すっごくどうでもいい雑学~。
一億円分の純金は大体1L強~。
……そしてインベントリを見れば粗大ごみが如く余りまくる輝く硬貨。
勝ったな風呂食ってくる。
ホシノがセリカの秘密の一端を知ってしまってから数日が経ったある日のことだ。
アビドス対策委員会のメンバーと先生は教室に集まり、机を囲んでいた。
ホシノはうつらうつらと船を漕ぎ、
ノノミはいつも通りニコニコと笑っている。
シロコもいつも通りの無表情だが、心なしか落ち着きがない。
アヤネはホワイトボードの前に立って至極真面目な表情になっており、
その横に先生もたっている。
そして、セリカはというと……
「……うにゅ」
少し前にふと血が欲しくなり輸血液を使用したせいでひと時の酩酊状態にあった。
……もう少し使う時を考慮に入れればよかったと思うが、
使ってしまったものはしょうがない。
「"何だか、今日はセリカも眠そうだね"」
「ですね☆何だか表情がとろんとしててかわいいです」
「……昨日、遅くまでバイトしてたから……」
幸いなことに他のメンバーは上手い具合に勘違いしてくれたようだ。セリカはこれ幸いと適当な言い訳を言う。
しかし、睡眠時間を返上してまでバイトをするというのは何か思うところがあったらしい。
みんな……特にアヤネが心配そうにセリカを見る。
「セリカちゃん……頑張ってくれてるのはうれしいけど、まだ退院したばかりだし、あんまり無理しなくていいんだよ?」
「……大丈夫、自分の身体のことは自分が一番わかってる……うむむ」
セリカはそう言うと、いかにも寝ていませんと言うかのように大きく伸びをすると、言葉を続けた。
「でも、心配してくれてありがと」
「……本当に気をつけてね」
アヤネはセリカにそう言うと、あらためて正面を向き、咳払いをした。
「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」
と、そう宣言したところで何とも言えない表情になる。
「本日は先生にもお越しいただいたので、
いつもより真面目な議論ができると思うのですが……」
「は~い☆」
「もちろん」
その言葉に真っ先に答えたのはいつも議論がグダグダになる原因2名である。
ノノミはからかっているのか何なのかよくわからないが
シロコの方は至極真面目ではある。
だが如何せんどちらも……
特にシロコの提案する案が高確率であまりにもぶっ飛んでいることが多い。
「……案外、今回も似たような感じだったりして」
「本当にありそうなことを言わないでくださいセリカちゃん……」
2人の様子を見てぽつりと呟いたセリカに
アヤネは既に疲れを感じ始めたといった表情で答える。
「"い、いやいや。まだやってみないとわからないし……ね?
普段の感じはよくわからないけど……"」
「うんうん先生の言う通りだよ~。おじさんも今回は至って!真面目にやるよ~」
早くも雲行きが怪しくなってきた会議に先生がフォローに回るが、
それに便乗したホシノの発言のせいでどうにも締まらない。
アヤネはというとこれに対し、とりあえず見ないふりを決め込むことにしたらしい。
「それでは早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題……
学校の負債をどう返済するかについて、具体的な方法を議論します。
ご意見のある方は挙手をお願いします!」
「はい!はい!」
真っ先に手を挙げたのはホシノだった。
先程まで眠そうにしていたのに妙に元気なその姿に、アヤネは嫌な予感が更に強まるのを感じた。
「えっと、はい。3年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが」
「うむうむ、えっへん!」
指名されたホシノは椅子から立ち上がると、
わざとらしく咳払いしてその提案を話し始めた。
「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる5人だけってことなんだよ。生徒の数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいな超マンモス校ぐらい、桁違いな生徒数なら、毎月のお金だけでも結構な金額になるはずー」
「"……確かに、単純だけど結構大きい差だよね"」
ホシノの切り出した問題提起は案外真面目なものであった。
先生がその言葉に納得したように頷く。
「そうそう。だからまずは生徒数から増やさないとねー。まずはそこからかなー。そうすれば、連邦生徒会に議員を捻出する余裕も出来て、連邦生徒会での発言権も手に入るし」
「鋭いご指摘ですけど、具体的にどうやって…?」
珍しく真面目なホシノにアヤネも警戒を解いたらしい。
その生徒を増やす手段とやらを尋ねる。
それに対して、ホシノはにへらっと笑って言った。
「簡単だよー、他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」
「は、はい!?」
「"拉致……拉致っ!??"」
先生とアヤネの表情が驚愕で染まる中ホシノはどこかからかうような笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー。うへー、これで生徒数爆増間違いなーし!」
「それ、興味深いね。ターゲットはトリニティ?ゲヘナ?それともミレニアムとか百鬼夜行?狙いをどこにするかによって戦略を変える必要があるかも」
「"シロコー!??"」
ホシノの犯罪スレスレと言うか明確な犯行宣言。
更にそれにシロコが食いついた。
先生の表情が真っ青になる中、冗談のつもりで言ったのかホシノの額に冷や汗たらり。
……が、結局まだふざけることにしたようだ。
「……えーっと、うーん……そうだなあ、トリニティ?いや、ゲヘナにしよーっと!」
襲撃計画を立て始めた犯罪者予備軍2名をアヤネが慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっと待ってください!そんな方法で転校とかありなんですか!?それに、他校の風紀委員が黙ってませんよ!?」
「アヤネちゃんの言う通り。それをするぐらいだったらヘルメット団みたいな行き場のない不良を寝床と引き換えにうちに転入させてこき使ったほうが楽。他の自治区を敵に回す必要もないし」
「セリカちゃんはセリカちゃんで何で大真面目に提案してるんですか!?」
自分の他に唯一のマトモ枠だった筈のセリカに裏切られ、アヤネは悲鳴に近い声をあげた。
「うーん。でもそれだと、うちがその子たちを養わないといけなくなるから財政がカツカツになっちゃうよー?」
「でしょうね。じゃあこの話は無し」
「うへ~やっぱそうだよねー?」
……しかし、どうもそれは早とちりだったようだ。
セリカなりにこの話を終わらせようとしていてくれたらしい。
「"取り敢えずこの話は一旦なし!次行こうか次!!"」
これ幸いと先生は話を断ち切った。会議は振り出しに戻る。
……最初の意見の時点でおかしかったこの会議。
次に手を上げたのはシロコだ。
「いい考えがある」
「…はい、2年の砂狼シロコさん」
先程ホシノのバスジャックに乗っかった時点で嫌な予感しかしないが、当てないわけにもいかない。
警戒しつつアヤネが彼女を指名すると、
シロコはキリッとした表情で言った。
「銀行を襲うの」
「……はい!?」
「"シロコさーんっ!!??"」
バスジャックとどっこいどっこいかそれ以上の犯罪をすることを堂々と宣言した。
「確実かつ簡単な方法。ターゲットは選定済み。市街地の第一中央銀行。金庫の位置、警備員の導線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから」
「さっきから一生懸命スマホ見てるなって思ってましたがそれですか!?」
しかも、冗談のつもりらしかったホシノと違い明らかに実行するつもりで計画を立てている。ついでに言われれば今にも実行すると言わんばかりに目を輝かせている。
「5分で1億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた」
そう言うが早いかシロコは紙袋を取り出したかと思うと中身をさっと机の上に広げた。
そこから出てきたのは、対策委員会の面々人数分……
しかも、それぞれに合わせてカスタマイズされた色とりどりの覆面であった。
シロコはいつの間にか2と書かれた自分の分をかぶっている。
「いつの間にこんなものまで……」
「"えぇ……えええぇ……"」
「うわー、これ、シロコちゃんの手作りー?」
「わあ、見てください!レスラーみたいです!」
あまりの用意周到さに呆れるというか引いているアヤネと先生。
そんな彼女らを置いてけぼりに自分の覆面を手に取って
ワイワイとはしゃぐノノミとホシノ。
もはや何も言うまいと遠い目になっているセリカ。
……この惨状を会議と呼ぶものはそういまい。
「いやー、いいねぇ。人生一発でキメないと。ねえ、セリカちゃん?」
「……先輩がそれでいいならいいけど」
「あり?」
セリカをからかうつもりでホシノは言ったのだろうが、
思ってた反応と全く違ったため首を傾げる羽目になった。
残念ながら、セリカの倫理観とか常識といった諸々は
獣狩りの夜により残らず消え去っていたのである。
今度こそ常識枠だったはずの幼馴染から裏切られ絶望するアヤネ。
それを見たセリカはハッと気づいたような動作をすると心なしか気まずそうな表情になった。
「……やっぱり銀行強盗はやめたほうがいいかも。万が一足がついた時が面倒だし」
「セリカちゃん……そういう問題ではない気が」
微妙にズレた事を言うセリカにアヤネは弱々しいツッコミを入れた。
「"と、兎も角犯罪はダメ!!はい次々!"」
「……むぅ」
「"膨れっ面してもダメだからね!?"」
わざわざ覆面を脱いでぷくーと頬を膨らませるシロコに先生はそう言った。当然である。
ちっとも議題の進まない、会議の何たるかを問いたくなる状況になりつつあるが会議は続く。
次に手を上げたのはノノミであった。
「あのー!はい!次は私が!」
「はい……2年の十六夜さん。犯罪は抜きでお願いします」
「今度の案はクリーンで確実ですよー!」
今までの惨状により初っ端から釘を刺すアヤネだが、ノノミの表情は崩れない。
いかにも余裕そうである。
そして、そのクリーンな案とやらを言った。
「ずばり!アイドルです!スクールアイドル!」
「"あ、いいね!みんなカワイ「「却下」」あるぇ!?"」
即答だった。ただし、食い気味に、いきなりノリノリになった先生の言葉を遮るようにそう言ったのはアヤネではなくホシノとセリカであった。
自信満々だったが故にノノミは若干ショックを受けたようである。
「えー、いい案だと思ったんですけど……」
「ホシノ先輩……じゃないや。小鳥遊委員長なら特定のマニアに大受けしそうだけど私はアイドルなんて出来ないって」
いつも表情が死んでいるセリカだが、そう答える彼女は心なしかいつも以上に表情が死んでいるように見える。
そんなセリカから話の矛先を向けられたホシノだが、いつものゆるゆるとした表情のまま肩を竦めて首を振った。
「いやいやセリカちゃん。こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて人間としてダメっしょー、ないわー、ないない。
そう言うセリカちゃんこそクール路線で売り出せば行けそうだけど」
ホシノの言葉に、セリカは小さく、自嘲するように笑う。
「シロコ先輩とキャラが被るし、そもそも笑えないアイドルはダメでしょ?それに……ね」
「……あー」
最後の部分だけ言葉を濁らせるセリカ。
けれど、ホシノがその言葉から例の2人だけの秘密を察するのには十分だったようだ。
「うん、たしかにダメだねー。兎も角、この案は無しだね。うんうん」
「……何か隠し事?」
とはいえ、ここまで思わせぶりな事を言えば、当然何かある事をみんな勘付くだろう。特に、真っ先に何か思ったらしいシロコがホシノにそう尋ねる。
それに対し、ホシノはパタパタと手を振った。
「いやいやー。いくらみんなと言えど、セリカちゃんの恥ずかしーい秘密はいえないよー。おじさんはカワイイ後輩ちゃんの秘密を守るのもお仕事だからねー」
「ん。その情報、言い値で買う」
「私も知りたいです☆なのでこのゴールドカードを……」
「"やめてあげてっ!?"」
それらしく誤魔化しにかかるホシノだったが、
シロコとノノミがそれに思わぬ追撃を仕掛ける。
先生が慌てて止めに入る中、セリカは2人の様子をじっと見た。
……ノノミはいつものようにからかっている様子らしい。
けれど、シロコはそれとは違う何かを探るような目つきだった。
そして、そんな2人に対してホシノは答える。
「ダーメ。おじさんをお金で釣ろうってそうはいかないよー」
……いつものホシノなら、少しだけ釣られたように見せたり、
場合によっては秘密の一端をそこはかとなく滑らせてもおかしくない。
けれど、今回はその秘密について固く口を閉ざしたままだった。
「……そう」
「うーん、そこまで言われたらしょうがないですね……」
しゅんとするノノミに対し、シロコはスッと目を細めたものの、この場ではこれ以上聞かないことにしたらしく、引き下がる。
「でも、思ったより受けが悪いですね……
決めポーズも考えてたのに……」
セリカがひとまず追及を免れたことに一息つく中、
ノノミは未だスクールアイドルのことが諦めきれないのか、
そう呟く否やなんとも言えない微妙なポーズを取る。
「水着少女団のクリスティーナでーす♪」
「……もうちょっとマシにならなかったの?」
「えー…セリカちゃんひどい……徹夜で考えたのに……」
「徹夜……」
ド直球な感想を言うセリカにしょぼくれるノノミ。
……こんなのを考えるのに徹夜したのか。
と正直思ったがそこまでは辛うじて口には出さなかった。
さて、これでホシノ、シロコ、ノノミと順番は回り、司会を務めるアヤネと先生を除けば残るはセリカとなった。
セリカは1つ息をつくと口を開く。
「じゃあ、流れから言えば最後は私かな?」
「はい……1年の黒見さん。お願いします。
……本当にお願いします」
今まで碌な案が出てこなかったためかアヤネの声が疲れ切っているように思える。
セリカは表情にこそ出せなかったものの同情した。
……というか会議をするたび大体こうだったな。
「じゃあ、ついでに稼いできた分のお金を渡すね」
そんな事を考えながらセリカは1つ声をかけると机の下に手を入れた。
ドスンッ
次の瞬間、机の上に大きなスポーツバックが重々しい音を立てて置かれた。
しかも、いつもセリカが愛用しているものではなく新品の……
明らかにそれ専用に買ったと思われるものである。
「「「「「"……え?"」」」」」
その場にいる全員が呆然とする中、セリカは淡々と話を続ける。
「大体6千万ちょっとあるから。それを踏まえて話すんだけど……」
「ちょ、ちょっと待ってセリカちゃんっ!?」
何事もなかったかのように話すセリカに当然の如くアヤネから待ったがかかった。
しかし、当の本人は何故待ったがかかったのか毛ほども理解していないらしく首をかしげる。
「……?何か問題?」
「"大アリだよっ!?セリカって1週間前まで入院してたんだよね!!?"」
「ん、短期間でこんなに稼ぐ方法を早く教えるべき」
そんなセリカに一斉に他のメンバーが詰める。
……若干1名意図が異なるようだが気のせいだろう。多分。
その時、何かに気がついたのかアヤネがガチリと固まったかと思うと顔を真っ青に染める。
「……まさ、か。
セリカちゃん、遅くまでしてるバイトって……」
「それだけはあり得ないからね」
心配してくれるのはうれしいが自分がそういうことをしていると思われるのは心外である。
そもそも、化粧の手が回っていない身体の古傷を見て尚欲情する輩など変態しかいるまい。
セリカにそう言われてから自分が何を言っているのか理解したのか、アヤネは顔を真っ赤にして俯いた。
「うへ、アヤネちゃん。流石にそういうのはおじさんもからかい辛いよー」
「う、ぅうぅ……」
「"はい、そのへんそのへん。それで、セリカ。一体どうやってここまで?"」
先生に問いかけられたセリカは軽く頷くと、あらかじめ用意していた言い訳を話し始めた。
「この前ね、確か……ゲルマニウム麦飯石ブレスレット?
とか言うのを買ったの」
「"……ん??"」
……さて、最後の希望の星、セリカの話までも雲行きが既に怪しくなってきた。
その場にいる全員がシロコとは別方面での明確な嫌な予感を覚える。
しかし、セリカの話は止まらない。
「一攫千金が狙える金運アップの御守りらしいんだけど、
その日の帰りに宝くじを買ったらこの通りよ」
「ん……ん???」
「"え、え?セリカ、そのブレスレット売ってる所のチラシとかって……?"」
「一応持ってる。あと、買ったブレスレットもあるけど」
そういうと、セリカはいつも使っているスポーツバッグの方からポスターを取り出した後、軽く服の袖を捲ってそのブレスレットとやらを見せた。
先生はポスターを受け取ると、それをじっと穴が空くほど見る。
他のメンバーもその脇から若干慌てた様子でポスターを覗き込んだ。
やたらと派手な装飾。書かれている紹介文はよく読めば全体的にふわっとして中身がなく、具体性が一切ない。
そして若干街の中心部から外れた場所への誘導……
……明らかに、詐欺である。
「……みんなの分も買った後、もっとあれば更に効果が出るんじゃないかなって思って買いに戻ったんだけどいつの間にか業者さんがいなくなってて、代わりにヴァルキューレの人がいたの。結局なんだったのかしら?」
ポスターを見て呆然とする先生らにセリカは追及を免れるためそう付け足しておく。
因みにこの話、セリカがポスターを見てブレスレットを1つ買ったことは本当である。何せあちらの世界で何かしらの効果の宿る宝石(?)のような血晶石を見てきたから試さないわけにはいかぬと思ったためである。
しかし、実際に買ってみれば装備しても何の効果もなかった。
十数分後、ズタボロになった詐欺業者がヴァルキューレに突き出されたのは言うまでもない。
因みに業者を突き出した際の褒賞金はもとより売れ残ったブレスレットと自分が支払った分の金はセリカがちゃっかり貰っていった。
他の売上は足がつくと面倒なので置いていった次第である。
ということで買ったブレスレットは1個は自分用兼輝く硬貨での稼ぎを誤魔化す用、1個は人形へのお土産用、後は質屋等で売り捌くために丁重に保管されている。
「だからみんなこのブレスレットをつけて宝くじを買えばお金をすぐに稼げるかなって思ったんだけど……どう?」
セリカは自分の意見をその言葉で締めくくった。
……さて、ある程度筋の通った言い訳はした。後はみんながどう出るかである。
セリカが様子を伺う中、最初に口を開いたのはアヤネだった。
「セ、セリカちゃん……それ多分、詐欺だよ?多分……」
「あれ、そうなの?」
アヤネはそう指摘するも、実際に結果が出てしまった為か口調が途切れ途切れである。
それに対しセリカは適当にとぼけた。
「いやー、アヤネちゃんわかんないよー。もしかしたら本当にそんな効果があるのかも?」
「う、それはそうですけど……そう思っちゃいますけど!?
多分、偶然ですし……」
「……まあ、買っちゃったのは仕方ないから渡すだけ渡すね。
くれぐれも過信しないように、ということで」
そう言ってセリカがブレスレットを取り出したその時だった。
ガシッ
「……え?」
セリカの手が掴まれたかと思うと、まるでそこに願いを込めるように手のひらで包まれた。
……その奇行をとったのは先生である。
……反応、出来なかった……?
その移動速度に歴戦の狩人であるセリカすら反応出来なかった。
……白い花の散る庭園で舞うゲールマン。
その人の
先生のセリカをみる瞳は、ある種の怨念のそれに近い執念を放っていた。
……セリカは思わずレイテルパラッシュに手を伸ばしかけた。
自身に命の危機が迫っていたとは露知らず、先生が口を開いた。
「"セリカさん……いや、セリカ様。
何卒、何卒そのゲルマニウム麦飯石ブレスレットを
一時的に貸し出してはいただけないでしょうか?"」
「……え?」
思ってもみない言葉にセリカは本気で呆然とした声をあげた。
その蕩けた瞳が、啓蒙を得ている瞳が、理由もわからない物を見たといった様子で見開かれる。
回りのみんなも呆然としている。
しかし、先生は止まらない。
「"そのブレスレットの力があれば……ソシャゲのガチャで爆死したり、薄給のせいで泣く泣く食費を削って再販に走ることもないと思うんですっ!!いや、FXで一発儲けてみんなの借金を返して残りであのプレミア付きのチタニウムフィニッシュフルアーマー超合金ロボを買うことだって!!!"」
セリカは拘束されていない方の手で思わず鎮静剤の入った水筒を手に取った。というか飲んだ。
しかし、適切に使用された為かいつものように酩酊することはなかった。
目の前の先生からは、悪夢への旅路で幾度となく狂死させられたほおずきに近い何かを感じる。
「"どうか何卒、何卒っ!!!"」
……遂に例の歌声の幻聴まで聞こえ始めた。
セリカはもう一度鎮静剤を飲んだ。
今の自分に血の槍が生えていないか本気で不安になる。
彼女は、久方ぶりの明確な命の危険を感じていた。
「"どうか何と「えい」ぐはっ!?"」
それに終止符を打ったのはシロコだった。
的確な斜め45°の手刀が先生の側頭部に直撃。
その意識を刈り取った。
気絶して目を回す先生をしばらく見た後、ようやく危機が去ったことを実感したセリカはほっと胸を撫で下ろした。
「……ありがとうシロコ先輩。助かった」
「ん、礼には及ばない」
「うへ、お金は人をおかしくするんだねー……」
「……もしかして先生がおかしくなったのって、
前の騙し討ちに近い形でラーメンを奢ったからじゃ……」
「あ、あれぇ?ひょっとしてこれ、おじさんのせい……?」
思わぬ飛び火の仕方をしたせいでホシノは冷や汗を垂らすと、
慌てて仲間たちを見回した。
……その視線は須らく冷たい。
「……あ、ははは……次から気をつけよっかなー?」
ホシノはそう言って視線を逸らした。
どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?
ということでアヤネちゃんのちゃぶ台返しはやべー奴のせいでキャンセルされました。
誰だこんなイカれたやつに教員免許与えたやつ。
とはいえ、本当だったら便利屋68登場まで描写するつもりだったのが
思った以上に長引いてしまった……
次回こそ、便利屋68登場です。お楽しみにー