それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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詰んでいた、始めから/最後の兆し

 

 

 

 

 

 

それは突如として訪れた。

 

 

 

 

「…止まった?」

 

「…そのようだな」

 

 

 

 

 

炎秋が動きを止めた。

先ほどまであった圧が消えた。

どうしたものかと鏡流達は考えていたが、目の前の炎秋はそのまま前に倒れ始める。

ハッとした表情をする飛霄と、咄嗟に剣を投げ炎秋を受け止める鏡流。

 

 

 

 

 

「…まったく、我の思いも知らず…」

 

 

 

 

 

気絶している炎秋の顔を見た瞬間、鏡流は思わずそう呟いてしまった。

それを見ていた飛霄も腕を組み、呆れと安堵の笑みの混じった表情でため息をつきながらそちらを見ていた。

何処か満足そうな、清々しいほど安らかな炎秋の顔を見ながら。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

旬雷は、その光景を何も言わずに見ていた。

呼雷が倒される瞬間を。

紅月が炎秋の中に入り込む瞬間を。

暴走する炎秋を抑えていた2人の姿を。

やがて動きを止め、その場に倒れ込むかという炎秋を受け止める鏡流達の姿を。

 

 

 

 

 

「………。」

 

 

 

 

 

この状況は、計画通りか?

 

 

 

 

 

「……フッ」

 

 

 

 

 

 

答えは否であった。

 

 

 

 

 

 

 

「爆破チームは!!

どうなっている!」

 

「はいっ!

現在、保管庫から発射機構に積み終わっておりいつでも発射可能です!」

 

「よし!今すぐにだ!

撃てるようにしておけ!」

 

「で、ですが…ここで発射すれば我々も…」

 

「こちらに交渉の材料が無いからだ!

万が一、呼雷が倒された時の保険も無くなったんだぞ!?」

 

 

 

 

 

 

彼らは現在、てんやわんやだ。

このままでは旬雷に切れるカードがない。

よってすぐさま用意する必要があった。

そして、そのカードはあらかじめ用意していた大型爆弾。

旬雷が組織を乗っ取る前に、歩離人撲滅のための最終手段として開発されていたその爆弾の威力は仙舟に壊滅的な被害をもたらすほどである。

最後の一手、最後の足掻き。

最後の保険。

そもそも、これがなければ始めてすらいなかった事の計画。

それに頼ろうとした。

そのタイミングだった。

 

 

 

 

 

 

『残念だけど、そうはいかない』

 

 

 

 

 

 

突如、旬雷達の前にある大型のモニターに一人の人物が映し出される。

そして、横に居るもう一人の男。

 

 

 

 

 

 

「将軍か…!

それに貴様は…!」

 

『ずいぶんと慌ててますね。

似合ってますよ、その姿』

 

「春孝…ッ!」

 

『さて…とっとと用件をを伝えるとしましょうか。

そちらの内部情報は全てこちらに筒抜けです。

まさか呼雷を蘇らせるとは思いませんでしたが、無事対処できたようで何よりです。

なので、これより待機してある雲騎軍で貴方達の居る船に突入します』

 

「…は?」

 

『降伏していただければ、手荒な真似はしないと約束していただけるらしいですよ?』

 

「な、なにをッ!

内部情報が分かっているのならば、我々が次に何をするか理解しているのだろう!?」

 

『あぁ、アレですか。

まさか、私の残していた設計図を元に量産をしたと?』

 

「そうだ!

撃てないとでも思っているのか!?

我々には覚悟がある!

元よりそれを最終手段として…」

 

『アレ、実は爆弾では無いのです』

 

「……へ?」

 

『撃ってみればいいですよ。

問題無いので』

 

「…強がりだ!

ハッタリだ!

そんなハズはない!

爆破班!!構わん!!発射しろ!!」

 

 

 

 

 

そうして、指示された通りに爆撃態勢に入る大型星槎。

 

 

 

 

 

「これで終わりだ!

くだらんハッタリで止まるものか!!」

 

 

 

 

 

そうして落とされた爆弾が。

羅浮の街に向けて、空中で一斉に爆破された。

 

綺麗な模様の演出と共に。

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

 

 

 

その爆破を見て、羅浮の人々は不思議そうに空を見上げていた。

子どもなど、嬉しそうに笑っているではないか。

 

 

 

 

 

『花火ですよ』

 

「は、はな…」

 

『私が科学者として残した設計図…きっと悪用されるだろうと思い、違うものとすり替えておきました。

貴方方が爆弾と思っていたものは、花火です。

それも爆弾に偽装できるようにわざわざわかりにくく作っておいたもの』

 

「……そんなことがあるはずが」

 

『10分後、突入します。

では、そういうことなので』

 

「…そんなことあるはずがあるか!!!

こんなことが!!!

第一、外に随伴している船は!!!

船はどうした!!!

護衛隊はどうしたというんだ!!!」

 

『…あぁ、気付かなかったのですか?』

 

「何を!!」

 

『落としておきましたよ。

通信にジャミングをかけていたので報告する前に落とされたのでしょうね』

 

「…何を」

 

『あぁ、そうでした。

一つ、言っておかねばならないことがあります。

なぜ、私が通信の話し手になっているか』

 

「……何を…言って…。」

 

『…怒らせてはならない男を、怒らせたということですよ』

 

 

 

 

 

 

あっけなく、実にあっけなく。

旬雷は詰まされた。

春孝に。

炎秋に。

鏡流に。

神策府に。

そして、かつてないほど怒りに燃えている景元に。

自分の師を、大切な友を。

ここまでコケにされた景元は、顔には出さないが怒りが滲み出ていた。

符玄は後に語っている。

『通信越しですら将軍から圧を感じたのは初めてよ』

と。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

それから、20分後。

雲騎軍が突入、もはや抵抗する気力すら残っていなかった旬雷達を拘束し終えていた。

そして、突入より少し前に目を覚ました炎秋は中央広間にて座り迎えを鏡流達と待っていた。

鏡流も何も言わずに炎秋の様子を見ていた。

そんな2人の様子を何処か情けないものを見るように飛霄は腕を組んで呆れながら見ていた。

やがて、同時に口を開く2人。

 

 

 

 

 

「「一ついいか、いやなんでも…」」

 

 

 

 

 

話すことまで一緒だった。

額に手を当てる白珠。

気まずそうにする2人。

 

 

 

 

 

「…お前から先に話せ」

 

「…わかった」

 

 

 

 

 

そう言われた炎秋は何処か緊張していた。

理由がわからない緊張だった。

もはや何を話していいのかすら怪しい程だった。

覚悟を決めて再度口を開く。

 

 

 

 

 

「沢山あるんだ」

 

「…何がだ」

 

「…話したかったことが」

 

「……。」

 

「ずっと触れてこなかったこと。

今までずっと考えてた…思ってたこと。

…面と向かって言えなかったことも」

 

「…そうか」

 

「触れちゃいけないのかって。

打ち解けられても話してはいけないことなんだって決めつけてたことが沢山あるんだ」

 

「……我もだ」

 

「だから、だから…その…なんていうか…」

 

「……言え」

 

「…え?」

 

「お前の言うことなら、我も受け入れられる。

その覚悟はしてきたつもりだ」

 

「…そうか」

 

「………。」

 

「…1回」

 

「…?」

 

「俺達に足りないのは言葉だと思う。

1回、ちゃんと話し合わないか?

お互い何を考えてるのかとか。

どうしたいのかとか。

どう思ってるのかとか。

きっとそうすれば…もっと好きになれるから」

 

「…そうか」

 

 

 

 

 

それ以上、炎秋からは話さなかった。

帰って話せばいいと思っていた。

やらなくてはならない事が済んでから。

じっくりと話していけばいい。

そう思ったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……事が済んでから一月ほどでいい。

時間を取れぬか」

 

「え?」

 

「我と、本気で。

正面から、向かい合って」

 

「……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我と剣で打ち合ってほしいのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長らく間が空いてしまったことをこの場を借りて謝罪させていただきます。
言い訳みたいになるのも良くない、かつ見た目も良くないため一言でまとめるさせていただくと…まぁ、仕事です。

正直、もうここで綺麗に終わらせようかとギリギリまで悩みました。
ですが、一応続きを書けるようにしておこうと思ってあえて中途半端に区切らせていただきました。
書きたいものはもうちょっとだけあるので、来年の私に書く気力が残っているのならば続きを書かせていただきます。
本当ならば12月の前半で全部書ききってしまいたかったのですが、最終的な着地点が全然綺麗に収まらなかったのには自分で驚いてしまいました。
書き直した回数で言うのならば10回をゆうに超えました。
おかげさまでといいますか、かなり苦労しました。
また、拾ってないちょっとした軽い伏線のようなものもありましたが一応続きを書く時に使えたらいいなって思い残しておきました。
それでは、長文失礼しました。
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