世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第25話【怒り怒られ】

「サラマンダー様! なぜリズさんに【精霊の力】を与えたんですか! 世界樹さまの掟を忘れたのですか!」

 

 朝から早々に怒鳴るフェアリーにサラマンダーはやれやれと見えない溜め息を吐いた。

【炎の神殿】には何人かの礼拝者たちがすでにおり、みんな怒っているフェアリーに何事かと視線を向けている。

 

『忘れてねぇよ。しょうがねぇだろ? ああでもしなきゃお前死んでたんだぜ?』

 

「【憑依】を使えば勝てましたよ!」

 

『その代わりお前が死ぬじゃねぇか』

 

「妖精がドラゴンと戦って死ぬなんて当たり前じゃないですか!」

 

『んなこたぁわかってるよ』

 

「だったらなんでリズさんにあんな過剰な力を! 人間は力を得たら何をしでかすか分からない生き物ですよ!」

 

『あの子なら大丈夫さ。お前のために泣けるような人間だぜ?』

 

 そのサラマンダーの言葉に、フェアリーはピクリと止まった。

 

「……私のために、泣ける?」

 

『おお。なんでもお前に報いてあげたいとか、ありがとうってもっと言ってあげたいとか、美味しい物ももっと食べさせてあげたいとか言ってたぜ?』

 

「リズさんが、そんなことを……?」

 

『ああ。あんなこと面と向かって泣きながら言われたらなぁ……信じてやってもいいかなって思っちまったんだよ』

 

「で……ですが……」

 

『そもそもの話。地球にドラゴンが侵入してる時点でお前らフェアリーの失態だろうが。それの尻拭いをしてやったんだ。お前らがつべこべ言える立場かよ? んん?』

 

「そ、それは……」

 

 言い返せなくなったフェアリーはダラダラと冷や汗を流した。

 

「サラマンダー様あああああああああ!」

 

 遠くから凄まじい速度で走って来たのはナイトルージュ姿のリズだった。

 やれやれ、朝から千客万来だなとサラマンダーは思った。

 

【精霊の力】の件で感謝でも言いに来たのかもしれない。

 律儀な子だなと思うと、しかしリズの形相は完全に怒だった。

 

 なんだなんだ!? めっちゃ怒ってるぞ?

 フェアリーと言い、リズと言い、朝っぱらから怒りすぎだろコイツら。

 

「サラマンダー様! なんですかこのナイトルージュの鎧のデザインは!」

 

『あ? 鎧のデザイン?』

 

「これですよ! 今着てるコレ! なんでこんな胸元ぱっくり開いてるんですか!? 下半身もなんでこんなパンツ丸出しみたいな感じなんですか!? 変えてくださいよ!」

 

『パンツ丸出し? なんだパンツって?』

 

 精霊たるサラマンダーが人間の下着に詳しいはずもない。

 

「え!? ええっと、下着の事です! 人間は服の下にパンツとかを履いてるんですよ!」

 

『知らねーよそんなもん』

 

「ああんもぅ! なんでもいいからデザイン変えてください! こんな格好で戦いたくありません!」

 

『もう変えられねぇよ。だいたいデザインしたのは俺じゃねぇし』

 

「え?」

 

『譲渡した【精霊の力】がお前に合わせて鎧を形成したんだ。動きやすいだろ?』

 

「そりゃ動きやすいですけど……」

 

『何が不満なんだよ。カッコいいじゃねぇかその鎧』

 

「どこがですか! こんなもん着てるだけで恥ずかしいですよ!」

 

『な、なにィ!? 精霊の鎧だぞ! むしろ誇らしいだろ!』

 

「誇らしくないですよ! ねぇフェアリー! あんたからも何か言ってよ!」

 

「そんなことはどうでもいいです」

 

「ど……!?」

 

「いいですかリズさん。あなたは【精霊の力】を手に入れてしまいました。あなたにはその力を制御する責任があります」

 

「え? あ、うん……」

 

「闇雲に振るって良い力ではありません。本当に必要な時にだけその力を使うように」

 

「わかってるわよ」

 

「あなたがその力に溺れて暴走しないか、私が見張ります。覚悟するように」

 

「どうせ一緒にいるじゃない。それよりこの鎧のデザインはフェアリー的にはどう?」

 

 力の責任うんぬんより鎧のデザインの話をするリズに、フェアリーは面倒くさそうに顔を顰めた。

 

「……そんなことどうでもいいでしょう?」

 

「どうでも良くない! 答えてくれないなら美味しい物食べさせてあげないからね!」

 

「……っ。その鎧ですか……良いと思いますけどね」

 

「あんたまでそんなこと言う……どこが良いのよこれ……」

 

「太もも?」

 

「またどこ見てんのよ! おっさんか!」

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