レザーフの前にエタンセルへ戻った。
理由はイルセラから王都行きの船に乗るための通行証が必要だからだ、とリズに言われた。
そして執務室にてイルセラと会うが、何やらブロンクソンと話をしていたようだった。
イルセラがフェアリーとリズに気づくと、待っていたと言わんばかりにイスから立ち上がる。
「二人ともちょうど良いところに来たわね」
「何かあったのですか?」っとフェアリーが聞くとブロンクソンが「見てほしいのがある。特にフェアリー。お前にだ」と言ってきた。
いったい何が? とフェアリーとリズは顔を見合わせながらイルセラとブロンクソンの後について行った。
★
そして連れられたのはあのフェアリーとドラゴンが戦ったエタンセルの西側だった。
まだ数日しか経っていないため、完全には修復されていない。
「これを見て」
イルセラに指されたのは巨大な石の破片だった。
まるで割れた卵のような形状になっており、中が空洞になっている。
「イルセラさん。これはなんです?」
「瓦礫の中から出てきたの。前にドラゴンが現れたあの時に落ちてきたらしいわ」
イルセラの言葉にフェアリーはすぐに察した。
「まさか……この石の中からドラゴンが? いや、でも、ドラゴンはこんなもの使わなくても大気圏を突破して降下できるはず……なのに、なぜこんなものを……」
フェアリーは調べるため、その割れた石の卵を調査した。
他の調査班をどけて外殻を調べる。
分厚い外殻は強固な岩石そのものだ。
黒ずんでいるのはおそらく大気圏の熱によって焼かれた影響だろう。
内部が空洞でありながら大気圏にも耐えうる耐熱性と衝撃性を兼ね備えている。
ドラゴンがわざわざこんな物の中に入って降下してきたのは何故だ?
奴らは自分の堅殻だけで降下できるのに。
今思えば、当時ドラゴンを見つけた時にはすでに裸体だった。
こんな卵のような石を纏ってはいなかった事を見ると、これはかなりの高高度で割れたと見るのが正しいだろう。
ちゃんと落下するまで中にいる代物ではないようだ。
そもそもドラゴンを守るものではなさそうだが……ではこれはいったいなんのための物だ?
「どうフェアリー? 何か分かる?」
後ろからリズに聞かれ、フェアリーは振り向かずに答える。
「空洞の広さがあのドラゴンのサイズと一致します。ヤツがこの中に入っていたのは間違いないでしょう」
「ドラゴンって毎回こんなのの中に入って降下してきてるの?」
「いえ、これは私でも初めて見るケースです。いったいなんのための代物なのか分かりません。ドラゴンはこんなものが無くても大気圏で燃え尽きることはありませんから」
フェアリーは答えが分からず苦悩していると、リズも隣に並んでその卵のような石を見つめた。
何度かその石を撫でると、リズは不意にハッとなってフェアリーに視線を向ける。
「ねぇフェアリー。
「え?」
「ドラゴンが頻繁に現れる原因よ! 宇宙にいる世界樹とフェアリーたちが、コレをただの石だと勘違いして素通りさせちゃっているんじゃ!?」
「!」
リズの考察にフェアリーは脳内で全てが繋がった。
リズの言う通りなら中途半端な数のドラゴンが降下してきている理由にもなる。
大気圏で燃え尽きないのにわざわざこんな石の中に潜む理由にもなる。
「そうか! コレは隕石に擬態するための代物! あなたの言う通りかもしれません! お手柄ですよリズ!」
リズの手を握り褒め讃えたフェアリー。
リズは頬を赤くし照れながらその手を握り返してきた。
「えへへ……で、でも、分かったからって言っても、対策のしようがないわね……」
「ええ……これはやはり急いで精霊さま方を集めて世界樹さまに報告するしか止める術がないでしょう」
手を離してフェアリーはイルセラの方へ寄る。
「イルセラさん。これは一刻も早く【グランドクリフ】に行かねなりません。レザーフから船に乗るための通行証の発行をお願い致します」
「わかったわ。少し待っててちょうだい」
話を聞いていたイルセラはすぐに行動してくれた。
隕石に擬態してフェアリーたちの監視網を突破して来ているのなら、またいつエタンセルにドラゴンが降下してくるかは分からない。
それを完全に止めるには世界樹さまに擬態の事を伝える他ない。
今の地球の状態は、まさに無防備なのだから。