世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第1話【出会い】

「人間は守る価値が無いと思います!」

 

 そう言い放ったのは一匹の妖精だった。

 しかしその一言は世界樹の怒りを買ってしまう。

 

『聞き捨てならない。人間は尊い存在だ。君は罰として人間になってもらおう』

 

「え!?」

 

 人間が大嫌いだったこの妖精は次の瞬間、人間の姿に変えられてしまった。

 

「ひぃいい! わ、私の身体が! 穢らわしい人間に!? いやぁああああ!」

 

『地球へ送ってやろう。人間を知り、頭を冷やして来なさい』

 

「ま、待ってください世界樹さま! 私は間違ってません!」

 

 しかし聞いてもらえず、その妖精は地球へと転送されてしまった。

 

 ……………

 

 …………

 

 ……

 

「はっ!?」

 

 フェアリーの意識が覚醒した。

 視界の先には見慣れない青空が広がっている。

 どうやら自分は仰向けで地面に倒れているらしい。

 

 宇宙特有の浮遊感はまったくない。

 体重を感じる。

 地球の重力というやつだろう。

 

 本当に地球送りにされてしまったらしい。

 青空が眼下にないのがその最たる証拠だった。

 

 ここはどこだろう?

 目を動かすと、巨大な建築物が見える。

 

「ちゃんと『使い魔』を召喚出来たでしょう!」

「動いてないじゃないか……」

 

 何やら近くで声が聞こえる。

 そこに目をやるとフェアリーはギョッとした。

 大嫌いな人間が二人もいる。

 

【とある外敵】から数億年も地球を守ってきたフェアリー達から、その地球を奪う存在だ。

 

 奴らは地球を汚染し、最後には地球を滅ぼし『死の星』に変えてしまうほどの害虫でもある。

 

 忌々しい。

 

 世界樹さまはなぜこんな奴らの存在を認めるのか理解に苦しむ。

 

 世界樹さまの目が無ければ手を下したいところだ。

 

 しかしそれは絶対にやってはいけない鉄の掟。

 

【この地球で生まれた生命体は全て守るべき対象】

 

 それが世界樹さまが決めた絶対の掟だ。

 

 つまり自分たちが守るこの地球から生まれた人間は、たとえ害を成す存在であっても守るべき対象なのだ。

 

 世界樹さまが決めたことは守らねばならない。

 

 こんな奴ら、守る価値なんてないのに……

 

 フェアリーは重い身体に力を込めて上半身を起こした。

 すると人間の一人がそれに気づく。

 

「あ! 動いた! 動いたわよほら! 騎士さん見て見て!」

 

 騒がしいその人間はこちらに寄って来た。

 黒い髪のツインテールで黒い瞳をしている。

 身長はフェアリーよりも小柄で、身体の形状を見る限り人間の女性であることが分かった。

 

 彼女の服装は胸元に赤いリボンが装飾された白い服。肩が露出している。

 腰から下は切れ込みの入った裾の長い黒スカート。

 腕にはやや大きい鉄製の籠手を装備している。

 

 そんな格好の彼女が、立ち上がろうとするフェアリーの身体を触ろうとしてきた。

 ほぼ反射的にフェアリーはその手を払う。

 

「触らないでください。穢らわしい」

 

「え?」

 

 手を払われた女性は目を丸くした。

 すると鉄の甲冑に身を包んだもう一人の人間が「使い魔が喋った!?」と大袈裟に声を張り上げる。

 

 さっきから言っている『使い魔』とは何のことだろう?

 よく分からないが、人間と関わるのはゴメンだ。

 コイツらと居ると息が詰まる。

 

 立ち上がったフェアリーは踵を返してその場を去ろうとしたが、先程の女性が回り込んで来た。

 

「ちょっと待ってよ! 勝手にどこ行くのよ?」

 

「どいてください。人間と関わるつもりはありません」

 

「ダメ! あんたを召喚したのはアタシよ!」

 

 召喚?

 そういえば一部の人間はそういった魔法が使えるんだった。思い出した。

 

 だが、この女性からはまったくと言っていいほど魔力を感じない。

 むしろ後ろの男性の方こそ魔力を持っている。

 彼女に召喚されたというのはかなり無理がある話だ。

 

 おそらく彼女が召喚をしていた最中、偶然に自分がここに転送されただけだろう。

 

「あなたに召喚されたのではありません。私は世界樹さまに偶然ここへ転送されたに過ぎないんです。そもそもあなたには魔力がーー」

 

「騎士さん! ちゃんと召喚出来たんだからイルセラ様にアタシを紹介しておいてよ!」

 

「わかった伝えておくよ。名前は?」

 

「リズ・リンドよ。ディ……サブラで猟師をやってるわ。剣と斧と槍なら全部使いこなせるってのも伝えておいてね!」

 

「んーいや、そんなのよりそこの『喋る使い魔』の事を言えば一発でお呼びが掛かると思うよ?『使い魔』って普通は喋らないから興味を持ってくれるはずだ」

 

「じゃあそれも言っておいて!」 

 

 フェアリーの話を聞かず、リズ・リンドという女性は男性とペラペラ喋っていた。

 カチンときて眉間にシワを寄せたフェアリーは今度こそ去ろうと歩き出す。

 

「あ! ちょっと待ってってば! んもう!『使い魔』ってこんな勝手に動くもんなの?」

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