ドラゴンの大きさは約4メートル。
港町レザーフで戦った中型ドラゴンと同じだ。
緑の鱗に覆われており、空中戦に特化した形態なのか翼が大きい。
信じられない事だが、確かにリズの目の前には三体目のドラゴンがいた。
フェアリーではないが、本当に宇宙のフェアリーたちは何をやっているんだ?
こんなにも立て続けにドラゴンが現れるなんて、まともじゃない気がする。
「フェアリー! フェアリー! 返事をして!」
叫ぶリズの前でドラゴンは、その巨体を揺るがしながら再び口を開き炎の塊を生成している。
また火球を撃ってくる気だ。
ここではフェアリーを巻き込んでしまう、とリズは大橋の中央まで一気に走った。
「【ブレードイグニション】!」
駆けながら大剣を点火し、空中にいるドラゴン目掛けて炎剣を振るう!
「【レッドウィング】!」
踵を返す要領で身体を一回転させ、その遠心力で炎の斬撃を飛ばす。
真っ直ぐドラゴンに飛来するそれはあっさり躱され、反撃に火球を撃ち込まれる。
「わっ!」
リズは咄嗟に後ろへ飛んで直撃を避けたが、ドラゴンはその短い間にリズの背後に回り込んでいた!
「なっ!?」
速い!
っと気づいた時には火球がリズに撃ち込まれる。
振り向いて即座に大剣で防御するが、火球の大爆発に押されて盛大に吹っ飛んだ。
「きゃあああああああ!」
大橋の上を何度か転がり、目が回りそうになりながらも何とか受け身を取った。
が、ドラゴンはまたもリズの背後から火球を撃ち込んでくる。
「こいつ! 背後ばっかり!」
前転で躱した火球が地面に炸裂し、熱風がリズの顔をかすめた。
「くっ!」
リズは鋭い視線で空を見上げる。
ドラゴンは空を旋回し、狡猾にリズの背後を狙うことを繰り返している。
リズが向きを変えるたびに、ドラゴンは素早く位置を変え、常にこちらの死角に回り込んでいた。
「この卑怯者! 降りてきなさいよ!」
その答えはすぐに火球として返ってきた。
「わっ!」
火球が地面に激突して爆発し、リズの背後で炎が舞い上がった。
熱気が肌に押し寄せてくる。
ドラゴンはその間も空中を移動し、愚直に背後を狙ってくる。
「また背後から……」
このドラゴンは小賢しいが、頭は悪いと見た!
背後を取られる際に生じるわずかな風。
その風がリズの肌に触れた時、反撃のチャンスだ!
「【レッドウィング】!」
肌で感じた風に合わせてリズは急旋回し、大剣を薙ぎ払った!
炎の斬撃は、ちょうど大橋の下から上昇してきたドラゴンに直撃した!
タイミングはバッチリだった!
常に背後を取ってくるから、それを逆手に取ってやったが大成功だった!
腹を斬られて落ちてくるドラゴンは、苦しそうにしながらも羽を動かし高度を取り戻そうとした。
「逃がすか!【獣剣技・鳥狩り】!」
まだリズでも届く高度だったため、跳躍して翼を根本から両断した。
「これでもう飛べないでしょ!」
地面に着地したリズが叫ぶと、落ちてきたドラゴンは怒りの咆哮を発して飛び掛かってきた!
だがリズはあくまで冷静に大剣を構える。
「【獣剣技・火熊狩り】!」
燃え盛る大剣を、高めた【気】でさらに斬れ味を上昇させ、一刀両断するリズの大技!
リズは全身の力を込めて燃え盛る大剣を振り上げた。
その瞬間、大剣が閃光のように閃く。
燃え盛る刃はドラゴンの鱗に触れると、まるで紙のように簡単にその巨大な体を二つに分断した。
ドラゴンの絶叫が響き渡る中、大剣の炎は一層激しさを増し、まるで怒りを具現化したかのように燃え上がった。
ドラゴンの体は重力に従い、ゆっくりと地面に向かって崩れ落ちた。空中で裂けた傷口からは燃え盛る炎と黒煙が立ち上り、その巨大な体は地面に衝突する前に既に灰と化していた。
「はぁ……はぁ……なんとか……なった」
リズは息をつきながら、大剣を地面に突き刺して立ち尽くした。
フェアリー無しで中型ドラゴンに勝てるのかと不安だったが、なんとか勝てた。
「あ……フェアリーは……」
リズは倒れたフェアリーの元へと急いで戻った。
フェアリーはまだ気を失っており、火球にやられた身体は黒ずんでいる。
しかし加護のおかげか外傷は少ない。
息をしていることを確認したリズが安堵すると、ほぼ同時にフェアリーが目を覚まして凄い勢いで起き上がる。
「あ……! リ……、ドラゴンは!?」
「フェアリー! 良かった……気がついたのね」
「リズ! ドラゴンは!?」
聞かれたリズは大橋の中央を指差した。
そこには灰と化したドラゴンがおり、その灰が風で消えていくのをフェアリーはしっかりと見た。
フェアリーは驚いた様にリズの顔を見た。
リズはニヤリと笑ってピースする。
リズの勝利宣言にフェアリーの顔がパアッと明るくなった。
「やるじゃないですかリズさん! 一人で中型ドラゴンに勝つなんて!」
「えへへ……アタシだってやれば出来るのよ」
「本当によくやってくれましたリズさん。世界樹の妖精として感謝します。ありがとう」
「そ、そんなかしこまって言われると照れるって……」
リズとフェアリーは初めて一緒に笑い合った。