世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第56話【フェアリーVS彼】

「準備は整った。さぁフェアリー。俺と共にこの地球を終わらせよう」

 

「な!?」

 

 フェアリーは耳を疑った。

 地球を終わらせる?

 

「あなたは……何を、言ってるんですか?」

 

「お前を永遠の呪縛から解いてやる。この終わりなき守護の生に」

 

 すると彼は全身から光を発し、次の瞬間には白銀の龍鱗に覆われた竜人の姿へと変貌していた。

 

 青かった瞳は赤く染まり、背中に広がる12枚の翼が煌めく。

 赤い翼膜に赤い爪。

 肉食獣を思わす鋭利な牙。

 妖精だった面影はなくなっていた。

 

「ド、ドラゴン!? どうしてこんな……!?」

 

「神々しいだろう? ドラゴンに世界樹を喰わせ、私はそれに憑依して一体化した」

 

「…………世界樹さまを、喰わせた!?」

 

 いよいよもってフェアリーの理解が限界を超えようとしていた。

 耳を疑うという次元の話ではない。

 コイツは今、なんと言った?

 世界樹さまを喰わせた?

 

 ということは世界樹さま死んだということなのか?

 じゃあこの世界は?

 枯れて人が住めなくなる。

 永遠の冬が来て、死の星になるぞ。

 リズはどうなる?

 

「信じられんか? ならばお前の能力を使ってみろ。封印はすでに解かれているはずだ」

 

 言われるがままフェアリーは背を意識すると、本当に封印されていた【光の翼】が展開された。

 次いで【聖剣】も両手に発せられ、青い光の刃が形成された。

 

「……っ!」

 

 本当に封印が解けている。

 隣のリズもフェアリーの翼と聖剣に驚く気配を見せた。

 

 フェアリーの力が戻った。

 つまり彼の言う通り、世界樹さまは本当にドラゴンに食われて亡くなったということが確定した。

 

「そんな……世界樹さま……」

 

 絶望するフェアリーが空を見上げ、対して彼は笑う。

 

「これで分かったろう? さぁフェアリー。俺と来い。お前を縛る楔はもうない。お前も俺も自由だ」

 

「ふざけるなああああああああ!」

 

 戯言をほざく彼にフェアリーが船から跳躍した。

 羽で加速し、空中にいる彼に肉薄したフェアリーは聖剣を薙ぎ払う。

 

 ついに本領発揮するフェアリーの斬撃を、彼は同じく赤い聖剣を召喚し容易く受け止めた。

 青い光と赤い光の刃が激突し、凄まじい鍔迫り合いが起こって粒子が飛び散る。

 

「よくも世界樹さまを! この裏切り者め!」

 

「おいおい……この生き方にウンザリしていたのは俺もお前も同じだったろう? 裏切り者とは酷いな!」

 

「世界樹さま亡きこの地球はどうなる! やがて枯れて生命なき死の星になるんだぞ!」

 

「それは人間が巣くう限り同じことだ。どうしたフェアリー? そこの人間に情でも移ったか?」

 

「黙れ! 私はこんなこと、望んでいなかった!」

 

 仕方ないと言い続け、己を騙し、騙している自分さえ騙して、それでも妖精だからと戦い続けてきた。

 いつかは死ぬだろうと、やがていつかは終わるだろうと、戦い続けてきた。

 

 でも終わらなかった。

 それが不満となって、私は……

 

「どの口が言うか!『人間など守る価値がない!』と口癖のように言っていたくせに! 今さら聞いて呆れる!」

 

 バチン、と彼に鍔迫り合いで負けたフェアリーが弾かれる。

 

「ぐっ!」

 

 そう……『人間など守る価値がない』。

 戦死できずに溜まった不満がそんな言葉となって溢れたんだ。

 そしてそう思っていたのも事実だ。

 だけど……

 

「聞けフェアリー。もうじきこの地球は大量のドラゴンによって食い尽くされる」

 

「なんだと!?」

 

「今ごろ宇宙ではフェアリーたちが頑張ってドラゴンを迎え撃っているだろう。だが世界樹がいなくなった今となっては指揮系統も死んだ。足並みの揃わぬフェアリーたちにあの数のドラゴンは捌き切れまい。滅ぶのは時間の問題だ」

 

 コイツ!

 まさかドラゴンの群れを地球に誘導したのか!?

 そんなことをしたら!

 

「おのれっ!!」

 

「はっはっ! 来いよフェアリー! 共に歩めぬなら最後に少し踊ろうか!」

 

 彼が『十二枚の翼』を広げて射出する。

 それらは赤い翼膜が発光し、無数の【流星】を発射してきた。

 

 全方位空間攻撃にフェアリーは歯を食いしばる。

 直撃コースの流星を捌きながら彼に突撃し、またも鍔迫り合いになる。

 

「妖精が地球を滅ぼすなど!」

 

「人間に奪われ続けたことをもう忘れたか! お前の怒りは所詮その程度だったか!」

 

「忘れるものか! だが地球を持たぬ妖精になんの価値がある! 護る物があるから妖精なんだぞ!」

 

 失って初めて分かったことがあった。

 世界樹さまに人間にされ、地球に落とされ、ある意味で自分は自由になっていた。

 

 だが数億年も戦いに生きて来たフェアリーに、今さら自由など与えられても持て余し、価値を見出せるものではなかったのだ。

 

 穢らわしい人間として自由に生きるくらいなら、すぐにでも妖精の仕事に復帰したかった。

 たとえそれが終わりなき守護の生でも、だ。

 

 自分にはこの生き方しかないのだ。

 数億年もこびりついた全身の垢が、今さら落とせるものか。

 

「その護る物を奪ってきたのが人間だろう! 我が物顔で地球を汚し、あまつさえ破壊してきたのは誰だ!」

 

 鍔迫り合いから弾かれ、また彼に距離を取られたフェアリーは【十二枚の翼】による弾雨に晒される。

 聖剣でそれらを弾き、数発は彼にカウンターショットする。

 だがそんなものに当たる彼ではない。

 

「そうやってお前はまた護って、奪われて! また別の地球に行っても同じことを繰り返す! それでお前は本当にいいのか! フェアリー!」

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