いつもありがとうございます!
私はつい先程フンおじのモツ抜きを嗜んできました。
動き早すぎてパリィできないとばかり……
できるようになったらめちゃくちゃ安定しました。
「ありがとうございました。またのお越しを」
「お仕事うまくいきますように!」
「あはは!了解!あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!」
それからしばらくの時間が経ち、余程お腹が空いていたのか10人前のラーメンをぺろりと平らげたアル達は、柴関ラーメンを後にしていた。
それを、先程の会話で仲が深まったノノミらが見送る。
その後姿が見えなくなったころ、アヤネがうれしそうに言った。
「アルさん達も苦労してるんですね……私達も頑張らないと」
「……そうだね、アヤネちゃん」
その言葉になんとも言えない表情でセリカは相槌を打つと、隣で相変わらず呆けている先生の背中を軽く叩いた。
「ほら先生。いい加減に目を覚ましたら?」
「"アバ……んみゃ?あれ?私のチャーシュー麺は?"」
「途中でボケっとしてたから作るタイミングをずらしてもらったの。
そろそろできるはず」
「"え、あれ、そうなの!?"」
折角出したラーメンが伸びてダメになることを危惧した大将の機転により、
先生の本日の昼ご飯は守られた。
うれしそうにラーメンを食べる先生の様子もそこそこに、セリカはバイトから帰る支度をし始めた。
「む、セリカも帰るの?」
「元々今日は短めに時間を入れてたから。それより……」
セリカはそこでいったん言葉を区切ると、
先生らの方を見た。
「さっきのお客さんの
「え?確かにお仕事をされてるって言ってたけど……」
キョトンとするアヤネ。ノノミや先生も似たような様子だが、
シロコは何か察しがついたのかポンと手を打った。
最後に、ホシノはと言うと相変わらずにへらっと笑っていた。
そんな彼女に、セリカはジト目を向けた。
「ホシノ先輩……気がついてたでしょ?」
「いやー、確信はしてなかったからねー。
セリカちゃんに言われて漸くって感じかなー?」
「"え、ちょっと待ってなんの話?"」
セリカとホシノの謎の……且つ不穏な話に、
先生が慌ててつゆを飲み干すとそう話しかけた。
それに対し、制服に着替えるべく更衣室に行こうとしていたセリカは
チラリと先生の方を見ると端的に告げた。
「あの仕事の内容、うちの襲撃だよ」
「「「"え?"」」」
アヤネとノノミ、そして先生から、呆然とした声が出た。
________________________
さて、場所は変わってアビドス高校へ移る。
混乱を極める3人のこともあり取り敢えず落ち着いて話せる場所を
セリカが提案した結果である。
「つ、つまり、セリカちゃんの言葉が正しければアルさん達が私たちの敵……
いや、それより依頼を受けたということは
ヘルメット団の一連の襲撃にも黒幕がいることに!?」
「アヤネの言う通りかも。今思えば、ただの不良部隊にしては装備が整いすぎてた」
セリカが柴関ラーメンで盗み聞きした内容を伝えたところ、
真っ先に反応したのはアヤネだった。
続けてシロコもその予測を裏付ける事を思い出したらしい。
「まあまあ、今はそれよりあの子たちがいつ来るかじゃないかなー?」
このまま行くとそのまま考察の世界に飛び立ってしまいそうな2人を
ホシノが押しとどめる。その言葉に先生も頷いた。
「"だね。それでセリカ、一応聞くけどどんな風に襲撃してくるとかは……"」
「さすがにそこまでは言ってなかった」
「"だよね……"」
少しでも相手の情報がわからぬものかと先生がそう尋ねるも、
それはあえなく空振りに終わった。まあ、当然といえば当然か。
さて、そんな会話もそこそこにセリカは別のことを考えていた。
即ち……柴関ラーメンで見る限りの彼女らの装備である。
セリカは基本的に戦闘時は相手が必要以上に怪我をしないように加減している。
(尚、誰にも見られていない時や、
万が一大切な人が重傷を負ったりした場合はその限りではない)
本人的には殺した方が手っ取り早いと思ってはいるが、
基本的に対策委員会の仲間と行動する都合上、
その眼前でヤーナムと同じように狩りをするのはためらわれる。
その点、ヘルメット団は都合がよかった。
誰もがヘルメットをかぶっているので
頭部に多少雑な力配分で直撃を与えてもどうにかなっていたのだ。
けれど、便利屋はそのあたりの装備が見たところない。
そうなると水銀弾はまず使えず、
レイテルパラッシュのみで戦うことになるが、
軒並み強化は終わらせているので力加減が難しい。
……となれば、だ。
セリカは丁度近くに座っていたホシノの肩を誰にもバレないよう軽くたたいた。
「……んみゃ?あれセリ……」
「先輩、ちょっと
そのことに気が付いたホシノが声を出そうとするが、
セリカはそれを押しとどめると素早く、端的にそのことを告げた。
余りにも簡潔な言葉だったが、
ホシノがそれを察するには十分だったようだ。
ホシノがこくりと頷いたのを確認すると、セリカは立ち上がった。
「ちょっとお手洗い行ってくる」
「えっ、あ、はい」
唐突かつあまりに急な宣言に一同が混乱する中、
セリカはすぐに教室を出る。
そのまますぐ隣の空き教室に駆け込む裏では、
ホシノが先程の行動をいい塩梅にごまかしてくれているようだ。
「……さて」
空き教室の教卓の陰にセリカは身を隠すと、懐から一枚の黄色の紙切れを取り出した。
そこには黒いインクで、吊り下げられた人を思わせる謎の印証が描かれていた。
セリカはその形状を目に焼き付けると、
瞼を閉じ脳裏に焼き付くように存在するそれを鮮明に思い起こす。
やがて眠りに落ちるような感覚と共にセリカが目覚めると、
その場景はいつの間にか屋上の、歪んだ灯りのすぐ傍へと転じていた。
「……相変わらず便利なものね」
手元でいつの間にか焼き切れていたその紙片を見てセリカはそう呟くと、
すぐに足元の使者たちにそっと手を伸ばした。
セリカが再びアビドス高校に戻ってきた時、
幸いなことに敵の襲撃はまだ起こっていなかった。
一度夢を行き来するだけで、状況が大きく変化していたことがかなりあった故、
セリカはそのことに安堵しながら、
対策委員会の教室に向けて一気に階段を駆け下りた。
その傍らに吊り下げられたレイテルパラッシュには、
ついているはずの真っ赤な宝石がどこにもなかった。
________________________
「ええと、一応アルさん達の組織……『便利屋68』という部活について調べがつきました。リーダーである社長のアルさんが率いている、ゲヘナで危険かつ素行の悪い生徒たちとして知られているらしいです」
「うーん……パッと見そうは見えなかったんですけどね」
アヤネの説明に、ノノミがそう言って首を傾げる。
確かに、紫関で積極的に話していたアルはどうあがいても善人という印象が強く、
とても[危険かつ素行の悪い生徒たち]には見えない。
その言葉に答えたのはセリカだ。
「多分、実質的にあそこを取り仕切っているのは白黒の髪の奴。
私たちの所属に一番早く気が付いてたし、頭の回転も相当速い。
ムツキっていうのもああ見えて周りをよく見てる」
「なるほど……あくまでアルさんは表立った社長、と……」
セリカの言葉にノノミはポンと手を打った。
……セリカは自身の経験を頼りにそう予想を立てたが、
まさかそれが盛大に外れているなど知る由もない。
「それで、戦術に特徴とかはない?」
「うーん……特に記載はないかな。
強いて言うなら爆発による被害が多いとしか……」
「わかった、アヤネちゃんありがと」
爆発による被害が多い……即ち、相手は爆発を多用する戦術をとることが推測できる。
セリカがそう考えたその時だった。
タブレットを時折確認していたアヤネが、何かに気が付いたらしい。
その表情が鋭くなる。
「皆さん、校舎より南15km地点付近で……あれ、かなり大規模な戦力……?」
てっきり便利屋のみで襲撃してくるものと思っていた為か、アヤネの表情が怪訝なものに変わる。
「"あれ、便利屋68ってそんなにたくさん大きな会社だったの……?"」
「い、いや。便利屋達以外は日雇いの傭兵みたいです。後方には戦車も2両ほど確認できます!」
先生の言葉に、敵戦力を確認していたアヤネが慌ててそう答える。その言葉で、ホシノは何か察したみたいだ。
「傭兵って意外と高かったはずだしー……なるほどねー、それであんなにお金がなかったのかな?」
「でも、物量は単純に厄介。食費を削ってまで傭兵を雇って戦車まで用意するなら、余程失敗したくないのかも……
いや、今はいいや」
シロコは何か考え込んでいた様子だが、すぐにそれを打ち消すと顔を上げる。そして、お互いに頷き合ったところで先生が宣言した。
「"それじゃあみんな、作戦開始と行こっか"」
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校舎から出たアビドス対策委員会は、当初の予定通り校門の正面に展開する。前方は度重なるヘルメット団との戦闘により至る所に瓦礫が散乱した着弾痕が出来ており、辛うじて車1台が校門前に入れるスペースのみ整えてある惨状であった。
もっとも、前方から迫る戦車の前にはそのような悪路は大して通用しないのだが。
そして、その戦車と傭兵らの先頭に立つのは、つい先程会ったばかりの人物であった。
「ぐ、ぐぐっ……」
……そのリーダーであるはずのアルはかなり辛そうな表情であったが。
ズキリ
セリカの脳裏に記憶が瞬く。
先程知り合い、仲良くなった人と戦うことを躊躇うアルの姿が、過去の自分を見ているようでなんとも言えない気持ちになる。
丁度、声が届く程度の距離であったため、
セリカは気がつけば声をかけていた
「……私が言うのもなんだけど、覚悟の1つぐらい決めてきたらどうなの?」
「あははっ!ほら、アルちゃん。バイトちゃんにも言われてるよ?」
「う、うるさいわねっ!!覚悟の1つや2つ、疾うの昔に決まってるわよ!!」
敵からも身内からもダメ出しされ、アルは思わず虚勢を張るが、
残念ながらそれに力はない。
慌てる自分の社長を見てニヤニヤと笑うムツキ。
そんな彼女はというと、随分と余裕そうな雰囲気だ。
「うへ、そう言う君は折角ラーメンサービスしてもらったのに罪悪感とかないわけー?」
「あははは!その件はありがと。でもそれはそれ。これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす。特に、今回は戦車の供与まで受けてるからね」
ムツキにからかうようにホシノが言うが、本人は何処吹く風、と言った様子だ。
その言葉に、カヨコの方も同意する。
……セリカが勘違いする程には、この2人は仕事に対する覚悟が決まっていると言ってもいいだろう。
アルもプライドはあるのだろうが如何せん甘すぎる。
「……なるほど、その仕事が便利屋と」
「もう!学生とかならもっと健全なアルバイトとかあるじゃないですか!」
「ちょっ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!
ちゃんと肩書きだって……」
「そんなことはどうでもいい。誰の差し金?」
ノノミに対し反論するように我らが会社について語り始めようとしたアルだったが、
その言葉はセリカによって一瞬で遮られた。
自身の仕事をアルバイト呼ばわりされた挙句、
それに言い返そうとしたら遮られ、
更に依頼を遂行する者としてまず言ってはならないようなことを言えと言われる……
流石に温厚なアルも、この状態で怒りを抱くなという方が酷だろう。
「あのね、さすがにそんなこと言うわけないjひゃああああっ!!?」
若干の怒気を混ぜてその言葉に答えようとしたアル。
しかし、次の瞬間。それは凄まじい速度のステップと共に突き出された
レイテルパラッシュを前に霧散した。
スナイパー故の動体視力の良さ故にかろうじて回避したが、
鈍色に光る切っ先が自分を掠めるように通過する様はあまりにも心臓に悪い。
「え……ちょ、アルちゃんっ!?」
「アル様!!」
「セリカちゃんっ!?」
余りにも突然のことに便利屋の仲間たちだけでなく
対策委員会の方までそのことに驚いた。
無理な回避をしたせいで体勢を崩したアルにセリカは更なる追撃を加えようとしたが、
仲間に呼び止められたためくるりと振り返った。
「どうしたの?」
「"いやいやどうしたも何も、何で急に攻撃したの!?"」
先生がそう尋ねると、セリカとても不思議そうな表情になった。
「だって、これ以上情報を持ってなさそうだったから。
それに、不意打ちは基本。そうでしょ?」
「"う、うーん……"」
つまりセリカが言うには、だ。
欲しい情報は聞きつくしたからこれ以上の会話は無意味。
だったら不意打ちしてさっさと片づけた方がいいだろうと。
……この上ない合理思考である。
行動としては一概に間違っているとは言えないが故に
先生らはなんというべきか頭を悩ませた。
唯一シロコだけはなるほどと頷いていた気がするが気のせいだろう多分。
その時だった。
「……る、せない」
セリカのすぐ傍から、凄まじい憎悪の籠った声が響き渡った。
瞬間、ヤーナムで強制的に鍛えさせられた危機予測能力が働いたセリカは
反射的にローリングで側面方向に回避行動。
瞬間、
ダアンッ!!
轟音と共にセリカがつい先ほどまでそこにいた場所を散弾が薙ぎ払う。
ショットガンの引き金を引いたのはハルカだ。
明らかに正常とは思えない形相で、セリカのことを睨みつける。
「よくも、よくもアル様を……許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!!」
ポンプショットガンとは到底思えない速度で弾丸が乱射される。
怒りのあまり周囲の状況すら見えていないのか射線上から退避し損ねた
傭兵の生徒たちが次々と吹き飛ばされ、図らずとも敵陣は大混乱に陥っていた。
しかも、当のセリカにはかすりもしていない。
「ちょ、ちょっとハルカ!?私は大丈夫、大丈夫だからお願いだから待って!!!」
「ありゃりゃ、とんでもないことになってるね」
「……はぁ」
セリカがわざと敵集団に溶け込むように逃げ回るせいで被害が次々と拡大して行くのを、
何とか止めようとするも一向に止まる気配が見えず大いに狼狽えるアル。
被害が出ると困るはずなのにその様子を楽しそうに眺めるムツキ。
目の前の惨状に溜息をつくも、一向に止める気配のないカヨコ……
……なし崩し的に始まってしまったこの戦闘は、
最早相手にある種の憐憫を抱くほどの様相を呈していた。
「"……ええと。それじゃあ、戦闘、開始?"」
……そう告げる先生の言葉に覇気がないのも、無理はないだろう。
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「あ、あっちに行っぐはっ!?」
「ど、どうするのどっちを止めればいいの!?」
「そりゃあっちの逃げ回ってみぎゃっ!!!」
「死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んでくださいっ!!!!!!」
……あまりにうまくいきすぎではないか?
セリカは敵の集団の間を縫うように逃げ回りながらそう思った。
ヤーナムでの狩りではほとんどの敵対存在が
どいつもこいつも死に物狂いでこちらを殺しに来る割には
同志討ちだけは器用に避けて攻撃してきていた。
その為、避ければ避けるほど面白いように敵に被害が出る様に、
セリカはある種の恐怖すら覚えていた。
ハルカ以外の敵から攻撃されそうな時は軽く急所に一撃叩き込めば倒れる故、大した脅威にもなっていない。
「う、ううぅ、こうなれば死なばもろとも……
あなたを殺して私も死にます、死んでやります!!!」
「え、ちょあいつ対戦車グレネード取り出したぞ!?」
「ハルカ、待って。お願いだから待っいたっ!?」
「ん、隙あり」
その時、セリカの耳にそんな声が届いた。
……どうやら、先生らも今の隙をついて戦闘を開始したらしい。
手始めにアルが攻撃をもらったようで、悲鳴が聞こえる。
「っ!!アル様!!」
その声に、敬愛する人の声にハルカは反応した、反応してしまった。
しかし、その僅かな隙は狩人にとってはあまりにも十分な隙だった。
セリカが混乱する敵集団から弾かれたように飛び出す。
ハルカがそれに反応して振り向くより早く、
レイテルパラッシュがステップの勢いを載せて突き出された。
「かはっ!?」
ハルカの脇腹にレイテルパラッシュが突き刺さる。
いつも使っているものなら皮膚を突き破っている所だが、
未強化のそれにそれだけの力はない。
セリカはそのまま、流れるようにハルカに連撃を仕掛ける。
急所というものは、何も傷を負ったら致命傷になる箇所というだけではない。
傷に至らなくても、相手の行動を封殺できるからこその急所なのだ。
みぞおち、首筋、腹部、
ハルカに凄まじい衝撃が連続する。そして……
「見つけ、ました……!」
「!!」
反射的にセリカはステップで飛び退ろうとした。
しかし、それは素早く伸びてきた腕に捕まれたことにより強制的に止められる。
手ごたえはあった。ダメージは確実に負わせた。
だが……
「この距離なら、外しません……!」
瞬間、辺りに轟音と爆炎が走った。
セリカに対して、ハルカが至近距離で対戦車グレネードの信管を起動、自身諸共セリカを爆破したのだ。
「あちゃー、ハルカちゃんやっちゃったねぇ」
「セリカちゃんっ!!?」
戦場に悲鳴が響く。
しかし、幸いなことに爆炎の中で、セリカは立っていた。
多少煤けて小さめの傷が出来ているものの、依然として健在。
足元には、ヘイローが消失して目を回しているハルカがいる。
「……けほっ」
立ち込める煙の中、セリカは小さく咳込んだ。
……キヴォトスの生徒達は、肉体強度の個人差が非常に大きい。
それを再認識するにはいい機会になった。
まさかレイテルパラッシュを3回叩き込んで怯みすらしないとは思わなかったが……
まあそれはさておき、だ。
セリカは周囲の状況を確認する。
先程の爆発で一瞬こちらに注意が集中したものの、
まさかセリカらが動けるとは思っていないのか直ぐに戦闘は再開された。
……今、セリカは敵の背後を取っていながら誰にも警戒されていない存在だ。
ゆっくりと、足音を殺してセリカは煙を抜ける。
その正面では、アル達や幾人かの傭兵が、シロコ達と撃ち合っていた。
戦車砲や爆薬など、火力に大きな差がある為押され気味ではあるが、先生の指揮もあり善戦している。
……ならば、自分は敵の要のスナイパーであるアルを潰す。
セリカは音も無くアルの背後に忍び寄ると、
レイテルパラッシュを引き絞るように力を込める。
瞬間、
「!!社長っ!」
側面方向から声が響いたかと思うと、
力を解放する直前に弾丸がセリカに突き刺さった。
その体勢が大きく崩れる。
「ナイスカバーよ、カヨコ!!」
そんなセリカに向けて、アルのスナイパーライフルの銃口が向けられる。
マズルフラッシュ、
大口径の弾丸を至近距離で食らったセリカの身体が、
大きく吹き飛ばされる。
しかし、セリカは素早く受け身を取ると、そのままステップで再度急激に接近を開始した。
……なるほど、サプレッサー付きの拳銃か。
それに、気配の殺し方が上手く、的確に隙をついてくる……厄介だ。
対多数戦においては、厄介な相手に即座に対応しなければ敗北する。
セリカはそれをヤーナムで嫌というほど学んでいる。
「嘘……!スナイパーライフルを食らってまともに動けるなんて、それに何で剣だけであそこまで動けるのよ!?」
「社長、うちの風紀委員長と違ってダメージは確実に蓄積してる。気を抜かないで!」
アルの照準がこちらを捉える。
セリカは勘だけを頼りにもう一度ステップ。
側頭部を弾丸がかすめ飛ぶ。
……スナイパーライフルの弾丸を、近距離で避けたのだ。
アルの表情が驚愕で染まる中、カヨコが上空に銃口を向ける。
パァン!!
サプレッサーが付いている筈であるのに、
そこから一帯に響き渡るほどの銃声が響いた。
その瞬間、セリカの脳裏に、ただ、恐怖という概念だけが植え付けられる。
……しかし、目視しただけで発狂するような超次元的な恐怖にさらされてきたセリカにそれは通用しない。
それを察したカヨコが拳銃を速射するが、
その動作を完全に捉えているセリカにそれは当たらない。
……拳銃は弾切れ、リロードしている時間もない。ならば、
カヨコは急接近するセリカが来るであろう場所に、素早く足払いをかける。
……しかし、その僅かな予備動作をセリカは捉えていた。
レイテルパラッシュが火花を散らしながら変形し、
その銃口が露出する。
ガキンッ!!
カヨコの拳銃が、金属音と共に大きく跳ね上げられた。
「……は?」
カヨコは、思わず呆けた声を発していた。
何が起こったか、理解出来ない。
ただ辛うじて捉えることが出来たのは、体勢を大きく崩す自分と、それに対して横薙ぎにレイテルパラッシュを振るうセリカの姿だけだった。
瞬間、カヨコの身体が吹っ飛び、瓦礫に叩きつけられる。
ヘイローが掻き消え、その意識は闇に飲まれた。
「そんな、カヨコっ!?」
「アルちゃんどうし……ってうわっ!!」
アルの悲鳴で、ようやく前線で戦っていたムツキが状況に気がついた。
しかし、遊撃のカヨコと主な火力源であるアルがセリカの対処に手間取った事により、前線に致命的な穴が空いていた。
戦車の1台が迎撃し損ねたドローンのミサイルランチャーの直撃を食らい、爆発する。
中から黒髭危機一髪の如く飛び出してきた煤だらけの乗組員達がとても痛そうな音を立てて地面に叩きつけられた。
更に、そこに追い打ちをかけるようにミニガンが掃射され、
それで更に大きくなった前線の穴に、シロコとホシノが飛び込んできた。
「む、これはちょっと……やばいかもねっ!!」
ムツキが爆薬の詰まったバッグをホシノ達に向かって投げる……が、
「だめだよー、危ないものを投げちゃ」
その連続爆発を、のんびりした口調とは裏腹に素早くシールドを展開したホシノが全て受け止めると、
そのままシールドを構えて突貫、その銃口をムツキに向ける。
銃声が連続する。
ムツキは辛うじて気絶しなかったようだが、力無く地面に四肢を投げ出した。
「ダメだー、全身痛くて動けない。アルちゃん、あとよろしくね?」
「え、えええぇぇ!?!?」
先程の一瞬で、数の優位が一瞬で覆された。
ハルカはいつの間にかダウンしてる、カヨコも未だ目が覚めていない。たった今ムツキも戦闘不能になった。
ついでにもう1台の戦車は別のドローンから投下された爆薬で綺麗な花火に姿を変えた。
無事な傭兵も数は少なく、ついでに元々あんまりなかった士気もボロボロ。
……敗色濃厚。というか事実上もう負けたようなものである。
さて、アルは要らぬ見栄を張る悪癖があるが曲がりなりにも
便利屋の社長、引き際を見極める能力は確かにある。
即ち……
「そ、総員撤退!今すぐによ!!」
戦略的撤退を選択した。
その声を待ってましたと言わんばかりに先程のやる気のない態度が一転、傭兵達が気絶した味方を担いですたこらと逃げて行く。
アルは、とても悔しそうにぐぬぬと表情を歪めると、
敵が撤退し始めた為攻撃をピタリと停止したアビドス……特にセリカにビシリと指を突きつけた。
「こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!!」
「あはは!アルちゃんそれ、完全に三流悪役のセリフじゃん」
傭兵達に担がれながらも幼なじみをしっかりと茶化して行くムツキ。
「うるさい!早く逃げ……じゃなくて退却するわよ!!」
それに何とか反論すると、アルも逃げて行った。
……戦闘終了。だが、いまいち締まらない結果となった。
セリカはため息をつくとレイテルパラッシュを直剣に戻す。
そんな彼女に、シロコとホシノが駆け寄ってきた。
「セリカ、大丈夫?」
「大丈夫よ、シロコ先輩。
……まあ、勝ったのに無駄に疲れた位」
「あっ、セリカちゃんセリカちゃん。
なんかかっこいい感じに顔に煤がついてるよー」
「え?」
ホシノの言葉に釣られ、セリカが思わず顔に手をやると、化粧の感触が全く無いことに気がつく。
……まあ、至近距離で爆発を食らえばそうもなるだろう。
「ん……歴戦の戦士って感じ」
「そうなの?妙な偶然もあるのね」
セリカはそうとぼけつつホシノに心の中で感謝する。
一時凌ぎとはいえいい塩梅に誤魔化せた。
後で早い所化粧し直さなければ……
「"おーい、みんなー!!"」
ふとあちらを見れば、先生、ノノミ、アヤネがこちらに駆け寄ってくるのが見える。
そんな彼女達に、セリカは無事であることを見せるように軽く手を上げた。
________________________
……夕方。
「"ふう……今日はいろいろあったな……"」
先生はそう呟きながら、アビドス高校の廊下を歩いていた。
便利屋達の出会いと襲撃……あまりにも目まぐるしく変わる状況に、身体がかなり疲れているのを感じる。
……あれ、それは何時ものことだっただろうか?
日頃から疲れ過ぎて先生はそのあたりがよくわからなくなったていた。
それよりも、だ……
先生は先程の戦闘時のセリカについて思い起こす。
……最初、セリカの戦闘スタイルについてそういうものと思い、気に留めていなかったが、キヴォトスで暮せば暮らすほどその異質さが露になってきた。
キヴォトスにおいて、どこまでも深く根付いているのはあくまでも銃だ。誰もが銃を扱い、多少の差異はあれどそれを主軸として戦闘する。
しかし、セリカは違う。
あくまでもレイテルパラッシュと呼ばれた奇妙な剣、それによる接近戦が主軸だ。
しかも、銃を持つ相手を圧倒する程恐ろしく強く、その技術も完成されている。
恐らく、相当経験を積んだのだろう。
にも関わらず、あの昔のセリカの写る写真にレイテルパラッシュの姿はない。更に言えば、あの神父を思わせる上着も、白い大きなリボンもない。
……これは最早変質のそれだ。
それも、昏睡していた期間をきっかけとして。
一体、セリカは何を抱えているのだろう……
先生がそう考えたその時、
「……答えて、ホシノ先輩」
声が、聞こえた。
声のした方に視線を向けると、
空き教室でホシノと、シロコが向き合っていた。
……ただならぬ雰囲気が、2人の間で流れている。
「……うへ、ダメだよシロコちゃん。
セリカちゃんの恥ずかしい秘密はあの時言わないって……」
「誤魔化さないで」
いつものように笑って、追及を躱そうとしたホシノの言葉をシロコが遮った。
「……あのセリカの煤、
瞬間、ホシノの笑顔が、かちりと固まった。
シロコは尚も続ける。
「……あれは、古傷に見えた。柴大将よりもずっと深い。
ねえ、ホシノ先輩はセリカの何を知ってるの?」
「……うーん、シロコちゃんは鋭いな」
ホシノは、困ったように頬をかいた。
その表情に、一瞬、影が落ちる。
「……ごめんね、セリカちゃん」
ただ、短く。誰にも聞こえないほど小さくホシノはそう言うと、やがて顔を上げた。
「わかった、言うよ。と、その前にー……」
そう言うとホシノは教室の扉の向こうに視線を向けた。
「バレてるよ、先生。別に怒る気はないから出ておいで」
「"……それ、怒る時に言う言葉じゃない?"」
その言葉と共に、先生が恐る恐る物陰から出てきた。
そんな彼女に、ホシノはにへらっと笑った。
「いいのいいの。先生も聞く権利があるからねー。
……ただ、皆には秘密だよ。もちろん、セリカちゃんにも」
しかし、その最後の言葉を告げる時、ホシノは笑っていなかった。
彼女の言葉に、先生とシロコは頷く。
それを確認すると、ホシノは話し始めた。
「始めに気がついたのは大分前に柴関ラーメンに行った時。その後、色々あってセリカちゃんに聞いたら教えてくれた。
……昏睡状態から、覚めてからだって」
「……理由とかは?」
ホシノの言葉に、少しの間を置いてシロコがそう尋ねる。
その言葉に、ホシノは首を振った。
「[悪い夢を見てた]とだけ。それ以外は何も」
「"……悪い、夢"」
先生はそう呟く。
夢。眠っている間に見るもの。
……セリカが昏睡の間、一体何を見たと言うのだろう。
考え込むシロコと先生に、ホシノは告げる。
「……本当にくれぐれも気をつけてね。
私がこの事を知った時、
セリカちゃん、壊れちゃいそうなくらい、何かを怖がってた」
……今のセリカが、それほど怖がる様を、シロコと先生は想像出来なかった。
……悪夢
その単語が、空き教室に暗い影を落としているようだった。
真っ赤な血晶石のレイテルパラッシュ
真っ赤な血晶石の嵌め込まれたレイテルパラッシュ。
よく使い込まれ、他のスロットには高位の血晶石が捻り込まれている。
それ以上でもそれ以下でもないが、持ち主である少女の狩人はどれだけ高位の血晶石を手に入れても、その雫の血晶石を外そうとしない。
それはもう戻らぬ過去への執着か、
或いは血にまつわるその効果が、[血酔いの獣]の二つ名にふさわしいものであるからだろうか?
どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?
便利屋68との戦闘は真面目にするかUnwelcome Schoolするか最後まで迷ってました……どうですかね?
さて、少しずつアビドスの面々にセリカちゃんの秘密が知られて来ています。
セリカちゃんの明日はどっちだ。
次回はヤーナム編ですが……鬱描写はほとんどないです。
オドン教会の愉快な仲間たちも出ます。
あと、セイアちゃんの最終武器について迷ってまして……
銃は貫通銃にしようとは思ってるんですけど仕掛け武器の方が決まらなくてですね、落葉とあと2つ選ぼうと思ってます
ということでDLC武器の中でアンケートに
乗せてあるやつのうち上位2つがセイアちゃんの武器になります。
選択肢にない奴と今回選ばれなかった奴は、
先輩が持っていきます。
……セイアちゃんのステ、なんか筋力ない代わりに技術、血質、神秘がめちゃくちゃ高そう。