極夜に囚われたセリカ   作:時空未知

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おまたせしました……
だいぶ前に言ってたマリーさん編となります。
と言ってもセリカちゃん、セイアちゃん編とは展開の仕方が大きく異なります。新しい小説の書き方の模索も兼ねてるので何卒……


番外編:初代教区長補佐マリー
side another 伊落マリー、又は聖職者の獣(1)


 

 

……おや、気が付いたかい?

 

 

…………

 

 

……まあ、驚くのも無理もないだろうね。

ああ、私自身が言うのもなんだが、決して怪しいものではないよ。

裏路地で倒れていた君を私が保護したんだ。

 

 

…………

 

 

ふむ。私のことがそんなに不思議かい?

私……いや、この街に暮らす大多数の人間は君の方が不思議な存在であろうけどね。

 

 

…………

 

 

キヴォトス、ね……残念ながら私に聞き覚えがない。

ここはヤーナムだ。聞き覚えはないかい?

 

 

…………

 

 

……そうか。だとすると参ったね、

君も私もお互いの住むところは知らず、

おまけに、言葉が通じるのみで同じ人間かどうかも分からないと来た。

 

 

…………

 

 

ああ、心配しなくていいよ。少し提案があってね。

実のところ、私には君がここに来た方法に一つだけ心当たりがある。

ただ、あれ(・・)は一朝一夕にわかるようなものではなくてね……

そこでだ。私が君の帰る方法を探し、住む場所を与える。

その代わりに、君に私の仕事の手伝いをしてほしい……どうかな?

 

 

…………

 

 

……ふむ、どうしてここまでしてくれるのか、ね。

別に大したことではないよ。

その格好からして、君は異教のシスターだろう?

 

 

…………

 

 

やはりね。実は私もこの街の教会の教区長をしていてね、

……困った人を見過ごせなかった、そう言うことだよ。

それより、先ほどの提案は……了承してくれたと思っても構わないかな?

 

 

…………

 

 

はは、急にそこまで畏まらなくても大丈夫だよ。

教区長と言っても、私の代で初めてだからね。

それに、私としても君のような人に出会えてうれしいよ。

 

 

…………

 

 

……マリーか。なるほどね、いい名前だ。

私は■■■■■。シスターマリー、これからよろしく頼むよ。

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________

 

 

 

「……う、ぅ」

 

 

白い、清潔な病室の中、そのベットの一つで小さなうめき声が上がった。

ベッドに寝かしつけられたその声の主の少女はゆっくりと起き上がると、

きょろきょろと辺りを見回す。

 

……患者服に垂れるのは鮮やかなオレンジ色の髪、

眠っていたためか未だとろんとしている瞳は澄んだ空色。

何より頭には、髪と同じ色の猫耳が生えていた。

 

「……あれ、ここは……救護騎士団の病室?」

 

しばらく辺りを見回して、自分がどこにいるのかを理解した少女は、

訳も分からずこてんと首を傾げた。

 

……おかしい。

自分は先ほどまで……裏路地にいたはずで、それで……

 

「……あれ?」

 

そこまで思い返してみて、少女はもう一度首をかしげる。

何故か教会の裏手にある倉庫から荷物を取りに行ってからの記憶がないのだ。

何度思い返してみても、そこからの記憶がぷっつりと途切れている。

 

……もしかして、何かの拍子に倒れてしまったのだろうか。

 

「ど、どうしましょう……」

 

そのことまで考えが至ると同時、

少女はベッドの上に座ったままオロオロとし始めた。

 

「まだお仕事は途中でしたし、皆様にも迷惑を……」

 

自分の身よりも、

自分が倒れてしまったことにより空いてしまった仕事の穴の方を少女は心配する。

……少女は人一倍責任感が強く、また優しい少女であった。

特に最近はトリニティ全体を巻き込んだ大規模なクーデターがあり、

未だにあちらこちらてんやわんやになっている最中。

だから普段以上に自分が倒れてしまったことによる反動は大きいはず……

だからといってベッドから降りようにも、

何やら物々しい機械が取り付けられているせいで動こうにも動けない。

 

……熱中症にでもなってしまったのだろうか?

 

けれど、

少女は神に仕えるものとして人一倍体調には気を使っているつもりであり、

事実その通りである。

 

……ともかく、人を呼ぼう。

 

そう思い立った少女が軽く辺りを見回そうとしたその時。

 

 

ガッシャーンッ!!

 

 

「はうっ!?」

 

 

部屋の入り口の方から、大音量の何かが割れる音が響き渡った。

びくりと肩を震わせて、慌てて音がした方に視線を向ける少女。

そこには……

 

 

「……ヒナタさん?」

 

 

自分の先輩でもあり、同僚でもある修道服を着た黒髪の少女が、

呆然とこちらを見ていた。

……先ほどの音源はどうやら彼女が取り落とした花瓶によるものだったらしい。

 

……両者の間に、何とも言えない沈黙が流れる。

 

「……マリー、さん……?」

 

先に言葉を発したのはヒナタの方だった。

その声は、どこか何かをこらえるように、震えて聞こえた。

 

「は、はい!マリーです……

たった今、目が覚め「マリーさぁあああああんっ!!!」むぎゅっ!?」

 

マリーが慌ててその声に返答しようとした瞬間、

その声は勢いよく抱きついてきたヒナタの声によってかき消された。

更に体格差も相まって、マリーの顔がヒナタの胸の中に埋まる。

 

「う、ぁうぅ、よかった……

このまま、このままマリーさんの目が覚めなかったらどうしようって……

本当に、本当に……」

 

大粒の涙をこぼしながら、ヒナタはぎゅっと、

もう二度と彼女のことを放すまいといわんばかりに抱きしめる。

……その時、

 

 

ぴー、ぴー、ぴー

 

 

近くの機械から何やら甲高い電子音が鳴り始めた。

 

「……あ、あれ?」

 

その音に気がついたヒナタにより、若干マリーに対する拘束が緩む。

そして……

 

「ひ、ヒナタさ……くる、し……」

 

……彼女の豊満な胸と強大な筋力により窒息しかけている少女が、ここに1人。

 

「へ……?あ、ぁああああっ!?すいませんすいませんすいません!?」

 

その言葉で、ようやく事態に気が付いたヒナタが慌てて身体を離した。

漸く碌に息ができない状態から解放されたマリーは、

何度か深呼吸して肺一杯に空気を吸い込むと、

目の前でおろおろしているヒナタの方を見た。

 

「ぜぇ、ふぅ……あ、ありがとうございます、ヒナタさん……」

「そ、そんなお礼なんて……そもそも私が力加減を誤ったばっかりに」

 

マリーの言葉にそう言ってパタパタと手を振るヒナタ。

とはいえ、マリーには彼女に聞きたいことが山ほどあった。

……先程の様子、少々危なっかしい部分があるとはいえ

ヒナタがあそこまで力加減を間違えることなどほとんどない。

 

一体、自分の眠っている間に何があったのか……

 

それをマリーが尋ねようとしたその時、

 

 

部屋の外から大勢の人が駆けてくる足音……そして、

 

 

「そちらの方はミネ団長に連絡を!!

あと誰か万一に備えて心肺蘇生装置の用意、マリーさんは私がっ……!?」

 

 

救護騎士団の生徒たちがただならぬ様子で駆け込んできたかと思うと、

ピンク色の髪の少女が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

そして……突然の事態にポカンとするマリーと目が合った。

 

 

「……私、が……?」

「あ、その……おはようござい、ます?」

 

 

……またもや何とも言えない空気に包まれる病室。

そんな中、マリーは恐る恐る、困ったような笑顔を浮かべてそう挨拶した。

 

 

___________________________________________

 

 

そこからが大変だった。

マリーの無事を確認するや否や

救護騎士団の生徒たちもマリーに抱きついて泣き出す、

神に感謝の祈りをささげる、ある人は病室を飛び出し、

ある人は大慌てでそこら中に電話をかけ始める、

 

その後、数分と立たぬうちにその小さな病室に

所属や学年、その他一切を問わずマリーの知り合いの生徒たちほとんど全員一斉に詰めかけてきたのだ。

たちまちマリーの周りは、彼女の姿を見て安堵の涙を流す人、

更には花束や高そうな紅茶やら変な鳥のぬいぐるみやらの贈り物であふれかえり、

上へ下への大騒ぎとなった。

 

更に……

 

 

「"マリーっ!?"」

 

 

さっと人だかりが開けたかと思うと、

飛び込んできたのはヘイローを持たぬ大人の女性……先生だ。

ここまで必死に走ってきたのか、息がかなり上がっている。

 

「へ、あ、せ、先生っ!?」

 

トリニティの事案が一段落したことでまた滅多に会えなくなってしまった、特別な感情のある人……

彼女は、マリーの姿を見取ると、よたよたと近寄ると、そのまま崩れ落ちるように彼女のことをそっと抱きしめた。

 

「"良かった、無事で良かった……本当に……"」

「……先生」

 

そう、小さく言葉を紡ぐ先生の声色は、濡れていた。

そんな彼女たちの様子を見て、再び涙ぐむ生徒達……

……その時、

 

 

「救護騎士団団長、蒼森ミネ、ただいま到着しました」

 

 

病室の外から、そんな声が聞こえた。

それが聞こえた瞬間、一時的に無くなっていたマリーへと続く道が再びサッと開ける。

……どちらかと言うと恐怖によるもので。

病室の外に立っていたのは空色の髪の生徒……ミネだった。

 

「……ご協力、感謝します」

 

ミネは生徒たちにそう言うと、静かにマリーの元へと移動する。

先生は未だ名残惜しそうだったものの、涙を拭うとベッドの側に移動する。

当のマリー本人はというと、先ほどから続く急展開に一切ついていくことができず、

手元に手のひらペロロ人形を抱えたままオロオロとしていた。

 

「え、あの……ミネ団長。この状況は一体……」

「……その様子だと、やはり何があったか一切わかっていないみたいですね」

 

ミネはそう言うと、

近くにいたセリナにシールドとショットガンをいったん預けると

マリーのすぐそばまで移動し、彼女と同じ目線まで身体を下げる。

 

「……マリーさん。いいですか、落ち着いて聞いてください」

「は、はい……」

 

いつも以上に緊迫した様子の彼女に、

マリーはどこか不安を覚えながらも、そう言葉を紡ぐ。

……そして、ミネは一呼吸置いたのち、その事実を告げた。

 

 

「……10日間。一週間以上、あなたはずっと昏睡状態でした」

「…………へあっ!?」

 

 

病室に、かわいらしい悲鳴が響いた。

 

 

_____________________________________________

 

 

「……10日間……」

 

 

その後、一先ず必要最小限の人のみを残して

生徒たちを病室から追い出したミネから、状況の説明と検査があった。

曰く、自分は件の倉庫に倒れていたらしく、

それを最初に発見したのがヒナタだったらしい。

一般的に言われるような脳の損傷によるものでこそなかったものの、

どんな呼びかけにも一切反応がないのは同じ。

正に、童話の眠り姫のようにただ眠り続けているような状態だったという。

改めて状態を検査したものの至って健康的。

少々血中に混ざりものがあったらしいが、気にする程の物でもないと判断された。

マリー自身も、その言葉に引っかかりを覚えたものの、

そう言うものなのかと結局納得した。

 

その後は、念の為様子を見て明日退院するよう言われて、今に至る。

 

 

「……10日間、私って眠ってたんですね」

 

 

窓越しに夜のトリニティを見ながら、マリーはポツリとそう呟く。

 

……10日間、短すぎる(・・・・)。だって、あの時……

 

 

「……あれ?」

 

 

マリーは気がつけばそんな声を上げていた。

……短すぎる?一体何のことだ?

今の状況を考えればむしろ長すぎるほどだと言うのに……

 

「……疲れてるのかもしれませんね。今日は本当にいろいろありましたし」

 

マリーはそう呟くと、いつもより少し早めに布団にもぐり込んだ。

 

 

……その夜、マリーは不思議な夢を見た。

 

 

顔も声もはっきりしない、

先生ではない、

ヘイローを持たぬ初老の男性と和やかに談笑する。

 

 

そんな夢だった。

 

 

_____________________________________________

 

 

こうして外に出るのは初めてだね、マリー。気分はどうかな?

 

 

…………

 

 

……無理に誉め言葉を探さなくても大丈夫さ。

ここで暮らしている私からしても、余りヤーナムはよい場所とは言えないからね。

……少し、歩こうか。

 

 

…………

 

 

……そう言えば、

昨日はここに来て間もなかったから、

暮らしに慣れてもらうために仕事は少なめ、それも書類や薬品の整理ばかりだったね。

少し、私たちの行っていることについて話そうか。

 

 

…………

 

 

実のところ、私達の教会というものは君の言う教会とは少し違ってね、

神への祈りや奇跡ではなく、

もっと直接的な方法……医療によって人々を助けているんだ。

だからといって君のことを馬鹿にするつもりは一切ないさ。

お互い、少しずつ違う方法で人々を守っているんだ。

そこに何の違いもありはしないよ。

 

 

…………

 

 

いやいや、そんなに謙遜しなくてもよいさ。

寧ろ、まだまだ私たちの組織こそできたばかりでね、

教会という名前を借りているだけで正式な名前も決まっていないんだ。そういった意味では、私たちの方が若輩者のようなものさ。

 

 

…………

 

 

はは、そこまで褒められるとこちらとしても照れくさいね。

……まあ、そろそろ話を戻そうか。

 

 

…………

 

 

ここ、ヤーナムには獣の病という風土病があってね。

その病は、人を……理性なき獣へと変質させてしまうんだ。

 

 

………

 

 

……まあ、いきなりそのようなことを言われても驚くだろう。

けれど、事実だ。

この病に冒されたものはもう助からない。

自身の身体が変質してゆく恐怖に怯えながら、やがて獣に成り果ててゆく。

 

 

…………

 

 

……すまない、怖がらせてしまったね。

けれど、この病を克服するために私たちがいるんだ。

いつの日か獣の病を克復し、明るい希望という名の夜明けを見る。そう私は友人と誓ったんだ。その意志に同調してくれた人々の助けもあって、今の私がある。

……そして、引いて言えばその目標の過程で君を元の居場所に返してあげられるかもしれない。

 

 

…………

 

 

……そう言ってもらえると嬉しいよ。

君のように純粋に次回からは君にも本格的に色々手伝ってもらおうと思っていたからね。

 

 

…………

 

 

ん、あぁ。私の友人のことかい?

……彼は、少し特殊な職業でね、この各地を駆け回っているんだ。そのうち会うことができるよ。

 

 

________________________

 

 

「大丈夫ですか、マリーさん?」

「あまり無理はしないでくださいね、シスターマリー。

私個人としても、[心配]していますので」

「あ、そのお仕事手伝わせて!マリーちゃんは退院したばっかりだし……」

 

退院した次の日、早速仕事へ復帰したマリーだったが、会う人会う人からものすごく心配された。

マリーはトリニティ……というかキヴォトス中見ても屈指の裏表のない、ともすれば聖女とすら言えるほど優しく、純粋な少女である。

それ故にトリニティにおいてもその人望はかなりのものがあった。

その彼女が10日間も昏睡していたとなると……こうなるのも必然と言えるだろう。

 

「……ふう」

 

お昼時、食堂へ向かおうにも昨日、

病室に向かえなかった人から送られてくる

退院祝いのせいで、大荷物を抱えることとなったマリーは、

一時的に自分の部屋に帰っていた。

贈り物一つ一つを丁寧に整理すると、昨日貰った贈り物の分も合わせて元々そこまで広くない自分の部屋が更に狭くなってしまったようにも感じる。

……だからといって彼女に好意を無碍にするという選択肢は一切ないのだが。

 

「マリーさん、一先ずこれで大丈夫そうですか?」

「あ、はい!大丈夫です!」

 

ひょこりと荷物の影から顔を出したヒナタに向けて、マリーはそう返答する。

 

「でも、お昼時にわざわざ手伝っていただかなくてもよかったんですよ?」

「いいんです!昨日はその、迷惑もかけちゃいましたし……」

「いえいえ、気にしてないので大丈夫ですよ」

 

そんな会話をしながら部屋を出る。

……しかし、想定以上に時間がかかってしまったためか、

日は既に少しだけではあるが傾き始めている頃だった。

この頃だと、もう食堂も閉まっている頃だろう。

 

「……レストランに行きましょうか」

「そうですね……」

 

少女達はお互いに顔を見合わせると、そう言って笑い合った。

 

________________________

 

近くにあるごく普通のファミレスチェーン店にたどり着いた後、

奢ろうとするヒナタに、

それだけは譲れない、自分の分は自分の分で払う。

するとしても割り勘……と、提案を押し通しつつ

マリーはメニューを広げた。

 

焼き魚定食、日替わりランチセット、スパゲッティにうどん……

 

様々な料理が目に留まるが、

その中からマリーはごく普通のスープとパン、そしてサラダを探す。

気を使っている、という部分も無くはないが、

そもそもマリーは少食なのである。

付けるにしても後は……タンパク質が取れるものぐらいだろうか。

 

「えぇと……」

 

マリーがそう思案しながらペラリとメニューをめくったその時、

ふと、その目にあるページのいち面が飛び込んできた。

……いつもなら、おいしそうだな、とは思いつつそのままページをめくる所だろう。

しかし、マリーは何故かそのページに目を奪われてしまった。

 

「……ステーキ増量キャンペーン?」

 

それは、飲食店では定期的にある、

キャンペーンメニューの紹介ページだった。

何やら、お好みの焼き加減のステーキが、最大2倍近く増量してお得に食べられるのだとか。

そのページの紹介写真のうち、レアステーキの断面……

赤身の多分に残り、肉汁の滴るそれに、マリーはすっかり心を奪われてしまった。

 

……気がつけば、マリーは呼び鈴に手を伸ばしていた。

 

________________________

 

 

「はうぅ……」

 

 

そこからしばらくの時間が経ち、

店員の挨拶を背に店から出たマリーとヒナタ。

そんな中、マリーは余程先程の事が恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして俯いていた。

 

「……マリーさん、お肉が好きだったんですね。ちょっぴり意外でした……」

「い、言わないでください。自分でも何であんなことになっちゃったのかよくわからないんです……うぅ」 

 

……先程、ほとんど無意識のうちに

最大量のレアのステーキを注文してしまったマリー。

我に返った時には既に遅く、注文を受けた店員とヒナタの驚いたような表情が意識に飛び込んできた。

華奢で、大人しい修道服の少女がものすごくガッツリとしたメニューを頼んだとなるとそうもなるだろう。

マリーがその事実に気がつき慌てて呼び止めようとしたものの時は既に遅く、店員は既に去ってしまった。

代わりにヒナタに必死で弁目していたものの、

その言葉は肉の心地よい香りが漂ってきた瞬間に消し飛んでしまった。

 

……その後のことはよく覚えていない。

ただ事実なのは、マリーは羞恥に悶えながらも、自分が普段絶対に食べないような量のステーキをぺろりと平らげてしまった事だけだ。

 

「わ、割り勘もあまり意味がない値段差になってしまいましたし、自分の欲に身を委ねてしまいましたし……

シスター失格です」

「まあまあ。

マリーさん、ステーキはおいしかったんでしょう?」

 

尚も俯くマリーに、ヒナタが優しく問いかける。

しばらくの間、視線を右往左往させていたマリーだったが、

やがて小さく、呟くように言った。

 

「お、おいしかった……です」

「……それならよかったです。えへへ」

 

その言葉に、ヒナタはうれしそうに笑った。

その笑顔に釣られるようにマリーもふっと微笑んだ。

 

「それじゃあ、早く戻りましょうか」

「そうですね。皆さん、心配しているかもしれませんし」

 

そう言うと、マリーとヒナタは教会に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

……けれど、付け合わせの野菜を食べたときに感じた、

あの物足りなさ。一体なんだったのだろうか?

 

そんな疑問がマリーの脳裏に浮かんだものの、それはすぐに消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 




どもー、時空未知です。
ということで今回の作品は如何だったでしょうか?

……いやー、平和ですね。
本編からは考えられないほど平和です。
マリーさんの笑顔も眩しい……眩しい………アッ(浄化)

危うくマリーさんの無意識のうちに発してる浄化の光で全身浄化されて消滅するところでした……危ない危ない。

マリーさんも一時期ヤーナムに行ってたみたいですけど特に何事もなく、帰ってこれたみたいですね。いやーよかったよかった。





……え、それにしては題名と終わり方があまりにも不穏……?


……君のような生きのいい牡蠣はフライだよ。

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