それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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獲物と狩人

 

 

 

 

「こちらです」

 

「…ああ」

 

 

 

写真のあった現場に2人で向かいつつも炎秋は考え事をしていた。

炎秋にはずっと違和感を感じていたことがあった。

それが何かは分からなかった。

この仙舟『羅浮』に来た日。

いや、この羅浮で過ごすようになってからずっと。

ここ数日、羅浮の色んな場所を訪れている最中も。

その違和感がなんなのか。

ずっと炎秋は考えていた。

【無冠剣神】

その姿を知っているのは雲騎軍ばかりであり、普通は羅浮の民が知っているはずは無かった。

炎秋のことについて記されている書物も、あくまでも雲騎軍の歴史として記されていることであり一般の者が細かく知ることは出来ないはずだった。

羅浮に来た時…審査を受けたあの時。

あの審査員である仙舟人は炎秋のことを知らなかった。

知っていたのは無冠剣神という存在、言葉のみ。

どんな姿か、どんな声か、どんな性格か。

どんな戦い方か。

それを知る方法は、かつて炎秋とともに戦場に立っていた者が知っていることが多かった。

それが理由かは定かではないが、炎秋は雲騎軍から尊敬の念を抱かれることが多々あった。

しかし、羅浮で過ごす中で…時々の羅浮の民からも贔屓にされる事があった。

その時は何も思わなかったことだが冷静に考えてみればおかしな話だった。

知られていないはずなのだ。

話してもいないはずなのだ。

炎秋自身の事など。

かつての自分のことなど。

 

 

 

「着きました」

 

 

 

同行者からのその一言で一度考えることを切り上げて炎秋は目の前の問題に取り掛かろうとしていた。

 

 

 

「なら、乗り込むぞ。

こういうのは得意なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡り、炎秋が行動を開始する2日ほど前。

 

景元はとある映像を見ていた。

それは景元が部下に頼んで集めて貰っていた『ここ数日の炎秋が映った映像』であった。

仙舟の街中には防犯を目的とした機巧鳥が設置されており、街中の様子を映像として保存し万が一の騒動や犯罪の対策としていた。

そしてもちろん、その映像の中には街中を歩く炎秋の姿が映っているものも当然ある。

景元はその映像を毎日確認し何かしらの情報が得られないか確認していた。

景元はここ最近の騒動について考えていたことがあった。

それは神策将軍としての勘か。

『今回の騒動と炎秋には深い関係がある』

心の何処かでそう考えていた。

もはや確信に近かった。

というより

 

(……有り得るのか?そんなことが)

 

ほとんど答えを導き出していた。

しかし、そんな自分で出した答えを景元は未だに信じられずにいた。

だから景元は炎秋に関することを思いつく限り調べていた。

景元は否定したかったのだ。

そんなはずは無いのだと。

だが、調べれば調べるほど出した結論が正しいことであるかのように思える。

 

『炎秋はもはやただの人では無い』

 

バカバカしい。

そう言いたかったのだ。

……。

言いたかったはずなのに。

景元は部下から受け取った映像を見て深く溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

案内された建物は薄暗い研究所のようなところであった。

その場所は本来ならば建物などあるはずのない場所。

炎秋はそんな建物の中へと足を踏み入れていった。

 

 

 

「…知らなかったな。羅浮にこんな場所があるなんて」

 

「地図には載っていませんでした」

 

「なら地図を更新したほうがいい。ここで迷ったらどうしようもなくなるだろうからな」

 

 

 

そんな軽口を叩きながらも炎秋は歩き続ける。

炎秋にはすこしだけ余裕があった。

彼の懐には少し前に景元より受け取った非常時の救難信号発信機が入っている。

棒状の発信機は二つに折ることで周りに救難信号を出し、助けを求める事が出来る仕組みになっている。

そう説明を受けた。

何かあった際にも何かしらの情報は得られる。

炎秋はそう踏んでいた。

 

 

その施設は異様な雰囲気を出していた。

通路の左右に無数のシャッターが閉められており、通路というより倉庫に近かった。

監視用のカメラも無く隠れる必要もなさそうだった。

まるで誰かに誘われているような感覚を覚えた。

 

 

 

「写真の場所はここなのか?」

 

 

 

そう言って振り返ると彼女は何処か複雑そうな表情をしているように見えた。

返ってきた返事は自分達2人にしか聞こえないほどの声量であった。

 

 

 

「…炎秋さん」

 

「どうした?」

 

「二つだけ、お願い事をします」

 

「…聞くだけ聞いておく」

 

「一つは、彼を救ってあげてほしいのです。

私ではどうすることも出来なかった。貴方に頼むほか無かったのです。

もう一つは、どうか生き延びてください。

貴方と関わることが出来たのは短い間でしたが…貴方ことは嫌いでは無かったので」

 

「…一体何を____」

 

 

 

 

「狼が獲物を仕留める狩りをする時、すぐさま襲いかかるのではなくじっくり時間をかけて獲物の体力を奪っていく。そして最後にはその鋭利な牙で獲物を仕留めるのだ」

「しかし、私の牙では獲物を仕留められなかった。仕留めたい獲物は大きいものだった。だが、本当に良かったよ。君のような存在が居てくれて」

「獲物は羅浮、狼は私。牙を作ってくれるのは君だ!」

「ようこそ無冠剣神!!ようこそ羅浮の英雄の一人!!ようこそ我らが新しい同胞!!!共に獲物を狩る愉しみをこの身に刻もうじゃないか!!!!」

 

 

 

思わず溜め息をついた。

声のした方に振り返る。

 

 

 

「オーケー。

なら俺の獲物第一号はお前だな」

 

 

 

炎秋は獲物と向き合った。

狼と人の特徴を持った長命種。

歩離人と。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

鏡流は走っていた。

ある場所、地図に載っていない場所に。

景元は用意していた。

周りに悟られないように一人動けるように。

景元には炎秋に伝えていなかったことがある。

炎秋に渡していた救難信号発信機。

それは本当は違うものであることを。

それが救難信号発信機としての役割を含めた位置情報発信機であることを。

事態は動き出した。

騒動の首謀者は動き出した。

景元の思惑通りに。

 

 

 

 




こんなのを見たい!
っていうのを自分で作っております。
しかし思いました。
…これは鏡流ssなのか?
………。
私は考えることをやめて物語を進めようかなと思います。
物語を書き終えたら番外編みたいな形でいくらでも見たいモノを描いてしまおうという意図です。
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