それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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誤字報告、大変助かりました。
この場を借りて感謝をお伝えします。


予兆

 

 

 

 

 

炎秋は一瞬戸惑った。

霊砂から聞かされた事を頭の中で考えながら。

 

 

(……この人が、かつて雲上の五騎士と呼ばれた一人で鏡流さんの…)

 

 

しかし、戸惑ってる場合でないことを瞬時に理解した。

目の前に居る女性を、白珠を見ながら。

そして、視線の先に居る鏡流の尋常ではない動揺の仕方を見ながら。

自分が聞かねば誰も動けないことを悟り、霊砂へと話を進めていく。

 

 

「…この人があの白珠さんってのは本当なのか?

少なくとも、記録には…」

 

「…ええ、亡くなったとあります。

ですが、確認は取れています。

間違いなく本人であると」

 

「誰が確認を?」

 

「…将軍が、直々に」

 

「……そうか」

 

「しかし、です。」

 

「…?」

 

「誰とは言いませんが、似た事例が最近ありましたね?」

 

「…だから俺にも関係があるって言ったのか」

 

「そういうことです。

彼女の要望でここに来たのは間違いありませんが、違う目的として似たような境遇である貴方に色々と話を聞くことが出来るのではないかと思いまして」

 

「蘇った時の感覚とか、今俺のやりたいこととか…少なくともそういう話を聞きたいんじゃ無さそうだな。

……何故、人がこうも簡単に蘇るのか…というより、人とは蘇るもんなのかって話か?」

 

「それもありますが…どちらかと言えば…」

 

「……あぁ、なるほど。蘇った事例があるから、蘇ったことよりも重要なことから先に考えたいのか」

 

 

霊砂が…そして景元がもっとも自分に何を聞きたいのか。

それをなんとなく炎秋は悟った。

 

 

「「誰が、何のために蘇らせたのか」」

 

 

ゆえに、2人の言葉はまったく同じ言葉となり重なる。

結局のところそこに行き着く。

どうして人を蘇らせるのか?

意図は何か?

炎秋という前例がある以上、何者かが悪意をもって行ったことであることを考えなければならなかった。

 

 

(言いたいことや、やりたいことだって沢山あっただろうに)

 

 

だからこそ、炎秋は景元のことを考えてしまった。

積もりに積もった私情よりも、立場的な行動を優先した景元を。

だからこそ、炎秋は考えなければならないと感じた。

景元にも、そして目の前の鏡流にも…きっと余裕がないのだ。

動かねばならないのは自分だと行き着いた。

 

 

「…正直言ってわからない。だが、何らかの悪意を持つ者が行なったわけではないと言えない事態であることは間違いないのだろうな。

…そして、だ」

 

「はい。今、我々に足りないのは情報です。

そして、自由に動ける余裕を持っているのが…」

 

「俺と霊砂さん…ってわけか。

…嫌な立場を押し付けられるのは得意か?」

 

「私は問題ありません。すでに責任ある立場ですから」

 

「…自分の責任ある立場が嫌って言ってるわけで無いことを願っとく」

 

「杞憂ですよ。ですが、得意でないのは貴方の方でしょう?」

 

「…じゃなきゃこんなとこで過ごしてねぇよ」

 

「話が逸れました。

それで、どう思います?…というより、どう動くべきだと思います?」

 

「……………。」

 

 

炎秋は考える。

何処からアプローチをかけるべきか。

10秒ほど考えてから霊砂に返事を返す。

 

 

「俺、今日はまだ飲んでないんだ」

 

「飲んでない?」

 

「歩離人特有のフェロモンを抑える薬だ。

鏡流も俺がその薬を飲んでないことを知ってる。

いつも決まった時間に飲むようにしているが、まだその時間じゃなかったからな」

 

「……はい?」

 

「一つ聞くが、彼女は…白珠は狐族である。そうだな?」

 

「…ええ、もちろんですが…?」

 

「じゃあもう一つ追加で聞くが、彼女は本当の本当に白珠本人なんだな?」

 

「…それも間違いありません。検査も抵抗無く受けており、検査結果こそ出ていませんが何者かが化けていることは考えにくいかと…。先程も言いましたが、将軍が彼女から色々と聞いた結論としても本人で殆ど違いないと言っておりました」

 

「…わかった、ありがとう」

 

 

そうして炎秋は白珠へと近付き、彼女に話しかけ始めた。

その様子を霊砂は『一体何をするのか?』と見ている。

鏡流も何かしらの思惑を感じ取ったのか、動揺を抑えつつ炎秋に会話のバトンを渡した。

 

 

「はじめまして、俺は炎秋だ。

アンタは白珠さん…で良いんだよな?」

 

「うん、はじめまして!

えっと…鏡流ととても仲が良い人が居るって景元から聞いてたんだけど、貴方のことだったんだ?

えっと、正直色々とわからないことの方が多いけど…とりあえずよろしくね?」

 

 

そうして、炎秋は自然な形で…。

 

 

「ああ、よろしく。

……鏡流、悪いが少し彼女を借りてもいいか?」

 

「…炎秋?」

 

「なに、大丈夫だ。

白珠さん、二人で話したいことがある。

ついてきてくれ」

 

 

彼女に行動を要求した。

『話したいことがあるからついてきてくれないか?』と本来は聞くところを『ついてきてくれ』と要求の形にした。

鏡流はその意図を理解し何も言わない。

無論、霊砂も。

そうして、白珠から返ってきた言葉は…。

 

 

「えっと…勝手にここを離れたら駄目って言われてるけど…霊砂さん、いいですか?」

 

 

その意図を、まったく理解していない言葉だったわけだが。

 

 

「…え!?」

 

「……。」

 

「…なんだと?」

 

 

その言葉は…霊砂を驚かせ、炎秋を思考させ、鏡流を困惑させた。

白珠は今、間違いなく炎秋の要求を…歩離人の血を持つ者の要求を呑まなかった。

一人、炎秋はなんとなくではあったが感じ取っていた。

 

 

(これは、本当にただ事じゃ無さそうだな…)

 

 

これから羅浮で起こる一騒動の予兆を。

 

 

 

 

 

 

 

 




今までもそうでありましたが、大まかな道筋は考えて…後はわりとその場のノリとテンションに身を任せております。
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