極夜に囚われたセリカ   作:時空未知

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……ぎゃアアア首ナイ!?なんか虫出た!?!?アイエエエナンデ!?
……あれ、なんか死んだ。
ということで獣血の主撃破です。
……パターン覚えるのに沼りまくったのは内緒



side past 黒見セリカ、又はオドン教会

月夜。月明かりのみが奇妙な像が立ち並ぶ寂れた街を照らしている。そんな中、小さな教会の前にセリカはいた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」

 

荒い息をつくセリカに、嵐のような連撃が襲いかかる。

セリカはそれを襲撃者の直ぐ側をすり抜けるように躱すと、

右手に握る武器を突き出す。

しかし、襲撃者は最小限の動きでそれを躱すと、

ステップを織り交ぜた斬撃をセリカに見舞う。

 

「っ!!」

 

セリカはそれを今度はバックステップにより回避。

相手も斬撃と同時に後ろに下がっていた為追撃は来ない。

その僅かな隙に息を整えるとセリカは地面を全力で蹴った。

その小柄な体躯が、瞬間移動と見まがう速度で相手に急激に接近する。

そして、その勢いに任せて武器を突きだ……

 

 

「ほれ、頭がお留守だよ」

「みぎゃっ!?」

 

 

そうとしたところで素早く振り下ろされた火のついていない松明がセリカの頭をしたたかに打った。

ついでに勢い任せに飛び出したところに上から力が加わったため、

セリカはずさーっと音を立てて地面を滑る羽目になった。

 

「お、お姉さん大丈夫!?」

 

その様子を近くで見ていたリリーが慌てて駆け寄る中、

よろよろと起き上がったセリカは彼女に何とか笑いかける。

 

「だ、大丈夫……ちょっと身体がジンジンするけど」

「クックッ、その分だとまだ大丈夫そうさね」

 

その様子を見て、小さく笑うものが一人。

……狩人狩りのアイリーン、その人である。

両手にはやはり、火のついていない松明が握られていた。

そんな彼女に、リリーが頬をぷくりと膨らませて文句を言う。

 

「もう、アイリーンさんも少しはお姉さんに手加減してくれてもいいじゃん!」

「ククク、手加減したら鍛錬の意味がないさ。

ま、生憎あたしは先生じゃない。鍛錬の手段なんざ直接手合わせすることしか思いつかなくてね」

 

少女の言葉にアイリーンはそう返した。

……ここはオドン教会、この獣狩りの夜における数少ない安全な避難所である。その直ぐ側の外で、セリカはアイリーンに鍛錬してもらっていた。

言い出しっぺは今ここにはいない[先輩]である。

曰く、セリカには基本的にオドン教会にいてもらうつもりだが、その間に狩人としてのノウハウを教えてほしいとのこと。

アイリーンは最初、狩人狩りの自分に教えられることはないと渋っていたが、セリカ自身が熱烈にお願いしたため何とか引き受けてくれた。

それは良かったのだが、基本的な技術を教えてもらった後にセリカに降りかかってきたのは、こと対狩人において1、2位を争うほど優れている狩人の攻撃であった。

ということでセリカは徹底的に叩きのめされながら戦闘技術を身に着けていた。

 

さて、そんなアイリーンにセリカは軽く服の土を払いながら立ち上がると話しかける。

 

「それで、今回はどうでした?」

「まだまだ、だね。動きの粗は取れてきたのはいいが、まだ詰めれる。それに、如何せん直線的に攻め過ぎかね。

時には相手の動きを誘ってそれに対応することも大切さね」

「う、うーん……どうしても気持ちが逸っちゃって……うむむ」

 

その言葉にセリカは難しそうに考え込む。

そんな彼女の様子を見て、アイリーンは仮面の下で微笑む。

ヤーナムでは全くと言っていいほど見ない生真面目振りだ。

アドバイスを正直に受け止めてそれをものにしようと動きを細かく調整して再び向かってくる。

見ているこちらとしても、微笑ましい限りだ。

 

「……まあ、この短期間でここまで出来る分には上出来だよ。

元々身体の方が悪くない。

正直、あんたの脚力と瞬発力に関しては身体にガタが来てるババアからすれば羨ましい限りさね」

「えう!?い、いや、褒めても何も出ないから!!」

「セリカお姉さん、顔真っ赤だよ?」

 

突然褒められ、

セリカは顔を真っ赤にしてそうバタバタと手を動かした。

……少し前までは精神的に追い詰められていたものの、

オドン教会に辿り着いてからそれは順調に回復している様子である。

その様子を見て、アイリーンはもう一度くつくつと笑うと、両手の松明を構える。

 

「……さて、そろそろもう1戦。行くかい?」

「っ……!は、はい。よろしくお願いします」

 

その言葉に答えると、セリカは松明の先端をアイリーンに向けた。

 

____________________________________________________

 

 

 

少しの時間が経ち、セリカは鍛錬を一旦終え、リリーと一緒にオドン教会の中へと移動していた。

狩人になり、長期的な身体の疲れとは無縁になったと言えど、精神的にはそうもいかない。

段々、ニアミスが増えてきたセリカに、アイリーンは少しの間休むよう提案した。

最初は渋っていたセリカだが、こうして一旦離れてみると、

気が付かない内に疲労感を覚えていたことに気がつく。

……過去、倒れそうになるまでバイトをしていた自分に教えてやりたい。

 

「お姉さん、どうしたの?何か考え事?」

「……まあ、そんな所。前は休憩なんて考えず頑張りすぎてたなって」

 

ゆっくりと移動しながら、リリーの問にセリカが答えるが、

その表情がふと心配そうなものに変わる。

 

「……でも良かったの?私は夢に用事があるからあれだけど、

リリーちゃんはアイリーンさんと待ってても……」

「いいの。セリカお姉さんとずっと一緒に居たいから」

 

セリカの言葉に被せるようにリリーはそう言うと、彼女の腕にぎゅっと抱きついた。

少女の身体の温かさを感じながらも尚、

セリカは心配そうである。

……その時、右方向から何やら視線を感じた。

その視線に、セリカは顔を顰めるとそちらの方を向く。

リリーはと言うとサッとセリカの背後に隠れてしまった。

セリカらの向いたの先にいるのは、古ぼけた椅子に腰掛けた1人の老婆だった。

目深に被った帽子の奥から、睨みつけるような瞳が微かに覗いている。

 

「……何?」

「はん。余所者の獣モドキのガキがまだ狩人共の真似事をしてるって思っただけだよ。そっちのガキもガキらしく、ここで大人しくしてればいいものをねぇ」

 

老婆は吐き捨てるようにそう言った。

 

……この老婆はセリカ達が来た時には既にオドン教会に避難していた。[先輩]が避難所として教えたらしい。

最初、セリカらが来た時は嫌そうに顔を顰めるだけだったが、

彼女がいい加減アイリーンとリリーに自分の事情の説明をしようと帽子を取った姿を見る否や、

恐ろしい剣幕で突っかかってきた。

更に、ただ突っかかってきただけではなくその言葉が差別意識剥き出しかつ罵倒混じりで、矛先が助けてくれたはずの先輩が主な対象だっただけに、この老婆に対するセリカの心象は最悪である。

結局、リリーが泣き出しそうになったため引き下がったが、

それ以来こちらが通りかかる度に睨みつけてくるのだ。

その為、セリカは基本的にオドン教会に入らないようにしている。

 

いつもの癖で、思わず言い返しそうになったセリカだったが、それをぐっと堪えると、足早にその場を通り過ぎた。

 

「……私は、お姉さんのお耳、好きだよ」

 

その時、セリカだけに聞こえる声でリリーが小さく言った。

セリカは、少し驚いたようだったが、やがてふっと微笑んだ。

 

「……ふふ、ありがと」

 

セリカは同じ様に、小さく礼を言った。

そんなやり取りもそこそこに、極短めの階段を登り、

大量の香壺が焚かれている広場に出る。

その左側に、赤いローブを被った奇妙な男がいた。

背筋が曲がり、血色の悪い肌に包まれた腕は異様に長い。

そしてその目は白く濁っており、何も映していなかった。

男は足音に気がついたのか、ゆっくりとセリカ達の方を向く。

 

「おお……この足音は、狩人のお嬢さんと小さなお嬢さんかな?」

「ふえ!?……おじさん凄い」

「……前も思ったけど、よく足音だけでわかるわね」

 

驚きと関心が入り混じった2人の言葉に、男はうれしそうに身体を揺らした。

 

「俺は目が見えないからね……だから、少しだけ他の感覚がいいんだ。でも、褒められたのは初めてだよ……ヒヒッ」

 

この赤ローブの男は、このオドン教会の管理者である。

生前のヴィオラから話に聞いていたとはいえ、初めてその姿を目にした時はセリカは正直ビビッた。

しかし、いざ話してみると話しやすく、少々自分に自信がないだけでとても良い人だった。

……ここまで見た目と笑い方で損している人はそういないだろう。

その時、男が何か思い出したかふと表情を変えた。

 

「そうだ……狩人のお嬢さん。これから狩人さんに会いに行くのかい?」

「ん?あー……いや、ちょっと買い物。でも、会えるかどうかはわかんないけど、もしかしたら会うかも」

 

そんなセリカの言葉に、男はパッとなんとも言えない表情を浮かべだ。

……本人は笑っているつもりなのだろうが、悲しい事にかなり不気味である。

 

「それは良かった……だったら、だったらさ。

そこの女の人を助けてくれたお礼を伝えてくれないかい?

俺は生憎動くことができないから……ヒヒッ」

「……え、女の人?」

「私のことよ」

「「ひゃあああっ!?」」

 

女の人と言われたはいいものの、

誰のことか分からず首を傾げる少女達の背後から、

突然見知らぬ人の声がかかった。

全くその存在に気がついていなかった為、

セリカとリリーは飛び上がらんばかりに驚いて慌てて振り返る事になった。

 

「あら、少し驚かせちゃったかしら?」

 

視線の先にいたのは、金色のウエーブがかった髪を流した艶やかな女性だった。

その赤みがかったドレスのスカートが、ふわりと広がっている。

その姿に、何処となく華やかな貴族のような印象を受ける。

しかし、何処か儚い雰囲気を漂わせているのは、セリカの思い過ぎであろうか?

……いや、そんなことはどうでもいい。

初対面にもかかわらずかなり失礼なことをしてしまったのには変わらない。

 

「あっ……ご、ごめんなさい。驚いちゃって……」

「ごめんなさい……」

「ふふふ、いいのよ。そんなに気にしなくて」

 

女性はそう言うと穏やかに笑って、胸に軽く手を当てる。

 

 

「私はアリアンナ、どうぞよろしくね」

 

そう言って、アリアンナは軽くスカートの裾を摘んで優雅に一礼した。

 

「あっ、私、セリカって言います。こちらこそよろしく……」

「私はリリーです。よろしくお願いします」

「ふふ、そんなに畏まらなくても大丈夫よ」

 

その動作に押されるようにセリカは慌ててカクカクと一礼。

リリーはアリアンナの見様見真似でスカートをちょんと摘んで一礼する。

そんな2人を見て、アリアンナは小さく笑ってそう言った。

その時、彼女の目にセリカの服装……そして、顔に大きく走った古傷が目に留まった。

 

「……ところでセリカ、あなたも狩人なの?」

「え、い、一応そうです。この教会を守ってて……

って言ってもまだ一人前じゃないけど……」

 

の問にセリカはそう答える。

しかし、その答えは会話を横で聞いていたリリーにとっては不満なものだったらしい。

 

「そんなことないよ!セリカお姉さんは私のこと守って、助けてくれたんだから……立派な、狩人だよ」

「い、いやいやそんなことは……」

「そうなの!私がそうって言ったらそうなの!!」

 

尚も自分を下に下に下げるセリカに、リリーは少し怒ったようにそう言った。

その様子をアリアンナは微笑ましそうに見ていた。

 

「ふふふ。そんな狩人さんがいるなら私達も安心ね。

……でも、狩人だからといって、女の子の顔にそんな傷があるのはいただけないわね」

 

そう言うと、アリアンナは懐から何か取り出した。

……それは、小さな木製の容器だった。

蓋を開けると、そこにはベージュ色の化粧が入っている。

アリアンナはその表面を薄く指で掬い、質感を確認するとセリカを手招きした。

 

「さあ、こっちに来て」

「え、いや、わざわざ大丈夫ですよ!?

どうせ激しく動くし、毎回返り血たくさん浴びる羽目になるから落ちちゃうだろうし」

 

どうも自分の古傷をどうにかしてくれようとしているらしいことに気が付き

セリカは慌ててそれを断る。

会ったばかりなのでそこまでしてもらうわけにはいかないという思いもあるが、

今までの経験とこの古傷のせいでセリカは自分の美容とかその辺を完全に諦めきっていた。

……しかし、

 

「大丈夫よ。かなり落ちにくい品だから」

「私、お姉さんがお化粧したところ見てみたい!絶対かわいいもん」

「リ、リリーちゃんまで……」

 

リリーまでもその提案に乗っかる。

そうまでされてしまってはセリカも断る事は出来ない。

セリカはしばらく視線を彷徨わせていたが、

やがて緊張した様子で前に進み出た。

 

「……じゃ、じゃあよろしくお願いします」

「わかったわ。それじゃあ、帽子を取ってもらえるかしら?」

「えっ!?」

 

その言葉にギクリと動作が固まるセリカ。

ヘイローは帽子が大きいお陰でその模様に見えなくもないが、

獣の病という風土病が流行っているせいで、自分の耳があまりいい顔をされないことをセリカは理解している。

先の事で帽子を取った時、先程の老婆は言わずもがな、アイリーンですら一瞬武器に手が伸びたほどである。

というか、大して驚かなかったヴィオラとリリーが特別なのだ。

その為、セリカには帽子を取ることに忌避感があった。

……が、

 

「知ってるわ。多分……帽子に何か隠してるのよね?」

「……あれ?」

 

アリアンナはセリカの心配事を的確に言い当てた。

キョトンとするセリカに彼女は言う。

 

「さっきの会話が聞こえてて、そこで……ね」

「……あー」

 

そういえば獣モドキ呼ばわりされていた。

然程大きな教会ではないので聞こえていてもおかしくは無いだろう。

……だが、それでも疑問は残る。

 

「……でも、そこまで聞こえてたならどうして」

「あなたが悪い人には見えないもの。

それに、本当に獣の病が進んだ人は獣除けの香を嫌ったり、瞳が蕩けたりするからわかりやすいのよ」

「なにそれ初耳……」

 

獣の病の詳しい症状を全く知らなかったセリカは思わずそう呟く。

……先輩も少しは教えてくれればいいのに。

とはいえ、だ。

アリアンナがこちらを信じてくれている事はよくわかった。

……このヤーナムに来てしまったことは不幸かもしれない。

しかし、こんな場所で、優しい人達に恵まれたことは類稀な幸運と言えるだろう。

セリカは意を決すると、帽子を取った。

 

________________________

 

「……はい、できたわよ」

 

しばらく時間が経ち、肌をくすぐっていた指の感触が離れる。

セリカは恐る恐る目を開けると、ペタペタと自分の顔を触る。

……ほんの僅かにだが、皮膚の上に何か塗られている感触がする。

 

「……うん、見た目通りかわいいわね。少し、羨ましいわね」

「え、いやいやそんな。アリアンナさんもキレイですよ」

 

セリカが思わずそう言うが、

その言葉にアリアンナは少し寂しそうな表情をした。

 

「私は職業柄、着飾らないとだし……

それに、その仕事が結構疲れるから、

あなたみたいな元気な若々しさみたいなものがないのよね……」

「そ、そうなんですか……」

 

少し影のあるアリアンナの言葉に、セリカは辛うじてそう返答する。

その時、横からリリーがセリカの顔を覗き込んだ。

その表情がパッと明るくなる。

……リリーから見たセリカには、

先程まであった古傷は影も形もなく、年相応の可愛らしい顔立ちが映っていた

 

「ホントだ!お姉さん、とってもかわいいよ!」

「……えへへ、ありがと」

 

リリーの明るい言葉に、セリカは少しだけ頬を染めると、

笑顔でそう言った。

それに合わせて、猫耳もうれしそうに揺れる。

 

「あ、お姉さんの耳、動いてる……!……触ってもいい?」

「え?あ、いやー……触るのはちょっと」

 

いつも帽子で隠れてばかりの猫耳が動くのをみるのは、

リリーとってとても新鮮だったようだ。

とても触りたそうにしていたが、

セリカは少し困ったような表情になる。

……セリカに限らず、獣人の耳は敏感なのである。

けれど、どうしても触りたいのかリリーは何やら難しそうな顔をして考え込むと、何か思いついたのかそれを実行に移した。

即ち、セリカのすぐ近くまで寄って迫真の上目遣い。

 

「……どうしても、ダメ?」

「うぐっ!?」

 

セリカの理性に大ダメージ。

思わずその要求を飲みそうになってしまうがセリカは必死で耐える。

……下手に触られたら変な声が出る。それだけは……!

……その時、

 

 

「おお、アリアンナ殿。無事でしたか」

 

 

背後から、セリカにとってはもう大分聞き慣れてきた声が聞こえた。

振り替えるとそこには、

やはり狩人の狩り装束を身にまとった壮年の男性……[先輩]がいた。

因みに、この先輩というのは、名前を忘れたという彼を、他の人と同じように[狩人]と呼ぶのをややこしいと思ったセリカが言い始めた。

 

「あ、獣狩りさん!」

 

幸いなことにリリーの意識がそちらへ逸れた。

……もう少しで完全にダメになりそうだったのでセリカはほっと一息つくと、さっさと帽子を被ってから先輩に話しかけた。

 

「あれ、先輩。もう……えと、聖杯?っていうのはいいの?」

「セリカ、その話は当分しないでくれ。

血晶石がな……どれもこれも温かいんだ」

 

……セリカにその言葉の意味はわからない。

ただ、帽子と口布の隙間から覗く先輩の目が、

死んだ魚みたく濁っているのを見て何となく察した。

セリカにとって、聖杯とは血晶石という石を取りに行く場所程度の認識でしかなく、潜ったことも今の所ない。

その上、血晶石についてもリリーから受け取ったヴィオラさんの形見と、先輩のお下がりのそれを武器に嵌め込んでいるが、

今の所効果を実感したことはない。

ただ、先輩が死んだ魚の目をしてまで必死に取りに行くぐらいには重要なのだろう、多分。

 

「……大丈夫?何だか、すごく辛そうだけど」

「は、はは……大丈夫ですよ。老骨に反復運動は堪えるという話です……主に精神的に」

 

アリアンナの言葉に乾いた笑いを零す先輩。

……到底、大丈夫そうには見えない。

そんな先輩の様子を見て、アリアンナは少しばかり考え込むと、何か思いついたのか顔を上げる。

 

「……そういえば、ここには階段を降りた場所に静かな書斎があったわね。そこでお礼(・・)でもどうかしら?」

「アリアンナ殿。無垢な少女2人の前でそういう事を言うのはどうかと思います。後、私はそういう事に興味がありませんので」

 

その意味を察した先輩が即座にアリアンナにそう伝える。

そう言われて自分が何を言ったのか改めて気がついたのか彼女の表情がハッとしたものに変わる。

2人が恐る恐るセリカ達の方を見る。

しかし、曖昧に言ったためか2人とも気が付いていない様子である。

けれど、セリカは2人の動作がどうにも気になったらしい。

 

「……?お礼をするなら別にここで……なんでそんなまた人気のな」

 

そこまで言ったところでセリカがフリーズ。

その顔が見る見るうちに赤くなってゆく。

そして……

 

「ぬおっ!?」

「な、なに言ってるのよ!!!」

 

理不尽にも、丁度手ごろな位置にいた先輩に向かってセリカの平手が飛ぶ(素手R2)

先輩は辛うじて回避したが、セリカの怒りは収まらない様子である。

というより、セリカ自身にもそういう方向への耐性が全くなかったのが大きい。

 

「バ、バカッ!!ヘンタイ!!!よりにもよってリリーちゃんの前でっ!!」

「ご、ごめんなさい……職業柄でつい」

「え、あ職業って……いや、そういうの関係なく気をつけてよ!?」

 

セリカからもっともなツッコミが入る中、

当のリリーはというと全く状況が呑み込めずオロオロとしていた。

 

「え、ええと。みんながしてるのはお礼の話だよね?

何でセリカお姉さんはこんなに怒ってるの……?」

「……リリー、君が立派なレディになったらわかる日が来る」

 

……歳を考えれば全く不思議ではないが、

そういう方面の知識が皆無らしいリリーに、先輩は難しい表情でそう言った。

 

____________________________________________________

 

「全く……次からは気をつけてよ」

 

数分ほど経ち、ようやくセリカの怒りが治まった。

とはいえ完全にとはいかなかったようで若干眉間に皺が寄っている。

 

「お、お姉さん……」

「……リリーちゃんは大丈夫よ。怒ってるのはあくまでアリアンナさんと先輩にだから」

「あらら……」

 

アリアンナが困った表情をする中、

先輩は咳払いを一つすると改めてセリカの方を見た。

 

「……それでだな、セリカ。

1つ、君に頼みたいことがあるのだが」

「何?」

 

すこしムスッとした態度でセリカがその言葉に答える。

……実のところ、先輩はケンカ=殺し合いか対話拒否の罵倒以外知らないため、少なくともセリカが返答してくれたことに安堵しているのは内緒である。

先輩は心の中でほっと胸を撫で下ろすと、

その旨をセリカに伝えた。

 

 

「旧市街、という場所の探索を頼みたい」

 

 

 




どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?
……ブラボ要素何処……ココ?
なんか極めて平和な回になりました。
そして長引いた……
まあ、今回限りの平和回になりそうなのがあれですが。
次回は旧市街攻略編です!
先輩からの実地訓練指示とも言う。鬼かこいつ。

最後に一言、実数値はクソです。

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