!って……なんだこれは?こんなものなかった気がするが…?」

 

追い付いてきたアリョーナが訝しげに首をかしげる。

彼女の反応を見る限り、もともとあったものではなさそうだ。

 

「これは篝火というものだ」

 

「かがりび?」

 

「そう。前の世界で唯一私達を癒してくれるものだった」

 

「これが?この錆びついた剣がか?」

 

そういう彼女の問は無視し。

ちょっと離れてろとだけ言い返した。

 

彼女曰く、錆びついた剣に手をかざす。

そして自らのソウルをいくらか送り込む。

 

するとどうだろう。

ボッ、と何も火の気がないところから炎が起き、一瞬の内に焚き火となった。

 

彼女はその光景を目の当たりにし、眼を丸くしている。

 

「うおっ!貴公。一体何をしたのだ?火炎魔法でも使ったのか?」

 

「いや、そうじゃない。ほらこの炎は触っても熱くないんだ」

 

そう言いながら右手を炎の中に突っ込んで見せてみる。

それにまた彼女は驚いた様相を見せたが、お構い無しにそのままエスト瓶を補充した。

 

「それにこの炎は水をかけても消えないし、暴風に曝されても消えることはない。不思議な火なのさ」

 

「そんな便利な火があるのだな…それに貴公が言う癒やしというのも何となく理解出来た気がする。この炎を見ていると何故か心が安らぐな…」

 

なぜ篝火までもがこの世界にあるのか。

疑問は残るが、まあコチラにとってデメリットはないので一先ずおいておくとしよう。

 

「寄り道して悪かったな。近衛隊の宿舎にいくのだろ?」

 

「あ、ああそうだった。それじゃ改めて向かうとするか」

 

 

 

 

宿舎の中にある休憩所の扉を開け、フル装備のまま中へと入っていく。

部屋へ行くより先に隊士への紹介を済ませておいたほうがいいだろう。というアリョーナの提案のためだ。

 

入室すると、皆が皆驚いた表情を浮かべているがまあ当然だろう。

 

アリョーナが口を開くよりも早く。

一人の隊士が声を上げた。

 

「お、おい!アリョーナ!!なんでそいつがここにいるんだよ!!」

 

他の隊士達もそうだ!と言いたげに頷いていた。

 

ここまで予想通りの反応。

まあ彼らは王国でも屈指の精鋭部隊だ。

 

誇り高い彼らからすれば、傭兵が自らの寝床にいることでさえ気分が悪いに決まっている。

 

まあ最も、これからもっと気分が悪くするような事を彼女が言うのだが。

 

「今日から共に生活することになった傭兵のストレイドだ。皆よろしく頼む」

 

しばしの静寂。

それはまさに、嵐の前の静けさだった。

 

「アリョーナ中尉!!なんで傭兵風情が我々近衛隊と一緒なのですか!?」

 

「納得できません!!」

 

「どういうことですか!?」

 

「説明してください!!」

 

休憩室内に響き渡る怒号。叫び。

正直ここまで盛大にバッシングされるとは思っていなかった。

 

いやまあある意味当然なのだろうが。

 

「別に近衛隊に入隊する訳ではない。この宿舎の空き部屋を使うだけだ。姫様が専属の傭兵として個人的に彼をお雇いになった」

 

「はぁ!?姫様が個人的にってどういうことだよ!?」

 

「傭兵と同じ場所で寝るなんて耐えられません!!」

 

彼女の説明に対して不服な様子の隊士達。

まあ、王室直轄の部隊である彼らからしたら、自分たちの仕事を奪われたと感じるのだろう。

それも、素性も分からぬ一介の傭兵風情に。

 

「お前たち、黙れ」

 

若い男の声が室内に響き渡る。

そのセリフの通り、先程まで騒いでいた隊士達は静かになった。

 

隊士達の間から一人の男が前に出てくる。

身長180程、私より少し小さい程度で茶髪の短髪。

キリッとした眼に整った顔立ちが印象的な20代前半の男だった。

 

「オレと決闘しろ。貴様が敗北した場合この場から失せてもらう」

 

男は私を指さしながらそう言い放った。

 

すかさずアリョーナが反論する。

 

「黙れリディス!!姫様と国王陛下の決定だぞ!!」

 

私の戦いを知ってる彼女は、なんとかそのような事態は避けたいのだろう。

彼女は必死にリディスという男を止めようとする。

 

だが

 

「いいだろう。確かに皆も傭兵、それも実力が不詳とあらば納得がいかないだろうからな」

 

そんなことお構いなしに私は二つ返事でOKを出す。

アリョーナがあんぐりと口を開けてこちらを見返して来たが、次第にその表情も諦めへと変わっていった。

 

アリョーナ、すまないな。

 

なぜ決闘と受けたかと聞かれれば。

 

実力を顕示しておくため

 

とか

 

とりあえず場を収めるため

 

とか幾つか理由は浮かぶが。

 

まあ本音を言うならば。

 

『だってそのほうが楽しそうじゃないか』

 

これに限る。

 

 

 

 

 

 

「いいだろう。確かに皆も傭兵、それも実力が不詳とあらば納得がいかないだろうからな」

 

私は場を収めようと必死だった。

だが彼のその一言で全てを諦める。

 

何を言い出すかと思えば。

ホントに何を言い出しているのだこの男は。

 

別にストレイドの身を心配しているわけではない。

彼の戦いを間近で見たことのある人間ならば、きっとだれでもそうだろう。

 

私が心配しているのは、むしろリディスの方だ。

いくら近衛隊でも有数の実力者とは言え、ストレイドの戦闘を見た後では不安しか残らない。

 

あの戦いぶりは異常だ。

少なくとも人間業ではない事は確かだ。

 

彼が召喚され、騎士を切り伏せた時。

 

その時、確信したことが一つある。

 

"彼の剣技は対人用のものではない"

 

そう、彼の攻撃は対人戦闘では余りにも過剰火力なのだ。

 

遠心力に刃を乗せ、更に筋力で加速させた回転斬り。

人間を一撃で消し炭にしてしまう闇魔法。

 

そのどれもが対人用とは思えない過剰な威力を持っている。

 

恐らくは、対獣用や対魔族用の類ではないだろうか。

 

そして、恐ろしいのはそれだけではない。

彼の攻撃は、そのどれもが上記の様な威力を誇っている。

 

それなのにも関わらず。

攻撃後の隙が全くといっていいほどないのだ。

 

まあそれも、剣技についてはまだ説明がつく。

 

だが魔法はどうだ。

魔法と言うものは通常。

より高度、より高威力なものになればなるほど詠唱が複雑になってくる。

 

つまりは発動するまでのタイムラグが、上位魔法になればなるほど増えるということだ。

実際私が扱える最上位の魔法は、詠唱に20秒程の時間を要する。

 

だが彼の扱う魔法はどうだったか。

 

人間を一撃で消し炭にしてしまう闇魔法も。

最上位のものと同等かそれ以上の回復魔法も。

 

ほぼ詠唱のタイムラグ無しに発動させていたのだ。

 

これに関しては恐らく。

こちらの世界と、彼の元いた世界の魔法の体形が異なる事が理由だと思われる。

 

その辺りは、学者に聞いてみないとよくわからないが、

兎にも角にも、彼の扱う魔法はこちらの世界では戦術兵器並みのものばかりなのだ。

 

そんな御伽話の英雄もびっくりな存在に、挑むということがどういうことかをリディスは理解していない。

まあ彼の強さを知らないのだから当然といえば当然なのだが。

 

これからどうすればいいんだ。

 

そう頭を悩ませていた時、ストレイドが小声で小さくつぶやいた。

 

「心配するな、怪我はさせないさ」

 

彼はそう言うとリディスの後を追って、訓練場へと歩いて行った。

 

 

 

 

既に近衛隊の訓練場には噂を聞きつけた兵士達が集まっており、さながらコンサート前のようだった。

群衆の中には、近衛隊の真紅の衣に混じって、群青色の衣がちらほら見える。

 

どうやら中央即応軍の兵士たちにも噂は伝わっているようだった。

 

『姫様が雇った傭兵と王室の忠狼リディスが決闘をするらしい』と。

 

リディスの二つ名である王室の忠狼。

確かに彼の実力はこの二つ名に相応しいものがある。

 

彼自身はこの二つ名を嫌っているのだが。

彼の功績が大きくなるに連れてその二つ名も拡散してしまい、今じゃもう手遅れ状態だ。

 

だがそれでも。

王国でも5本の指に数えられる彼だとしても。

 

きっとストレイドには勝てない。

私はそう直感していた。

 

ずっと剣を共に振るってきた戦友ではなく。

昨日知り合ったばかりの彼が勝つ。

 

そう確信した。

 

それはリディスと共に長く戦ってきたからこそ。

昨日ストレイドの戦闘を目の前で見たからこそだった。

 

「ずいぶんギャラリーが多いな。で、武器はどうする?決闘なら同じ武器でやりあうのが常だろ?」

 

ストレイドがそう言い放つと、二人の前に刺剣が二刀投げ込まれる。

あれはビカーナ正規軍支給のレイピアだ。

 

特別な特徴はなく。

強いて言うなら特徴がないのが特徴とでも言うべき、使いやすい刺剣だ。

 

一本一本が王国軍専属の鍛冶によって鍛えられ、前線の兵士からの評判もいい。

 

リディスはそのレイピアを拾い上げ、切っ先をストレイドに向けたまま言葉を発した。

 

「武器を取れ。ルールは相手を行動不能にさせれば勝ち。魔法は禁止だ。ホントは殺してりたいところだが、姫様が選んだ傭兵だ。特別に見逃してやる」

 

彼の言葉を聞き、ストレイドも無言でレイピアを拾い上げる。

そして切っ先をリディスへと向けた。

 

「開始!!」

 

決闘責任者がそう叫んだ瞬間。

 

 

 

―― 一瞬で場の空気が凍りついた。

 

 

 

 

まだ二人共動いてすらいないのに、だ。

 

それはなぜか。

ストレイド。

彼から滲み出てくる強烈な殺気。

その異常とまで言える殺気。

 

それに場の人間皆が圧倒されていたのだ。

 

洗練されすぎた殺気が、レイピアの切っ先と共にリディスへと向けられていた。

 

しばし睨み合いが続いたが、その静寂はリディスによって崩される。

 

瞬きをする間も与えぬ、高速の突きをストレイドの脳天めがけ繰り出したのだ。

 

その光景を見ていたギャラリーは

 

『ああ、決まったな』

 

と、そう思ったことであろう。

相手が彼じゃなければ、私もそう思っていたはずだ。

 

普通の人間には、あの突きを躱す事はまず不可能だ。

いわば超至近距離で射られる矢を回避するようなものなのだから。

 

だが彼は違った。

 

その一撃をバックステップで距離を取り、いともたやすく躱してみせる。

 

多くの観衆は、一瞬何が起きたか理解できなかったことだろう。

普通なら確実に食らっているはずの攻撃。

 

それを焦るでもなく、またギリギリでもなく。

まるで当然とでも言うように、ストレイドは躱してみせた。

 

リディスの顔には一瞬驚愕の色が浮かんでいた。

彼本人も確実に当てられると、そう確信があったのだろう。

 

「次は、私の番」

 

ストレイドがそう、小さく呟く。

その時、彼は兜の下でニヤリと笑ったような、そんな気がした。

 

バックステップで後退した瞬間、勢い良くリディスへ向かい駆け出し、切っ先を突きつける。

 

その突きを寸前の所で回避したリディスは、体勢を整えるため距離を取ろうとバックステップで後ろへ下がる。

 

だが、ストレイドはそれを許さなかった。

突きを繰り出した体勢からそのままローリングをし、リディスとの距離を一気に縮める。

 

そしてローリングで得た加速を殺さぬまま、突きを繰り出した。

 

リディスもそれに対し回避行動をとるが、体勢を整えきれていない状態では躱し切ることは無理だった。

 

レイピアの切っ先がリディスの脇腹へと吸い込まれる。

金属同士がぶつかり合う爆音と共に、真紅が空中を舞った。

 

余りにも一瞬の出来事で、周りにいたものは何が起きたか理解しきれなかった。

 

数瞬の間を置いてから、何が起きたかを理解する。

 

リディスの身体を、ストレイドのレイピアが貫通していた。

それも、近衛隊の上等な鎧を突き破って、だ。

 

しかも驚くことに、貫通しているレイピアの切っ先は、15cm程が折れてなくなっていた。

ということは、刃物の鋭さに頼らず己の腕力のみで鎧を貫通させたということになる。

 

ストレイドがレイピアを引き抜くと、リディスの身体はそのまま力なく倒れた。

 

ストレイドは立ち上がると、レイピアを持ったまま彼に近づいていく。

それと時を同じくして、圧倒されていた群集たちが我に返った。

 

「リ、リディス様…?」

 

「う、うそ…リディス様が……」

 

「お、おい!!傭兵!!もういいだろ!!決着はついたはずだ!!」

 

恐怖を孕んだ声が彼を呼び止める。

それを無視して、彼は腰に下げてある何かを手にとった。

 

そう。

例の魔法の触媒だ。

 

あの闇魔法が脳内で蘇る。

一瞬止めに入ろうとしたが、彼が何をしようとしているのか理解し、その必要はないと判断した。

 

彼の周りが白い、温かい光で包まれる。

 

私の傷を癒やすときに使ったものと同じ回復魔法だ。

やはり殆ど詠唱のタイムラグ無しに発動させている。

 

光が完全に消える頃にはリディスは意識を取り戻していた。

 

「クソッ…いったい何が?」

 

「私の勝ちでいいな?」

 

「…………ああ、オレの負けだ。お前の事を、オレは認めよう」

 

リディスがそう言った瞬間。

ギャラリーからけたたましいといえるレベルの歓声が発せられる。

 

湧く観衆を完全にスルーし、

ストレイドはリディスに手を貸し、立ち上がらせた。

 

「一体何をしたんだ?」

 

「傷を塞いだだけさ」

 

彼はそれだけ呟くと、私の方へ歩いてくる。

全く、ハラハラさせてくれた。

 

「さあ、アリョーナ。部屋への案内がまだだったろう?案内してくれ」

 

「ふふふ、貴公面白いな。ああ、わかった。しかし怪我はさせないのではなかったのか?」

 

「そこは、まあ、あれだよ。塞がってるし平気だろ」

 

「ふふ」

 

小言の二、三言くらい言ってやろうかと思っていたのだが。

彼の切り替えの早さを見て、その思いもどっかへいってしまった。

 

さてと…これから大変そうだな。

 

そう思いつつも、どこかでこれからを楽しみにしている自分がいた。

 

 

 

 

アリョーナに案内された部屋で暫く身体を休めていると、小気味の良いノック音が聞こえて

きた。

 

先ほどの決闘騒ぎから3時間ほど。

近衛隊士達は、決闘を目の当たりにしたことでかはどうか解らないが、しぶしぶといった感

じで私のことを認めたようだった。

 

3時間何をしていたのかと問われれば。

別段これといって何もしていなかった。

 

あえて言うとするならば、窓からこちらを覗きこんでくる近衛隊や中央即応軍の女子共をい

なしていたことぐらいだろうか。

 

ノックされたドアへと向かう。

時刻は夕暮れ時。

大方アリョーナが夕飯の知らせに来たのでは無いだろうか、と当たりをつけながらドアノブ

 

を回した。

 

「はぁーい!ストレイド調子はどう?」

 

「…………」

 

だがそこに居たのはアリョーナではなかった。

もっと言えば近衛隊の衣装すら身につけていない。

 

そこにはこの国の王女。

リリィ・ビカーナ。

その人の姿があった。

 

ドアの向こう側に見える幾人かの隊士達は、唖然とした様子でその場で固まっていた。

 

「ちょ!ちょ!無言でドア閉め内でよ~ッ!」

 

ドアの向こう側から何やら叫び声が聞こえるので、やれやれとドアを再び開ける。

 

「もうー!!なんでしめたのよ!!」

 

「いや、反射てきに」

 

「反射って何!!?」

 

「まあまあ、そこはおいておくとして、どうしたんだ?姫自らやってくるなんて」

 

「ちょっと話したいことがあってねー」

 

それだけいうと、お転婆姫様はズイズイと部屋に入ってくる。

それに呆れにも似た驚きを抱きつつ、彼女の身辺を世話しているアリョーナには頭が上がら

ないなと、そう思った。

 

「姫様-ッ!!???」

 

そんな事を思考していると、その苦労人の叫び声が聞こえてくる。

肩で息をしながら走ってきた赤毛の娘には、同情せざる得ない。

 

「ん?どったのアリョーナ」

 

「どったのではありません!!勝手に自室からいなくなられては困ります!!」

 

「勝手じゃないわよ。ちゃんと書き置きしたわ」

 

「『暫く留守にします。探さないでください』何て書き置き書き置きの意味がありません!

 

!っていうかむしろそのせいで城内大騒ぎですよ!!」

 

「まあまあ。どうどう、落ち着いて。伝えるべきことを伝えたらすぐに戻るわ」

 

リリィはそう言うと、眼をつむる。

すると不思議なことに、先程までの破天荒っぷりはどこへやら。

厳格な。それでいて高貴な。まさしく一国の王女に相応しい風格を醸し出していた。

 

「傭兵ストレイド。及び近衛大隊第1近衛小隊所属、アリョーナ中尉に命じます」

 

思わずつばを飲むような、凛とした声色に少したじろぐ。

そして、それと同時に興味が湧いた。

 

一体この少女は何者なのだと。

 

何を言っているのだ?彼女はこの国の王女ではないか。

 

きっと大多数の人はそう思うかもしれない。

たしかにそのとおりだ。

 

だが、私が持った興味とは別のニュアンスの回答だ。

 

見てくれはせいぜい十代後半から二十代前半の少女。

いや、事実その通りだろう。

 

だがしかし、それでは

この彼女の纏っている風格、及び荘厳さは何なのだろう。

 

不死の英雄である自分すらも、驚愕させ、勝るとも劣らないその圧倒的な存在感は何なのだ

ろう。

 

「私、リリィ・ビカーナは明後日。城塞都市アリスライキへ視察へ向かいます。両名はその

 

際の私の身辺警護を命じます」

 

数瞬の間の後、アリョーナは頭を下げる。

 

「謹んで拝命致します」

 

「勿論、私もだ」

 

私達がそう返すと、リリィの表情は一気にヘニャっとしたものに崩れる。

 

先ほどまでの荘厳とした面構えはどこへやら。

いま眼の前にいるのは、歳相応の笑顔と雰囲気を携えた、可憐な少女だった。

 

「良し、じゃあよろしく頼んだわよ」

 

「勿論です。姫様、差し障りがなければ、急に視察が決定した理由を聞いても?」

 

「父上と母上と共に話しあった結果よ。残念ながら詳細なことは教えてあげられないけども

 

「いえ、こちらこそ余計なことを聞いてしまい、申し訳ありません」

 

「もう、いくら仕事中だからってそんなに畏まらなくてもいいのに。ストレイド?というわ

 

けだからよろしくね。当日の日程は後程ライル少将経由で伝えるわ」

 

「了解した」

 

「じゃあ、私はこれで」

 

"あーあ、アリョーナが来なければ暫くお話していこうと思ったんだけどなぁ"

 

去り際に彼女が小声で言っていたことに本当の目的が垣間見れた気がした。

 

 

 




深夜投稿です(通常運転です)

最初にも貼りましたがストレイドです
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im4592109

雑な絵で許してやぁ…

あ、まだまだ続きがあるんですが先に前半だけ投稿しておきます。

※後半アップしました。
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