世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第59話【集結】

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 波の……音?

 

 私は……死んだのか?

 

 リズは……地球は……どうなった?

 

 意識が僅かに回復してきたフェアリーは、ゆっくりと目を開けた。

 

 夜空が広がっている。

 

 自分は、仰向けに倒れているようだ。

 

 波の音が再度聞こえ、自分の下半身を冷たく冷やしてくる。

 

 ここは、どこだ?

 

 左右を見渡すと、少し離れた場所にリズが倒れているのが見えた。

 

「!? リズッ!」

 

 フェアリーは咄嗟に立ち上がろうとしたが、傷口から血が吹き出して激痛が走った。

 

「うっぐっ!」

 

 損失した片腕の切断面だ。

 妖精の黒衣のおかげで、ある程度の出血は抑えられているが、完全とはいかない。

 さすがに傷が大きすぎる。

 

 だがそれでもフェアリーは激痛を歯を食いしばってリズの元へ駆けた。

 

「リズ!」

 

 リズの腹部からは大量の血が流れており、血色も悪い。

 体温も低く、今にも死にそうだった。

 

「出血が酷い……なにか、血を止めるものは!」

 

【彼】にやられたのだろうリズの傷は深い。

 早く止血しないと、リズが死んでしまう!

 フェアリーは辺りを見渡したが、すぐに絶望した。

 

 周囲は海のみ。

 フェアリーとリズが打ち上げられたのは、小さな砂の山。

 とても陸地とは言い難い、狭い場所だった。

 

 草木の一本もない。

 

「くそっ!」

 

 フェアリーは自分の黒衣を破ろうとスカートの裾を持ったが、片腕を無くした今のフェアリーには何かを破くことさえ困難だった。

 

 だが早くしないとリズが死んでしまう。

 構ってられない、とフェアリーはスカートの裾をたくし上げ、歯で噛んで、腕でそれを引き千切ろうとした。

 

「ふっ! ぐっ! ううううううううっ!」

 

 全力で裾を引き千切ろうとするフェアリーだが、妖精の黒衣がそんなもので引き裂かれるはずもなかった。

 

 光刃でなら斬れるだろうが、長さの調整が出来ない光のブレードだ。自分ごと斬ってしまいそうだ。

 

 ならばと、服を脱ごうとした。

 脱いでリズの腹部に巻きつければ、多少の止血効果はあるはず!

 

『待ちなよフェアリー』

 

「!?」

 

 突如聞こえた少年のような声。

 フェアリーの目の前に現れたのは緑の光だった。

 

「シルフ様!」

 

『彼女は僕が治す』

 

 そう言ってリズに緑の閃光を浴びせた。

 それは精霊の力を与えるいつもの光景だったが、リズの腹部の傷がみるみる間に塞がっていった。

 

 シルフの力を得たリズは、しかし目を覚まさない。

 だが血色は良くなり、体温も回復している。

 どうやら一命は取り留めたようだ。

 

「……良かった。ありがとうございますシルフ様」

 

『いいんだよ。君も重傷だね。早く手当てしないと……』

 

「不要です。手当てしたところで片腕はもう再生しません。それよりも他の精霊さま方を呼んでいただけませんか?」

 

『……そう言うと思って、前もって呼んでおいたよ。もうかなり経ってるからそろそろ着くんじゃないかな?』

 

「ありがとうございます。それよりここはいったい?」

 

『ただの砂山だよ。【風の鳴く島】じゃない』

 

「やはり……では、シルフ様はどうしてここに?」

 

『そんなもん、君たちが派手に戦ってたのが見えたからだよ。話も聞こえた。世界樹さまが喰われたことも……』

 

「そうですか……」

 

『ごめんよ。助けたかったけど、僕たち精霊は戦闘力がないから……』

 

「いえ、勝てなかった私の責任です。申し訳ありません。【彼】は私が止めます」

 

『止めるって……そんなボロボロなのにどうしようってのさ?』

 

「戦う以外にありません」

 

『勝算はあるの?』

 

「……」

 

 そんなもの、ない。

【彼】は世界樹の力と大型ドラゴンの力を得た。

 もはやフェアリー1人でどうにかなる相手ではない。

 

 いや、たとえ妖精たちが束になっても勝てる見込みはないだろう。

 彼を止めるには、どうすればいい?

 

 それに世界樹を失ったこの地球は、やがて生命エネルギーの循環が無くなり枯れていく。 

 

 この地球の崩壊を止めるには、どうすれば……

 

 悩むフェアリーの前に三つの光が飛来してきた。

 それは火球・水玉・土の塊だ。

 

『持たせたな!』

『来たぞシルフ』

『待ったかの?』

 

 サラマンダー・ウンディーネ・ノームが到着した。

 よくここが分かったなと感心するが、それよりもまずは。

 

『ぬ!? リズ!? おいリズ! どうしたんだ!? なぜ寝ているこんなところで!?』

 

 あのウンディーネが取り乱した。

 あれだけ喧嘩した仲だというのに不思議なものだ。

 

「リズは心配いりません。もう回復しました。しばらくすれば意識も戻りましょう」

 

『なら良いが……、ってフェアリー! お前もその腕……!』

 

「問題ありません」

 

『問題しかないだろうが!』

 

「そんなことより皆様。私を宇宙へ届けてください」

 

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