世界樹のフェアリー   作:ミズノみすぎ

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第60話【フェアリーの答え・リズの決意】

『なら良いが……、ってフェアリー! お前もその腕……!』

 

「問題ありません」

 

『問題しかないだろうが!』

 

「そんなことより皆様。私を宇宙へ届けてください」

 

『おいおい、そんなボロボロで何しに行こうってんだ?』

 

 呆れるサラマンダーに、しかしフェアリーの顔は本気だった。

 

「無論、戦線復帰します。まだ仲間たちが宇宙で防戦をしているはず。片腕一つ失ったぐらいでは、参戦しない言い訳にはなりません」

 

『馬鹿者! そういう問題ではない! 今のお前が戦列に加わったとしても焼け石に水だ!』

 

 ウンディーネが言うも、フェアリーは首を振る。

 

「それでも、です。……皆様が知っての通り、私たち妖精は戦う為に生まれてきた世界樹の兵士です。戦って死ぬなら、それが――」

 

『待つんじゃフェアリー。お前さんはそれで良いかもしれんがな? そこのお嬢ちゃんはどうする? ウンディーネとのやりとりは、ワシら全員知っとるぞ?』

 

 ノームはリズの事を指していた。

 痛いところを突かれたフェアリーは、倒れているリズを一瞥して、目を閉じる。

 

「……それでも、私は行きます」

 

『お前……っ!』っとウンディーネ。

 

「リズなら分かってくれます。いえ、リズしか分かってくれないでしょう」

 

 自分で言って驚いた。

 本当に自分が言ったのかと疑うほどに。

 

 けれども先の言葉に嘘偽りはない。

 リズならば、きっと理解してくれる。

 

「それに私は……人間が嫌いです。今でも、それは変わりません」

 

 そう、人間は嫌いだ。

 でも……

 

『人間は守る価値が無いと思います!』

 

 この一言から始まったこの旅で、出会った人間たちは、本当に守る価値が無かったか?

 

 イルセラや、ロザリーヌや、漁師たち。

 そして……リズ。

 

 ああ、彼女たちが笑うこの地球……それだけでも、価値がある。

 

 この地球を守る価値があることを知った。

 世界樹さまが何故、私を地球へ降ろしたか分かった。

 

 だからこそ私は行かねばならない。

 本来あるべき場所へ。

 ごめんなさいリズ。

 好きですよ。あなたのことは。

 

「……皆様、お願いします。私はこの地球を守りたい」

 

 

 目を覚ますと、美しい夜空が広がっていた。

 星々が輝き、月光がリズを照らしている。

 

「……。……っ! フェアリー!」

 

 ぼんやりしていた意識が一気に覚醒し、彼にやられたフェアリーを思い出して飛び起きた。

 

 辺りを見渡すが、そこには海しかない。

 リズがいる場所は砂だけの陸地だった。

 なぜこんな場所に? と最初こそ疑問に思ったが、彼に腹を貫かれて海に落とされたことを思い出した。

 

 慌ててリズは腹を見た。

 

「あれ? 傷が無い?」

 

 そんなはずはない。

 確かに彼に貫かれたはず。

 痛みも覚えている。

 無傷はハズが……

 

『目を覚ましたようだね』

 

「え?」

 

 聞き覚えのない少年のような声にリズは驚いた。

 キョロキョロと声の主を探すと、目の前に緑の光が現れた。

 

『こんばんわ。僕はシルフ。気分はどうだい?』

 

「シ、シルフ、様!?」

 

 風の精霊の初対面に驚いた。

 ということはココは【風の鳴く島】?

 そんなことを思っていると、サラマンダーやウンディーネたちまで現れた。

 

『おおリズ! 目が覚めたか!』

『心配したぞ! まったく!』

『体調は大丈夫かの?』

 

「み、みんな……みんなが助けてくれたんですか? ありがとうございます」

 

 とりあえず状況的にそう思ったから礼を言って立ち上がった。

 するとウンディーネが言う。

 

『違う。お前を助けたのはシルフだ。礼ならソイツに言え』

 

「え、あ……ありがとうございますシルフ様。助かりました」

 

『ううん。良いんだよ。それしかできなかったから……』

 

「あの、フェアリーは?」

 

 彼女だけ居ないのがどうしても気になったリズが言うと、シルフたちは沈黙してしまった。

 何も言わない精霊たちに、リズは嫌な予感がした。

 

「まさか……フェアリーは、海に……っ!?」

 

『いや……アイツは宇宙へ帰ったよ』

 

 サラマンダーが正直に答えた。

『おいサラマンダー!』っとウンディーネが怒る。

『どうせいつかはバレるだろうが』とサラマンダーは反論した。

 

「宇宙へ!? そんな……」

 

 事実を知ったリズは、衝撃のあまり尻もちをついた。

 

 置いていかれたショックもそうだが、フェアリーは片腕を斬り落とされており重傷のはず。

 

「どうして行かせたんですか! フェアリーは片腕を失っているのに!」

 

 自分で言ってから気づいた。

 あのドが付くほど仕事に生真面目なフェアリーが、片腕を失ったくらいで止まるはず無い、と。

 

『ワシらも止めたんじゃがの……しかしフェアリーは……』というノームにリズは視線を落とした。

 

「……分かってます。フェアリーは、そんなことじゃ止まらないんですよね……。文句は言うくせに、仕事はちゃんとするんです。まるで……本人が嫌ってる人間みたい」

 

 そうだ。

 フェアリーは、どうしようもなく人間臭いんだ。

 その道一筋で来た職人のように。

 

「……フェアリーはやっぱり【彼】を止めに行ったんですか?」

 

『そうだ。勝算は……無い様だったがな……』

 

 ウンディーネの言葉にリズは顔を曇らせた。

 

 やっぱり勝算は無いんだ。

【彼】はもう凄まじい力を手に入れてしまって、フェアリーでは太刀打ちできない。

 

 フェアリーで勝てないなら、リズでもどうしようもない。

 全精霊の力を持ってしても、おそらく……

 

 なにせ【彼】は世界樹を喰らった大型ドラゴンに憑依して、その力を増幅させている。

 

 こんな化け物に対抗できる力なんて、どこにも……

 

『まだドラゴンは降ってこねぇな』

 

『妖精たちが頑張っているんだろう』

 

『じゃがそれも何時まで持つかのォ……』

 

『ドラゴンもそうだけど、【彼】を止める術がない。僕たちはもう終わりだよ……』

 

 精霊たちが口々にざわめく中、リズは夜空を見上げた。

 

 あの星空の奥で、今もフェアリーは戦っているのだろう。

 

 アタシたちのために。

 

 そんなフェアリーの力になりたいのに、今は祈ることしかできないなんて……

 

 フェアリーに会いたい気持ちと、一緒に戦いたい気持ちが込み上がってくる。

 

 でも自分が参戦したところで、フェアリーたちの足を引っ張るだけかもしれない。

 

 でもこのまま何もせず待っていても、きっとフェアリーたちは負けて、みんな死ぬ。

 

 どうすれば…………そうだ!

 

「みんなお願い! アタシをフェアリーのいる宇宙へ飛ばして!」

 

 

 

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