船内に入ることが成功したことが確認出来てからの、符玄の対応は早かった。
「侵入が成功した今、私たちには私達の出来ることをする。
すぐさま洗濯用の機体を出して、目標の大型星槎の周りを飛ぶ護衛船を叩き落とす!
その後、回収班が突入班の回収が出来るようにする!
ただし!大型星槎には絶対に被害を出さないこと!」
内側の攻略をするのが鏡流達ならば、外側からの攻略を行う。
景元より指揮を任されたのだ。
ある種のプライドにかけても、必ずやり遂げるべきことをする。
そういう類のものが、符玄を動かしていた。
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場所は変わり、大型星槎の内側。
自身を閉じ込めていた部屋が見るも無残な姿となっている状況に何かを言いたげな様子を見せつつも、あまりにもアグレッシブな救出作戦を決行した一同と共に炎秋は小さな換気口の中を進んでいた。
付けられていた首輪は鏡流が一目見た瞬間に引きちぎり壊していた。
口には出さなかったが、炎秋は今後鏡流の機嫌を損ねることは言わないようにしようと心に誓った。
「…もうこの際、さっきのことは何も聞かないし言わない。
いや、本当なら『あと少し横にズレていたら救出どころか昇天していた』とか言いたいところではあるが」
「作戦通りだったよ?」
「…鏡流…白珠さんははいつもこうなのか?」
「…何も聞くな」
「それで、こっからどうするんだ?
俺は詳しい話は知らねぇ。
俺達は何をしなきゃいけない?」
「じゃあ、確認も兼ねて私が説明するわね」
「飛霄さん、だったな。
頼む」
「私たちが優先的にやるべきことは2つ。
一つはこの船にある爆弾の解除」
「…爆弾?
話を聞く限り普通のじゃなさそうだな」
「そう。
その爆弾は、かつて仙舟が豊穣との戦争をしていた時に開発された超広範囲型大型爆弾。
戦争がある程度まで落ち着きを見せた今は、仙舟同盟の条約として開発や所持が禁止されているレベルのもの」
「…それが、この船に?」
「そういうこと。
かつて、同盟間で回収しきれなかったものが1台だけあったの。
それを探すのが、仙舟の各将軍の重要な役割の一つだった。
それがこの船の何処かにある。
奴等はその爆弾を脅しに使い、何かをしでかそうとしてる」
「解除方法は?」
「潜入してる私の部下が持ってる調和剤を入れる必要がある。
一応、私も予備を持ってるけど。
拳銃型で、撃ち込めばいいタイプだから爆弾は見つけさえすれば後は楽かな。
そっちは私と白珠で対応する。
で、問題はもう一つ」
「…呼雷か」
「正解。
奴は野放しに出来ない。
そうなってくると対応しなければならないのは…」
「俺と鏡流の二人で…か」
「正直呼雷が生き返ったとは思いたく無いけど…本当に蘇ったの?」
「…何回か話してる。
間違いない、奴は生き返っている」
「……そう。
少なくとも、ここに生き返った経験をしたのが二人もいる以上あり得る話…か」
そうして話す二人を後ろから見ていた鏡流は不思議と落ち着きを持っていた。
これからが大変だと言うのに、炎秋が無事であることを知り安堵していたのだった。
「一つだけ、奴から言われたことがある」
「…何を?」
「この船の中央部屋上には広いスペースがあると言っていた」
「…そこで、待つと?」
「そう見るべきなんだろうか。
罠があるかはわからん。
だが奴は、鏡流との戦いを望んでいた。
…それに、だ。
睡眠剤のせいか…体の自由が思うようにならない。
戦えるかと言われれば厳しい。
最悪、足手まといになりかねない」
炎秋が危惧しているのはそこだった。
『自身が足手まといにならないか』
それを聞いた鏡流の答えは決まっていた。
「見届ける者も、必要だろう」
今後の各人の行動は、決まった。
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その後、人の気配のない場所を見つけ出しそのまま二手に分かれた。
鏡流と炎秋が屋上エリアに、飛霄と白珠は潜入中の飛霄の部下であるモゼに合流し得られた情報から爆弾を対象しに。
そうして屋上エリアへと向かう二人だったが、その道のりは以上に静かであった。
警備すら居ない。
まるで、歓迎すらされているかのようだった。
そうして、階段を上がり警戒しながら屋上エリアへとたどり着いた。
そんな二人を…
「ようやくか。
待っていたぞ」
“ソレ”は待っていた。
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「通信です!」
符玄のもとにそんな報告が来る。
「何処から?」
「例の大型星槎からです!」
「…繋いていいわ」
そうして回線をつなげると、モニターに大きく一人の人物が映し出される。
その者はお面を被り、素顔が割れないようにしていた。
「はじめまして、神策府の諸君」
その声は加工が入っており、完全に特定は不可能だとでも言わんばかりであった。
「私は現在、君たちが追っている船を占拠している者だ。
…さて、難しい話は嫌いなのでな。
ハッキリと言わせてもらおう。
我々の船には現在、例の爆弾がある。
おっと、わけがわからない者は別に気にしないでほしい。
わかる者にだけわかれば良いのだ。
我々が要求するのは、仙舟『羅浮』の将軍である景元の身柄だ。
タイムリミットは今から数えて1日後だ。
そのタイムリミットを超えた時、我々が何をするかは言えないがな。
では、いい返事を期待している。
あっと、忘れていた。
我々の船の周りを飛ぶ船だが、あれは私の仲間でね。
彼らが攻撃されても、我々としては交渉不正理と捉えるのでな。
そこを忘れないでほしい」
そう言って、仮面の男は通信を切った。
そうして仕方なく、符玄は攻撃班に待機を命じた。
相手はあくまでも従わざるを得ない。
状況は自分たちが有利なのだと。
そんな状態だと相手に思わせるために。
なんだか物足りない気がしたので、もう1話分追加で。