1年1度来る厄災を追い払う力だけを神様みたいなのから与えられた。
その力を使った後に必ず知らないお姉さんが僕の腕の中にいる。
守った村や国の記憶、そこの住人との記憶はあるがそのお姉さんの記憶はない。
その事を伝えると助けたお姉さんはいつも泣いてる。
1年に1度色んなお姉さんに泣かれるのはメンタルに来るって。
「大人になったら結婚してください!カーサ姉!」
「···は?···レイ、お前今12のくせに何言ってるの?」
「15になったら結婚認められるじゃん?」
「うん」
「だからその時に結婚してくれないかな?って!」
「──お前がいつも言ってくれてた『好き』ってそういう意味なのね」
「えっうん。今までどんな意味だと思ってたの?」
「普通に姉としてだと思ってた」
「ひどっ!僕はずっと恋人の好きだったのに〜!」
「まあ···お前が大人になってもその気持ちが続いてたら、もう一回言ってくれ。そのときはちゃんと答えるからさ」
···知らない。
昔からずっと面倒を見てくれていた姉代わりのお姉さんを僕は何も覚えていない。
知らない。
「やっぱりお前が厄災に打ち勝てるほどの戦士だとは到底思えないな」
「それ何回言うの?···僕もその意見には同意だけど厄災のときの僕はすごいから見ててね」
「はっ、厄災のときはお前をいち早く避難させるからその活躍を見ることはないな」
「ほんとなのに〜!···ま、期待しといてね。騎士団長の君さえも凌駕する腕前を見せてあげるからさ」
「楽しみにはしてるが、決して無理はしてくれるなよ?···お前が死ぬのは絶対に嫌だ」
「···そうやって心配してくれるの嬉しいよ。いつものツンツンさはどうしたのー?」
「──この私を煽れるほど偉くなったのだな」
「今日の夜ご飯はミーシャの大好物のシチュー作るよ〜」
「チッ···ちゃんと黒胡椒はあるよな?」
「もっちろん!じゃあちょっと支度してくるね!」
「おい、その前にいつもの···頼む···」
「はいはい···キスとハグどっち?」
「どっちもに決まってるだろ」
「それは知らないよ」
···知らない。
獣人の騎士団長で、ツンツンしていたが、
僕を守ってくれようとしていたお姉さんを僕は何も覚えていない。
知らない。
「──あのクラリア?···今僕に何刺したの···?」
「十字架です。あの占い師様が
「···大丈夫だって、僕そんなに忘れっぽくないよ」
「···普段の生活で忘れっぽいとは思いませんが念の為です」
「···そっか。けど、ほんとに大丈夫だよ。僕が君の、恋人のクラリアのこと忘れる訳ないよ」
「···もしも忘れたら神罰を下しますからね。覚悟しておいてください。もちろん私を裏切った場合も同様ですので」
「はいはい」
···知らない。
僕に何か十字架みたいなのを突き刺し自分の存在を刻みつけた修道女を何も覚えていない。
知らない。
だらけきって、僕がいないと生活がままならなかった魔法使いのお姉さんを僕は知らない。
迫害されながらも必死に強く生きようとする魔族のお姉さんを僕は知らない。
気弱で泣き虫なのに父のあとを継ぐために努力するお姉さんを僕は知らない。
人を頼れなくなっていたが、どんどん人を信じ頼ろうと変わっていったお姉さんを僕は知らない。
知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。
──知らないはずなんだ。···何にも覚えてないんだよ···
なのになんでいまだけ!!
厄災を倒している今だけは思い出してしまうんだよっ!!
厄災を倒さなければならないのに、
倒してしまうとこの記憶を
でも、倒さないと1年間くらい過ごしたこの国が滅ぶ。
──僕に選択権があるようでないんだよ···
···だから今はこの国での大切な人の記憶を大事···に···ってあ、あれ?
──この国に僕の大切な人はいたんだっけ···?いやいなきゃおかしい。だって僕のこの能力は大切な人がいないと発動できないはずだ!
────そっか···もうじゃあないんだ。ごめんなさい。この国での僕の、僕の大切な人。
君の、貴女のことを何も思い出せないんだ。
だから泣かないで。
多分貴女なんだろうね。
僕の腕の中に抱いているお姉さんだろうね。
だって何にも貴女のことを覚えていないんだからさ。
こんなにも大事に抱えてるのに、僕は何も覚えてない。
ああ···ほんと、嫌だなぁ···
このお姉さんもいつもみたいに泣かせてしまうんだろうね。
···
君らのことは何も知らないのに、いつも親しげに話してくるの違和感でしかないよ。
僕にはそんなに親しげに話してくれるお姉さんなんて
「ありがとう」と「その力何?」
そうやって、
だから僕は、
「どういたしまして」と「こういう時にしか使えません」
って答えてる。
1年に1度やってくる厄災の度に、僕はその厄災を追い払ってる。
その時にしか使えないという
──けど、多分それ以外にもルールがあってこれほど強力な力が使えてるんだと思う。
だって、腕の中にいる見知らぬお姉さんがいつも、
「なんでそんな他人行儀なの?!」
ってお姉さんによっては怒るような、絶望するような感じで僕を問いただしてくる。
見知らぬお姉さんなのに、村の人たちも困惑したような顔や声で僕に質問してくる。
その様子が恐ろしくて、現実を見たくなくていつも逃げてしまう。
──あぁ···ほんとに現実を知るのは怖いよ。
だからこうやって色んな場所に逃げてしまうんだろうね。
僕は多分転生者なんだと思う。
前世の記憶なんて何も覚えてないけど、ただ一つだけ覚えてることがある。
「君には
と、神様なのか女神なのか、もうなんなのかは覚えてないけど、そう言われた。
僕がただの人ならこういうことは「妄言だ、妄想のしすぎ」で終わるんだけど、
悲しいことに僕には
けど、その力は限定的で1年に1度の厄災が来たときにしか使えない。
使ってるときの記憶はないし、使った後の焦燥感というか何かを失った感じが襲ってくるけど、何を失ったのかは分からない。
その失ったものが、助けた後絶対に抱えてるお姉さんじゃなきゃいいなって
いつもそう思ってる。けど、現実はそんなに甘くないだろうね。
僕はいつまでクソみたいな厄災と戦わなくちゃいけないんだ?