極夜に囚われたセリカ   作:時空未知

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突然ですけど最近私が聖杯に潜っても
HPマイしか出てこない気がするんですけど気のせいですか(血涙)


side present 狩人、又は対策委員会(2)

 

 

「……カイザーコンストラクション、ね」

 

 

セリカは短く呟くと、キュッと目を細める。

……アヤネが持ち帰ってきたものは地籍図。

要所、その土地の持ち主が誰であるかを示した地図だ。

本来であれば、アビドス高等学校の文字が書かれているはずのそれ。

けれど、その地籍図のほぼ全面を埋めている名は、カイザーコンストラクションだった。

 

「カイザーコンストラクション……

カイザーコーポレーションの系列企業ですか……!?

アビドスに自治区を、カイザーコーポレーションが所有している……!?」

「……柴関ラーメンも?」

 

ノノミがその事実に驚愕の声を上げる中、大体の事情を理解したのだろう。

シロコが短く、アヤネに問いかける。それに対しアヤネはこくりと頷いた。

 

「……はい。大将はそのことを知っていて、

ずいぶん前から退去命令も出ていたとかで……」

 

アヤネはそこで一度言葉を区切る。

……そして、それを言おうか言わまいか迷っていたようだが、

結局、一息にその言葉を吐き出した。

 

「大将は、元々もうお店を畳むことを決めていたそうです。

……いつかは起きるはずのことだった、と」

「……っ」

 

セリカの肩が、びくりと跳ね上がる。

……話の流れからわかっているつもりだった。

けれど、いざ告げられるとなると、心の奥が鈍く痛む。

 

「"セリカ、大丈夫……?"」

「……いや、いいの」

 

先生が心配そうにそう声をかけるが、

セリカはやがて、諦めたように息をついた。

 

「大将は生きてる。

悔しくないかといわれれば嘘になるけど……私にはそれで十分だから」

 

……生きていれば、少なくともまだ会える。

もしかしたら、ラーメン屋の復興だって叶うかもしれない。

でも、死んでしまえば本当にそれっきりなのだから。

 

「"……"」

「セリカちゃん……」

 

人の死を余りにも身近に経験しすぎた故の、セリカの言葉。

それに、場の空気がズンと沈み込む。

 

「そ、それにしてもどうしてこんなことに?

学校の自治区の土地を取引だなんて、普通できるはずが……」

 

その空気を何とか変えるためか、ノノミが話題転換を図る。

けれど、話し合っている話題が話題なため、その空気が晴れることはなかった。

 

「……アビドスの生徒会、でしょ」

 

……そして、ノノミの言葉に答えたのはホシノ。

その口調は、いつになく硬いものだった。

 

「……!」

「"……まあ、そうなっちゃうよね"」

 

その言葉を聞いたシロコが目を見開く中、

先生が小さくそうつぶやく。

そんな中、ホシノはその事実を淡々と説明してゆく。

 

「学校の資産の議決権は生徒会にある。

それが可能なのは普通に考えてその学校の生徒会だけ」

「……はい、その通りです。取引の主体はアビドスの前生徒会でした」

 

ホシノの言葉に、アヤネはこくりと頷くと、そのまま俯いてしまった。

 

「……学校の自治区はその学校のもの、

当たり前のこと過ぎて気が付くことができませんでした。

私が、もう少し早く気がつけていたら……」

「"いや、私だってもっとみんなについて事前に調べていれば……"」

 

……いつも事務系の仕事をこなしている故の責任感からだろう。

そう自分を責めるアヤネを先生がかばうけれど、

そのどちらに対してもホシノは首を振った。

 

「……ううん、それはアヤネちゃんや先生が気にすることじゃないよ。

これはアヤネちゃんが入学するより前の……

いや、対策委員会ができるより前のことなんだから。

それに、先生もここにきて間もないんだしね」

 

そう言って、ホシノは軽く肩を竦める。

そんな彼女の様子を見て、ノノミは何かを思い出したようだ。

そのままポンと手を打つとホシノに話しかける。

 

「そういえば、ホシノ先輩はアビドスの生徒会でしたよね?

確か、副会長を務めてて……」

「……うへ~、まあそんなこともあったねえ」

 

ノノミの言葉に、ホシノはほんの少しの間だけ驚いたような表情を見せたものの、

すぐにいつも通りのフニャッとした顔になって頭を掻いた後、

どこか遠くに思いをはせるように机に手をついた。

 

「……まあ、副会長だったとは言うけど、

実際は生徒会なんて肩書だけで、学校でも随一の無鉄砲な先輩と、

嫌な性格の新入生の私っていう2人のおバカさんが集まっただけでね。

何の間違いだか引継ぎ資料なんてものもなく、

よくわからないままで生徒会なんかに入っちゃって……

いや~、あの時はあちこちに行ったり来たりだったねぇ」

 

文面だけ見れば少しだけとげがある言い方。

けれど、その過去に思いを馳せるホシノの表情はどこか懐かしそうで、

……しかし、寂しそうでもあった。

 

「ほんっとバカみたいに、何にも知らないままさ……」

 

最後に、辛うじて聞き取れるほどの小さな声でホシノがそう呟く。

……気苦労もあったのだろうが、

それでも、ホシノの中ではそれは大切な思い出なのだろう。

そのしんみりした口調に、また教室の中がシンと静まる。

 

「"ホシノ……"」

「ホシノ先輩……」

「……」

 

上手く声をかけることができず、言いよどむノノミ、先生、アヤネ。

そんな中、セリカはホシノの横顔を静かに見つめていた。

 

……似てる。

 

何故か、そんな言葉が沸き上がってきた。

ホシノの隠し事の正体の一端……

セリカはそれに少しだけ察しがついたものの、何も言わない。

かつて、ホシノが屋上でボロボロの自分をただ何も聞かず抱きしめてくれたように。

そっとしておいてほしいことが人にはある。

けれど、セリカはホシノのことが少しだけ羨ましかった。

 

……似たような経験をしたのだろう。

けれど、どうして完全とはいかずとも、あそこまで立ち直ることができたのだろうか?

ずっと彼女の死を引きずり続け、挙句致命的な間違いを犯し、

それでも尚立ち直れていない自分とは違って……

 

その強さが、何よりもセリカは羨ましかった。

その時、何か考え込んでいた様子のシロコがホシノに声を掛けた。

 

「……ホシノ先輩が責任を感じることじゃない」

「う、うん?」

 

……唐突にシロコから投げかけられた言葉に、

感傷に浸っていたホシノが何とも言えない声を上げるが、

シロコは気にせず言葉を続ける。

 

「ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、

大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる」

「……確かに、いつも怠けてばっかりですけど、

ここぞという時は頼りになりますからね、先輩は」

「え、シ、シロコちゃんにアヤネちゃん急にどしたの?」

 

シロコの言葉につられるように、そう言うアヤネに慌て始めるホシノ。

その様子を、ノノミと先生は一度顔を見合わせたものの、

微笑ましそうに見守る。

更に……

 

「……私が夢にいるって伝えてくれたのホシノ先輩でしょ?」

 

セリカがそう、ホシノに言葉をかける。

その言葉に、ホシノの表情が固まる。

 

今の今まで有耶無耶になっていたが、

秘密にしておいてくれと

セリカに頼まれたものを言ってしまったのはホシノ自身だ。

 

「あ、セリカちゃんそれは、その……」

 

言葉を詰まらせるホシノ。

けれど……セリカが次に発した言葉は、糾弾でも、慰めでもなかった。

 

 

「ありがとう」

 

 

……たった一言、けれど、確かな感謝。

セリカはそっとホシノに微笑む。

 

「もう、ずっとあのまま閉じこもってるつもりだった。

でも、あの時みんなが来てくれたから……

ホシノ先輩が、みんなを連れてきてくれたから、

もう一度みんなに会えて、良かったって思うことができた。

……だから、ありがとう」

 

その言葉に、ホシノは何度か瞬きした後、やがて恥ずかしそうに目を逸らした。

 

「う、うへ……そう言われるとなんだか照れくさいな~」

「"ホシノはいつも、みんなの先陣を切ってくれてる。

私だって、ホシノは何だかんだ頼りになる先輩だと思うよ?"」

 

そんな彼女に、最後に先生がそう声をかける。

……尚も、ホシノは恥ずかしそうにしていたが、

やがてぽつりとつぶやいた。

 

「……えへへ、みんなありがとね」

 

________________________________________

 

 

「……では、話を戻すとすると、

どうして前の生徒会はカイザーコーポレーションに

アビドスの土地を売ったんでしょうか?」

 

しばらく時間が経ち、一旦皆で休憩がてら和やかな雰囲気に浸ったのち、

これからのことについて話し合うべくまずノノミがそう切り出した。

それに真っ先に反応したのはシロコだった。

 

「実は裏で手を組んでたとか」

「"うーん……多分、それはないんじゃないかな?"」

「そうだね~。詳しいことは知らないけど、

きちんと学校のために頑張ってる人たちだったみたいだし……

多分、最初は借金を返そうとして……って感じなんだろうね」

 

けれど、シロコに言葉を先生は少し考え込んだものの、すぐにそれに対して首を振る。

ホシノもそれに同じ意見のようだ。

 

……借金を返すために一時的に物を売り払うというのはよくある手法だ、

だが……

 

「私もそう思います。

……ただ、それでもこのアビドスの土地に高値が付くはずもなく、

少なくとも借金自体を減らすには至らなかった」

「それでまた土地を売って……という悪循環に陥ってしまったのでしょうか」

 

セリカの思っていたことを、

アヤネが、そしてそれに続くようにノノミが言ってくれた。

 

……だとすれば、今までの情報、

そして経験則からするに考えられることはただ一つ。

 

「……嵌められた、か」

 

セリカはそう言って、キュッと目を細めた。

 

「"……確かに、そう言う手口もあるよね"」

「あー……なるほどね」

 

セリカが発した端的な言葉。

とても短い言葉だったが、ホシノ、シロコ、

そして先生はその意味を理解したようだった。

 

「え、えと……セリカちゃん?」

「アヤネちゃん、うちにお金貸してるのって、カイザーローンでしょ?」

「……あっ!」

「……ということは」

 

いまいちピンとこなかったのか、アヤネがセリカにそう問いかける。

そして、続けて発された言葉でアヤネとノノミもその結論に至ったようだ。

セリカの言葉に続けてシロコが結論を言う。

 

「カイザーローンが、学校の手に負えないぐらいのお金を貸して、

利子だけでも払ってもらうために土地を売るように仕向ける」

「はい。きっと最初は、いらない砂漠や荒廃した土地でも売ったらと甘言を弄したのでしょう。ですが、使い道のない安値の土地を売ったところで借金が減るわけでもなく、土地をとられる一方で……」

「最終的にアビドスほぼ全体がカイザーのものにってところ?

……連中がいろんな敵をけしかけてきていた理由もこれでほぼ確定ね」

 

更に、シロコに続けアヤネが言葉を紡ぐ。

……最後に、そのことに最初に感づいたセリカが、吐き捨てるようにそう言った。

その表情は、あの時ほどではないものの鋭い。

何かの衝撃が加われば、今にも飛び出して行ってしまいそうだ。

 

「セリカ、ステイ」

「……私は犬じゃないよ、シロコ先輩」

 

そんな彼女に、シロコが短くそう言う。

セリカはその言葉に、少し気迫をそがれた様子だったが、

やがて溜息をついて頬を緩めると、そうツッコミを入れた。

 

……敵を皆殺しにしてどうにかなるなら、今すぐにでもそうしてやりたい。

 

押さえつけれるだけの理性は残っていたとはいえそう思ってしまったのは事実だ。

セリカは心の中でシロコに感謝する。

 

……実際に取引をしていた生徒会の生徒たちは、

一体どんな思いでカイザーと取引をしていたのだろうか?

案外、相手が何か企んでいることをどこか理解していたのかもしれない。

それでも、アビドスを守るために、アビドスを切り捨てる。

そんな選択肢をとってしまった。

 

「……」

 

……教室の中に静寂が満ちる。

そして、そんな中、誰からともなくその言葉を口にした。

 

 

「「……切羽詰まると、人は何でもやってしまう、ね……(やっちゃうもの、か……)」」

 

 

「……?」

「あり?」

 

 

言葉が重なった。

 

同時にその言葉を発した2人……セリカとホシノは思わず顔を見合わせる。

……最初に目を逸らしたのは、セリカの方だった。

 

「……ただの経験則。気にしないで」

「……まあ、よくある話だよね」

 

セリカが発した言葉に、ホシノはそう相槌を打った。

また教室の中が微妙な空気感で満たされる。

 

「……それで、どうする?カイザーの狙いは金じゃなくて土地そのもの……、

それでほぼ確定したわけだけど」

「そ、そうだね!セリカちゃんの言う通り……それでまず間違いないと思う」

 

……この空気感の原因となったことで居心地が悪くなったのか、

セリカが話題の転換を図る。

そこにアヤネも慌てながらも乗っかった。

他の生徒たち、そして先生も異論はないようだ。

 

「……となるとカイザーがどうして価値のない土地を集めているか、

ですが……先生」

「"うん。任せて、ノノミ"」

 

ノノミに促された先生が、

カイザーコーポレーションが

何故アビドスの土地を狙っているかについての裏付けとなる情報を話す。

 

 

……曰く、カイザーがアビドス砂漠で何か企んでいる、と。

 

 

「アビドス砂漠でカイザーコーポレーションが何か企んでいる、ね……」

「どうしてゲヘナの風紀委員長がこのことを知っているかはわかりませんでしたが、

先生と一緒にいた私から見ても、嘘はついてなかったと思います」

 

その情報を知らなかったホシノとシロコが考え込む中、

アヤネが先生の言葉にそう補足する。その時、

 

「……それで、どうするの」

 

セリカが淡々とした様子で言った。

 

「今の私達には2つの選択肢がある。

1つ目、実際に砂漠に行って連中がなにをしているのか調べる」

 

それは、誰もが思ったことであろう。

わざわざ回りくどい手段を用いてまで

カイザーがアビドスの土地をに手に入れようとしているその理由。

そのたくらみを暴くこと。今ここにいるならば誰もが思っていてもおかしくはない。

だが、セリカは2つ目の案を提示した。

 

「2つ目、今わかった情報は見なかったことにして、借金を早く返すことに集中する」

「……え?」

 

セリカのその言葉には、誰もが驚いた様子だった。

けれど、そんな彼女らにセリカは尚も淡々と説明してゆく。

 

「カイザーが何を企んでるかは私だって気になる。

でも、それを知ったから状況が悪化するんだったら話にならない。

……今のままだって、私が硬貨を集めて、

みんながバイトをしてお金を返していけば多分返済まで3カ月かかるかどうか。

わざわざ危険を冒す必要があるとは私は思えない」

 

……セリカはカイザーのことについてこれ以上調べるのが反対なのだろう。

直接言っていないにしろ、そのことが十分伝わる言葉だった。

 

セリカがヤーナムで覚えたことの一つに、

危ういものには近寄らない、というものがある。

あの場所は好奇心のままに動けば、

容易く発狂し、悲劇が生まれ、人が死ぬ地獄のような場所だ。

[先輩]のような例外中の例外でもない限り、それは守られるべきなのだ。

……好奇心は猫も殺す。

秘密は、そうである理由があるために秘密なのだ。

うかつに触れてしまえば、最悪の場合身を亡ぼす。

さながら、後に生きるものに啓蒙を授けるだけの消耗品となり果てた

哀れな頭蓋骨の持ち主のように……

 

「……この際だから言うけど。

私、正直アビドスのことなんてもうどうでもいいの」

 

セリカが、ポツリとそう言った。

 

「みんながいてくれれば十分。みんなが何事もなく無事なら、私はそれで幸せなの」

「……セリカちゃん」

 

……ともすれば不和が起こりかねない言葉。

けれど、それを言ったセリカの姿は、何か

……いや、過去のトラウマに、大切な人を失う恐怖に震えていた。

そんな彼女に、アヤネはそっと近づくと、肩を軽く抱きしめる。

 

「……セリカちゃんの気持ちが、完全にわかるなんて言わない。

でも、理解はしてるつもり……でもね」

 

アヤネは言葉を続ける。

その金色の瞳が、俯いたセリカの赤く蕩けた瞳をしっかりと射抜く。

 

「私は、セリカちゃんと一緒にいられるアビドスを……私たちの居場所を守りたい。

このままカイザーのことを見逃して、それで何かあったら

私はきっと後悔すると思う。だから……だめ、かな?」

 

アヤネの言葉に、セリカの身体が震える。

セリカは、しばらくの間考えて、というよりは迷っている様子だった。

……ともすれば、十数分ほど経っただろうか。

セリカは、一つ、息をついた。

さながら、恐怖に震える自分を落ち着けるように。

 

「……わかった。私も全力で協力する」

 

その瞳には、確かな意志が宿っていた。

 

 

________________________________________

 

 

……その後、アビドス砂漠への遠征についての日程、

その他細かい段取りを決めてから会議は終わった。

 

「"ふぅ……一時はどうなることかと思ったけど何事もなくてよかった"」

 

教室を出た後、廊下を歩いていた先生は、そう独り言を言った。

セリカの秘密。それを知ってしまって、何か変わってしまうかもしれない。

そのことを心配していた。

実際、セリカは少しだけみんなと距離を置いているような気がした。

……けれどそれは徐々に氷解しつつあるように思う。

 

「"……セリカは、何があっても、セリカのまま、か……"」

 

……あの時、アヤネがセリカに言っていた言葉だ。

……言われてみればその通りだ。

何かあったからといって、

全てが、何もかもが変わってしまうようなことはありえない。

そのことをすっかり忘れていた。

 

「"……私もまだまだ、かな"」

「どうしたの?」

「"ひゃあっ!?"」

 

 

次の瞬間、考え事にふけっていた先生は、

突然背後から話しかけられた為に飛び上がらんばかりに驚く羽目になった。

慌てて振り返ると、そこにいたのはジト目でこちらを見つめる……

……先生が先程考え事をしていた対象本人であることセリカであった。

 

「"や、やあセリカ……いつの間に?"」

「……ごめん、人が背後を向けてるときは足音を殺すのが癖になってて」

「"ひえっ"」

 

確実に狩人になったが為に身についたであろう技能に先生は、恐れおののいた。

というか危うく心臓が口から飛び出るかと思った。許さんぞ[狩人]。

けれど、先生は何とか体勢を立て直すと、

咳ばらいを一つして改めてセリカのことを見た……が、

その表情を見て言葉を失った。

 

……会議の時、呼び起こされたトラウマに震えていたセリカ。

あの時、晴れたものと先生は思っていたが再びその表情がセリカに浮かんでいた。

 

「"……セリカ?"」

 

先生が思わずそう呼びかけたその時、

 

 

「先生……あ、セリカもいたの?」

 

 

セリカの背後から声がした。

見れば、シロコがこちらに向かってきているところだった。

シロコ自身どこか不安げな様子だったが、

セリカの表情を見てその瞳が驚愕に見開かれる。

 

「セリカ、どうしたの?」

「……シロコ先輩もいるならちょうどよかった」

 

けれど、セリカはシロコの問いかけには答えずポツリとそう呟くと、

大きく息をついた。

 

「……大丈夫、大丈夫」

 

小さく、小さく、そう言い聞かせると、セリカは改めて2人のことを見た。

 

「……アビドス砂漠に行く前に、伝えておきたいことがある」

 

そう、セリカは話を切り出した。

その表情は暗い。

 

「……みんなに伝えるにはまだ勇気が出なくて、だから、2人にだけ伝えるね。

……シロコ先輩には、前々から言うって言ってたし」

「……!」

 

その言葉で、シロコはセリカが何を言うつもりかを理解した。

しかし、先生の方は未だ言葉の意味が解らず、混乱している様子だった。

 

「"え、えっと……なんのこと、かな?話がよく見えないんだけど……"」

「……その様子だと、本当に何のことかわかってないみたいね」

 

そんな先生の様子にセリカはそう言ったものの、

まあいいかと首を振った。

 

「……話したいのは私の……トラウマのこと」

「「"……!"」」

 

……けれど、シロコもまさかセリカから

直接そのことを聞くとは思わなかったらしい。その目が驚愕で見開かれる。

 

「"セリカ、無理に話さなくても……"」

「ダメ」

 

先生が気を使ってか、そう声をかけるが、セリカはそれを否定する。

 

「みんなには、知る権利がある

……って、先輩、偉そうに言ってたけど、

結局、根本的なことは話さなかったから……いつかは言わないといけない」

 

セリカはそこまでいうと、もう一度だけ、大きく息をついた。

……そして、それを、自分の秘密を、ゆっくりと語り始めた。

 

「……私の大切な人が殺された……って先輩は言ってたでしょ?」

 

……声が、震える。

息が、段々と、段々とうまくできなくなってゆく。

けれど、セリカはその恐怖を無理やり押さえつける。

 

 

「……その大切な人を殺したのはね……」

 

 

 

 

 

 

「他でもない、私なの」

 

 

 

 

 

 

 

 




どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?

……いやー、セリカちゃんも交え、いよいよ次回カイザーに殴り込みです。
セリカちゃんはなんだか嫌な予感がするみたいですが……考えすぎですよね!
そして、遂にセリカちゃんは自分の秘密を先生とシロコに言ってしまいました。
何故シロコと先生だったかは……なんででしょうね?

因みにセリカ的にはホシノにもいてほしかったみたいです。
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