それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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第一章
帰還、そして再会


 

 

 

 

ある時、ある場所にて。

 

「…!?」

 

一人の女は確かに感じ取った。

 

「これは…」

 

守れなかった者の気配を。

 

「あやつだ」

 

守りたかった者の気配を。

 

「あやつの気配だ」

 

ならばすることは一つ。

 

「行かねば…行かねばならぬ…」

 

その目には涙が浮かんでいた。

 

「今度こそ、我が守り抜いてみせる…」

 

「炎秋…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ある男が仙舟「羅浮」にたどり着いた。

 

 

「まったく、ここまで来るのに随分と長かったな」

 

 

男の名は炎秋(えんしゅう)。

かつて無冠剣神と呼ばれ仙舟の人々から『英雄』として扱われている人物で”あった“。

何故過去形であるのかと言われれば、それはその男が一度【死】を経験しているからと答えざるを得ないだろう。

だが、男は生き返った、

それが何者かによって仕組まれていることなのか、はたまた偶然引き起こされたことなのか。

男にはわからなかった。

しかし、一つだけ確かな事がある。

男は望んだのだ。

『帰りたい』と。

『帰るべき場所に帰りたい』と。

故に男は帰ってきた。

第二の故郷とも言えるその場所を見渡し、炎秋は懐かしむような気持ちに包まれていた。

 

 

「変わらないな……ここは……」

 

 

そう思ってたのもつかの間。

 

 

「羅浮には、そちらの腰に付けている剣を持ち込むことは出来ません」

 

 

問題が発生した。

仙舟「羅浮」へと入るためには審査を通らなければならない。

といっても普通の人ならばある程度は簡単に通過出来るであろう場所だ。

だが少なくとも常人は腰に剣など付けて歩くことは無かったのだ。

よって羅浮に入るためには剣を預ける、つまり手放さなくてはならなくなった。

しかし炎秋が持っている剣は炎秋本人にとって体の一部のようなものであった。

到底手放すことは出来なかった。

 

 

「すまないが、この剣は護身用の剣だ。この剣に何度命を救われたかわからない。私は長旅をしているがこの剣は私に無くてはならない剣なのだ。手放すわけにはいかない」

 

「確かに、そちらの剣を大切にしていることは私も十分に理解しております。しかしながら、先日ここ羅浮には星核ハンターやかつての羅浮の大罪人も入り込んだという報告があったのです。そのため、それ相応の対策を我々も行わなければならなくなっております。こちらもこの条件ばかりはお譲りすることは出来ません」

 

 

両者の間で激しい口論が繰り広げられている中、突如として人々が多く歩く道の方から叫び声が聞こえた。

 

 

「う、うわぁぁああ!!!!化け物だ!!!!みんな逃げろ!!!!」

 

「「…!?」」

 

 

口論を繰り広げていた両者がそちらを向くと巨大な金人門番が暴走し、暴れまわっていた。

 

 

「しょうがないか…悪いが、口論はまた後にしてくれ」

 

「なっ!?ま、待ちなさい!!…!?…速い!?」

 

 

審査をしていた女性の元を離れ、目で追っかけるのも精一杯とも言えるような速度で暴れる金人門番の方へ距離を詰める炎秋。

炎秋に気付き、金人門番が片手についている金棒を振りかぶり炎秋に叩きつけようとする。

だが、炎秋は金棒が当たる寸前の所で足を止め紙一重で金棒を躱す。

 

審査の女は思う。

『ギリギリで避けれたから良いものを』

と。

 

金人が叩きつけられた金棒を引き上げつつも炎秋に一撃を与えようとするも、炎秋は金棒をまたもや紙一重で躱す。

そのまま何度も何度も金棒を振り回す金人門番。

右から左から、上から下から斜めから。

あらゆる方向、あらゆる角度からの打撃。

しかし、どれも炎秋には当たらない。

すべて紙一重で避ける。

ここまで見て彼女は理解した。

何故すべて紙一重なのかを。

 

 

(たまたま紙一重で避けているわけじゃない。足元を見ていてわかった。彼は金人門番の金棒を避けるのにわずかに体をずらしたり、わずかに半歩後ろに下がることで金棒を避けている。それぞれの打撃を完璧に見切っている…!)

 

 

炎秋には見えていた。

金人門番の打撃が。

その攻撃のすべてが。

そして、炎秋にはもう一つ見えていたことがある。

金人門番は確かに強い。

しかし、いくら強いといえど機械である。

『相手に攻撃を当てる』を到達点としてプログラムが組まれ動いている。

そんな金人門番の攻撃を避け続けるとどうなるか。

『相手に攻撃を当てる』を達成するために”無理矢理踏み込んでくる“

 

 

「ここだ」

 

 

そして、その隙を炎秋は見逃さない。

 

 

「…信じられない」

 

 

一刀のもとに沈む金人門番を信じられない光景を見るような表情で見ながら、彼女はそう呟いてしまった。

もっともそう言ってしまう気持ちはわからなくもない。

理解していたとしても実行出来るかどうかは別である。

知っていたとしても実現出来るかどうかは別である。

だが少なくとも、炎秋にはそれを実行し実現できるだけの実力があった。

地に伏して動かなくなった金人門番から驚く彼女の方に視線を向けて声をかける炎秋。

 

 

「……ふぅ、さてさっきの話の続きと行こ____」

 

「だーれだ」

 

 

しかし、その目は突如として後ろから両目を覆われたことにより彼女を見ることは出来なかった。

両目を覆われると同時に聞き慣れた声が後ろから聞こえる。

『ああ、騒ぎを聞きつけてやってきたのだな』などと思いながら両手を退かして後ろに振り返る炎秋。

 

 

「騒ぎを聞きつけてやってくるとは随分と耳が良いな景げ………」

 

 

だが、振り返った先に見た光景に思わず言葉が止まってしまった。

目の前には景元の…“両手を腰にあて面白そうにこちらを見る”景元の姿。

 

 

「フフフ………フフフ…………!!」

 

 

そして……。

 

 

「アハハハハハ………!!!ハハハハハハ!!!!」

 

 

笑いながらこちらを見ている、かつて恋い焦がれていた女性。

 

 

「鏡流……」

 

 

鏡流の姿があった。

 

 

「もう…もう絶対に…離しはせぬ…!!!」

 

 

ま、その目は笑ってなかったんですけどね。

もう助からないぞこれ。

俺しーらね。

 

 

 

 

 

 

 

 




誰かに書いてほしい話がある時、まずは自分が先陣を切る。
そうじっちゃんに教わりました。
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