極夜に囚われたセリカ   作:時空未知

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筆が乗りまくった後半です。
これで一旦セリカの過去編は中断して、現在の話に戻ります。
精神的な息抜きは大切ですからね!

ということでグロ注意



side past 黒見セリカ、又は見初められた少女(4)

 

踊り場の下から、肉を切り潰す音が断続的に聞こえてくる。

その音が聞こえないように、聞こえないように、

セリカは自分の猫耳を破れんばかりに押さえつけていた。

 

どうして、どうしてこうなってしまったのだろう?

あの時、余計な会話をせずに別れていたら、ヴィオラさんは獣に襲われずに済んだだろうか?

あの時、輸血液を使わず傷を我慢していれば、ヴィオラさんは助かっただろうか?

あの時、何と声をかけたら、ガスコインさんはあんなことにならなかっただろうか?

あの時、あの時、あの時……

 

if、if、if……

もうどうしようもない言葉の羅列がセリカの頭を駆け巡る。

血塗れのヴィオラさん、壊れたガスコインさん。

その姿が鮮明に記憶の中に焼き付けられる。

 

「だれか、だれか、だれかたすけて……」

 

そう呟きながら、耳を押さえつけながら、

セリカはガチャガチャと乱雑に鍵穴に鍵を入れようとする。

当然のことながら、彼女自身に全く余裕がないせいで鍵は一向に入る様子はない。

けれど、彼女の手は止まらない。絶えず涙をこぼしながら、

必死で腕を動かし、ただひたすらに繰り返し続ける。

 

 

「だれか……わたしたちを、たすけ、て……」

 

 

その時、不意に肉を切り潰す音が止んだ。一拍おいて、声が聞こえる。

 

 

「……どこもかしこも、獣ばかりだ……」

 

 

……ガスコイン神父の声だ。

セリカは思わず、鍵をいじる手を止め振り向くと、踊り場の柵の付近に近寄った。

下の墓地には、3人の人間がいた。

1人は、眠り続けているヴィオラさん。

1人は、獣を切り潰すことをやめ、振り返ったガスコインさん。

もう1人は……

 

 

「……貴様もどうせ、そうなるのだろう?」

 

 

宵闇に照らされた見知らぬ人だった。

全身を真っ黒な衣装で覆い、口元も布で隠され、その様相も、性別も窺い知ることはできない。

ただ、枯れた尾羽が付いた帽子は、その服の色も相まって

どこか死を告げる漆黒のカラスを思わせる。

右腕には凶悪なのこぎりの刃が付いた少し小ぶりな武器、

左腕にはガスコインさんが持っているものより少しシンプルな短銃。

 

その人物はガスコイン神父の姿をみとると、油断なくその武器を構える。

対する、神父の方も斧を構え、大きな吐息を吐いた。

一瞬の静寂

 

……瞬間、

 

 

「オオオオオオオオッッ!!」

「……!」

 

神父が獣のような雄たけびを上げながら突進、相手の狩人は声こそ上げぬものの、

それに応じるように肉薄する。

距離は僅か3mほど、瞬間、神父が左手の短銃を残光が残るほどの速度で発砲した。

正面にまき散らされる散弾、しかし、相手の狩人はそれを体勢をかがめてステップすることで、

まるですり抜けるようにそれを躱した、が、それでできたわずかな隙に

振りの速い神父の斧が襲い掛かる。

 

斬撃、

 

狩人の血が舞い散る。しかし、2撃、3撃目を振り下ろそうとした神父の前に既に狩人はいなかった。

相手は既に、神父の背後へと回り込んでいた。

狩人は右手に握られたノコギリへと力を込めたかと思うと、それで神父の背を袈裟斬りにする。

けれど、浅い。神父は体勢を少し崩しながらも、後方へ飛び退っていた。

それを逃すまいと狩人は神父を神速の踏み込みでそれを猛追する。

再び神父の銃撃。しかし、狩人はそれを銃口付近まで潜り込むという荒業で回避して見せた。

 

連撃、

 

神父の血が舞い散る。神父は反射的に後方へ飛び退ると、獰猛に笑って、

スタミナを回復しながらこちらの様子を窺う狩人を見た。

 

「ウオオオオオッ!!」

 

瞬間、神父が相手目がけて受け身を取り、

一気に距離を詰めたかと思うと更に一瞬駆け足になって間合いに入れる。

そして、地面に斧を叩きつけるように一気に振りぬく……ことはなかった。

 

銃声、

 

神父の攻撃が出るほんの一瞬の隙、そこに相手の短銃が速射された。

着弾の衝撃で神父の体勢が大きく崩れる。そこに、狩人が急接近する。

ノコギリが一体化するように狩人の右腕に溶け込んだかと思うと、

狩人は右腕を大きく引いて腰だめ、それを一気に突き出した。

 

 

ドチャッ!!

 

 

……狩人の腕が、神父の腹を貫通した。

一瞬の溜め。それと共に、狩人は一気に相手の臓物ごと引きずり出すように

右腕を引き抜いた。

神父の大柄な体が投げ飛ばされ、

その傷跡から出たおびただしい量の鮮血を狩人は浴びる。

それは狩りというにはあまりにも鮮烈で、血にまみれていた。

 

「あ、あ、あ……!」

 

セリカの口から、もはや声にすらならない悲鳴がこぼれる。

しかし、

 

「……匂い立つなあ……」

 

倒れ伏した神父の口から、そんな言葉がこぼれる。

もはやある種の狂喜さえ感じさせるような言葉。

倒れ伏した彼目がけて狩人が肉薄、ノコギリを遠心力をかけて振りぬいた。

 

ガキン!

 

瞬間、短いノコギリのような武器が展開し、

まるで鉈のような形状に変形しながら神父の身体を切り裂く。

しかし、それは後方へ飛び退る神父を小さく切り裂くにとどまる。

 

「……堪らぬ血で誘うものだ」

 

神父はそう言うと、斧の柄に手をかける。

 

ガキン!

 

神父の手斧が延長し、リーチが一気に伸びる。

それに対し、狩人の方はいつでも神父の攻撃に対応できるよう

ノコギリ鉈を再び小さく折りたたむ。

 

「えづくじゃあないか……ハッハッハッ……」

 

そう言って、神父は獰猛に笑うと、

先ほどの傷を感じさせない勢いで狩人へと躍りかかった。

 

 

……これは、狩りではない。死闘だ。

 

セリカの脳裏に、ふとそんな言葉が浮かんだ。

もはやどちらの血をかぶったものかわからないほどに血にまみれながら、

なおも相手の鮮血を求めてひたすらに相手の懐へ、

背後へもぐりこみ、絶え間なく苛烈に攻め続ける。

ガスコイン神父の強さは異常だった。

あれだけ傷つけられているというのに輸血液を全く使わず、

なおも力強い攻撃を続ける。

対する狩人はガスコイン神父の隙をまるで分かっているように的確につきながら、

時折、輸血液を投与しながら接戦し続ける。

 

「だ、め。だめ。もう、やめて……!」

 

セリカはそう2人に呼びかける。

見ていられなかった。妻を傷つけられ、正気を無くして戦い続ける神父も、

傷を負いながら、尚も己に輸血液を投与して戦い続ける名も知らぬ狩人も、

けれど、涙でかすれた声は血に酔った2人の狩人に届くことはなかった。

 

「あっ……!」

 

セリカの声が上がる。

今まで大ぶりで強力な攻撃を間一髪で避け続けていた狩人の身体が、

斧の重量を活かした回転斬りをもろに食らい大きく吹き飛ばされた。

その身体が墓石にぶつかり、それを砕きながら跳ねる。

ぐったりとして動かない狩人に、神父が更なる追撃をかけんと接近する。

 

その時、吹き飛ばされた狩人のポケットから、何か四角いものがこぼれた。

ころころと転がったそれは、地面にあたった衝撃で開いた。

 

 

~♪

 

 

辺り一帯に場違いなオルゴールの音が響く。

優しく、そして物悲しい音色が、墓地の中を包み込んだ。

 

(……オルゴールの音色を聞けば)

 

ふと、在りし日のヴィオラの幻影が、セリカの脳裏でよみがえる。

……効果は、劇的だった。

 

「う、あぁ……?」

 

追撃を仕掛けようとしていた神父の動きが止まり、

頭を押さえてその場で静止する。

まるで、彼の散り散りになった正気が、彼を元に戻そうとしているように。

セリカの瞳が大きく見開かれる。

だが、それは狩りという場において、余りにも致命的な隙だった。

神速で起き上がった狩人が滑り込むように神父の背後へと回り込む。

そのノコギリ鉈に、再び大きく力が込められた。

 

 

斬撃、

 

 

その強烈な一撃を背後から決められたことにより神父の体勢が再び大きく崩れる。

溶け込むノコギリ鉈。大きく体勢をひねり、突き出される右手。

 

……貫通

 

背面から突き入れられた腕が、神父の身体を刺し貫く。

腹の傷跡から鮮血と、赤黒い色をした何かがこぼれ出る。

それを引きちぎるように狩人は腕を引き抜いた。まるで雨のような鮮血が、狩人の身体に降り注ぐ。

神父の身体が、力なくゴロゴロと転がる。

 

……もう、見ていられなかった。

 

狩人は倒れ伏した神父に止めを刺そうとステップし接近すると、ノコギリ鉈を大きく振り上げた。

その時、

 

 

「だめっ……!」

 

 

その前に、何か黒い影が潜り込んだ。……セリカだ。

突然出てきた奇妙な少女に、狩人の動きが止まる。

セリカは、辛うじてその場で両手を広げていたが、すぐに、その場に崩れ落ちるように頭を下げた。

絶え間なく涙がこぼれる。嗚咽交じりの舌足らずな声で、セリカは繰り返す。

 

「おねがい、します。ガスコインさんを、ころさないでください。

おねがいします、おねがいします……おねがい……」

「……下がれっ!」

 

しかし、セリカの耳に聞こえた初めて聞く狩人の言葉は、想定外の言葉だった。

年老いて、まるでこちらを案じるような、鋭い警告と呼びかけ。

 

「……え?」

 

セリカが理由もわからず呆けた声を出したその背後で、ゆっくりと神父が立ち上がった。

その布連れの音で、セリカはそのことに気がつく。

 

「あ、ガスコインさん、まって、たちあがらないで。きずが……」

「!!危険だ、離れろっ!!」

 

狩人が再び呼びかける。しかし、もう手遅れだった。

神父の両手から武器がこぼれ落ち、何かを抑え込むように頭を抱え込む。

 

「オ、オオ、オオオ……」

「……ガスコイン、さん?」

 

セリカがそう呼びかけた瞬間。

 

「オオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

ガスコイン神父の身体が光輝いたかと思うと、旋風が辺り一帯に巻き起こる。

物理法則を無視して質量が膨れ上がり、セリカは弾き飛ばされる。

旋風が止み、目を開ける。そこには……

 

 

「……え?」

 

 

大柄な、獣がいた。辛うじて衣服が残っているだけの、ただの獣。

獣が闇雲に暴れだす。

 

一撃

 

呆然とその光景を見ていたセリカの身体が、その凶爪で切り裂かれる。

ヘイローの加護をも上回る攻撃で、セリカの身体から鮮血があふれる。

 

二撃

 

大きくのけぞったセリカの身体が、

もう片方の手で引き裂くように地面に叩きつけられる。ヘイローが、激しく明滅する。

 

三撃

 

下から掬いあげるような斬撃。セリカの身体が、夥しい量の血と肉と共に宙を舞った。

水っぽい音を立てて人の形をした血塗れの何かが地面を転がり、墓石に打ち付けられ、止まった。

 

獣は、何を切り裂いたか理解していない。ただ、目の前にある血塗れの人間に、

頭上の光輪がぽろぽろと崩れ始めている人間に、

さらなる追い打ちを加えんと地面を踏み砕くように助走をつける。

……その時、

 

 

「……がす、こいん……さん」

 

 

血塗れの人間が、言葉を発した。

……それが何を意味するのか、獣は分からない。

ただ、その言葉が、何故か頭を締め付ける。

血肉への渇望で埋め尽くされた思考の奥底で、自分を貫くような何かが叫ぶ。

何かが、叫び続ける。

 

「オオ、!!?グオオォォォ!??!?」

 

獣は、苦痛で悶えた。

 

わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない

 

何か大切なイメージが頭からこぼれてゆく。

愛した誰かが。愛しい誰かが。つい先ほどまで笑いあっていた誰かが。

守りたい何かがこぼれてゆく。

消えてゆく。

消えてゆく。

消えて……

忘却の苦痛に、獣は訳も分からず悶え続けた。

 

 

「……っ!!!」

 

 

その隙を見過ごす狩人ではない。

獣の背後に一瞬で最後まで回り込むと、脚の関節を一閃、獣の身体が崩れ落ちる。

そのまま正面へ転がるように移動すると、右腕にノコギリ鉈を溶け込ませる。

そして、己の総力を持って獣の胸部を刺し貫いた。

 

グシャッ!!

 

巨大な心臓が張り裂け、今まで以上の鮮血が辺りに飛び散る。

 

「オオッォォォ……」

 

今度こそ致命傷を負った獣は、その手が引き抜かれたと同時に地面に倒れ伏すと、そのまま光の粒子となって消えた。

 

……死闘は、終わった。

しばらくその場に立ち止まり、粗い息をついていた狩人だったが、やがて気がついたように獣が消えた場所を探る。

しかし、本来あるはずの目的のものが見つからなかったようで首を傾げた。その時、

 

「ヵみ、…さ、ま……」

 

今にも消えてしまいそうな少女の声が聞こえた。

狩人は何を思っているのかわからないが、その声が聞こえた場所へと向かう。

 

「どぅ、か。ど……う、か……おねが、い。します……」

 

言葉の主は、名も知らぬ奇妙な少女だった。

頭上に浮かぶ赤い光輪はそのほとんどが光の破片となり、残っておらず、血に沈むその顔からも、命の光は消えようとしている。

その今も広がり続ける血の海の中に投げ出さされた右手の中に、狩人は目的の物を見つけた。

……ガスコイン神父との戦闘の最中、形態変化の直前に割り込み、涙ながら助けを求めた少女。

前には会わなかった。親戚か、はたまた知り合いか……何にせよ、痛ましいことだとは狩人も思う。

けれど、そのような悲劇はここ、ヤーナムではありふれた出来事に過ぎない。

少女はもう助からない。同情していたら、次、害されるのは自分だ。

狩人は無情に、その手から古びた鍵を取り去る。

少女はもう手足の感覚もないのか、その事に何の反応も示さなかった。

 

「わ、たしのこと……は。どう、でもいい……から……

ヴィオラさんと、ガスコインさんを……どうか……どうか……」

 

少女はまだ、何か言の葉を紡ぎ続けている。

ヴィオラは近くの墓石で死んでいる女性のはずだ。

ガスコイン神父ももう死んだ。

そして少女も、もうじき息絶える。

……ほんの気まぐれだ。せめて、最後の言葉を聞き届ける証人と、自分がなろう。

狩人は少女の側に、しゃがみ込んだ。

 

________________

 

セリカには何もわからない。急速に失われていく血が、思考そのものを曖昧にしてゆく。

少女はいるかもわからぬ神へと祈る。

助からぬ自分の代わりに、きっとまだ助かる人々の、無事を願って。

……けれど、その願いが叶うことはない。

ヴィオラは死んだ。

ガスコインは獣に成り果て、狩られた。

叶えようにも叶えられない。不可能な祈りだった。

 

しかし、祈りは、聞き届けられた。

神ではない、神の如き[何者か]が、セリカの願いを受け止めた。

彼女のヘイローの最後の一欠片が零れ落ちようとした瞬間。

 

 

姿無き何かが、鼓動した。

 

 

変化は劇的だった。

セリカの周辺から、青白い、醜い小人が現れる。

それは少しずつ、少しずつ、ゆっくり、ゆっくりとその数を増やしながらセリカの身体をよじ登る。

それと共に、セリカの血溜まりが、黒く、黒く、穴のように変化してゆく。

 

その光景を、狩人は息を呑んで見つめていた。

……この景色の意味は知っている。

これは……

 

「あぁ……」

 

死に溶け込みかけたセリカの意識に、やけにはっきりとした声が響いた。

静かで、今にも消えてしまいそうな女性の声だった。

 

「新たな狩人様を、見つけたのですね」

 

瞬間、とぷんと、小さな音を立てて、

セリカの姿が血の中に落ちるように消えた。

 

……また一人、狩人の夢に囚われた。

 

________________

 

「…………様」

 

声が、聞こえる。

 

「……狩人様」

 

優しい、声。

それと共に、意識が段々と覚醒してくる。

……頭に柔らかいようで硬い感触。何か硬いもので撫でられているような感触もする。

けれど、不思議と心地よい。

セリカは、うっすらと瞼を開いた。

 

「狩人様、起きてください」

 

覚醒したセリカの目に飛び込んできたのは、まるで作り物のように美しい……いや、視界の端に映る手から判断するに本当に作り物の生きているような女性の人形が、こちらを覗き込んでいた。

 

「う、うわあああっ!?」

 

人形の膝の上で寝ていたセリカは大慌てで起き上がった。

そこは微かに霧がかった小さな工房の中だった。

奥には、教会を思わせる祭壇がある。

……記憶が曖昧だが、少なくとも眠る前とまったく異なる場所にいることだけはわかる。

 

「……ようやく、目が覚めたか」

「うえええっ!??い、一体何なのよ……?」

 

混乱するセリカに、更に背後から年老いたようで妙に芯の通った声がかかった。

セリカは悪態をつきながら振り返る。そこにいたのは……

 

「え、……?」

 

……あの、狩人だった。帽子と顔の布を取っており、

黒は疎か、灰色すら全く無い白髪と、無数の皺が入っているものの精悍な顔つきが露わになっているが、その服装と、腰に下げられた武器は見間違えようがない。

セリカの記憶が、一気に蘇る。

血に沈んだヴィオラ、獣と化したガスコイン、

そして、生きたまま引き裂かれる激痛の全てが……

 

「あ、あ……ぁ……」

 

セリカはよろよろと後退り、背後の本につまずいて尻もちをついた。トラウマを思い出して絶望する少女を見て、狩人は短く嘆息する。

 

「人形殿、だから私はいないほうがいいと言ったのだ。

というより、何でこのような時にゲールマン殿は……」

「狩人様、ゲールマン様はもう、極めて希薄になってしまわれた故。私もいつ来られるかまでは何とも……」

「……むう」

 

人形の言葉に狩人は渋々といった様子で頷くと、セリカの方へと向き直った。しかし、彼の方もセリカに何と声をかけてよいか迷っている様子だった。

その時、

 

「あ、あれは……あれはなんだったんです、か……?」

 

セリカが、震える声でそう言った。

 

「夢、だったんですよね?そう、ですよね?

ここがオドン教会って場所で、ヴィオラさんも、ガスコインさんも何処かに……」

 

……必死で、あの光景を現実と思うまいとしているのだろう。

狩人は少しの間考え込むと、近くの戸棚から手鏡を手に取った。

 

「自分を見なさい」

 

短く、そう告げる。

セリカは恐る恐るその手鏡を受け取ると言葉通り自分の顔を見た。そこには……

 

「……なに、これ」

 

自分の顔に斜めに大きく傷跡が走っていた。

思わず身体をみれば制服はボロボロで、身体中を古傷が覆っている。極めつけに……

 

「ヘイローが……!」

 

彼女の赤いヘイローは、黒く淀んでおり、まるで瞳のようなものが開いていた。

理由もわからず呆然とする少女に、狩人は語る。

 

「見ての通り、あれは現実だ。ガスコイン神父が獣と化したのも、彼の妻が死んだのも……君が、一度死んだことも全てな。

……その光輪が何かは知らんが、大方啓蒙を得たのだろう」

「え、あ……」

 

矢継ぎ早に告げられる真実に、セリカはただ、何も言うことができず固まる。

……そうするうちに、現実が彼女にジワジワと押し寄せてくる。

もはや、涙すら流すことが出来なかった。

 

「……だったら、だったらここは何なのよ!!」

 

半狂乱となったセリカから、どうしようもない悲鳴が漏れる。

そんな彼女を、狩人は静かに見つめる。

 

「私が死んだなら、ここはどこなの!?まさか、あなたも殺されて天国にいるなんて言うんじゃないでしょうね……!」

「……そうでもあるといえるし、そうでないともいえる」

「……はぁ?」

 

そんな彼女への狩人の返答は、極めて曖昧なものだった。

その言葉に、セリカは思わずそう聞き返す。

狩人は言葉を続けた。

 

「君は見初められたのだ。私と同じように、この終わらぬ夢の中に閉じ込められた」

 

そう言うと、狩人はセリカに手を差し伸べた。

 

「君を先輩として、そしてこの場所の主、ゲールマン殿に代わり歓迎しよう。ここは狩人の夢、一時の間、ここが君の家となる」

 

……悪夢は、終わらない。

 

 




どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?
狩人セリカ、ここに爆誕。
テラー化はしてませんがある意味もっと酷いことになりましたね。
やったねセリカちゃん、これで何回でも死の苦痛を味わえるよ!
因みに、まだセリカちゃんは第一話ほどぶっ壊れてはいません。まだ、ギリギリ笑えます。ギリギリ。


因みに、先輩狩人は私の狩人様を使わせていただきます。
過去はプロフェッショナル、モノクルの似合う爺さんです。
最近、気でも違えたのか人形ちゃんとお揃いの服を着てみたところ、おばあちゃんにしか見えなくなりました。なんでや。
装備は短銃ノコ鉈狩人装束とか言う基本中の基本。
いや、使いやすくて……うん。

ということで冒頭にも書きましたが次回は現在のお話となります。
どうも変な大人が学校にやってきたようで……?
じゃ、ではでは~

セイアちゃんの仕掛け武器はどれがいい?(上位2種)

  • 獣肉断ち
  • 教会の杭
  • ゴースの寄生虫
  • 瀉血の槌
  • 月光の聖剣
  • 爆発金槌
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