それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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それでも、それでも俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……きさ…ま…。」

 

 

 

 

鏡流は動けなかった。

剣を振り抜かれても。

目の前でその剣を受け止める者がいても。

彼女を知る者が見たら思うことだろう。

『彼女は本当に鏡流なのか?』

それほどまでに、彼女はこの一瞬で追い詰められていた。

危機的な意味でも、精神的にも。

 

それを、目の前の彼女…飛霄は暴走する炎秋の剣を受け止めながら彼女に投げかける。

 

 

 

 

 

「怖いか!」

 

「…何を…」

 

「愛してくれる男に、守りたい男に剣を向けるのが!!!

怖いのかと聞いている!!!」

 

「…っ」

 

「怖いだろう!!

それはもう怖いだろうな!!

自分の立場に置き換えれば、私とて怖い!!

考えただけでもゾッとする!!」

 

 

 

 

 

炎秋は剣を一瞬引き抜き、再度斬りかかろうとする。

それを見切り、また剣を受け止めながら言葉を続ける。

 

 

 

 

 

「それでも!!

それでも信じろ!!!」

 

「…信じる…?」

 

「この男は、紅月を取り込んだくらいで自我を失い続ける男か!?

お前の剣を受け止められないほど弱い男か!?」

 

「それは…!」

 

「違うというのならば信じろ!!!」

 

「…ッ!」

 

「この男は、必ず荒ぶる自分に打ち勝つ!

必ず戻ってくる!

必ずアタシの…お前の剣を受け止められる強さを持っている!!

だから信じろ!!!

信じてこの男の剣を受け止め続けろ!!!」

 

 

 

 

炎秋は剣を受け止めるタイミングの飛霄の足を左手に持った鞘で払い崩そうとした。

 

 

 

 

「…そこまで言われてはな!」

 

 

 

 

そんな鞘を、飛霄の変わりに鏡流か受け止める。

 

 

 

 

「礼は言わんぞ!!」

 

「求めてない!!」

 

 

 

 

そうして二人がかりで炎秋の相手を始める。

彼が返ってくるまでに。

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

長い…夢を見ている気がした

 

 

 

 

「歩離人は敵だ。

仙舟の…狐族の敵だ!」

 

 

 

 

『炎秋は意識の奥底に沈んでいた。』

 

 

 

 

 

歩いても歩いても、真っ暗な闇が続いてる

 

 

 

 

 

「炎秋…俺はお前と友になれて…戦えてよかった。

私はここで死ぬが…必ずお前は生き延びろ…!」

 

 

 

 

 

『それでも、歩き続けた。』

 

 

 

 

 

 

足が重い

 

 

 

 

 

「歩離人には…歩離人を愛した私には…生きる価値がありませんか…?」

 

 

 

 

 

 

 

『それでも……歩き続ける。』

 

 

 

 

 

 

 

 

目が霞む

 

 

 

 

 

 

 

「…我は…せめて我が…お前を守る…。

お前の名は…炎秋。

あやつらが残したたった一つのその名を…我は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでも……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何のために、歩いているんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「炎秋!」

「炎秋さん!」

「炎秋殿!!」

「炎秋隊長!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『散っていった者たちが見える』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わからない

俺はどうしたらいいんだろう

戦うことなんて嫌なのに

立ち止まってしまいたい

苦しい

泣かせたくなかった

でも彼女を泣かせた

ただ守りたかっただけなのに

どうして俺は

…どうして僕は

……どうして私は

…………何のために

……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わからない?」

 

「え?」

 

「何のために生きているのか、わからない?」

 

「…誰?」

 

「私?…えっと…私は…まぁ、会ったことないよね。

いいんだよ、私のことは。

今はそんなことより、あなたのこと。

生きてるのは…辛い?」

 

「…わかんない」

 

「じゃあ、全部捨てて逃げちゃう?」

 

「…やだ」

 

「なんで?」

 

「…守りたいから」

 

「守りたい?」

 

「うん、守りたい人が居るんだ」

 

「だから、捨てられない?」

 

「…うん、捨てたくない」

 

「でもね?きっと、その守りたい人にも…守りたい人が居るんだと思うよ?」

 

「…え?」

 

「そして、君が誰かを守りたいように…君のことを守りたい誰かだっている」

 

「…僕を…守りたい人…?」

 

「だからね?」

 

「……。」

 

「もっと、自分を大切にしてあげて?」

 

「…自分を?」

 

「そう。

貴方のことを守りたい誰かのために」

 

「…生きて…いいのかな」

 

「ええ」

 

「…戻って…良いのかな…」

 

「もちろん」

 

 

 

 

 

 

抱きしめられた。

温かい。

知らないはずなのに、知っている。

ふと気付いた。

遠くで腕を組み見ている者。

歩離人に見える。

自分を抱きしめる女性。

知らない。

見たこともない。

でも。

でも、なんとなく。

わかった。

 

 

 

 

 

 

 

「それでも…。

それでも、彼女を好きで…良いのかな…っ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「「愛してあげてほしい」」

「私達は」

「俺達は」

 

 

 

 

 

 

 

ああ、きっと。

この二人は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ずっとあなたを見守っている」」

「「頑張れ炎秋」」

「「私達の」」

「「大切なヒーロー」」

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう。

私はまだ…。

僕はまだ…。

…いいや、俺は…まだっ!!!

 

 

 

 

 

 

「お前に負けるわけにはいかないッ!!!!」

「呼雷ッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

そこには、自分と瓜二つの存在がいた。

持っていないはずの両手で剣を構える動作をする。

抜刀術の構え。

 

 

 

 

 

 

一龍一門(いちりゅういちもん)

 

 

 

 

 

 

すると、無いはずの刀が…鞘に収まった自分の剣が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

抜刀術(ばっとうじゅつ)

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そうか。

完成させられなかったのは、鏡流の型を元にしたからじゃない。

鏡流にしか完成させられないからじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽冠閃(ようかんせん)

 

 

 

 

 

 

 

 

…やっと、出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳刀円(ほうとうまどか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで、やっと…。

彼女の隣に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その技をもって、炎秋は呼雷の影を斬り伏せた』

『その技をもって、炎秋は鏡流の隣に立った』

『その技をもって、炎秋は自身を守り抜くと誓った』

『その技をもって…。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は…俺の大切な人を守り抜く。

 

辛くたっていい。

苦しくたっていい。

それでも俺は、俺を守り抜く。

 

それでも俺は彼女を愛する。

愛しぬいてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも俺は、彼女が好きだから」

 

 

 

 

 

 

 

 




しばらく投稿が途絶えますが、年内には必ずエピローグまで書ききるのでどうかご容赦ください
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