世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第51話【フェアリーVSタスティエラ】

 観客席は一瞬の静寂に包まれた。

 誰もが目の前で何が起こったのか理解できずにざわめく。

 

「な、何が起こったんだ!?」

「アシュラム様が倒れてる!?」

「ほ、ほっぺが凄いことに!」

 

ジオグリスとタスティエラも同じで、あまりにも呆気なく終わった戦闘に現実味が無く、口を開けてポカンとしてしまっていた。

 

 審判も驚きを隠せず、数秒間立ち尽くしていたが、ようやく我に返り、大声で宣言する。

 

「しょ、勝者、フェアリー!」

 

 その宣言にようやく観客たちが状況を理解して拍手を起こした。

 当のフェアリーはなんてことはないと髪を撫でている。

 

 アシュラムはまだ白眼を剥いたまま、医療班に運ばれていった。

 その姿を見た観客たちはますます興奮し、次の試合に対する期待に胸を膨らませ始めた。

 

「……見えたか? ジオグリス」

 

「まったく見えませんでした」

 

 タスティエラの問いに即答するジオグリス。

 

「私もだ。何者だ? あのフェアリーという女は……」

 

「わかりません。ですが……」

 

 ジオグリスはフェアリーを見据えた。

 まともな男性ならば誰もが虜になりそうなほど美しい女だが、彼女の全身からはとんでもない量の覇気を感じた。

 

 フェアリーから滲み出るオーラはアシュラムやタスティエラの比じゃない。

 彼女のオーラは山のように大きな炎だ。

 それに比べ我々のオーラは蝋燭の火も同然の小ささである。

 

 大陸最強と謳われた我々が、まるで小さい。

 なんなのだ? この女は……

 これほどの闘士が、なぜ今の今まで無名だった?

 

 そんなことを考えていると、ステージに立つフェアリーがタスティエラとジオグリスを見てきた。

 

「あの、早くしてもらえますか? 二人同時でも構いませんので」

 

 三将軍の二角を同時に、だと!?

 舐められている。

 だが、舐められても仕方がないほどの実力差を感じる。

 

 ダメだコイツは。

 アシュラムとタスティエラと三人で掛かっても勝てる気がしない。

 何故ならこのフェアリーという女は、まだ本気を出していないように見えたからだ。

 

 先ほどフェアリーは武器を使うとうっかり殺してしまうかもと言っていた。

 つまり彼女は武器を扱う技術を持っているということになる。

 

 なのに使わなかった。

 素手で本当にアシュラムを瞬殺してみせた。

 今見えている彼女のオーラは、手加減してあの大きさなのかもしれない。

 ただでさえこの大きなオーラが、実力の半分も出していないオーラだとしたら?

 

 ジオグリスは人生で初めて全身が戦慄した。

 何をやっても勝てない敵が目の前にいる。

 いきなり現れたこのフェアリーという女は、なんなのだ!?

 

「調子に乗るなよ小娘が」

 

 ズンと前に出たタスティエラはステージへ歩き出す。

 

「待てタスティエラ卿! 無理だ! 我々では彼女には勝てない!」

 

「黙って見ていろジオグリス」

 

「彼女のオーラが見えないのか! 私の知る限りではあんな巨大なオーラは見たことがない! まるで化け物だ!」

 

「見えているさ。だからこそ戦いたくもなる」

 

 言い切ってタスティエラはステージに上がった。

 沸き起こる歓声と共にフェアリーを見る。

 

「我が名はタスティエラ・ゴルディック。グランドクリフ王国の三将軍が一人! いざ尋常に勝負!」

 

 タスティエラが拳を構え、フェアリーも無表情のまま彼を見据えた。

 両者を交互に見た審判は手を挙げて、第2試合を告げる。

 

「それでは第2試合を始めます! 両者構え!」

 

 シ~ンと静まり返るコロシアム。

 ゴクリと生唾を飲むジオグリスと観客たち。

 素手対素手のタスティエラVSフェアリーが、ついに始まろうとしている。

 

 審判が一呼吸の間を入れてから、

 

「試合……始め!!!」

 

 手を下げた!

 

 刹那! 先手を取ったタスティエラが「ゆくぞ!」と言って消えた。

 タスティエラは最初の踏み込みで最高速へ加速し、フェアリーの周囲を動き回り翻弄する。

 

 その凄まじい速度は常人には追えない。

 目で追えるのはこの場ではジオグリスのみ。

 

「【バニッシュインパクト】! 貴様に見切れるか!」

 

 無数の残像が現れるほどに速度を重ね、フェアリーの隙を狙う。

 しかし……

 

(こ、こいつ……!)

 

 タスティエラは戦慄した。

 フェアリーの視線が完全にこちらを捉えていた。

 これだけの残像がいるのに、本体であるタスティエラを見据えてくる。

 

(こちらを見ている!? 私の速度が遅いとでも言うのか!?)

 

 どれだけ加速を重ねてもフェアリーの視線は切れなかった。

 ずっと見つめられ、いつでも反撃できると言わんばかりのフェアリーに、ついにタスティエラは恐怖する。

 

(ダ、ダメだ……いま手を出したらやられる! ここは距離を取って――――)

 

 バチン! 

 

「ぶっ!!」

 

 フェアリーの平手がタスティエラの頬をブッ叩いた。

 

 その威力はステージ端まで巨漢が吹っ飛ぶほど。

 

 タスティエラは何度かステージを転げ回り、大の字になって倒れた。

 もちろん白眼を剥いて気絶している。

 

 そして当のフェアリーは。

 

「リズ直伝……【普通のビンタ】」 

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