『ようやくお目覚めか?』
気を失っていた炎秋が目を覚ますと、そこはある一室であった。
周囲を見渡すが、声の主は居ない。
部屋の片隅には監視用のカメラとスピーカーが置いてあった。
「お前は…あの時の男か」
しかし、炎秋には聞き覚えがあった。
少女を助けに行った時、10人ほどの武装した者たちのリーダー格としていた男。
顔こそあまり見えなかったが、今聞いている声と同じ声だった。
『へぇ?無冠剣神だなんて大層な二つ名持ってるだけはあるじゃねぇか、正解だ。
あん時ぶり…つってもそんなに時間は経ってねぇか』
「…呼雷はどうした?」
『そいつは教えらんねぇなぁ。
でも、呼雷様にお前のことを見張っとくように言われたのは間違いないねぇなぁ』
「………この部屋で大人しくしておけと?」
『そゆこと。
ま、俺達の目的が達成できるまでは大人しくしといてくれや』
「目的?」
『そ、目的があんだよねぇ。
だから余計な手間をかけさせないでほしいわけ』
「…俺につけていた手錠はどうした?」
『外したよ。
かわりにその首輪を付けてやった。
ソッチのほうがまだいいだろ?』
「…悪趣味だな」
そう言い、その部屋の中央に座る。
炎秋は待つことにした。
いずれ来る好機の時を。
______________________
場所は代わり、神策府の裏。
特注のエンジン火を入れ、いつでも飛び出さんとしている星槎が一機。
白珠がハンドルをご機嫌そうに握り、隣に飛霄が座る。
そして、その後ろに鏡流が座っている。
そして、通信を常時『大型星槎に乗る景元』と『神策府にて指揮を執る符玄』に繋がるようにしていた。
なぜ景元が別な星槎に乗り符玄が指揮を執るのか。
景元は隙を見て突入する雲騎軍の指揮をするためであり、決して面倒なことを符玄に押し付けたわけではないとだけ記しておく。
「こちら白珠。
もとい、これから番号1とする。
通信は良好?」
『こちら雲騎軍。
問題ないよ』
『…神策府、問題ないわ』
「発進準備完了。
いつでも跳べるよ」
『タイミングはそちらに任せるわ』
『符玄殿に同じく』
「りょーかい!!
よし!飛霄さん!鏡流!
かっ飛ばすよ!!」
「いつでもいいわ!」
「…お手柔らかに頼む」
今から重要な突撃作戦をするというのに何処か楽しそうな白珠と飛霄。
そして、何処か大人しい様子の鏡流の声のギャップに景元は笑いをこらえるのに必死だった。
「よし!!」
「…カウントはどうするというのだ?」
「じゃあ行くよ!!!」
「カウントは無しか?」
「ゴー!!!」
「無視をするな…ッ…!!」
______________________
司令室にて炎秋の様子を見ている余裕そうな旬雷。
呼雷が何処かに一人で行くと言って、行方をくらました状況。
だが、旬雷にとっては余計な圧がかかることがないためそちらのほうが楽であった。
「さーて、そろそろ作戦通りに動きますか」
そんなことをつぶやく旬雷に部下の一人が一つ疑問を明かしてきた。
「しかし、旬雷様。
神策府のやつら、炎秋という人物だけの人質で鏡流を寄越してくるのでしょうか?」
それを聞いた旬雷はとぼけた様子で答える。
「さぁ?」
「いえ…『さぁ?』…って…。」
「わかんないさ、俺にも。
でも呼雷様が言うんだから間違いないんじゃないかな」
「…そうですか」
「そうそう。
さ、とっととはじめちゃお…ん?」
その時、突如としてアラートが鳴り響く。
「ミサイルです!
距離1000!!」
「み、ミサイルだぁ!?」
完全に不意を突かれた。
人質に関係なくミサイルを撃てるなど、そんな過激な集団だとは旬雷は思っていなかった。
いや、旬雷だけでなく周りの者たちも同様だろう。
そして、時を同じくして符玄と御空の居る神策府でもミサイルのアラートがなっていた。
「ミサイルの反応有り!
連中…まさか撃ってきたのか…!?」
それを聞いた符玄は呆れを通り越して諦めの境地に達していた。
「大丈夫、それ味方の機体だから」
「味方!?味方のミサイルということ…え?機体?」
符玄は内心思っていた。
『景元はいったいどんな化け物マシンを作り出してしまったのか』と。
そんな中、映像では一直線に目標地点である大型星槎に向かって飛んでいき…炎秋が居るとされていた部分に無理やり突っ込んでいくという衝撃なんて言葉では言い表せない光景を見せられていた。
「…本当に機体なのですか?」
誰かの声が、小さく…だが確かに聞こえてきた。
『そんなもんこっちが聞きたい』
その場にいる全員にそう思わせながら。
______________________
すぐさま、旬雷は部下を向かわせた。
ミサイルのような星槎が突入してきた場所は、炎秋が閉じ込められていた場所に近かったためだ。
武器を持ち、炎秋のいる部屋のドアを開ける部下たち。
だが、そこには…。
「…こちらチームデルタ。
炎秋を閉じ込めていた部屋には突っ込んできた星槎と思わしき残骸がありました。
しかし、人影と思わしきものはありません。
もぬけの殻です」
それを聞いた旬雷は心の底から思っただろう。
『そんなワケあるか!!』と。
そして、同時刻。
広間にて静かにその時を待つ呼雷は瞑っていた目を開けて獰猛そうな笑みを浮かべていた。
「ついに、来たか」
決戦の火ぶたが切られるまで、もう時間はない。
絶対白珠は高速中毒者だ。
間違いない。
なんでかはわからないが、そうであるという自信だけは湧いてくる。