世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第44話【気づく】

 ウンディーネと別れた後、ロザリーヌの待つ宿屋へ向かった。

 時はすでに夜中。

 大通りを歩くフェアリーの後ろで、リズがこちらを窺う気配を見せてくる。

 

 何かを言いあぐねているみたいだが、フェアリーには検討がついていた。

 

「……あの、フェアリー」

 

「もういいですよ」

 

「え?」

 

「今回の件はもう何も言いません。今後は気を付けてください」

 

「ぅ、うん……」

 

 予測していた通り。

 リズは先の件を謝ろうとしていた。

 犠牲者が出ていたらリズを許せなかったが、幸いゼロだったから今回はもう許すことにした。

 

 ウンディーネ様もああ言っていたし。

 それに、今はもうそれどころではないのだ。

 

「それより問題は4体目のドラゴンが現れたことです。世界樹さまもフェアリーたちも何をしているのか……さすがに見逃し過ぎです」

 

 空を見上げながらフェアリーが言うと、リズは恐る恐る口を開く。

 

「やっぱりドラゴンにやられちゃったとか?」

 

「それだと4体では済みませんよ。何千何万とドラゴンがなだれ込んで来て、地球は終わりです」

 

「じゃあどうして?」

 

「分かりません。……とにかく目的は変わりませんよ。一刻も早く精霊さまのお力を借りて世界樹さまと交信しなければ。おそらく気づいていないんです。でないと説明がつかない」

 

「じゃあ急いで【グランドクリフ】に向かいましょう。ノーム様がいる【土の神殿】はそこにあるわ」

 

「そのグランドクリフにはどうやって行くんです?」

 

「ちょっと賭けになるけどレザーフに戻りましょう。運が良ければグランドクリフから来た船に乗せてもらえるかもしれない。でもその前に……」

 

 

 リズに言われたフェアリーは、宿屋の部屋で待っていたロザリーヌに事の顛末を説明した。

 

 アクアヴェールにドラゴンが襲撃したこと。

 ドラゴンとはなんぞやと。

 フェアリーの正体と、世界樹のこと。

 フェアリーは何億年も宇宙でドラゴンと戦い、この地球を守ってきたこと。

 全て説明した。

 

「ドラゴンならさっき見てきたよ〜。凄かったわぁ。あんなのが実在するなんて驚きよ〜」

 

 普通ならあまりの情報量に混乱しそうなものなのに、ロザリーヌはケロッとしていた。

 逆に虚を突かれてしまったが、フェアリーは取り乱さずに頷いた。

 

「はい。ですので、申し訳ありませんが、売り子の件は無しにして頂けませんか? 私達はどうしても急がねばなりません」

 

「うん。いいよ〜」

 

 まさに即答。

 あまりの返事の呆気なさに「「え?」」とリズとフェアリーが驚くハメになった。

 

「い、いいんですか? そんな簡単に……」

 

 リズが言うと、ベッドに座りながらロザリーヌはニコニコ返す。

 

「いいのよ〜。売り子ならまた探せばいいんだから。それにどのみち口約束だったしね〜」

 

 話が早くて助かった、とフェアリーはすぐにお辞儀する。

 

「ありがとうございますロザリーヌさん」

 

「んーん。お礼を言うのはこっちよフェアリーさん」

 

「え?」

 

「ず〜〜〜〜っとこの世界を守ってくれてたんでしょう? ありがとうね本当に〜」

 

 またロザリーヌには驚かされた。 

 先程の話を疑っていないらしい。

 宇宙でドラゴンと戦っているという話を。

 

「信じてくれるんですか?」

 

「フェアリーさんは嘘とかついたことなさそうだからね〜。凄く正直だから信用できるのよ〜」

 

 確かに嘘をついたことはないが、そんな理由で信じてくれるものなのか。

 

「でもワタシもお手柄じゃな〜い? リズさんとフェアリーさんに声を掛けなかったら、今ごろアクアヴェールはメチャクチャにされてたかもしれないんだし」

 

「それは間違いありません。その件とデートの件も含め、お礼を申し上げます。本当にありがとうございました」

 

「ううん。いいのよ〜」

 

 ずっと張り詰めていた肩の力を一瞬でも抜けたのは、正直ロザリーヌのおかげだった。

 他愛のない時間をリズと過ごしたのも、悪くはない時間だった。

 

 刺身とかカフェとか行きたかったが、世界の命運が掛かってる以上……諦めるしかなかった。

 

 

 そしてフェアリーは即座に動いた。

 ロザリーヌと別れ、アクアヴェールを後にする。

 まだ深夜だが、フェアリーはリズをお姫様抱っこしてダッシュしていた。

 目的地はもちろんレザーフだ。

 相変わらずフェアリーの足の速さ常軌を逸しており、森の景色が凄まじい速度でスライドしていく。

 

「リズ。眠たかったら寝ていても良いですよ」

 

「え? でもドラゴンが出てきたらどうするの?」

 

「叩き起こすから大丈夫です」

 

「ほ、本気で叩かないでよ?」

 

 そう言いながらリズはゆっくりと目を閉じた。

 フェアリーの肩に顔を乗せ、全身をリラックスさせる。

 

「はぁ……でもちょっと残念だった」

 

 目を閉じながらリズが言ってきた。

 

「何がです?」

 

「フェアリーの踊り子姿を見たかったなって」

 

「そんなの見てどうするんですか……」

 

「一緒に踊りたかった」

 

「は? はぁ……」

 

 分からない。

 そんなことしてなんの意味があるのか。

 そもそも踊ったことがないからまともに踊れるかも分からないが。

 

「あと刺身とかカフェとかも一緒に行きたかった」

 

「それは同感です。しかし、我慢するしかありません」

 

「……ねぇ。落ち着いたらまた一緒にアクアヴェールに行こうよ。そしたらやり残した刺身とかカフェとか踊りとかやろう」

 

「どうでしょうか。落ち着いた頃には私はもう宇宙へ帰っている可能性が高いです」

 

「!」

 

 リズが目を開けてフェアリーを見上げた。

 しかしフェアリーは前を見ている。

 

「そ……そっか。帰っちゃってるのか……そうだったね……」

 

「? どうしたんです? 声が震えてますが?」

 

「……。ううん。なんでもない。それじゃアタシ寝るわ。何かあったら起こしてね」

 

「了解です」

 

 それからリズはフェアリーの腕の中で目を閉じた。

 不思議だったのは、リズが寝息を立てなかったことだ。

 どうやら目を閉じているだけでずっと起きていたみたいだが……どうしたのだろう?

 

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