青ざめた血
[先生を指定ポイントまで移動させる]
この戦闘の目標が先生本人から提示されたのがつい先ほど。
その目標の到達で、この戦闘が終わるかどうかはわからない。
けれど、それ以外の可能性がない以上、その目標に向けて進み続けるしかない。
……だが、第3者からの砲撃支援があって戦況は回復こそしたものの、依然として厳しいままだった。
獣の持っていた鉄柱は高威力かつ広範囲を薙ぎ払い、粉砕できるものであったものの、その重量から獣といえど動きを制限され、その脅威であった俊敏性が少なからず損なわれていた。だが……
轟音
3発目となる砲撃が後方から放たれる。
けれど獣はそれに対し短く唸ると、巨体に見合わぬステップで紙一重で回避して見せた。
……だが、その背後に影が迫る。
「背中ががら空きだよっと!!」
「C4、い、行きます……!!」
それは、ムツキとハルカの爆薬。投擲されたそれは放物線を描いて獣の頭部へと迫る……が、着弾のほんの一歩手前。獣がその存在に気が付いた。
「ガアアァッッ!!!」
次の瞬間、獣が身体の軸を逸らすや否や、
緩やかな軌道を描くそれに向けて腕を振り払うようにぶつける。
爆薬はその衝撃で起爆こそしたものの直撃はせず、獣の体勢を崩すには至らない。
「ありゃりゃ、それも対処されちゃうんだ」
「……さっきまでと比べて格段に反応が早い。厄介なことになってきた」
ムツキの言葉に、続くように少し離れた場所にいるカヨコがそう呟く。
……そう、鉄柱が破壊された今、獣は敵を一撃で打ち砕き、一掃する力こそ失ったもののその俊敏性を取り戻していたのだ。
戦車の砲弾を目視で避け、続けざまに別方向から放たれる爆雷もかすりこそすれど直撃はさせない。
……獣は先生らに対し攻めあぐねているが、彼女達もまた、獣に十分な隙を作り、先生を目標地点まで送り届けることが叶わずにいた。
「……っ、やっぱりダメ」
そんな中、シロコは小さく悪態をついた。
……別に、先ほどから始まった砲撃が理由ではない。
彼女自身は、突然始まった戦車からの支援砲撃については特に何も思っていない。
寧ろ、どこの誰だか知らないが仲間の窮地を救ってくれたことに感謝しているほどだ。
けれど、彼女が顔を顰めるには他の要因があった。
「火力が、足りない……!」
彼女が使用可能な攻撃手段はアサルトライフルによる射撃、そしてドローンのミサイルや手榴弾による爆撃。
普通の敵を相手にするには十分と言えるだろう。
……だが、今の敵は全くもって普通ではない。
黒い獣。
大切な後輩の成れ果てた化け物。
ノノミのミニガンの掃射すら受け付けぬ身体は、シロコのアサルトライフルでは当然のように効果がないどころか、気を引くことすら叶わない。唯一効果のある爆撃も、アル達便利屋のそれや、戦車砲に比べれば少々劣る。
結果として、シロコの存在は獣の気にも止められていないのが現状だった。
……皆と同じように、セリカを正気に戻すべく行動しているはずなのに。その実、自分は戦闘の蚊帳の外に置かれているようで……
その事が、シロコの心を焦燥を持って締め付ける。
更に、だ。
「グアアッ!!」
「!!」
いい加減遠く離れた位置から飛んでくる砲撃を煩わしく思ったのか、先程まで武器として使っていた鉄柱の残骸で一番大きいものを掴み取ると、投擲の予備動作に入る。
「"アル、シロコ!セリカの右肩の上あたりに照準、2人の位置なら射角が取れるはず、タイミングは私が言うからお願い!"」
「任せなさい!!」
「ん、了解っ」
先生からの指示。
アルの威勢のいい返答が聞こえてくる中、シロコもそれに続くようにして返答すると、左腕をいつものように動かし、腰に装着したドローンの照準器を……
「あっ……!」
けれど、大きく、歪に変質した左腕のせいでうまく掴むことができない。
シロコの手をすり抜けた照準器は小さな音を立てて地面に転がる。
慌ててシロコが照準器を拾い上げようとした次の瞬間、
「"今っ!!"」
鋭く響く先生の声、その響きが雨音に掻き消されぬうちに、アルの狙撃が的確に獣の腕へと着弾した。
「ギャアッ!?」
獣は突如として起こった爆発の衝撃に耐えきれず瓦礫を取り落とす。
……だが、結果的にアルの狙撃のみでどうにかなったものの、シロコは攻撃を行うことができなかった。
「シロコ、何かあったの!?」
アルがシロコに何か問題でも起きたと思ったのか、そう声を張り上げる。
それに対し、彼女はアサルトライフルを持ったまま変質していない右手の方を離れた位置にいるアルに向けて軽く掲げると、大丈夫だとでも言うように揺らす。
……けれど、シロコの表情は優れないまま。
彼女は変質した左腕を何とも言えない表情で一瞥した後、獣の方へと注意を戻した。
もう一つ、シロコの抱える問題。
それは獣化による身体の変化、特に左腕の変質だ。
それ自体が大きく、更には形も人とはかけ離れた形になったことで今までの戦闘経験で身体に染みついてきた咄嗟の動作やリロードがとてつもなくやりづらい。
それが、彼女の攻撃機会の不足につながっていた。
「……っ」
一応、シロコは対処法のようなものは思いついていた。
しかし、その戦法はリスクが非常に高い。
そして何より……
……あと一歩、あと一歩。シロコは精神的な踏切をできずにいた。
その時、
「ゴァアアアアァアアアッ!!!」
いい加減しびれを切らしたのか、獣の姿が一気に加速する。
狙うは唯一戦況を覆しうる手段を持った先生、その一点。
「行かせないっ!!」
咄嗟にムツキが獣の進行方向に地雷を撒くが、
獣は器用にそれを躱すと大きくステップ。
遠隔操作での起爆の閃光すら置き去りにして突き進む。
「くそっ、外した……!」
「社長、先生をっ!!」
カヨコの声が響く中、
射程圏内に先生を捉えた獣が、素早く凶爪を剥き出しにした手を突き出した。
けれど、
「危ないっ!!」
「"うぐっ"」
間一髪、先生の首根っこを掴んだアルが
素早くその身体を引き寄せたために獣のその一撃は空を切った。
……一撃で血袋になることと比べれば、一瞬首が閉まることなど安いものだ。
けれど、獣とてその一撃で獲物を見逃すわけがない。
回避されることは初めから織り込んでいたといわんばかりに横方向に回避したアルと先生に向けて腕を大きく振り上げ……
「ガアッ!?」
その次の瞬間、足元に無数のミサイルが着弾した衝撃で僅かに怯む。
……シロコのドローンからの攻撃だ。
だが、それでも獣は怯んだだけ。
体勢を崩しながらも、その赤く蕩けた瞳は先生を抱え上げて逃げようとするアルを逃すことなく捉えている。
「ヴァアアアアッッ!!!」
獣は目標に向けて飛びかかるべく、足に力を込める。
……瞬間、
「今……!!」
ミサイルの爆煙を突き抜けるようにして、獣の足元に影が迫る。
その間合いは、手を伸ばせば獣へと届きかねないほど。
煙が、その勢いに押され晴れる。
「"シロコっ!?"」
その影は他でもない、シロコだった。
駆け出すと同時に時間差でミサイルを発射。
それを煙幕に獣へと急接近していたのだ。
……シロコの考えついていた打開策、それは獣に対して白兵戦を仕掛けること。
無論、彼女が頻繁に行っているただの白兵戦ではない。
銃器ではなく左腕を主軸にした超近接戦闘だ。
躊躇っていた理由は至極単純。
先ず、左腕の獣の爪が本当に有効か。
そして、本当にそれが有効であったとして、致命傷に容易く至る猛攻を振りまく獣相手では、余りにリスクが高いことの2つ。
……けれど、彼女はその不安を、柄にもなく感じている恐怖をすべてねじ伏せる。
結局のところ全部が全部爆撃による遅延だけでは限界が来るのだ。
だったら、決して無視できない脅威を、相手に見せつけるのみ。
最悪の場合、自分には輸血液があるのだ。
シロコは蕩けた白黒のオッドアイで、頭上の獣の顔を見上げる。
「……セリカ、ちょっと時間もらうね」
ほんの短い宣言とともに、シロコは獣の右足めがけて左腕の凶爪を振り下ろした。
唯でさえ鋭く、更には彼女自身獣へと近づいていた故に高められていた膂力。それにより繰り出された斬撃は……
ズシャッ!!
獣の肉を一撃をもって引き裂いた。
「ギャアッッ!?」
久しく感じていなかった明確な苦痛に、獣が苦痛の悲鳴を上げる。
それと共に、シロコの腕に裂ける肉の感触が伝わり、迸る返り血が肌を濡らす。
普通なら、その悪寒に身を震わせていたかもしれない。
だが、
「……ぁ」
その感触に触れた瞬間、シロコの身体全体をある一つの感覚が駆け抜けた。
「……あ」
……それは、悦楽。
鼻を擽る血の香りが、
血肉を断ち切るその感触が、
堪らなく自身の奥底に眠るそれを……獣性を刺激する。
「あ、アァ……!」
シロコの瞳から正気が消えた。
高められた啓蒙により獣となることこそないものの、獣性に呑まれたその意識は、更なる心地よさを求め腕を振りかざす。
「ヴァアアアアッ!!!」
瞬間、少女から発せられたとは到底思えない劈くような悲鳴と共に、シロコは獣に向けて威力と速度だけが乗った力任せな連撃を繰り出した。
血飛沫が舞う。
肉が断ち切られる。
「ギャアァァアアアアッッ!!???」
肉を滅茶苦茶に引き裂かれ、刻まれる激痛に獣が叫びをあげて膝をついた。
それに対し、シロコは獣性の赴くままに尚も血肉を引き裂き続ける。
獣性が歓喜で沸き立つ。
血を被るたび、身体に更なる力が籠もってゆく。
「ッ、獣カ゚ァッ!」
その時、短く地面を蹴る音とともに足が逃げた。
堪らない鮮血の香りをこぼしながら、それが間合いの外へと流れてゆく。
……逃がさない!
シロコは渇望に導かれるままにそれに追従する。
最早、彼女には流れる血筋と切り開かれた肉の切断面しか見えていない。
もっと血肉を。もっと、もっと……!
「モッ「"危ない、避けてっ!!"」」
その時、何処からともなく響いてきた記憶の中にある声。
それが、獣性に呑まれていたシロコの思考を一気に現実へと引き戻す。
「ウ、ぁ……?」
シロコの瞳に光が戻る。
……だが、それは遅きに失した。
「消エロッ!!!」
次の瞬間、横なぎに、全力をもって獣の腕が薙ぎ払われる。
それは、高まる獣性に身を任せた攻撃一辺倒で回避はおろか防御態勢にも、
本能的な受け身の体勢すら取ることができなかったシロコの身体に直撃した。
ごしゃっ
「がふっ……!?」
獣の凶爪が身体を抉った瞬間、身体の中で鈍い音がした。
その次意識が追いついたときにはシロコの身体は冗談のように宙を舞っていた。
裂けた。潰れた。折れた。
そんな感覚が連続したかと思うと、
気がつけば濡れたアスファルトの上に叩きつけられる。
「かひゅ……げほっ、ごほっ!?」
訳も分からずシロコは咳き込んだ。
その度に、口から錆びた鉄のような味わいの液体が零れてゆく。
抉られた個所が、痛みですらない鈍い衝撃のようなものを発している。
……動けない、動くことができない。
そう、錯覚してしまいそうだ。
けれど、だからといって相手はその隙を見逃してくれるような存在ではない。
「グアァァアアアッッ!!!」
悍ましい咆哮を上げながら急接近してきた獣が、
血に沈むそれを叩きつぶさんとその手を大きく振り上げる。
……死ぬ。
たった一つの単語が、シロコの脳裏を駆け抜けた次の瞬間。
自分でも信じがたいことに、命があることが不思議なほどの傷を負っていたはずの身体が一気に跳ね起きたかと思うと、そのまま獣の懐に飛び込むようにしてその一撃を回避した。
「ぐっ……!」
激しく動いたせいで体内がねじ切れんばかりに痛む。
……いや、今し方本当にどこかねじ切れたのかもしれない。
けれど、その痛みをシロコはねじ伏せると、すれ違いざまに自身が作り出した獣の足の傷目がけてすれ違いざまに一閃。
……鮮血が飛び散る。
それを浴びると同時、身体の痛みが幾分か薄れ、
それと同時に獣性の歓喜が沸き立ってくる。
……が、
「うる、さい……!」
思考の何よりを上書きする激痛の助けもあったものの。
シロコはその歓喜に呑まれることなく理性をもってそれを押さえつけると、
そのままステップを繰り返し獣から距離を取る。
獣はその姿を追おうと振り返ったものの、次の瞬間死角から飛んできた戦車砲が直撃しそれは叶わなかった。
「はぁ、あっ、ぐぅ……」
十分に距離を取ったところで少し気が緩んだのか、また痛みがぶり返し始めた。
シロコは荒い息をつきながらも、持ったままだったアサルトライフルを背中に背負うと
懐に手をいれる。
……取り出したのは、無論、輸血液だ。
それを太ももに打ち込めば、完全にとまではいかないもののありえない速度で身体中の傷が治癒してゆく。
2本ほど打ち込めば、それだけで身体は万全に限りなく近い状態まで回復していた。
……いざ使う立場になってみれば、その効力には空恐ろしさすら覚える。
「……でも、取り敢えずこれでまだ……」
「何言ってるんですか!?」
次の瞬間、聞き覚えのある声が背後から聞こえたかと思うと、
その方向に向けてぐんと身体が引っ張られ、遮蔽物の影に引き込まれる。
シロコが気が付いたときに眼前にいたのは、
怒ったような……いや、まず間違いなく怒った表情のノノミだった。
けれど、その頬には雨粒以外の何かが伝っているようで……
「……えっと」
「えっとじゃありませんよ!!」
いたたまれない気持ちになったシロコが視線を泳がせ、言いよどむ。
けれど、それを全て打ち払わんばかりの悲鳴のような声が、普段のんびりとしている同級生の少女から発せられた。
「シロコちゃんわかりますか!?
大切な友達が目の前で別人みたいに狂って、傷つけあって、その挙句血塗れになって今にも死にそうになって……!
その光景を目の前で見ることになって、どれだけ怖かったか、どれだけ苦しかったか……!」
「……でも、これしか方法はない」
濡れた声のまま矢継ぎ早に言葉を紡ぐノノミに対し、シロコはたった一言そう言った。
……それだけで、たったそれだけでノノミの言葉が途切れる。
「先生以外に、セリカの気をずっと引きつけられる……
それこそ、油断すればこっちがやられると思わせられる人がいないと、どうやってもそのうち先生が殺される」
「……っ」
……そう、これはある種の免罪符だ。
仲間の感情を、思いを、押し殺して。
血塗れの最適解を無理矢理歩むための免罪符。
ノノミとて、シロコの言うことがある意味では正しいことをどこかでは理解しているのだろう。
だからこそ、言葉に窮した。
一瞬の静寂が、2人の間に流れる。
……だが、それも長くは続かない。
「"ノノミ、シロコ、上!!!"」
その静寂を打ち破ったのは先生の声。
それが言い終わらぬうちに、ノノミとシロコの頭上から降っていた雨粒が途切れた。
「ゴアアァァアアアアッッ!!!」
瞬間、頭上から咆哮が降る。
それが聞こえた瞬間、シロコはノノミに飛びつくようにしてその身体を攫っていた。
ガアンッ!!!
つい先程まで彼女らがいた場所に、獣が凶爪を叩きつける。
……もう少し反応が遅ければ、2人ともども叩き潰されていただろう。
だが、獣とてそれをみすみす逃すわけがない。
とった予備動作は、生半可な回避では避けきれない広範囲の薙ぎ払いの為のもの。
……ノノミを抱えたままのシロコでは、到底避けることのできない一撃を、獣は選択したのだ。
そして……
「"アル!!"」
轟音
先生の声が放たれるや否や、紅の弾丸が夜を掠め飛ぶ。
……それが狙うのは獣の頭部ではない。
獣の死角になっており、かつ着弾すればほぼ確実に全身の体勢を崩せる場所……シロコが作り出した獣の傷口に寸分の狂いなく着弾、爆発の華を咲かせた。
「グギャアアァアアアアアアアッッ!?!?」
何かが砕けるような音とともに、獣の全身から血が噴き出し、その体勢が大きく崩れる。
……少なくとも、シロコ達が逃げられるだけの隙は確保された。
「……ノノミ」
それを視界の端で見届けたシロコは、未だ抱えたままの少女の名を呼ぶ。
それに対し、ノノミの手がぴくりと反応する。
……シロコの服を掴もうとしたのだろうか。
けれどそれは、すぐに力無く垂れ下がった。
「……いなくなったら、絶対に許しませんからね」
シロコの耳元で、嗚咽で掠れた声が囁いた。
「ん、わかった」
そう返答すると同時、シロコは今度こそノノミから手を離すと、獣の丁度後ろ辺りへと素早く回り込んだ。
「グ、ァア、アアアアアアアアアアッ!!!」
それが終わって丁度すぐ、獣が身体を起こすと咆哮を上げた。
それと同時にシロコが作っていた傷口が、赤に包まれたかと思うと修復される。
「……む」
……少し、攻め辛くなった。
まあ、また傷口を開けばいいだけの話だが。
「……っ」
いとも容易く、傷口を開くなどという手段を思いついた自分に、シロコは決して少なくない嫌悪を覚える。
少しずつ、自分の中の人間的な何かが崩れて行っている気がする。
……セリカも、狩人になりたての頃は自分と同じだったのだろうか?
体力までは回復しきれなかったのか、シロコの目の前にも関わらず獣は荒い息をついている。
その隙に、シロコは先生とアルがいる方向へと視線を向けた。
「"アル、大丈夫、大丈夫!?"」
「うぷっ……へ、平気よ先生。
足を狙ったのは、わ、私の判断だし……」
そう言うアルは口元を押さえており、表情も青ざめているように見える。
……何があったかは、想像に難くない。
それを知らないように装いながら、シロコは彼女らに呼びかける。
「先生」
「"……シロコ"」
その呼びかけに気がついた先生が、視線をこちらに向ける。
……その瞳が、少なからず不安に揺れているのが見える。
けれど先生は、その不安を押し殺し、あくまで安心させるようにシロコに微笑む。
「"……
「……ありがとう」
ほんの短い文章。
けれど、最適解を選んでくれた。信じてくれた。
シロコはそれに小さく感謝を送ると、正面へと視線を戻した。
「グルル……」
正面に捉えるは、唸りを上げる獣。
……先ほどまでと違うのは、その視線は先生ではなく、真っ直ぐにシロコのことを射抜いていること。
「……やっと見てくれた」
緊張したように、けれどうれしそうに、シロコが口ずさむ。
無論、獣がそれに応えることはない。
ただ、目の前のそれを、脅威と見定めるのみ。
……最初に動いたのは、獣の方だった。
「ガァアアッ!!」
ダンッ!!
その巨体が地を蹴ると同時、反応しがたい速度でシロコに迫る。
振り上げたのは……左腕。
「ふぅ……っ!」
シロコはそれを視認するや否や、右方向へすれ違うように受け身を取り、返す刀で獣を狙う。
ズシャッ!!
血肉が裂ける、鮮血が舞う。
その色に、感触に、獣性から得も言えぬ快楽が齎される。
「う、うウッ」
たったそれだけで、理性が何処かに消えてしまいそうになる。
……2撃。
更なる力をもって振るわれたそれは、先程の切り傷を更に深いものへと変える。
だが、そこで獣が動いた。
「グアアッ!!」
短い咆哮と共に、後方にステップしながら短く振り払うような一撃。
「あ、ァあ゛アアッ!!」
たが、シロコはそれを潜り抜けるようにして避け、
獣の懐に潜り込むとその勢いのまま左腕を振り抜く。
……獣性が高まる。身体が歓喜で震える。
貪欲に、貪欲に血肉を求める。
……だが、
呑まれるな、呑まれるな、抑えろ、抑えろ……!
シロコは今にも理性の溶け落ちそうな獣性の奔流の中、それを必死に抑えつけていた。
……獣性が高まれば、それに応じて力がこもる。
けれど、重ねれば重ねるほどまともに受け身が取れなくなり、攻撃の衝撃をもろに受ける。
だからこそ身体を駆け巡る歓喜をねじ伏せ、獣性に呑まれて攻撃一辺倒にならぬように。
獣性と理性の間で、動き続ける。
「ゴアアアァァアアアッ!!!」
その時、獣が大きく腕を振りかぶった。
今にも更なる追撃を加えそうになっていたシロコだが、
何とか衝動を抑え込むと即座に安全圏に受け身を取る。
ヒュオッ
シロコが回避したすぐ傍を、獣の腕が駆け抜けた。
だが、獣は回避したシロコに向けて即座に連撃を仕掛ける。
2撃、3撃……止めに大きくディレイをかけて正確に動きを追尾した4撃。
「っ!?」
鋭く振り下ろされたそれは、タイミングがずれた故に回避の後隙を見せていたシロコに直撃した。
「がはっ!?」
叩きつけられた衝撃で肺から空気が逃げてゆく。
凶爪が肌に食い込み、引き裂いてゆく。
獣はシロコに対し更に追撃をかけるべく、もう一度腕を振り上げた……が、
「ほらほら、隙だらけだよっ!!」
「ッ!ガアッ!!」
次の瞬間、横合いから飛んできたムツキの爆弾を視認したためその動作を中断、
即座に回避行動に移る。
……その時、
「……!」
獣の赤く蕩けた瞳が、爆炎の向こうにいる、それを捉える。
本能的にたどり着かせてはならないと知っている場所へ、向かっている。
「ゴアアァァアアアアッッ!!!」
獣は絶叫を上げると、その方向に向けて駆けだそうとした……が、
「行かせないっ!!」
次の瞬間、再び足に走った激痛に二の足を踏むことになる。
獣が反射的に飛び退れば、あの
「ッ、ガアァアッ……!」
獣の心がざわめく。
もう何時頃からか続いている戦い。
現れる獣現れる獣、どれもこれも、
見ているだけでどうしようもないほど心をかき乱してくる。
……特に、灰色の獣は、どうしようもなく、
……どうして、獣に、獣なんかに……
「邪魔、ダアアアアアァッ!!!」
絶叫するような声を発しながら、
獣はそれがいる場所を低く、刈り取るように腕を薙ぎ払う。
それに対し、シロコがとった行動は単純だった。
タンッ
身体が、軽やかに宙を舞う。
その直下を、獣の腕がすり抜けてゆく。
けれど、シロコの動きはそれだけにとどまらない。
空中で体勢を低くし、前傾姿勢を取るとそのまま左腕を振りかざす。
「グぁあアアああああッッ!!!」
獣と、人とが混じり合ったような咆哮と共に、
シロコの身体が急落するように獣に向けて迫る。
血飛沫が舞った。
落下の勢いを乗せたその一撃は獣の身体を大きく裂断、
獣の身体に確かな深手を負わせる。
シロコはそのまま地面に着地すると即座に体勢を整え、
高まる獣性に身を任せた、全力を込めた一撃を振り向きざまに獣目がけて振り下ろす。
「ギャアァアアアアッッ!?」
また、獣が悲鳴を上げるとうずくまるように動きを止めた。
「いマッ!!」
シロコはその隙を逃さまいと、更なる連撃を加える。
……だが、それは悪手だった。
獣はかなりの傷を負ってこそいるものの、
部位回復によりそれはまだ体勢を崩すに至るほど大きくはない。
ならば、獣がとった行動は……
「グアァアアアアアアァァァァァアアアアアアアアアアッッ!!!!」
劈くような、悍ましい咆哮。
ほとんど衝撃波に等しいその音響は、
今まさに攻撃しようとしていたシロコの体勢を大きく崩した。
「……!まずっ」
シロコがそれを悟ったときには、
彼女に向けて向き直った獣が振り向きざまに大きく腕を振るっているところだった。
ゴシャッ
鈍い音が聞こえたかと思うと、
シロコの身体が鮮血を散らしながら宙を舞う。
けれど、獣はその帰結に目をくれることなく、先生が向かった方向へと視線を向けた。
……到達するまで、もう余裕はない。
それを悟った獣は、全速力でそれに向けて駆け出した。
「シロコちゃんっ!?嫌、そんなっ……!!」
「……シロコならきっと大丈夫。
それより、今は先生をっ!」
四方から爆撃が、前方からは戦車の砲撃が、獣目掛けて迫る。
……だが、その悉くを獣は躱し、走り抜け、直撃を避け。
先生の背に向けて猛進する。
「っ、当たらない……!」
「先生!急いで!!!」
何処からか、声が聞こえてくる。
けれど獣はその全てを置き去りにして先生の背を、
遂に跳躍攻撃の射程に捉えた。
……瞬間、
ヒュー
頭上から、雨音を切り裂いて迫る風切り音。
カイザーとの戦闘中、幾度となく聞いた……
遠距離から曲射された砲弾が迫る音。
ドガアアアアアンッッ!!!
次の瞬間、獣がいた地点のみを的確に、回避の暇すら与えぬ榴弾の雨が薙ぎ払った。
「え、ちょっと何、新手!?」
「……L118、トリニティの牽引榴弾砲……?一体、どうして」
またしても予想だにしない……しかも、カイザーですらなく、ここにいること自体が不自然なトリニティからの支援砲撃。
だが、生憎それに驚いている暇はない。
「……何にせよ有り難いに越したことはないわ。畳み掛けるわよ!!」
着弾の衝撃で地に手をついているものの、
獣は未だ、無理矢理にでも前進しようとしている。
少女らは、未だ続く支援砲撃と共に獣に更なる追撃を加える。
別方向にいる戦車の砲弾も、程なくして飛んできた。
「ギャアッ!!?アアッ、ガァァアアアッ!!!」
だが、それでも獣の動きは止まらない。
無数の衝撃に嬲られながら、それに向けて手を伸ばす。
……だが、
「まダ。まだ終わッテない……!」
砲撃の合間を縫って、獣の背後から影が迫る。
……シロコだ。
その服は裂け、血に染まり、尾や髪も血をじっとりと含み赤くなっている。
けれど、輸血液を使用し全快したのか、裂けた服から覗く肌に傷は全く見えない。
「ヴぁァアアアあああぁアアアアッッ!!!」
猛々しい咆哮と共に振り上げられたシロコの左腕が、今まさに地を蹴ろうとしていた獣の足に振り下ろされた。
「ギャアァアアアアアアアァァァアッッ!?」
今度こそ、足に深々とした傷を負った獣が体勢を大きく崩した。
「"はぁっ、はぁっ!!もう、少し……!!"」
その間に、先生は漸く目標地点……青ざめた光の立ち込めるその場所に到達しようとしていた。
……光の中に踏み込めば、先生の身体を不思議な香りが……狩人の夢に立ち込めていた月の香りが、彼女を包み込む。
後は、手の中にある鐘を、その場所で鳴らせば……
「……これで」
「ヴアアァァァアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
その時、先生の間近に絶叫が迫る。
先生は思わず背後へと振り返った。
そこには、自身に向けて大振りに、けれど確かに飛びかかる獣の姿。
……あの砲火の中を、無理矢理突き抜けてきたのだ。
全身が焼け焦げながら、
全身から血を流しながら、
だがそれでも獣はそれに向けて手を伸ばす。
その光景に、先生は動くこともできずただ呆然と、自身に迫る凶爪を見るのみ。
そして、その手が今まさに……
「残念だけど通さないよ、セリカちゃん」
ガキィィイン!!!
先生を引き裂く直前、横合いから飛び込んできた影がその一撃を一身に受け止めた。
その、黒色の折りたたみ式のシールドが……
IRON HORUSと銘打たれたそれが、獣の一撃を防ぎ切る。
「"え、あれ……?"」
「やぁやぁ先生、おじさん完全復活だよ〜」
先生の目の前にいたのは、包帯を各所に巻き、血に染まりながら。
……だがそれでも、にへらっとした笑みを浮かべる小柄な少女。
小鳥遊ホシノがいた。
……けれど、その笑みはすぐに掻き消える
「……まあ、流石に冗談だけどね。
それより先生、色々聞きたいことはあると思うけどおじさんもセリカちゃんをこのまま止めとくのは……っ、ちょっと厳しいかな?」
そう言うホシノの身体は、未だ疲れも、傷も完全には取れていない為か震えている。
これ以上時間がかかれば、獣が強行突破してくるのはほぼ確実と言えるほどに。
「"……わかった"」
先生はそれに短くに頷くと、光の中心に移動する。
そして、光の中で目を閉じ、鐘をゆっくりと、できるだけ遠くまで響くように差し伸べる。
その時、
チリンチリンチリン……
先生がそれを揺らす間もなく、狩人呼びの鐘が鳴った。
その小さな、静かな響きは。
戦場を駆け抜け、その遥か彼方……次元の隔絶を超えて響き渡る。
コオォォ……
静かな光と青ざめた光を纏い、それは降り立つ。
透き通る青の中に、降臨する。
「……状況は理解した」
瞬間、その光の奔流が冷めやらぬ間に、
その中から大口径の砲身が突き出した。
轟音
大砲、と。
余りにも直接的な名付けがされた獣狩りの銃器が火を吹く。
そして、骨髄の灰により威力の高められた12発分の水銀弾が、ホシノに力をかけ続ける獣の頭目掛けて着弾する。
ゴシャッ
鈍い、何かが押し潰れるような音がしたと同時、ホシノにかかっていた圧力が消え去る。
……あの、幾度とない榴弾や射撃の数々を受けて尚、目立った傷を負うことがなかった獣の頭部。
その頭蓋の側面が、たった一撃で押し潰れたのだ。
「ッァアッ!?」
獣が声にならない悲鳴を上げ、よたよたと後退る。
けれど、すぐに地を踏みしめると、ボタボタと頭から血を流しながら、下手人のいる方向へと憎悪の籠もった赤く蕩けた瞳を向ける。
……その人影のようなものが奔流の中から現れるのは、それとほぼ同時だった。
歪な人型。
纏うは狩人の狩装束。
その風貌は金のアルデオで覆い隠され、伺えない。
「"……狩人"」
先生はその者の名を、口ずさむ。
狩人はそれに応えることなく、大砲を腰に下げると、手に持っていた歪んだ太い鉄棒を、背中のそれへと連結した。
ギィィイイイイイインッ!!
金属が擦れる不協和音と、機構が擦れ合い飛び散る火花と共に、その鉄棒は、本来の姿を……
獣の肉を削ぎ落とし、確実に殺すために最適化された凶器。
回転ノコギリとしての姿を取り戻す。
「手早く終わらせるとしよう。私が長居しては良くないからな」
そう言うが早いか、狩人の左手が回転ノコギリの刃を擦る。
次の瞬間、金属製の筈であるそれに、煌々とした炎が宿る。
「……君達、狩りを知り給えよ」
鐘の共鳴により、[夢の主 月の狩人]がやってきました。
__________________________________
ほんの僅かばかり時間、獣と狩人は互いの出方を窺う。
……先に動いたのは獣の方だった。
「ゴァアアアァァァァアアアアアッッ!!!」
悍ましい咆哮を上げながらステップで急激に狩人との距離を詰めるや否や、
即座にそれに向けて手を突き出す。
……それに対し、狩人がとった行動は至極単純だ。
認識困難な速度で繰り出されるそれのタイミングを経験則のみで見切り、
体勢を低くして攻撃を潜り抜けるように前方向へステップ回避。
……それだけで、狩人は獣の背後を取った。
「甘いな」
ギィィイイイイイインッ!!
突き出された回転ノコギリが唸りを上げ、
大きく開いていた獣の足の傷口から、
更に深く、抉り、削り取り。炎で焼け付かせてゆく。
「ギャアッ!?」
獣は悲鳴を上げ、狩人を振り払うようにして飛び退るが、
狩人はその薙ぎ払いすら潜り抜ける。
そして、距離を取った獣に対して短く走り、助走をつける。
……狙うは、獣が飛び退り、着地で身体が深く踏み込んだ故に、
回転ノコギリの届く範囲に降りてきた頭部。
狩人は、走る勢いのままにアスファルトに回転ノコギリを突き立てた。
ガガガガガガッ!!
細かな刃と質量がアスファルトと擦れ、火花を散らす。
獣が顔を上げる寸前、狩人は勢い良く回転ノコギリを振り上げた。
ギャンッ!!!
地面との摩擦で無理矢理固定されていた反動で回転ノコギリの機構が大きく回転する。
それは直撃した獣の下顎を抉り、断面の肉を焼きながら削ぎ落とした。
「ア゛ア゛アアァァアアアアッッ!!!!?!?」
下顎が削ぎ落とされ、獣が声にならぬ悲鳴を上げて怯む。
その隙に懐に潜り込んだ狩人は回転ノコギリの柄を短く持つと、
うずくまる獣の胴体目がけて押し付けた。
ギュィィイイイッッ!!!
回転ノコギリの刃が凄まじい金属音を立てて回転すると同時、
押し付けられた面の獣皮を断ち切り、
鮮血と肉片を撒き散らしながら断面の血肉を削り取ってゆく。
獣は苦痛に絶叫しながらもう一度、
……いや、一度ではなく、狩人から逃れるべく、前へ、後ろへ、右へ、左へ、
背後へ回り込むように、間合いから逃れるように、何度もステップを繰り返す。
けれど、狩人は時折挟まれる薙ぎ払いや、
ステップを切り返しての攻撃、その全てを躱しながら、
僅かな予備動作から判断して獣の逃れる先に回り込み、
少しでも隙を見せれば回転ノコギリによりその身体を少しづつ削ぎ落とす。
……この場を彩るのは、獣の血飛沫と、獣の悲鳴と、
回転ノコギリがそれを引き裂き、断ち切る駆動音のみ。
その死闘の現場の遠のきに、先生と生徒たちはいた。
彼女らから声という声は途切れ、最早悲鳴のそれすらも聞こえてこない。
入り込めない。隔絶している。
自身の生きている場所と、獣と狩人が生きている場所は全く以て違うこと。
相容れることは、ないこと。
それを、目の前で見せつけられているようで……
「……っ」
できることといえば、その悪夢のような凄惨から目を背けるか、
「……ぁ、ぁ……ぁあ」
……決して至れぬという絶望に、涙を流すことだけだ。
そうしている合間にも、狩りという名の死闘は続いてゆく。
狩人の全身はもはや元の色がわからぬほどの血の色に染まりながら、未だ無傷。
対する獣はそこら中に鮮血を、肉片を、引き裂かれた臓物を溢しながら。
全身から流血しながら、それでも尚狩人に殺意を向けている。
ダンッ
もう幾度目か、獣が狩人から距離を取った。
無論、狩人はそれに追従した……が、
「ッ……!!」
獣が大きく息を吸い込む。
今まで幾度となく使用してきた、
咆哮の圧力による体勢崩しと即死とほぼ同義のカウンター。
それを迫る狩人に向け、今まさに……
「通るとおもうか?」
轟音
次の瞬間、咆哮を発する直前に飛んできたのは、
巨大な水銀弾と人の者ではない血液が混ざり合った塊だった。
「ギャアァァアッ!?!」
「やはり、獣は獣か。
体勢の崩し方にしろ元の彼女のほうが数段素早く、正確だ」
狩人はそう呟くが早いか、苦痛に垂れた獣の頭部目がけ、
大きく回転ノコギリを振り上げた。
ギィィイイイイイインッ!!
頭上で空転する回転ノコギリが唸りを上げ、その回転速度を高めてゆく。
「ふぅっ!」
短い気迫の声と共に、獣の後頭部へとそれは振り下ろされた。
ベキグシャッ
響き渡るは回転ノコギリ自体の質量により頭蓋が砕け、
首、背面が削ぎ落とされ、引き潰されてゆく異音。
切り裂かれた肉片と飛び散る鮮血は、回転ノコギリの火花と共にその光景を狂的に彩る。
後方で、アヤネと呼ばれていた少女のものらしき悲鳴が上がるが、
狩人はそれを一切気に留めることなく、
先ほどの一撃を加えてもまだ息のある獣の頭部を左手で掴み上げると、
眼前に近づける。
……被っている金のアルデオが、ほんの僅かに揺れた。
「……終わりだ」
……瞬間、
繧エ繧ェ繧ェ繧ェ繧ェ繧ェ繧ェ繧ェ繧ェ繧ェ繝ウ繝?シ?シ?シ
アルデオの奥で赤色の閃光が弾けたかと思うと、
不可知な、理解し得ない、獣でも人でもない何者かの咆哮が弾ける。
獣にのみ届いたそれは、
その僅かばかりの生命をたったの1だけ残し、その全てを消し飛ばした。
だが、狩人はそのまま獣が悲鳴を上げる暇すら与えず、右腕を大きく引き絞る。
……その手に、回転ノコギリが溶け込んだ。
貫通
獣の頭部の傷口から狩人の手がねじ込まれ、内部の器官を滅茶苦茶にかき乱す。
「……帰ってくるんだ、セリカ」
そう言うが早いか、狩人は獣から勢いよく腕を引き抜いた。
その反動で獣の身体が大きくのけぞる。
溢れ出る鮮血が、まるで豪雨のように飛び散ってゆく。
「ア゛アアァ、ァ、ぁあぁ……」
獣の断末魔。
それもすぐに掠れ、消えてゆく。
死にゆく中でも狩人を掴もうと伸ばされた手は、力なく地面に打ち付けられる。
……最後、人のような響きの声を溢して、獣の姿は霧と消えた。
YOU HUNTED
どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?
……クライマックス。
もう、ここぞとばかりにはっちゃけまくった回でした。
後は……獣から人へと戻ったセリカのこと。
そして、さらにその後のこと。
まだ、するべきことが残っています。
……アビドス2章、終局は近いです。