世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第26話【なんでよ!】後書きに4コマ漫画あり

 フェアリーとドラゴンが主に戦ったエタンセルの西側。

 戦いが終わった後のその場所は、まるで地獄のような光景が広がっていた。

 

 建物は崩れ、壁はひび割れ、路面は陥没し、ガラスの破片が散乱している。

 

 街灯は倒れ、そこから広まった火災の跡が残っていおり、数件の建物からはまだ小さな煙が立ち上っている。

 

 かつては賑やかだった商店街は荒れ果てている。

 看板は壊れ、ショーウィンドウは粉々に割れており、店舗の中は物が散乱し、一部は焼け落ちている。

 

 戦いの爪痕は至る所に残されている。

 公園は荒れ果て、花壇は踏みにじられてしまっている。

 この戦いがもたらした破壊の痕跡は、あまりにも大きい。

 

 

「街はこんなんだけどさ、死人は出なかったんだって」

 

「そうですか」

 

 リズの言葉にフェアリーは淡々と返した。

 死人が出なかったのは良かったが、街がこの有り様では素直に喜べない。

 

 被害をなるべく抑えようとしてはいたが、やはり攻めに転じる武器がなかったせいもあり、フェアリーは防戦一方だった。

 

 それで戦いが長引いて、これだけの被害を招いてしまった。

 もっと早く【憑依】を使ってしまえば良かったのに。

 これは無駄に人間の武器で戦い続けた結果だ。

 

「フェアリーのおかげね。ありがとう」

 

「べつに礼には及びませんよ。それが私の仕事なので」

 

 またも淡々と返すフェアリーにリズは苦笑を返事にした。

 これだけの被害を出してはやはりどう言われても素直に喜べないのだ。

 

「フェアリーってドラゴンと戦う時だけ男みたいな喋り方になるのね?」

 

「え?」

 

 急にリズが話題を変えてきて驚き、そしてその内容にも驚いた。

 

「いつも敬語なのに、急に男みたいな喋り方になってたわよ?」

 

 私が?

 男みたいな喋り方に?

 なんのことだろう?

 まったく覚えがない。

 

「ちょっと何言ってるか分かりません」

 

「なんで分かんないのよ……」

 

 リズが肩を落とし溜め息を吐いてくる。

 そんな風に呆れられても分からないものは分からないのだが。

 

「おお! あんたがフェアリー様だな!」

 

「え?」

 

 今度は誰だ? とフェアリーは声のする方へ振り向いた。

 そこにはエタンセルの住民たちが並んでフェアリーを見ていた。

 

「おお! この人だよ! あの化物と戦ってた人は!」

「おおおお! あのめっちゃくちゃ強い姉ちゃんか! この人が!」

「あの時はありがとうございます! フェアリー様!」

 

「え、あ、いえ……」

 

 突然の感謝にフェアリーは戸惑った声を返事にした。

 口ぶりからしてここエタンセル西側の住民らしい。

 みんな瓦礫の撤去や消火や救助活動などをやっている。

 

「おーい! 英雄フェアリー様だぞおー!」

「あー! あの人だよ! 化物とすげぇ戦いしてたの!」

「フェアリー様がいなかったら私達みんな化物に殺されてたわ」

「フェアリー様ありがとう!」

 

 みんなフェアリーに気づいて作業を止めて集まってきた。

 大嫌いな人間に囲まれたフェアリーは、しかし感謝されまくっているせいで反応に困っていた。

 

「ぁ、いえ……それが仕事ですから……」

 

 誰とも目を合わせようとしないフェアリーだが、足元の子供に気づいた。

 

「お姉ちゃん!」

 

 数人の子供たちがフェアリーを呼び、そして一人が先に言った。

 

「守ってくれてありがとう!」

「「「ありがとう!」」」

 

 子供たちの純粋な言葉は、どんなものよりもフェアリーの心に深く響いた。

 ずっと不機嫌な顔ばかりしていたフェアリーが、ここだけは優しく微笑んで返した。

 

「いえ、良いんですよ。それが私の仕事ですから」

 

 子供たちの頭を優しく撫でて、フェアリーは満更でもない気持ちに心を満たされた。

 

 傍らでそれを見ていたリズもフェアリーの笑顔に気づいて、つい釣られて笑った。

 

 

 エタンセル西側の作業を手伝い、今日の仕事は終わった。

 リズとフェアリーが宿へ戻ろうとする時、住民たちや子供たちに見送られる。

 

「フェアリー様! リズ様! ありがとう!」

「フェアリーのお姉ちゃん! ありがとう!」

 

 リズとフェアリーは手を振って別れた。

 夕日に照らされながら帰路につくと、フェアリーが苦笑する。

 

「私は『お姉ちゃん』ではないのですがね……」

 

「あ〜、そう言えばあんたって性別ないんだっけ?」

 

「ええ。ですから『お姉ちゃん』と呼ばれると、ちょっと不思議な感覚になると言いますか……」

 

「良いじゃない別に。今のあんたはどう見ても人間の女性だし『お姉ちゃん』で間違ってないわよ」

 

「そうですか。ま、子供たちにそう呼ばれるのは悪い気はしませんが……」

 

「じゃあアタシもあんたのこと『お姉ちゃん』って呼ぼうか? 年上だし」

 

「却下です」

 

「なんでよ!」

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