極夜に囚われたセリカ   作:時空未知

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※※あてーんしょーん※※

高評価、コメント、ここすき、いいね、誤字報告ありがとうございます!
今回でコラボ回最終回です。
ここまで見ていただきありがとうございます!

さて、最終回を読むにあたり、
クライマックスでは脳内BGMでこちらを流していただけると幸いです。


<<<Unwelcome School>>>


……はっぴーエンドと書いてギャグ落ちと読む

▼見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!作品ページ▼
https://syosetu.org/novel/352634/







side after 聖杯、又は山を登る船(5)

 

 

呪われた深きローラン 第3層奥部

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

崩れ落ち、霧と消えた黒獣の姿を確認したセリカは軽く息をつくと

千景を彩っていた鮮血を振り払った。

それと同時に、己の身体を徐々に蝕んでいた呪いの感触が消え去る。

そんな彼女にカオリが声をかけた

 

「セリカ、身体の具合はどうかな?」

「心配しなくても、短時間の戦闘だったから輸血液1個で事足りる」

 

そう言いながら慣れた手つきで自分の太ももに輸血液を打ち込むセリカ。

……特に心配はしなくいても良さそうだ。

 

「セリカちゃん、カオリさん!」

「ん、みんなお疲れ」

 

その背後からアヤネとシロコもやってきた。

当然、2人とも先程の戦闘で傷は負っていない。

そんな少女らにカオリとセリカも返答する。

 

「あぁ、2人ともお疲れ」

「アヤネちゃん大分狙撃の精度良くなってたよ。シロコ先輩は獣性、大丈夫そう?」

「ちょっと残ってるけどそろそろ落ち着く」

 

シロコは、セリカの言葉にそう返答すると、

先程獣の姿が立ち消えた場所へと視線を向けた。

そこに宿る表情は、少し物足りなそうである。

 

「……でも、1人の時はかなり苦戦したからあっさり倒せちゃってちょっと残念かも」

「シロコ先輩はリーチが短いからあいつと相性が悪いからね。

こればかりはしょうがないと思うよ」

 

そんな彼女にセリカがそう言った。

その言葉に、むむ、と考え込んだシロコだったが、

少しして顔を上げるとセリカに問いかける。

 

「セリカ、リーチを確保できて、尚且つ片手で扱える武器って知らない?

できれば左腕も生かせるように変形でリーチを切り換えれるといいんだけど」

 

セリカの言葉を受けてシロコは、

次またローランの黒獣のような相手と相対した時に対応できるように

ホワイトファング465以外にも右手に持つ近接武器を探すことにしたようだ。

……いや、それ自体は構わないのだが、

セリカは基本的にレイテルパラッシュと千景一辺倒である為、

他の武器に詳しくないのだ。

 

「その辺は私に聞くより先輩とか……それこそカオリに聞いた方がいいよ」

「ん、じゃあカオリ、さっき私が言ったみたいな武器って知らない?」

「……ふむ」

 

シロコのその言葉に、カオリは少しの間目を閉じて考え込んだのち、

改めて彼女の方へと視線を向ける。

 

「条件に合致するのはノコギリ鉈、ノコギリ槍、獣狩りの曲刀といったところかな。

どれも変形により短く折りたたむことができ、

そうでないときのリーチは現時点よりは確保される。

ただ、使用感はかなり異なるから帰還した後に試してみるといい」

 

カオリはシロコに向けて簡単にそう説明した。その言葉にシロコは頷く。

 

「ん、わかった、帰ってから試してみる。それから勝負を……」

 

相変わらずというべきか。

どことなく期待の籠ったまなざしでカオリにそう言うシロコ。

そんな彼女を見てセリカとアヤネがそれぞれ何とも言えない表情になった。

……が、

 

 

「………」

 

 

勝負を、と言ったところでシロコの言葉が不自然に途切れたのだ。

先程までカオリの方へと向けられていたその視線はソワソワと

あちらこちらへ動かされたのち、足元へと向けられた。

 

「シロコ?」

 

明らかにおかしい彼女の様子に、カオリが短く名前を呼ぶ。

それに対し、シロコはつぶやきにも似た声を返した。

 

「……まただ。また、見られてる」

「「「……!!」」」

 

その言葉に、先程まで4人の間に立ち込めていた穏やかな雰囲気が、

一気に緊張へと転じた。

未だ難しい表情のまま足元……その下にいるであろう物を見つめるシロコに、

アヤネが慌てた様子で声をかける。

 

「シロコ先輩大丈夫ですか?!」

「……大丈夫、だけど。何だろう、今までと違って呼ばれてるような気も……」

 

そう言って軽く首を傾げるシロコ。

そんな彼女を見て、セリカは短くカオリへと視線を向ける。

 

「捉えれる?」

「わかった、やってみよう」

 

そう返答してからのカオリの行動は早かった。

素早くシロコへと接近すると、その肩にそっと手を当てる。

そして……

 

 

「……あれ?」

「逃げられた、か」

 

 

次の瞬間、急にみられているような感覚が外れキョトンとするシロコに対し、

カオリが少し厳しい表情でそう呟いた。

どうも、相手はカオリに見られたことを知覚した瞬間に意識を外したらしい。

 

「できれば相手の正体が分かればよかったんだけど……面倒」

「いや、安心してくれセリカ。

相手がどのような存在かは大まかに知覚できた」

「……そうなの?」

 

シロコのことを覗き見ていた何者かに対し

どんどん重苦しい殺意を積もらせてゆくセリカ。

そんな彼女にカオリは冷静に告げた。

その言葉に、セリカから発せられていたそれが幾分か和らぐ。

思わず短く聞き返した彼女に対し、カオリはこくりと頷いた。

 

「そうとも。しかし、その相手と言うのがかなり特異なものらしくてね」

 

そう前置きすると、カオリは己が知覚したそのことについて話し始めた。

 

 

「相手は獣の中に上位者の啓蒙が流れ込み、意識を得た特異な存在……」

「……!」

 

 

その言葉に、意味を解した少女らの瞳が驚愕で見開かれる。

そんな中で、カオリはゆっくりとシロコへと……

上位者となった狩人に啓蒙を流し込まれ、

獣化の一歩手前で踏みとどまっている少女にゆっくりと指を合わせる。

 

「そう、シロコ。丁度君とよく似た状態にある存在だ」

「……私と、同じ」

 

予想だにしない言葉に、シロコが呆然と呟く。

そんな中、アヤネが呟くような声を発する。

 

「……ということは、今回の騒動は、

黒幕が、同じような存在であるシロコ先輩のことを狙って起こって……?」

「そう考えて間違いないと思う」

 

アヤネの言葉にセリカも同意を示すと、

どことなく沈んだ様子のシロコの方へと視線を向ける。

 

……やはり、少なからず責任を感じてしまっているのだろう。

 

同じ状況にあれば、恐らく自分もそうなる。

けれど、その時にどんな声をかければいいのかも、自分は知っている。

 

「でも、だからといってシロコ先輩が悪いわけじゃないよ。

似たようなことなんて、ここ(ヤーナム)ではよくあることだし」

「そうですよ!それに、正体はわかったんです。

あとは黒幕を狩れば、それで解決です」

 

セリカが淡々と、けれど励ますようにシロコに向けて声をかける。

その言葉に、アヤネも追従すると安心させるように笑いかける。

そして……

 

「そうとも。

それに、この場には私という上位者もいるのだ。負ける道理はないだろう?」

 

カオリもまた、シロコに向けてそう言って微笑む。

そんな彼女に3人の言葉に、しばらくの間呆然としていたシロコだったが、

やがてふっと柔らかく笑みをこぼした。

 

「……ありがとう」

 

そう言うと、シロコは軽く、変質した左腕の指先を動かす。

……その凶爪が、松明の光に当たって煌めいた。

 

 

「じゃあ、早くそいつを倒して、終わらせよう」

 

 

その言葉に、3人は頷いた。

 

 

__________________________________

 

 

 

呪われた深きローラン 第4層

 

 

 

……第4層。

 

 

ここ、深きローランにおいてはこの第4層が最深部として扱われる。

聖杯ダンジョンにおいて階層ごとに道中の難易度が上がる、と言うことはあまりない。

逆に言えば、第1層時点で相応の難易度を誇るのが聖杯ダンジョンという場所だ。

……しかし今、その第4層は異様な様相を呈していた。

 

 

「……何も、いない?」

 

 

しばらく探索を続けた末に、セリカがぽつりとつぶやいた。

そう、何もいないのだ。

小型の獣一匹すら、道中にいない。

時折敵がほとんどいないだだっ広い部屋と言うものはあるにはあるが、

そういう時は大抵罠が仕掛けてあるか、

一体で十分な脅威となりうる強敵がいるかのどちらかだった。

 

「セリカちゃん、念のため聞きたいんだけど、

偶にこういう場所もあったりとかは……?」

「いや、これは流石に異常すぎる。

何処を探してもいないどころか、罠も稼働してないなんて……」

「ああ、私も初めて見た」

 

セリカの言葉にカオリも同調した。その表情は、心なしか厳しい。

 

 

……誘いこまれてる。

 

 

そんな感覚が、一同の間を駆け抜ける。

結局、先に進むためのレバーがある部屋にたどり着いても、敵は影も形も見えなかった。

 

……けれど、進むしかない。

進まなければ、何も成し得ない。

 

そうして、遂に、彼女たちは階層主がいるであろう

最深部の部屋の前までたどり着いた。

 

 

「……準備はいい?」

 

 

大扉を開く手前、セリカが短く声をかける。

その言葉に、誰も声にこそ出さないが短く頷く。

 

アヤネは既に弓剣を弓へと変形して携えて、緊張した面持ちだ。

シロコは扉の向こうへと視線を向け、どこかそわそわとしている。

……やはり敵がすぐ傍にいるが故に、その意識もより強いものとなっているのだろうか?

そしてカオリはというと、緊張した様子もなく、いつも通り冷静だ。

 

 

「それじゃあ、行くよ」

 

 

そう言うと同時、セリカは奥部へと続く大扉を一息に開いた。

 

 

その部屋は、大きなホールのような場所だった

その中心には石造りの噴水のような構造物があるものの、

今は流れる水はそこになく、代わりに数え切れないほどのろうそくが立ち並び、

蝋が融け落ちることもなく、炎がゆらゆらと揺れている。

 

 

……そして、その構造物の奥に、それは寝そべっていた。

 

 

「……!」

 

 

銀色の毛並みに覆われた2m程の比較的小柄な体躯

(とはいえ、少女たちの身長よりははるかに大きいのだが)。

一目見て獣だとわかる身体のつくり。

……けれど、その姿には、今までの獣のような悍ましさや痛々しさはない。

寧ろ、整ったその姿にはある種の神々しさすらあった。

 

[……]

 

不意に、閉じられていた獣の瞼がゆっくりと開かれた

その、隠されていた瞳の色は真紅。

その双眸が、少女たちの姿を……いや、シロコの姿ただ一人を見取る。

 

 

[……来てくれたか]

 

 

瞬間、獣の口が緩やかに動かされたかと思うと深みのある低い声を発する。

 

……そう、明確な人の言葉を発したのだ。

カオリの脳裏には身を窶した男という前例が思い浮かんだが、

セリカは男の獣化した姿を知らず、

シロコとアヤネはそもそも男のことを知る由もない。

 

その最中にも、獣はその体躯を四足を持って立ち上がらせる。

そこから発せられる静かな威圧感も相まって、警戒が一層強まる。

しかし、当の獣はと言うと警戒するシロコを見て尚も静かに言葉を続ける。

 

 

[そう警戒しなくともよい。我は……?]

 

 

その時、獣の声が固まった。

瞳がちらりと動かされたかと思うと、漸くシロコ以外の少女たちの姿を見取った。

 

[……君たちは?]

「漸く気が付いたの?」

 

獣の少し虚を突かれたとでも言うかのような言葉に対し、

セリカは吐き捨てるようにそう言うと一歩前へと進み出ると、

シンシアリティの銃口を向ける。

 

「何を企んでるか知らないけど、言葉が通じるなら一回だけ言う。

今すぐ私達を解放しろ。でなければ……」

[……なるほど、そういうことか]

 

その時、セリカの言葉が言い終わらぬうちに獣が声を発した。

その瞳が今度こそ確かに少女たち全員を見る。

しかし、不思議なことにその視線に敵意は一切感じられない。

そのことにセリカ達が違和感を覚えた次の瞬間、

 

 

[君たちが彼女の親族か]

 

 

 

「「「「……は?」」」」

 

 

獣は、はっきりとそう言った。

予想だにしないその言葉に少女たちが呆然とする中、

獣はたった一匹納得したように告げる。

 

[そうだな、花嫁には親族の付き添いと言うものがあるのが常だ。

人外の化け物となり果てて幾星霜、人としての常識をすっかりと忘れてしまっていた。

非礼をここに詫びよう]

 

そう勝手に早合点してペコリと頭を下げる獣。

……その光景に、当の少女たちは一切の理解ができずにフリーズしていた。

 

いや、その……何?

花嫁って……シロコ(わたし)(先輩)のこと?

そもそも人の常識って……その発言も常識のかけらもないと思うけど??

え……えぇ?

 

「シロコ、君はそこの獣……いや、彼の呼びかけに答えたりは……」

 

いち早くフリーズから脱したカオリがシロコにそう声をかけるが、

その言葉に気が付いたシロコはぶんぶんと音を立てそうな勢いで首を振った。

 

そりゃそうだ。

シロコは視線を感じても極力無視か訝しげな視線を送るだけだった。

そもそも呼びかけとすら認識していない。

 

「……と、本人は言っているが……」

[クク、恥ずかしがっているのだろう。

彼女は確かに私の呼びかけに答えてくれていたとも。

声は届かずとも、私の方を見てくれていたのだから]

 

悲報、視線の時点でアウトだったらしい。

シロコの全身が感じたこともない悍ましさで泡立った。

そんな彼女の前に、さっとアヤネが獣から庇うように立ちふさがる。

 

……明らかに、怖がられている。

 

そのことに漸く気が付いたのか、獣の視線がキョトンとしたものへと変わる。

 

[……ひょっとすると、我は何か大きな勘違いをしているのか?]

 

その言葉にその場にいた全員が大きく頷いた。

 

[ひょっとすると、我が招いた美しいわが伴侶は、

そもそも我と婚姻の約束すら交わしていないのか?]

「婚姻の約束も何もこれが初対面なんだけど……」

 

しれっとかなり気色の悪いことを言った獣に対し、

話題の中心であるシロコが一言。

その言葉を受けて更に考え込む獣。そして……

 

[……我は、一体どこから勘違いをしていたんだ]

「知らないわよそんなこと」

「強いて言うならば……すべてではないかな?」

 

若干震えているように聞こえる獣の言葉。

それに対し、セリカ、カオリと強烈なツッコミが入る。

獣の真紅の瞳が、驚愕に見開かれた。そして……

 

 

[な、なんと……!]

 

 

そう言い残して、獣は膝から(?)あえなく崩れ落ちた。

 

 

__________________________________

 

 

 

「……つまり、銀獣は私に、その、一目惚れして……?」

[そうとも。我は君に見惚れてしまったのだ。

更に、君が我が幾星霜思い描いていた理想と一致していたものでな。

つい躍り上がってしまったのだ]

 

 

精神的に多大なショックを受けた獣……

人だったころの名前を忘れたとのことで名乗るところの銀獣が、

なんとか話せる程度にまで精神を回復させてからぽつぽつと話を聞くことができた。

 

今回の騒動の原因は、銀獣が偶々シロコの存在を知覚し、

己と存在が近しいシロコに一目惚れしたことによるものだった。

銀獣が語るには、

遥か昔、ローランが都市としての姿を失いかけている時に獣となり、何の因果か人としての意識が戻ってからずっと、この深きローランの最深部に閉じ込められていたらしい。

長い間死ぬこともできずただ狭い空間で生き続け、精々他の聖杯ダンジョンを観測するだけの年月。

……そんな中見つけたシロコの存在は、正に青天の霹靂、と言ったところだったらしい。

 

結果的に合流できたので幸いだったが、セリカ達が巻き込まれバラバラの階層に配置されたのは、シロコを何とか呼び寄せようと銀獣が焦っていたから。

ローランを他方から断絶したのは[先輩]を一般的な上位者だと思って警戒したため。

何故か第4層に敵がいなかったのは、シロコを迎え入れるために敵を一掃したいところだったが、結局他層に追いやることしか出来なかったから。

さっきまでの妙な発言は長年人と触れ合わなさ過ぎて恋愛観を拗らせすぎていたから……

 

 

……何とも、まあ、なんだ。

 

 

「こんな、こんなくだらないことが原因で……こんな事が……!」

 

銀獣とシロコ、カオリが会話しているところを、横から聞いていたセリカはそう唸った。

今までのドタバタ全ての原因は、

医療教会の暗部によるものでも、

メンシスの儀式によるものでも、

上位者の理解しがたい意思によるものでも、

過去に犯した消えぬ罪によるものですらなく、

ただの迷惑な一匹の獣による一方的な思い込みだったとは……

 

わかってしまえば余りにもバカらしくて最早切りかかる気力すら湧いてこない。

嘘だと断じようにも鋭く研ぎすまされた己の感覚が、

目の前の獣に一切の悪意も殺意もないことを告げている。

……もう、頭を抱えるしかなかった。

 

 

「……でも、悪いことばっかりでもなかったんじゃないかな?」

 

 

その時、アヤネがぽつりと、呟くようにそう言った。

セリカが彼女の方を見る。視界の中に映るその表情は、柔らかい。

 

「予定は狂ったけど私とシロコ先輩の実力向上になったのは確かだし、

カオリさんにだって会えたし……」

 

そこで一度言葉を区切ると、アヤネは改めてセリカの方を見た。

 

「それに、くだらない原因だったからこそ、みんな無事でいられてるのかなって」

「……!」

 

その言葉に、セリカは虚を突かれたように固まる。

けれどそれも一瞬のことで、ほんの少しばかり表情がほころんだ。

 

そう、くだらない原因だったからこそ。

悪意も陰謀も、何もなかったからこそ。

一昔経てば笑い話にできるような、おかしな結果で済んでいる。

 

「……まぁ、そうかも」

 

……気がつけば、頭痛は消えていた。

 

偶には、こんなことがあってもいいか。

どんなにくだらないことであっても、こうして微笑んでいられるのなら……

 

……と、ここで先程までの出来事がセリカの脳裏をよぎった。

次の瞬間、その表情が何とも言えない微妙なものになる。

 

「……さっきはかなりあれだったけど」

「……正直擁護できないかな」

 

セリカとアヤネが小声でそんな言葉を交わす。

……と、

 

 

[では、すぐにでも隔絶を解除しよう。これで君たちも無事に帰れるはずだ]

 

 

銀獣の方からそんな声が発せられた。

漸く、帰ることができるようになったらしい。

それと同時、少女たちのすぐ目の前に狩人の灯りが灯される。

これで、ようやく終わり。

 

……しかし、それは同時に……

 

 

「……では、ここでしばしの別れかな」

 

 

カオリがポツリとそう言った。

その手の中には、水銀弾の入っていない、小さなピストルが握られている。

……思えば、短い間ではあったが、

いつの間にかカオリも3人の中に溶け込んでいたように思う。

また会えるとわかっているとはいえ、別れるのは……少し名残惜しい。

 

「ですね……でも、また会えます。その時までまた今度と言うことで」

「勝負の約束、忘れないでね」

 

アヤネ、シロコと。カオリに思い思いの言葉を告げる。

そして……

 

 

「……正直、悪くなかった」

 

 

最後に、ポツリとセリカがそう言った。

……端的で短くはあるが、彼女なりのカオリに向けた感謝の言葉。

その言葉に、カオリは少しばかり驚くも一瞬、ふっと笑みをこぼした。

 

「ん、セリカがデレた」

「いや、なんでそう言う反応になるの?デレ要素一つもなかったでしょ」

「セ、セリカちゃん……そんな……!」

「アヤネちゃんはアヤネちゃんでどうしたの……?」

「……ふふ、やはり貴公らは仲がいいのだな」

 

1つの事件が解決したためか、緊張がほどけ、

少しばかりアビドス特有の騒がしい雰囲気が流れてくる。

そんな3人を見てカオリは小さく笑った後、ゆっくりと一礼した。

 

「では、君たちに血の加護があらんことを」

「……そっちも気を付けて」

 

その言葉を最後に、カオリは別れの空砲の引き金に手をかけ……

 

 

[その、別れ際を邪魔して悪いのだがもうすこしいいだろうか?]

 

 

……発砲しようとする寸前、銀獣から不意に声がかかった。

 

「……ふむ、何かな?」

 

カオリは引き金を引こうとした手を止めると、

ゆっくりと銀獣へと振り返る。

そんな彼女に、獣は言いにくそうに告げた。

 

[いや、上位者の狩人、君には直接関係ないのだが、

彼女の友人ならば立ち会ってもらいたくてな]

「……ふむ?」

 

要領を得ないのか首を傾げるカオリ。

……そんな中、セリカは銀獣の様子になぜか嫌な予感を覚えた。

いや、害意や悪意は相変わらず感じないのだが……

同じく嫌な予感を覚えたシロコが、身を固くする。

 

[……その、なんだ。先程のことがあり、面と向かって言うのは勇気がいるのだが……]

 

そう言うと同時、銀獣がゆっくりと、

やけに人間じみた動作で後ろ足で正座する。

そして、こほんと咳ばらいすると同時、

まっすぐと、真剣なまなざしでシロコのことを見た。

 

 

[彼の灰色の少女。君と、お見合いをさせてもらえないだろうか……?]

「え、やだ」

[ぐはッ?!]

 

 

即答だった。

 

 

最早蔑みすらなくただただ即答だった。

一世一代の告白が失敗して吐血する銀獣。

……というか、何を思っていけると思ったのか……

 

けれど銀獣、諦めが悪い。

 

[で、では、せめて友人からと言うのは……]

「……うーん」

 

しかし、シロコの反応は(当然)芳しくない。

何しろ初対面の印象があれである。

考える。ただひたすらに、考え込む。

そして悩みに悩んだ末、シロコは他の3人の方を見た。

 

「……みんなはどう思う?」

「……君の判断に任せる」

「いや、普通に断ればいいと思うけど」

「恋愛とかそっち方面に強いのはノノミ先輩なので私は何とも……」

「あれってどっちかと言うとからかってるんじゃ……?」

 

しかし、答えは出ない。

銀獣の方へと視線を戻せば、滅茶苦茶緊張した様子でガタガタと震えている。

 

「……ううーん」

 

友達だったら、始めてもいいか?

良くも悪くも純粋そうではある。

でも、正直初対面の印象最悪だし……

シロコは悩む。更に悩みに悩む。

そして……

 

 

「……まぁ、友達……な 

 

 

ドガアァァァアアン!!!!!

 

 

瞬間、シロコの返答は直後に獣の背後から響き渡った破砕音によりかき消される。

全員が全員ぎょっとしてそちらの方へと視線を向ければ、

土煙の立ち上る中、聖杯の壁に大きな穴が開いていた。

そして……

 

 

「ぜぇ……はぁ……何とか、何とかたどり着いたぞ」

 

 

……聞き覚えのある、初老の男性の声。

砂煙の中に浮かび上がる、鬣のような触手を生やした歪な人型のシルエット……

砂煙が晴れると同時、セリカは呆然とその名前をつぶやく。

 

 

「……え、先輩??」

「む、セリカ。よかった、位置座標はあっていたか」

 

 

そう、何故だか息を切らした[先輩]こと狩人が、

ヤーナム市民一式装備を着て佇んでいたのだ。

両手に持っているのは守り人から奪ったと思しき大型のツルハシ……

 

……いや、冗談だろう?まさか……

 

「どうやって、ここまで……?」

 

セリカからの震え声の問いかけ。

それに対し、狩人は何でもないことのように告げた。

 

 

「どうやったも何も、ローランは全て同じ地下にあるのだ。

精神的な侵入ができぬのなら、他のダンジョンから物理的に掘り進むのみ」

 

 

……いっそ清々しいまでの脳筋理論だった。

 

金庫の番号を忘れて開かないなら

金庫を壊せばいいと言わんばかりの暴論。

 

最早衝撃やら呆れやらで何も言えなくなっている4名と1匹。

そんな中、狩人は現在の状況、を見る。

 

 

目の前には硬直した今まで見たこともない獣。

獣の前には大切な後輩を含めた狩人4人……

 

 

「……状況は把握した」

 

 

ガシャン!

 

 

そう言うが早いか、ツルハシを放り捨てた先輩は背中から一本の杭……今や変形して大型のウォーピックとなったそれを慣れた手つきで構える。

 

 

「1分以内で終わらせよう。

そこの獣、私の後輩に手を出しておいて生きて帰れると思うな。

貴様の死血から形作られる血晶石、見定めさせてもらう……!!!」

[え、や、その、ちょ、のわあああああ?!??!!]

「ちょ、ちょっと待ってください狩人さん!?」

「ん、勝負するなら私も!」

「……????(無量空処)」

「…………帰りたい」

 

 

……何だかんだ、今回の狩りは平穏である。

 

 

 







どもー、時空未知です。
と言うことで今回でコラボ回は終幕となります。
……昔、pixivで書いてたギャグ小説の脳リソース引っ張り出してきて
書いたんですけどいかがだったでしょうか?

ということではっぴーエンドと書いてギャグ落ちと読みます。
本編が絶望の中にほんの少しの希望と共依存があるのなら、
コラボ回は時がたてば笑ってしまえるようなエンディングです。
……マジで自分の中に眠る曇らせ(大いなる)の意志との戦いでした。

さて、曇らせじゃねえと満足できないってそこのあなた、安心してください!
マリー編とセイア編という地獄が待っています!
……あと、得に理由はないんですけどエルデンリング買いました。特に理由はないですけど
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