「あ……」
自分のうっかり発言にアシュラムは固まってしまった。
何がそんなに恥ずかしいのか、彼は顔を赤くして首を振ってきた。
「ちが、違うぞ! 俺はあんな放浪ババァの孫なんかじゃねぇ! ロザリーヌなんか知らねぇからな!」
「ロザリーヌさん孫がいるって言ってたけど、本当だったんだね」
「孫という事は血が繋がっているということですよね? まったく似てませんね」
「失礼だなテメェ! ぶっ飛ばすぞ!」
「っていうかフェアリーがロザリーヌさんのフルネームを覚えてる事に驚いたよアタシ」
「失礼ですね。私だって人間の名前くらいは覚えてますよ」
「いやだってそこのアシムラさんのこと忘れてたじゃん」
「だからアシムラじゃねぇっつってんだろ! いいから俺と勝負しろフェアリー!」
「いいですよ。その代わり私が勝ったらお願いがあるので聞いてもらいますよ?」
「上等だ! なんでも聞いてやるよ! おらっ! かかってきな! もう油断しねぇからな! 最初からの全力だ!」
やたらと吠えるアシュラムに、フェアリーはやれやれと肩を竦めた。
これは一度徹底的に骨の髄までボコボコにした方が良いかもしれない。
死なない程度に手加減するのは骨が折れるが、何度も向かって来られる方が面倒だ。
「行くぞおらああぁああああああああああああ!」
★
「【風の鳴く島】?」
気の毒なほど顔面がボコボコになったアシュラムがそうオウム返しした。
剣を杖代わりにし、痛みでプルプル震える全身を支えている。
アシュラムはフェアリーにリベンジしたが、やはり所詮は人間。
如何に大陸最強の三将軍といえど、宇宙で数億年もドラゴンと戦い生き残ってきた歴戦の戦士フェアリーに敵うはずもなかった。
「はい。そこにいる風の精霊シルフ様にお会いしなければいけません。なので船を用意して頂きたいのです」
「あぁ……わかったよ。すぐに用意してやるよ……港で待ってな……」
徹底的に痛めつけられたせいか、アシュラムはかなり大人しくなった。
長らく強者の立場に入り浸っていたからか、ここまでズタボロにされたのは初めてなのだろう。
「……なぁ、お前」
城へ向かおうとしていたアシュラムがフェアリーを見る。
「なんですか?」
「お前は……何者なんだ?」
「世界樹の妖精です」
「世界樹の……妖精?」
「あ、別に信じて頂かなくて結構ですので」
「人間じゃ、ねぇのか?」
「今は人間です。不本意ながら」
「はは……なんだよそりゃ……」
苦笑しつつアシュラムは去って行った。
彼を見送ったあと、ノームが居なくなっていることに気づき、フェアリーは逃げられたと内心で舌打ちした。