タイトルの記入漏れ有り、修正
捕虜となった炎秋は、目の前にいる呼雷を前にしてどうしたものかと考えていた。
抵抗しようにも歩離人用の手錠があり、力がまったく入らない。
両手をつなげている鎖を引きちぎり、両手を自由に動かすこともできない状態であった。
そんな事を考えていた炎秋だったが、呼雷がこちらを見ながら近づいてくる。
「命令だ、両手を前に出せ」
「…何をするつもりだ?」
「二度は言わんぞ」
「…チッ」
従うしかない現状に苛立ちを覚えつつも、とりあえず両手を前に出す。
ガキンッ!
そんな音を立てて自分の手錠をつなげる鎖が断ち切られる。
呆然とする炎秋を前に呼雷はなんてことないように言う。
「鎖があろうとなかろうと、本来の力の1割にも満たないほどの力しか出せぬお前には関係ないだろう…?」
「……つくづく苛立つことしか抜かさんな」
「さて、お茶を淹れた。
飲め」
「……何を入れた?」
「睡眠剤だ。
移動するのに眠っていて貰ったほうが楽なのでな。
それとも、物理的に眠らされたかったか?」
「…フン、丁重に扱えよ」
そう言い、目の前のお茶を飲み干す。
数十秒後、徐々に眠気が襲い始める。
「それは、あやつら次第だな」
そうして、炎秋は意識を失った。
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場所は代わり、神策府のとある一室。
そこには景元、鏡流をはじめとして白珠に御空や符玄が集まっている。
これからの動きを早急に決めるための作戦会議のために。
「しかしながら景元…呼雷が蘇ったという話、本当なのですか?」
「間違いない。
確かな筋からの情報だ」
符玄より尋ねられてそう答える景元。
と言っても、まさか『星核ハンターからの情報だ』とは言えないのであるが。
その返事を聞いた御空は、顎に手を当てつつ考えながら景元へと進言する。
「ですが、将軍様…我々には連れ去られた炎秋様や呼雷の居場所がわかりません。
居場所を割り出すまで奴らが待っているとは考えにくいのではないでしょうか?」
実際問題その通りだった。
今から場所の特定を行ったとて、奴らが…呼雷が律儀に待っているとは考えにくいのが現状である。
景元自身もそう考えていた。
切羽詰まった状況に、空気が重くなっていく。
仕方ないか、と景元はため息をつきながら奥の手ともいえるカードを切り出した。
「わかるかい?」
「もちろん、バッチリよ」
一つの希望を持った存在が現れるまでは。
「…貴方…!」
「久しぶりね、御空。
元気にしてたかしら?」
「飛霄!!」
「将軍ってせめて付けて欲しいわ。
これでも曜青の将軍なの」
突然の曜青の将軍の登場に驚きを隠せない一同、そんな周りを置いて景元は言葉を続けた。
「それで、何処に居るんだい?」
「空の上よ。
少し前、例の団体の活動が活発になってから大きな星槎が飛び始めるようになったでしょ?」
「たしか、表向きには広告用としての登録申請があった…」
「そう。
炎秋はそこに居る。
呼雷もね」
「…一応聞くけど、どうやって知り得た情報だい?」
「潜入させてる信頼できる部下からの情報…それじゃ駄目かしら?」
「…いいや、上等だ。
恩に着る、飛霄将軍殿」
「お返し、待ってるわね?」
「飛霄…貴方って人は…」
そんな返しを食らい、ため息をついてしまう景元と呆れと嬉しさが混ざった表情を見せる御空。
逆に言えば、少なくともそんな反応が返せるほどに余裕ができたとも言える。
そんな中、白珠は手を挙げて疑問に思ったことをそのまま述べる。
「そこまで星槎に行こうにも…その大型星槎には護衛用の星槎も随伴してるんじゃなかった…?
どうやってそこまで近付くの…?」
それを聞いた景元は、待ってましたと言わんばかりに笑顔になる。
そんな弟子の表情を部屋の隅で聞いていた鏡流は呆れながらため息をついた。
御空はハッとし、符玄は首を横に振りながら呆れた様子を見せる。
そして、そんな周りの様子を見て白珠は思い出した。
『あんなふうに笑う景元は、いつも決まってろくでもないことをしでかす』
ということを。
「それじゃあ、ついてきてほしい。
とっておきの初お披露目だ」
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そうして景元は、全員を連れて神策府の地下へと続く通路を歩き始める。
全員を先導するように景元となんてことないような顔をしながら付いていく鏡流。
何処か嬉しそうに…楽しそうにする白珠と飛霄。
『こんなとこ知らないんだけど』と言わんばかりの御空と符玄。
そんな四人を気にすることなく、景元が全員を連れて着いた場所はそれなりに大きなガレージだった。
そこには通常よりも大きめのブースターが外付けされ、完全に魔改造された星槎が置かれていた。
「お…おぉぉおおおおお!!!!」
それはもう、嬉しそうにする白珠。
無意識のうちに声が出ているほどだ。
多分もう、何となく運転するのが誰なのかを理解しているのだろう。
隣では腕を組み頷く飛霄。
何も言わないが、『いい仕事してますねぇ!』とでも言わんばかりだ。
そして、ニッコニコの景元。
それはもう、満面の笑みだ。
白珠と飛霄の反応にご満悦の様子だ。
そんな光景を見ていた符玄は眉間をつまみながら、絞り出すように声を出した。
「……一応聞いてあげるわ。
…なにこれ」
「星槎だ」
「見ればわかるわよ!!
その見るからにデカいブースターは何かって聞いてるの!!!」
「速そうだろう?」
「ええ!!星槎の高速規定なんてぶっ飛んでいきそうなくらいにね!!!」
「作戦は単純だ。
炎秋が捕らえられている大型星槎にはステルス状態の星槎を発見する機能がある。
そして、周囲には随伴する武装で固められた星槎が居る。
これらにはステルス迷彩により解除するまで姿が見えない。
つまり、こちらのステルス迷彩は役に立たないということになる。
ならばだ。
奴等が捕らえきれない速度で巡航できる星槎を用意すればいいということになる」
「『いいということになる』じゃないわよ。
飛霄将軍、何かこのバカに言ってやって貰えませんか?」
「コレ、ぶっ飛ばしたら気持ちよさそうね!」
「符玄様…飛霄は昔から…そっち側なの…」
「……………………。」
もはや何も言うまい。
符玄はそんな気持ちになってしまった。
「もう分かっているだろうけど…白珠、君に運転は任せたい」
「待ってました!!!!」
「師匠、乗ってください。
我々は後から向かいます」
「…景元よ」
「はい、師匠」
「……我とて怖いのだぞ…。」
「理解しております。
是非、先陣をお切りになられてください」
「……そうか」
「それから、これを」
「これは…剣か?」
「はい。
先程、金人巷からとある報告が入りまして。
なんでも、炎秋は剣を折られたのだとか」
「炎秋の救出はどうする?
そこまで手がまわらんこともありえるぞ」
「それなら、私も一緒に乗るわ。
私にそっちは任せて」
「飛霄将軍、よろしいのですか?」
「ええ、私も呼雷には一撃食らわしてやりたいと思っていたから。
…椒丘の分も、キッチリ返してあげたいから」
「信じて良いのだな?
…いや、頼りにさせてもらおうか」
「ええ、任せておきなさい。
この『敵無し、壁無し、不可能なし』である『三無将軍』にね!」
「…そうか」
鏡流は周りにいる者たちを見る。
どうして気付かなかったのだろうか。
たった一言言えば、こんなにも手を貸してくれる者たちが居る。
鏡流の心は今、炎秋を奪った呼雷への怒りと同じくらい…いや、それ以上の温かさに包まれていた。
「…皆、恩に着る」
その言葉を聞いた周りの者たちは嬉しそうだった。
特に景元と白珠は。
何はともあれ、ようやく始められそうだった。
反撃の狼煙を上げることが。