極夜に囚われたセリカ   作:時空未知

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高評価、コメント、ここすき、いいね、誤字報告ありがとうございます!
……いよいよ終盤が近づいてまいりました。

そして今更かもしれませんが……好き勝手やりました!


side present 対策委員会、又は獣狩りの夜(1)

 

 

……それは、まるで夜のように堕ち窪んだ曇天の日のことだった。

 

 

「"セリカ、シロコッ!?"」

 

 

冷たい雨の降り始めた中、アビドスの一画を煌々とした爆炎が照らす。

 

……アビドス対策委員会と便利屋68。そして何より、狩人として狩りを行ったセリカの手によってカイザーが致命的な損害を受け、撤退を開始。

そして、ボロボロになったカイザー理事を殺そうとするセリカを、シロコが止めに行ったところまでは見えた。

けれど、次の瞬間にはその2人の姿は爆発に消えて見えなくなる。

 

[ど、どうしたんですか、先生……?そちらの方で、何が!?]

「シロコとセリカがカイザーの置き土産に巻き込まれた。2人とも先行してたからこっちからだと状態がまだ確認できてない」

 

先生の代わりにその声に応えたのはカヨコ。

通信先で、アヤネが息を吞む音が聞こえる。

そして少しの沈黙の後、アヤネの声が聞こえてくる。

 

[……カヨコさん、先生。ありがとう、ございます。

怪我が重篤な人への応急処置と病院への連絡も丁度終わりました。

私も合流します]

「"わかったよ、アヤネ"」

 

声を聴く限りでは、アヤネは最初の時よりは落ち着いてきているようだった。

……いや、落ち着かざるを得なかった、というべきか。

押し殺している疲れとは別種の重い感情が感じられるようにも思う。

 

「"……ごめん。セリカのこと、止めてあげられなかった"」

 

……気がつけば、先生はそう口にしていた。

通信先の音が、一瞬途切れたように静かになる。

 

[……気にしないで、ください]

 

一拍おいて、途切れ途切れの声が聞こえてくる。

 

[止められなかったのは、私も同じですから]

 

 

プツッ

 

 

それっきり通信は切れる。

先生は通信がなくなったことを知らせる画面が表示されたシッテムの箱の画面をしばらく見つめていたが、やがてシロコ達の無事を確認すべく先を急ごうとした。

 

……その時、

 

 

「……ちょっと、噓、でしょ?……噓でしょ?!」

 

 

「「「"!?"」」」

 

 

先行していたアルから、悲鳴のそれに近い叫びが聞こえてきたのだ。

アルが想定外の事態に驚くことは今までもよくあった。

けれど、先ほどのそれは今までのそれと比べて余りにも切迫していて……

 

先生達はアルと、シロコとセリカがいるであろう場所に急ぐ。

 

 

そして……

 

 

「"え……?"」

 

 

……その光景が、目に飛び込んだ。

 

 

もはや声も出せないのか、アルと行動していたハルカは呆然と立ち尽くしている。

その見つめる先。

そこでは……

 

「せん、ぱい?せんぱい?」

 

爆発のためか、身体全体が煤け、頬から血を流しているセリカ。

雨に打たれながら、

舌足らずな声で抱きかかえるそれを揺らす彼女に先程の憎悪に染まった姿はもうない。

けれど、先ほどより状況が落ち着いているか問われれば、それは否だ。

見開かれた赤く蕩けた瞳は、もはや何の色も写さず、ただ目の前のそれを見つめ続ける

 

「落ち着いて、セリカ!まだ、まだ助かるから、だから、だから……!」

 

そんな彼女の肩を揺らしながら、アルがそう呼びかける。

その瞳には涙が浮かんでいるようにも見える。

 

……2人の視線の先にあるそれ。

先生達の視線が釘付けになっているそれ。

 

それは……

 

 

……力なく横たわる、シロコの身体だった。

 

 

少なくとも表面的に負っている傷だけで見れば

服が焼け焦げ、露出した肌が裂けている程度(・・)

精々、キヴォトスの人間が至近距離で高火力な爆弾を食らって気絶しているに過ぎないように見える。

……けれど、その薄く開かれた青い瞳に生気と呼べるものは感じられず、

何よりそのヘイローが、まるで壊れかけのテレビ画面のようにノイズが走り、今にも砕け散ってしまいそうなほど震えていた。

 

 

「……嘘。シロコ、ちゃん……!?」

 

 

傍にいたノノミが駆け出した。

……その声で、漸くセリカはゆるゆると顔を上げた。

 

「ノノミ、せんぱい……シロコせんぱいが、うごかなくなって……」

 

辛うじてそう言葉を紡ぐと、セリカは歪に、歪に微笑む。

 

「ふふ。へん、だよね……?

だって、キヴォトスだと爆弾いっぱつでこんなことになるはずがないのに……

わたしをからかってるんだ」

「……ー!」

 

気がつけば、ノノミはセリカとシロコを抱きしめていた。

……服越しに2人の体温を、吐息を感じる。

セリカのそれは辛うじて暖かなものが感じられるものの、吐く息は不安定で、

シロコは辛うじて胸が上下していることがわかるのみで、

息は掠れ、身体も冷たい。

 

「"……っ!!

アロナ、シロコの容態の確認、

それとアヤネが呼んでくれた救急の人がまだいるはず、すぐに連絡を!!"」

 

 

その背後では我に返った先生が。

シッテムの箱に向けて鋭く指示を出す。

……そんな彼女に、背後から声がかかる。

 

 

「……あはは。ねぇ、せーんせ?」

 

 

……ムツキだ。

振り向くと、いつも通り笑ったままの彼女がいた

……今回の場合、あくまでそれは表面上の物でしかなかったが。

 

「カイザーPMCの理事……だっけ?あいつの居場所、わかる?」

 

声も、いつも通り。けれど、その裏にある響きはどこまでも平坦だった。

その声に、他の便利屋の少女達の視線も彼女に向けられる。

 

「"……ムツキ"」

「……みんなの言いたいこともわかってるつもりだよ?

でもさ、こんなことになっちゃったからにはさ……もう、殺るしかないよねぇ?」

「……対象は既にアビドス郊外に離脱。

追撃するにしろ今の状態じゃ難しい。わかってるでしょ、ムツキ」

 

今にも飛び出して行きそうなムツキのことをカヨコがあくまで冷静に諌める。

……自分で言った通り、わかってはいるのだろう。

何かをこらえながらも、彼女は踏みとどまった。

その時、アルが何か思いついたようにハッと顔を上げる。

 

「そ、そうよ!セリカ、あの時太ももに注射してた薬、

あれを使えばシロコも……!」

「!!ダメ!!」

 

アルの提案を聞くや否や、セリカは即座にそれを拒否した。

……アルたちは血の医療について何も知らないのでそう提案するのも無理もない

けれど、血の医療を施す。

即ち、大切な人を自分と同じような存在にするというのは

セリカにとって何があっても許容できないことだった。

 

「えっ……で、でもそうしないと、もしかしたらシロコが……!」

「アルさん、これには訳があって……!」

 

混乱するアルにノノミが説明を試みるが、うまく言葉が続かない。

……その時だった。

 

 

「……」

 

 

セリカが、ゆっくりと、ノノミの腕からすり抜けるように立ち上がった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

……漸く、頭が冷えてきた。

 

 

ぐちゃぐちゃして訳が分からなくなっていた頭の中は静かになり、

もう一度、純粋な、純粋などろりとしたものが意識を満たしてゆく。

 

 

「……!待ってください、セリカちゃん!!」

「セリカ……お願い、今は、今は駄目なのよ」

 

 

どこからともなく伸びてきた何者かの腕が絡みつく。

 

 

……鬱陶しい(ごめんなさい)

 

 

所詮、あれは言葉の通じぬ獣(私は出来損ないの狩人)

この手で狩らずに(また間違えた)、何が狩人だ。

中途半端な狩りになったから、奴ら()のせいでシロコ先輩が殺された。

 

 

狩り(私の)狩り(私の)……狩りの成就を(私のせいで)

 

 

ただ一点のみに思考が集約されてゆく。

全ては元凶たるあの獣を狩るために(私のせいで、こうなったから)

 

 

辺りに視線を巡らせる。

 

……引き留めようとしているのだろう。繋ぎ止めようとしているのだろう。

 

今にも零れだしそうな獣性のせいで、

姿もおぼろげな大切な人達が私の周りにいる。

 

 

「みな、さん……?」

 

 

奥の方からもう一人(アヤネちゃん)

 

 

「……シロコ先輩、は?それにセリカちゃん……?」

 

 

きっと今のまま獣狩りに出ようとしたら止められるだろう。

ならば、一番手っ取り早い方法でこの包囲を抜ける。

狩人の徴では時間がかかりすぎる。

一度妙な動きを見せれば、おそらく本格的に拘束される。

 

 

……それならば、

 

 

ぶかぶかの狩装束で隠れるように、レイテルパラッシュを逆手に持つ。

 

 

「……な、何か言ってくださいよ。

だって、セリカちゃんのことはありますけど、

カイザーは追い払えて、それで、それ、で……!」

 

 

……こうするのは本当にいつ振りか。

今までに行った回数は2回ほど。

そのどちらも、狩人の夢に囚われてすぐのことだったか。

幸いなことに、周りの視線は遅れてやってきた一人の方を向いており、

気付かれている様子はない。

 

 

……レイテルパラッシュに、力を籠める。

 

 

「……!」

 

 

……唯一、こちらを向いていたアヤネちゃん(遅れてきた一人)と目が合った。

 

 

 

……………

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

「ごめん」

 

 

 

「待っ

 

 

 

瞬間、自分の喉元目がけて突き出された

レイテルパラッシュが内部を引き裂きながら後頭部を貫通。

あっという間に意識は闇の中へと呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

……闇、闇、闇。

 

 

 

暗闇ばかりが覆いつくした、ほとんど廃墟同然と化したビルの一室。

そこに唯一ある窓から見える景色は、

今は昼過ぎだというのにその部屋と同じように、

暗く、暗く、深い夜のような暗雲が立ち込め、冷たい雨ばかりが降り注いでいる。

その中、一人の影法師のような人型が佇む。

 

……黒服だ。

 

 

「……おや、理事。ご無事でしたか……といいたいところですが、

あの傷ですとスペアの身体に乗り換えましたか?」

 

 

黒服はスマートフォンで通話をしながら、

不思議な機材で何かを調べている様子だった。

 

 

「……まあまあ、そうお怒りにならなくても。

それに、ヘイロー破壊爆弾の使用対象は黒見セリカのみとし、くれぐれも他の生徒を巻き込まないように、と。私は確かにお伝えしたはずですが?」

 

 

……機材の液晶に映っているのは、とある病院の入院患者の情報ファイルだった。

本来アクセスできるはずがないもの。

不正アクセスして閲覧していることにまず間違いはないだろう。

 

「……カイザーPMC所属の生徒6名が重傷。

アビドス高等学校2年、砂狼シロコが意識不明の重体……。

そして、同じく1年の黒見セリカが、自殺……と。

いくら辺境のアビドスで起こったこと、いくらあなた達企業の力があれど、

もみ消しには苦労しそうな事案ですね」

 

どこか他人事のような黒服の言葉。

それに対し、通話先の人物は何やらがなり立てる。

 

「……その点に関しては同意しますよ。

何しろ、自殺したはずの黒見セリカの遺体は死亡後即座に消滅。

それに、未だアビドスにも動きがあります。

生存に関していうなればほぼ間違いないかと」

 

そこで一度言葉を区切ると、黒服はくつくつと笑いを溢した。

楽しくて、仕方がないとでも言うかのように。

 

「クックック、死して尚、まるでその出来事が夢であったかのようによみがえる力……

たとえ神秘ありきでも説明のつかない、実に興味深い現象ですね。

そうは思いませんか?」

 

そんな黒服の問いかけに、再び通話先の声ががなり立てる。

 

「……これは失敬。

まあ、私とて生きたまま体内に腕を突き込まれるようなことは御免被りますね」

 

黒服がそう言葉を紡いだその時。

 

 

 

……チン

 

 

 

小さな電子音が聞こえた。

音源は大量の機材に隠れたすぐ奥にあるエレベーターから。

 

「……おっと、すいません。少し前にお呼びしていた客人が来たようです。では」

 

そう言うと、黒服はなおも騒ぎ立てる通話相手を無視して電話を切ると。

すぐ近くにある古びたワークデスクの椅子へと移動する。

……その客人という人は、すぐに姿を現した。

 

 

「……お待ちしておりました、先生」

 

 

黒服は、あくまで友好的に客人……先生へと話しかける。

だが、それとは対照的に先生が黒服を射抜く目は厳しい。

 

 

「あなたとは一度こうして、顔を合わせてお話してみたかったのですよ」

「"御託はいい。私は、私の生徒たちを助けるためにここに来た"」

 

 

……薄暗い、たった2人だけの場所。

そこで、大人の戦いが静かに幕を開けた。

 

 

______________________________________

 

 

 

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、

 

 

 

……心電図の音が、微かに……だが確かに、規則正しく音を刻んでいる。

清潔なベッドの上。

そこでは、一人の少女が滾々と眠りについていた。

けれど、その身体には近くの機械や点滴から伸びた管が繋がれ、

人工呼吸器により口元を窺い知ることはできない。

その少女……シロコのすぐ傍の椅子には、

ノノミとアヤネが静かに座っていた。

……何の因果か、セリカが昏睡していたのと同じ病室。

そこで今、同じように目を覚まさない大切な人を見守っている。

 

 

 

 

[……ごめん]

 

 

 

 

「……っぁ」

 

 

少し、思考を巡らせるだけで、光景がフラッシュバックする。

ほんの短い謝罪と共に、その白い肌を鈍い輝きを帯びた直剣が刺し貫く。

噴き出す鮮血。倒れ込む身体。

悲鳴を上げて駆け寄るも、その姿はすぐに崩れ、燐光となって消えてゆく……

……狩人の夢に囚われて、死なないとは聞きはしている。

けれど、つい先ほどまで、その言葉の意味を知っているに過ぎなかった。

 

 

「う、ぅ、うう」

 

 

……もうとうに枯れ果ててもおかしくないというのに、

涙は未だ零れてくる。

泣きじゃくるアヤネの肩を、ノノミはそっと抱きしめる。

……彼女自身も泣いていた。

 

無力だ。どこまでもどこまでも。

何も出来なかった。ただ、崩れてゆくのを見ていることしか出来なかった。

シロコのことも、セリカのことも、全部、全部……

 

 

「……大丈夫、大丈夫ですアヤネちゃん。

きっと、シロコちゃんは良くなります。ホシノ先輩も帰ってきます。

セリカちゃんも、きっと……きっと便利屋の皆さんと先生が見つけて……」

 

……我ながら、無意味で空虚な言葉だとノノミは思う。

けれど、自分自身それに縋るしかなかった。

縋らなければ……今にも折れてしまいそうだった。

 

雨の打ち付ける音と、微かな嗚咽だけが静寂の病室の中を満たす。

 

どうして、どうしてこんなになってしまったのだろうか?

……アビドスは、救われるべきではなかったのだろうか?

ホシノ先輩は、攫われた。

シロコ先輩は、意識が辛うじて戻ったとしても、

もう助かる見込みがほとんどないと言われた。

セリカちゃんも、何処かに行ってしまった。

あの時確かに見えていたはずの希望。

それが、今は見えない。

 

……と、

 

 

「……ぅ」

 

 

ノノミのものでも、アヤネの物でもない微かな呻き声。

2人は慌てて顔を上げてその声がした方を見た。

声がしたのはベッドの上、眠っていたシロコがかすかに身じろぎしたかと思うと、

その頭上に、今にも壊れてしまいそうな空色のヘイローが灯る。

 

「……先輩!」

「シロコちゃん!?」

「……?」

 

その声に応えるように、シロコの瞼がゆっくりと開かれた。

その視線が宙をさまよった後、ノノミとアヤネがいる方向へと向けられる。

……けれど、その視線はどこか違う虚空を見つめているように、焦点が微妙にあっていない。

 

「……だ、れ?」

「……!私です。奥空アヤネと、ノノミ先輩です……わかり、ますか?」

「……ん」

 

必死に呼びかけるアヤネの声を聴いて、

漸く、その焦点が合うと同時、シロコの頬が僅かに緩んだ。

 

「ごめん……全部、掠れて見えて……耳も、うまくきこえ、なくて……」

「そんなこと……!」

「シロコちゃんが謝ることなんて……何も……」

 

シロコの言葉に2人が思わずそう声を発する中、

うまく聞こえていないのか、はたまた聞こえていないふりをしているのか……

なんにせよ、彼女はゆるゆると視線を辺りに巡らせる。

 

「……セリカ、は?それに、先生も……アル、たちも……

それに、カイザーは……」

 

その言葉に、2人は一瞬何を言うべきか詰まった。

……けれど、一体隠したところで何になるというのだろうか?

 

「……カイザーはあの後撤退しました。

でも……先輩が、こんなことになってしまって……

結局、結局セリカちゃんを止めれませんでした」

「先生とアルさん達が、私たちにはシロコちゃんのことを見ていてほしいって言ってくれて、代わりに探しに行ってはもらってはいます。

でも、見つかるかどうかは正直……」

「……そっ、か」

 

2人の説明に、シロコは辛うじてそう答えると、僅かばかり表情に影を落とした。

……静寂が流れる。

どれ程の時間が経っただろうか?やがてシロコがポツリと呟く。

 

「……多分、私って……もう、助からないん、だよね?」

「そんなこと言わないでくださいっ!!」

 

瞬間、アヤネから悲鳴のそれに近い怒声が発された。

僅かに怯んだシロコに、畳みかけるように彼女は言葉を紡ぐ。

 

「シロコ先輩はいっつも無茶してばっかりで変なこともよくします。

でも、その分私達に比べて身体は丈夫じゃないですかっ!?

医師の方も言ってました、すぐに回復するって、すぐに良くなるって!!」

「……アヤネ」

 

シロコの呼びかけに、アヤネが答えることはない。

ただ、何度か荒く息をついたのち、

繋がれた管に触れないようにしながらシロコの手をギュッと抱きしめる。

ぽた、ぽたと。

再び零れ始めたそれが、シーツに水滴をつけてゆく。

 

「……アヤネ。私の身体のことは……私が、一番、よくわかってる」

「……う、ぁ……ぅ、うううっ、ああ」

 

シロコの、途切れ途切れの、しかしどこか優しく、物悲しい響きのある言葉。

それを前に、アヤネはついに泣き崩れた。

 

「……あんまり、あんまりじゃないですかっ……!

借金を返したかったのに、みんなと……一緒に、一緒にいたかっただけなのに、

それなのにこんなこと……こんなことって……えうっ、う、ううっ」

 

布団越しにシロコの身体に顔を埋めたまま泣きじゃくるアヤネ。

その背をそっと撫でながら。

自身も涙をこぼしながら、ノノミが言葉を紡ぐ。

 

「……ヘイローに、原因不明の致命的な損害が起こっているって、

お医者さんは言ってました。

このままだと、持って数日。

……奇跡的に、回復しても、重い後遺症が残るっ……て……っ」

「……ん……わかった」

 

ノノミからの説明に、シロコはただそうとだけ答えると、一度目を閉じる。

……そうして、息をできる限り深く吸い込み、吐き出す。

次に見開かれたその瞳は、虚ろ。けれど、確かな決意が宿っていた。

 

「ねぇ……ノノミ」

「……どうしたんですか?シロコちゃん」

 

シロコの呼びかけに、一拍遅れてノノミが返答する。

そんな彼女に向けてシロコは言う。

 

 

 

「……今、私の荷物と……制服、どこにある?」

 

 

 















どもー、時空未知です。
ということで今回の作品をはいかがだったでしょうか?


……うん、まあ順調に状況が地獄を突っ走っています。
ここからは入れる保険……ありますかね?
今回からは主に残された対策委員会の面々の視点が多くなります。


とまあ、いろいろ書くのもあれ何で最後に一言だけ。




この小説の展開は、かなりフロム的思考に寄っています。
今も、これからも。

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