それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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3日だ!3日連続更新だ!
我ながら頑張った!
鉄は熱いうちに打て!
というわけでいつも通り、思いついた場面を組み合わせて細かいとこ修正して投稿です。


それでも俺は

 

 

 

 

向けられた指を見つめながらも、炎秋はどこか落ち着きを欠いていた。

 

 

 

「俺を?」

 

「そうだ、お前を見つけた。

お前は一度死んだ存在だ。

生き返らせてもしばらくは存在を悟られること無くデータを得られる。

今更だがお前のことはずっと見張っていた。

なかなか素晴らしいデータを得ることが出来た。

礼を言おう。

蘇ったというのに感情は薄まっておらず生前となんら変わりなく、生前の記憶にも影響も出ていない。

ゆえに、この結果から一つの結論を導き出してみた」

 

「マッドサイエンティストがどんな結論を出したんだ?」

 

「『魂の強い者ほど蘇った時の完成度が高い』ことだ。

…そういえば、お前をここまで案内した狐族のことも話しておかなくてはな。

と、いっても…あらかた予想はついているだろう?」

 

 

 

後ろを振り返りこちらを見つめる彼女を見ながら炎秋は問題の回答を提示する。

 

 

 

「……彼女がお前の恋人か」

 

「そういうことだ。

本来なら、彼女は明るく気さくな性格で…元気のあふれる女性だった。

完全に無くなったわけではないが、彼女の感情はあれほどに薄くなってしまった」

 

「羅浮に入ってからずっと視線を感じていたが、彼女だろ?」

 

「わかるか、流石と言うべきか。

戦闘データが欲しくてな。

色々と騒動を起こさせてもらった。

戦闘データの取り方にも正確性が、必要だったのでな」

 

「金人門番か」

 

「そうだ、金人門番が暴走したとなればそれを止められる実力を持つものが金人門番と対峙することになる。

 

さらにそこから優先していたのはお前のデータだ。

結果として多くの素晴らしいデータをお前から貰うことが出来た。

礼を言おう。

さて、ネタバラシも済んだが…私自身にはお前と争うつもりはない。

争わずに済むのならばそれに越したことはない。

それに、私たちは似たもの同士だ。

私とて同胞に刃を向けるのは御免被りたい。

どうだろうか?」

 

 

 

炎秋は少し考える素振りを見せてから返答した。

 

 

 

「…とりあえず、お前が何をしたいのかはわかった。

かつてお前の身に何が起こったのかもわかった。

仙舟に復讐したいって気持ちも…まぁ、わからなくもない」

「俺は俺の守りたいモノのために戦う。

お前と同じように。

確かに俺とお前には似たところがあるのかもしれない。

だが、お前を止めないと俺は守りたいものを守れない。

それは仲間であり、友であり、ここ仙舟であり…」

「そして、鏡流であるんだよ。

だから、悪いがその提案には乗れない」

 

 

 

 

お前の事情は理解した

だが関係ない。

そう切り捨てる炎秋に目の前の名を捨てた歩離人は…

 

 

 

「仲間を守る。

友を守る。

結構なことだ。

嫌いではない、そういうのは。

しかし今、なんと言ったか?」

 

「仙舟を守る?お前が?」

 

 

 

まるで面白いモノを見たような顔で炎秋を見ていた。

 

 

 

「あぁ、そうか。

なるほど…炎秋、お前は何も知らないわけか」

 

「なんの話だ」

 

「なら教えてあげるとしよう。

お前もよく知る女の…鏡流の罪状を」

 

「…鏡流の…罪状だと?」

 

「そう、これは我々歩離人側と仙舟側の記録を調べてみてわかったことだ。

計画を実行するにあたってお前のことを調べてみて、私は心底驚いた。

さて、炎秋…お前は自分の両親のことを細かく理解しているのか?」

 

「…当たり前だ。

俺の両親は、今はもう滅んでしまったあの星にある辺境の村で__」

 

「いいや、それは違う。

違ったのだよ、それは。

かつて君の面倒を見ていたその2人は…君の実の両親ではない。」

 

「……なんだと?」

 

「薄々気付いているはずだ。

お前自身感じている異質なモノを。

お前は戦いを好き好んでいるわけではないが、感じているはずだ…本能が戦いを求める感覚を。

そしてそれはお前の血筋に関係している。

お前の面倒を見ていた存在…両親だと思っていた2人は、親を亡くした子供を引き取ってくれた2人なのだ。

お前の本当の親はその2人では無いのだよ」

 

 

 

その言葉に、炎秋は焦る自分を抑えながら返事を返す。

 

 

 

「じゃあ何か?

お前は俺の本当の親を知っているって言いたいのか」

 

「ああ、そうだ。

そうだとも。

答えてあげよう。

炎秋という存在が、一体なんであるのかを」

 

 

 

歩離人はなんてこと無い普通のことを言うように答えた。

 

 

 

「君はただの短命種などではない」

 

 

 

決して誰も触れることのなかった問題に。

 

 

 

「君は短命種と歩離人の間に産まれた、混血なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

そこは歩離人の奴隷となった者たちが過ごす場所であった。

 

労働力や物資を作成や調達するなど、さまざまな理由でその者たちは生かされていた。

 

そこに居た者達には首輪がはめられていた。

 

その首輪は呪い。

 

逃げようとしたり逆らったりすれば、起動するようになっている爆弾であった。

 

そんな場所であったが、ある時一人の歩離人は一人の女性の奴隷に恋をした。

 

その女性もまた、歩離人を利用する形ではあったがその愛に答えていった。

 

しかし、最初は利用でこそあったものの…やがてその愛は本物となっていた。

 

2人は惹かれ合い…愛し合い…一人の子が出来た。

 

わずかではあったが、幸せがそこにはあったのだ。

 

しかし、そこは歩離人が占領していた場所だった。

 

仙舟の者が占領の地を奪還せんとして、やがて争いが起こった。

 

当然、子が産まれた歩離人も戦いに赴いた。

 

女は待った。

 

歩離人の帰りを。

 

しかし、歩離人は帰ってこなかった。

 

女は痺れを切らして戦場の中、その歩離人を探しに行っていた。

 

長いような短い時を経て、女は歩離人を見つけた。

 

氷漬けにされていた歩離人を。

 

氷漬けにしていた白い髪の剣士を。

 

女は嘆いた、女は叫んだ。

 

なぜ、私の幸せを奪うのか!

 

なぜ、私の生きる理由を奪うのか!

 

私と私の子から父を奪うのか!

 

女は絶望のあまり、戦場を飛び出した。

 

いや、正確には飛び出そうとした。

 

飛び出そうとした時、それは奴隷が逃げ出そうとした時だと判断された。

 

残されたのは赤子だった子供だけ。

 

白い髪の剣士はその子供を抱えた。

 

女は罪滅ぼしのためか、その子供を不自由ない場所へと預けた。

 

その子供は少しずつ成長していった。

 

言葉を学び、友を得て、未来を夢見ていた。

 

しかし、彼はその場所で一生を終えることはなかった。

 

その村は襲撃を受けた。

 

歩離人によって。

 

その知らせを受けた時、白い髪の剣士は独断でその村に駆けつけた。

 

そこには蹂躙しつくさせられた村と歩離人達が居た。

 

歩離人達は蹂躙しつくされた。

 

怒りに染まった剣士によって。

 

すべてが終わった後、剣士はその場を去ろうとした。

 

だが、彼女は見つけた。

 

そこには唯一の生き残りが居たのだ。

 

歩離人の血を持っていたという理由で見逃されていた一人の子供が。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

「驚いたよ、まさか私と似た境遇の者が他にも居たとは。

つまり、お前が守りたい大切な人である鏡流とやらは…お前に隠し事をしていたわけだ。

それも、決して小さくない隠し事を。

自分の両親を切り捨てたのは、他でもない彼女…鏡流だったとは思わなかっただろう?」

 

「……。」

 

「守りたい人に裏切られた気分はどうだ?

さて、ではここで2つほど質問を投げかけようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前に私を止めることが出来るのか?」

「そして、お前は誰の味方なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎秋はその質問にすぐには答えず目をつむる。

深い深呼吸をする。

言葉を発しない。

炎秋は少しだけ考えた。

そして、少し間をおいてからポツリと言葉をこぼした。

 

 

 

「…一つ気付いたことがあった。

お前の言葉を聞いて」

 

 

 

絞り出すように、一言一言を自分で発しているのかを確かめるように。

 

 

 

「俺はずっと勘違いしていた」

 

「勘違い?」

 

 

 

そして目を開けて、過去のことを思い出しながら言葉を続けていった。

 

 

 

「…俺がこの羅浮で過ごしていて、何かしらの違和感を感じなかったわけじゃないんだ。

でもずっと考えないようにしてた。

忘れるようにしてた。

でもお前の言葉を聞いて少しだけ、思い返してみたんだ。

…思い出したんだ。

俺が羅浮で過ごしていた時に、俺への態度がおかしかった人がいた事。

その人達は決まって狐族だったこと。

狐族の人達にした頼み事は断られたことは無かったこと。

何気ない偶然だって心の中で見たくない現実から目を背けるように考えないようにしていたこと。

そして、一番考えないようにしてたこと。

『俺が愛している女性を嫌いになりたくなかったこと』も」

 

 

 

脳裏には愛している女性の姿。

 

 

 

「感じていた違和感の正体に気付いた時、俺は鏡流を嫌いになるんじゃないかって。

ずっと心の何処かで怯えてた。

真実を知るのが怖くて、今ある幸せを壊されるかもしれないことが怖くて。

ずっと考えないようにしてた」

 

 

 

脳裏には守りたい仙舟の街並みの光景。

 

 

 

「でも、そうじゃなかった。

真実を知った今、俺は鏡流を嫌いにならなかったんだ。

知った真実は確かに重く…苦しく…悲しいものだった…。

でも、俺は鏡流が憎いとか…仙舟が滅べばいいとか…歩離人が許せないとか…そんなことは思わない。

鏡流という存在は、俺の思っていた以上に大事で…大切な…守りたい存在なんだ」

 

 

 

脳裏にはいつも何か悪巧みを考えていそうな景元の姿。

 

 

 

「俺には鏡流が隠していた理由なんてわからないけど…」

 

 

 

目の前には止めなければいけない者の姿。

 

 

 

「それでもやっぱり俺は、やっぱりお前を止めるよ。

止めるために戦う。

そして、仙舟を…鏡流を守るために戦う」

 

 

 

静かに炎秋は剣を抜いて目の前の同胞へと切っ先を向ける。

 

 

 

 

「それでも俺は、彼女が好きだ」

 

 

 

 

その切っ先には殺意が込められていなかった。

 

 

 

 

「そう気付けたから」

 

 

 

 

だが、確かに意思が込められていた。

 

 

 

 

 

 




正直、一番やりたかったことを今回やってやりました。
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