世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第34話【ウィングドラゴン戦】

 ドラゴンの大きさは約4メートル。

 港町レザーフで戦った中型ドラゴンと同じだ。

 緑の鱗に覆われており、空中戦に特化した形態なのか翼が大きい。

 

 信じられない事だが、確かにリズの目の前には三体目のドラゴンがいた。

 フェアリーではないが、本当に宇宙のフェアリーたちは何をやっているんだ?

 こんなにも立て続けにドラゴンが現れるなんて、まともじゃない気がする。

 

「フェアリー! フェアリー! 返事をして!」

 

 叫ぶリズの前でドラゴンは、その巨体を揺るがしながら再び口を開き炎の塊を生成している。

 

 また火球を撃ってくる気だ。

 ここではフェアリーを巻き込んでしまう、とリズは大橋の中央まで一気に走った。

 

「【ブレードイグニション】!」

 

 駆けながら大剣を点火し、空中にいるドラゴン目掛けて炎剣を振るう!

 

「【レッドウィング】!」

 

 踵を返す要領で身体を一回転させ、その遠心力で炎の斬撃を飛ばす。

 真っ直ぐドラゴンに飛来するそれはあっさり躱され、反撃に火球を撃ち込まれる。

 

「わっ!」

 

 リズは咄嗟に後ろへ飛んで直撃を避けたが、ドラゴンはその短い間にリズの背後に回り込んでいた!

 

「なっ!?」

 

 速い!

 っと気づいた時には火球がリズに撃ち込まれる。

 振り向いて即座に大剣で防御するが、火球の大爆発に押されて盛大に吹っ飛んだ。

 

「きゃあああああああ!」

 

 大橋の上を何度か転がり、目が回りそうになりながらも何とか受け身を取った。

 が、ドラゴンはまたもリズの背後から火球を撃ち込んでくる。

 

「こいつ! 背後ばっかり!」

 

 前転で躱した火球が地面に炸裂し、熱風がリズの顔をかすめた。

 

「くっ!」

 

 リズは鋭い視線で空を見上げる。

 ドラゴンは空を旋回し、狡猾にリズの背後を狙うことを繰り返している。

 リズが向きを変えるたびに、ドラゴンは素早く位置を変え、常にこちらの死角に回り込んでいた。

 

「この卑怯者! 降りてきなさいよ!」

 

 その答えはすぐに火球として返ってきた。

 

「わっ!」

 

 火球が地面に激突して爆発し、リズの背後で炎が舞い上がった。

 熱気が肌に押し寄せてくる。

 ドラゴンはその間も空中を移動し、愚直に背後を狙ってくる。

 

「また背後から……」

 

 このドラゴンは小賢しいが、頭は悪いと見た!

 背後を取られる際に生じるわずかな風。

 その風がリズの肌に触れた時、反撃のチャンスだ!

 

「【レッドウィング】!」

 

 肌で感じた風に合わせてリズは急旋回し、大剣を薙ぎ払った!

 炎の斬撃は、ちょうど大橋の下から上昇してきたドラゴンに直撃した!

 

 タイミングはバッチリだった!

 常に背後を取ってくるから、それを逆手に取ってやったが大成功だった!

 

 腹を斬られて落ちてくるドラゴンは、苦しそうにしながらも羽を動かし高度を取り戻そうとした。

 

「逃がすか!【獣剣技・鳥狩り】!」

 

 まだリズでも届く高度だったため、跳躍して翼を根本から両断した。

 

「これでもう飛べないでしょ!」

 

 地面に着地したリズが叫ぶと、落ちてきたドラゴンは怒りの咆哮を発して飛び掛かってきた!

 だがリズはあくまで冷静に大剣を構える。

 

「【獣剣技・火熊狩り】!」

 

 燃え盛る大剣を、高めた【気】でさらに斬れ味を上昇させ、一刀両断するリズの大技!

 

 リズは全身の力を込めて燃え盛る大剣を振り上げた。

 その瞬間、大剣が閃光のように閃く。

 燃え盛る刃はドラゴンの鱗に触れると、まるで紙のように簡単にその巨大な体を二つに分断した。

 

 ドラゴンの絶叫が響き渡る中、大剣の炎は一層激しさを増し、まるで怒りを具現化したかのように燃え上がった。

 ドラゴンの体は重力に従い、ゆっくりと地面に向かって崩れ落ちた。空中で裂けた傷口からは燃え盛る炎と黒煙が立ち上り、その巨大な体は地面に衝突する前に既に灰と化していた。

 

「はぁ……はぁ……なんとか……なった」

 

 リズは息をつきながら、大剣を地面に突き刺して立ち尽くした。

 フェアリー無しで中型ドラゴンに勝てるのかと不安だったが、なんとか勝てた。

 

「あ……フェアリーは……」

 

 リズは倒れたフェアリーの元へと急いで戻った。

 フェアリーはまだ気を失っており、火球にやられた身体は黒ずんでいる。

 しかし加護のおかげか外傷は少ない。

 

 息をしていることを確認したリズが安堵すると、ほぼ同時にフェアリーが目を覚まして凄い勢いで起き上がる。

 

「あ……! リ……、ドラゴンは!?」

 

「フェアリー! 良かった……気がついたのね」

 

「リズ! ドラゴンは!?」

 

 聞かれたリズは大橋の中央を指差した。

 そこには灰と化したドラゴンがおり、その灰が風で消えていくのをフェアリーはしっかりと見た。

 

 フェアリーは驚いた様にリズの顔を見た。

 リズはニヤリと笑ってピースする。

 リズの勝利宣言にフェアリーの顔がパアッと明るくなった。

 

「やるじゃないですかリズさん! 一人で中型ドラゴンに勝つなんて!」

 

「えへへ……アタシだってやれば出来るのよ」

 

「本当によくやってくれましたリズさん。世界樹の妖精として感謝します。ありがとう」

 

「そ、そんなかしこまって言われると照れるって……」

 

 リズとフェアリーは初めて一緒に笑い合った。

 

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