それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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※(2025/04/09 20:15)後書き追加


約束を果たすために

 

 

 

 

 

「…良いだろう」

 

 

 

歩離人は理解した。

目の前の男は自分にとっての壁なのだと。

境遇も似たようなもの。

言うなれば、たらればの自分。

超えるべき壁なのだと。

 

 

 

「無冠剣神、炎秋よ。

お前が正しく、私が間違っているというのならば…。

それを証明してみせろ!!!」

 

 

 

ゆえに、男は起動させた。

復讐のために使おうとしていたモノを。

敵を倒すための、滅ぼすためのモノを。

 

 

 

「これからお前が戦うのは、お前たち仙舟人の戦闘データを組み合わせて作り上げた機械人形だ!!!」

 

 

 

後ろにあったガラクタの山が吹き飛ぶ。

中から目を光らせた機械人形が姿を現す。

 

 

 

「この機械人形には命令を出してある!!

『目についた仙舟人を殲滅せよ』と!!!」

 

 

 

炎秋はその機械人形に剣を構える。

守りたいものを守るために。

相対したその機械人形は__

 

 

 

「さぁ!!見せてもらおうか!!!

英雄の力とやらを!!!」

 

 

 

呼雷と瓜二つの姿をしていた。

剣を構える一つの機械人形と一人の剣士。

そして今、2つの剣が目視できない速さでぶつかりあい…。

戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

御空と偽っていた彼女の名は恋麗(レンリ)。

恋麗は目の前の光景をただ眺めるだけだった。

いや、眺めることしか出来なかった。

 

 

彼女に出来たことはせいぜい祈ること。

そして見届けること。

およそ剣同士のぶつかる音とは思えぬほどの轟音を撒き散らす目の前の光景を見続けること。

その戦いによって得られる結末を見届けること。

 

 

彼女は目の前の光景を目に焼き付ける。

彼女は見届けなければならないと感じていた。

今を生きていることを、後悔しないように。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

(……コイツ)

 

 

 

炎秋は豪雨のような斬撃を捌きつつも目の前の機械人形に反撃を叩き込む。

所詮は機械人形。

プログラムされた通りの予測できる動きしかしない。

その隙を叩く。

機械との戦いの基本であった。

 

 

 

 

 

少なくとも、先ほどまでは。

 

 

 

 

 

(動きが…読めない…!?)

 

 

 

薙ぎ払い、突き、切払い、フェイント。

炎秋はそれらを、ある程度見てから対象していた。

というよりは、見てから判断しなければならない状況を強いられていた。

読めないのだ。

斬撃の予測が出来ない。

隙を晒してもそこを突いてこない。

機械のような単調さもない。

それどころか機械人形のほうが動きが良い。

…そして

 

 

 

(……この剣の使い方はまるで)

 

 

 

鏡流を見ているようだった。

景元を相手しているようだった。

彦卿の幻覚を見ている気がした。

あの頃の歩離人達を。

あの頃の雲騎軍を。

怨敵である呼雷を。

そして、自分自身を。

そのすべてと相対している感覚に襲われる。

防戦一方である。

捌ききるとは言ったものの、言い換えれば捌くことしか出来ない状態だった。

後手に回っていた。

炎秋は後手の剣を得意とする。

それでも炎秋には反撃することが出来ずにいた。

それどころか、少しずつ捌ききれなくなってきた剣が炎秋にかすり始める。

致命傷こそ避けられはするがそれでも避けきれない。

徐々に出血し、まわりに撒き散らしていく。

 

 

 

(これが、アイツが仙舟に対して抱いている復讐の炎…そして、その覚悟か…!!)

 

 

 

自分の刃を届かせるビジョンが、炎秋には見えなかった。

そして、それは焦りとなり…小さなミスを誘発する起爆剤となる。

 

 

 

(…ッ!?)

 

 

 

機械人形の剣を弾いたタイミングで、自分の血で出来た水たまりに足を滑らせる。

それは本来ならば炎秋が絶対にしないミスだった。

炎秋自身、そのつもりは無かったが…彼は動揺していたのだ。

目の前の歩離人から語られた真実を聞いて。

そして、そのミスを見逃すほど目の前の敵は甘くはなかった。

 

 

 

(…がッ!?)

 

 

 

弾かれていたこともあり…斬撃による一撃でこそ無いものの、強烈な蹴りが炎秋の横腹を捕らえた。

そして蹴られた衝撃のまま、後に吹き飛ばされる炎秋。

しかし、飛びそうになる意識をなんとか繋ぎ止めて炎秋は地面に剣を突き刺しながらなんとか衝撃を殺し踏みとどまった。

『追撃が来る』

そう思った故の咄嗟の判断だった。

炎秋は眼前に迫っているであろう機械人形の方を見た。

いや、見るはずだった。

炎秋が見たのは、先ほど蹴った場所からこちらの様子をうかがっている機械人形の姿だった。

おかしい。

何故追撃してこない。

炎秋には一瞬理解できなかった。

しかし、炎秋は横にいる一人の存在に気付く。

炎秋が吹き飛ばされた先には__

 

 

 

「……ッ……!」

 

 

 

こちらを見つめる恋麗の姿があった。

まるで何かに祈るように、まるで何かを願うように。

ずっとこちらを見つめていた。

そんな恋麗の目を見て。

 

 

 

(……その目は…)

 

 

 

あることを思い出していた。

それは鏡流のこと。

かつて、自分が鏡流を庇った際のこと。

 

『嫌だ!!逝くな!!!2人で帰るんだ!!!第一お前はどうなる!!!一人でも欠けたら意味が無いんだ!!!』

 

その時に見た鏡流の表情。

そして、再び羅浮に返ってきてからのこと。

この前、朝起きた時に見た鏡流の表情。

そっくりだった。

目の前の彼女の表情と。

 

そして、未だに襲ってこない機械人形と決して横から手を出してこない男の姿を見た。

そして、なんとなくではあるが理解した。

 

 

 

「あぁ、そういうことか…」

 

 

 

自分が、何をすべきなのかを。

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

歩離人の男は体のいたるところから血を流している英雄を前に、ただその光景を眺めていた。

そして、確かに感じた。

 

 

 

「あぁ、そういうことか…」

 

 

 

視線の先に居る…満身創痍のはずの男から突如として発せられた圧を。

 

 

 

「悪いが、これ以上長引かせると俺が持たないからな。

一太刀だけだ。

一太刀だけ…」

 

 

 

先ほど、強烈な蹴りによって吹き飛ばされた男が発することなど無いはずの圧を。

 

 

 

「マジでいく」

 

 

 

そして見た。

いつの間にか剣を鞘に収めていた炎秋の姿を。

鞘に収めた剣を腰の近くに置き、構える炎秋の姿を。

 

 

 

『一龍一門 抜刀術』

 

 

 

その一太刀で機械人形を一刀両断する__

 

 

 

氷冠閃 円(ひょうかんせん まどか)

 

 

 

炎秋の姿を。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

「まさか…ここまでやっても届かないとはな…。

無冠剣神、その二つ名に恥じない実力だったようだな」

 

「…そうか」

 

 

 

炎秋は打ち負かした。

いや、守りきった。

自身の守りたいものを。

そして…。

 

 

 

「…それで、なぜ私を斬り伏せない?」

 

 

 

炎秋は剣を下ろした。

もう戦いは不要だと。

炎秋はそう判断したのだ。

炎秋は彼の目をまっすぐ見て、真剣な表情は崩さずに答えた。

 

 

 

「戦っていて、ふと思ったんだよ。

なんでお前が直接戦わねぇんだろうって」

 

 

 

しかし、その目にはどこか温かさがあった。

敵意など、これっぽっちも込められていなかった。

 

 

 

「…それは」

 

「戦闘データを集める。

そのデータを使って仙舟を叩く。

それはわからなくもない。

でも、そこまで復讐に囚われたやつが

『自分の手で直接手を下す』

ってことを考えねぇとは思えなかったんだ。

最初は『自分の手を汚したく無いから』とか『効率が悪いから』とか、そんな理由からかもしれないって思ってたさ。

でも、仮にそうだとしたら…お前は俺が戦ってる最中に横からいくらでも手を出すことが出来たはずなんだ。

少なくとも、俺はお前に何回か隙をみせてみた。

でも、結局お前は一度も手を出してこなかった。

ただ俺の戦う姿を見ているだけだった。

だから、お前が戦わないのはそれなりの理由があると思ったんだ」

 

「……。」

 

「それに…。」

 

 

 

炎秋は後にいる女性を親指で指さずようにしながら続ける。

 

 

 

「感情が薄いだのなんだの言ってはいたが、お前が作り出した呼雷モドキは一度たりとも彼女に危険が及ぶような行動は取らなかった。

お前の目線もたまに彼女の方を向いてたろ。

それを見て

『コイツにとっての守りたいモノってきっと彼女なんじゃねぇのか』

って思ってな。

復讐よりも守ることをなんだかんだで優先してるんじゃねぇのかってな。

俺には斬れねぇよ、守りたいモノを必死に守ろうとしてるやつのことなんて。

まぁ、元々お前のことを切り捨てるつもりなんて無かったけどな。

それに、お前の恋人に頼まれちまったからな。

お前のことを止めて欲しいって。

それ聞いて俺思ったんだよ。

彼女は、お前のことを守りたいんだって。

なかなか無いぜ?ここまで相思相愛な2人ってのも」

 

「…そうか、彼女が……。」

 

「…お前のやろうとしたことが許されるとは思ってねぇ。

復讐が実行に移されていれば少なくない犠牲が生まれていたはずだ。

そしたら、また俺たちみたいな境遇のやつだって出てくるかもしれない。

だから、俺はお前を止めた。

でも…まぁ…」

 

 

 

剣を収めて後ろを振り返り、その場から一人立ち去ろうと歩き始める炎秋。

 

 

 

「この後お前らがどうするかはお前らに任せる。

復讐を続けるって言うなら俺がまた止めに行くし、自首するってんなら止めはしない。

なんなら2人で逃げちまっても良い。

まぁ、俺は逃亡したって一応周りには言うけどさ。

とりあえず__」

 

 

 

 

「俺等は一回立ち止まって、周りを見渡しても良いんじゃねぇかな」

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

「ずいぶんと…はしゃぎ回ったみたいだね」

 

 

 

施設から出てきた炎秋を待っていたのは腕を組んで呆れた様子でこちらを見ている景元と。

 

 

 

「………。」

 

 

 

壁に寄りかかりつつもこちらを無言で見ている鏡流だった。

その顔は、どこか不安そうな表情だった。

 

 

 

「久しぶりにはしゃいだからか…結構疲れたけどな。

っていうか、なんでここがわかったんだ?」

 

「勘…と言って信じてくれるのかい?」

 

「…まーたお前はそうやって俺に隠し事か。

あのな、いい加減何かをする時は俺にも一言伝えろって何度も言ってるだろうが!!」

 

「君は今回好き放題したはずだが?」

 

「うぐ…っ!!…いや…それは……まぁ……」

 

 

 

そう言いながらも炎秋は歩き出した。

…その光景を鏡流は何も言えずに見つめていた。

炎秋と歩離人との会話は全て聞いていた。

炎秋の懐にある、炎秋を騙して渡しておいた通信機能付きの発信機を使って。

何かを言わなくてはならないのはわかっているのに、鏡流は何を伝えれば良いのか分からずにいた。

謝るべきか、慰めるべきか。

はたまた償いの誓いを立てるべきか。

無事帰ってきてくれたことを噛み締めればいいか。

鏡流はわからなかった。

 

その時、突如として歩みを止めた炎秋はこちらを振り返り一言だけ告げた。

 

 

 

「飯、行く約束だったろ?」

 

 

 

鏡流は思わず声が出なかった。

変わりに出てきたのは久しく流していなかったもの。

鏡流自身、もう流すことも無いだろうと思っていたもの。

だが、それは悲しみによるものではなかった。

 

 

 

「…ああ……!」

 

 

 

そうして三人は歩き出す。

 

 

炎秋は願った。

彼女達が幸せになるようにと。

 

守りたいものを、これからも守っていけるようにと。

 

 

そう願った。

 

 

 

 

 

 

 




一旦落ち着かせるところまでは書けましたので、このまま投げてしまします。
今後は書きたい鏡流要素を投稿させていただこうかなと思います。
というより、これやるために頑張りました。
最初は本当にただの思いつきではありましたが、思ったより書けたなといった感じです。
といっても、何度も書いてはありますが
『面白そうなシーンを思いつく』
『簡単に文字にする』
『細かく文字を増やす』
『修正』
の順でやっているだけではありますが。

モチベーションも保てました。
『鏡流ssが無ぇ!!!俺が先陣切って増やすきっかけ作ってやらぁ!!!!』
これです。
とりあえず、これからもやりたいことやってしまおうと思います。
鏡流ssが増えますように。
いや、本当に増えてくれ…!

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