「ッ!…ッぶねぇな…!」
「避けながら…っ!
言う事かい…っ!」
景元の長矛。
リーチがある武器というのは、隙も多いはずだ。
(そのわりにはマジで隙がねぇじゃねぇかよ…ッ!)
避ける。
景元の間合いを測り、自身の歩幅をコントロールしながら。
後ろに避け、突きを横に躱し、払いをくぐろうと前に進もうとする。
が、まるで届かない。
景元の行動に対してなにも返せていない。
…そして、それだけではなかった。
(…ッ!!…またか…ッ!!景元だけで手一杯だぞ、こっちは…ッ!!!)
突如として全方位のどこかしらからか飛んでくる矢を躱す。
始めは景元との一対一だったが、いつの間にか白珠もそこに加わり一対二の試合へと変わっていた。
そんな白珠が飛ばす矢。
その矢を、時に落とす。
躱しきれずに。
そうすればその隙を景元が逃さない。
(やりにくい…!!こんなにもか…雲上の五騎士を2人同時にってのは…!!!)
それでも、なんとか意地でしのぎきっていた。
少なくとも、景元達からは有効打を受けていない。
だが、こちらからも有効打を与えられて居なかった。
第三者が見れば、その3人の攻防は間違いなく神がかりとでも言えるのだろう。
そういう類の稽古、もとい手合わせだった。
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炎秋自身が蘇った。
そこには歩離人と狐族という禁断とも言われかねない背景ああった。
白珠が蘇った。
そこには歩離人の複雑に絡み合う様々な目的や事情、感情が生み出したのだろうか。
答えは炎秋には出せなかった。
ゆえに、鏡流についてそれなりに調べていた。
その過程で雲上の五騎士という存在も細かい記録を見ていた。
当然、白珠のことも知った。
そして、白露のことも。
炎秋は、診察に行く過程で何度か白露とも会っていた。
軽く話をしたこともあった。
そんな彼女は…白露は白珠のいわば転生体のような存在であった。
正確には白珠の体の一部を利用しての龍化妙法によるものだとか。
詳しく原理や各人の事情を理解することまでは出来なかったが、大まかには理解していた。
ゆえに、白露という存在と白珠という存在。
その2人が同じ時を生きている。
それが死者が蘇るということ。
本来ならありえないことが起こっているのだと炎秋自身とて理解していた。
そしてそれが、歩離人に関係していること。
雲上の五騎士に関係していること。
…鏡流の周囲で起きていること。
というよりも、だ。
鏡流を中心として起こっていること。
なんとなくであるが、理解していた。
そうして、他の雲上の五騎士についても読んでいった。
そこでどんどん鏡流について知っていった。
現在、星穹列車に乗る開拓者の一人である丹恒とよばれる男がかつて丹楓が脱鱗の儀によって生まれ変わった存在であるだとか。
星核ハンターの一人、刃とよばれる男のことも。
そして、かつて雲上の五騎士が何をしたのか。
誰が何をして、どうなったのかを。
一つ一つを調べていった。
わかる範囲ではだいたい調べていった。
そこで彼女たちが、彼らがどのように思い過ごしていたかを想像した。
想像しきれないことも理解した。
白珠と実際に話した。
色々なことを背負いあう話だってした。
わかっている。
彼女とて完全ではない。
彼女とて死者であった側の存在なのだ。
理解している。
理解しているつもりなのだ。
覚悟しているつもりなのだ。
それでも、それでもだ。
炎秋という存在は鏡流にとって雲上の五騎士に及ばない、彼ら彼女らの代わりのような存在ではないのか?
少なくとも、そう思ってしまう自分が炎秋の中には居た。
あえて、しっかりと結論を言うのならば。
炎秋は不安なのだ。
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試合形式、手合わせ、スパーリング。
言い方は沢山あるが、景元と白珠に付き合ってもらった後のこと。
力をほとんど使い果たし地面に仰向けで倒れ込む炎秋を、少し息が上がりながら景元と白珠は見ていた。
「大丈夫かい?」
「…最初一人だったくせに、あとから2人同時になるとか思わねぇだろって言っておく」
「彼女の弓、私のこの矛。
捌き切っておいて、それでいてある程度打ち返してきておいてよく言うものだと思うよ」
「ごめんなさい。
見ていたら、私も自然と混ざりたくなったというか…」
「まぁ…いい。
いや、よくねぇんだけどさ。
こっちも、協力してもらってる立場だからな」
「それと、師匠からの伝言だ。
『今から16日後に行われる演武典礼、その終わりを迎えた後にその会場にて』だそうだ。」
「今言うなよ、そんな話を。
…わかったと伝えておいてくれ」
「必ず」
「頼む。
…で?」
「『どう思う?』かい?」
「ああ、なんかあったか」
「…そうだね。
これは私の解釈だし、君は間違いなく剣術において師匠に…鏡流という剣士に匹敵する。
そのことを前提として、話をするなら」
「……。」
「無理だね、今のままでは勝てない」
「ずいぶん、はっきり言う。
…例外無く…か?」
「…わかっているだろう?」
「…まぁな。」
長矛をちょうど立てかけられるとこに置き、腕を組みながら景元は続ける。
「理由まではわからない。
それでも、一つ分かることがある。
君は相手をよく見ている。
相手が何を考え、何を狙い、何を予備動作とするのか。
どのように剣を打ち込んで、どの角度から攻めてくるのか。
歩幅はどれくらいか?
間合いは?
どこまで踏み込んでくるのか?
そういうところをきっちりと見てくる。
それに対応するために。
事実、先ほどの2人がかりの攻めを君は対応しきった。
じゃあ、どうして勝てないと断言するのか。
わかるだろう?」
「…俺は、後手に回りすぎる。
鏡流と暴走した金人門番を対処したときも。
その暴走を企てた者と相まみえたときも。
呼雷の件の時だってそうだ。
いや、かつて俺が一度目の死を迎えるその前の時もか。
俺は、”相手が行動してから、自分の行動に入る“」
「そう。
そして、それが何を指すと思う?」
「…状況が自分で作れていない」
「そして、わかっている相手には意外性もないから逆に対応されやすい。何故かまでは、流石に私にもわからないが…白珠はなんとなく理解しているみたいだね」
「まぁ、なんとなくかな。
なんていうかな…炎秋さんは自身の行動に枷をつけているっていうのかな。
『この行動を取ったとしても、相手は対応してくる』っていう前提で行動を取るっていうか…。
虚を突く動作…意外性のある行動。
そういうものを『小手先のごまかし』と決めつけているというのかな。
通じないものとして選択肢から消しているっていうのかな。
…難しいな、なんて言うべきかな」
「…白珠さん、それは俺が『自分から攻めても相手は対応して負けるだろう、それほどの相手なのだから』という一つの固定概念に縛られているってことを言いたいのか?」
「そう!なんとなくそう感じたかな」
「……。」
仰向けになりながら、右手で目を覆うように当てながら思い返す。
「…参ったな、そりゃ。」
「図星かい」
「…いや、考えてもみなかったし特別意識したことがあるわけでもないが…思い当たる節がある。
後の動きが主体になっているとは思った。
つまり、無意識のうちにそうなっていたということか。
…重症だと思うか?」
「ああ」「かなり」
「…そうだろうな」
「苦手かい?攻めるのは」
「出来なくはないが、お前や白珠さん相手にすら通じるものとは思ってないな。
俺はむしろ、こんな重症で鏡流と競い合ってきたのか」
「そこについては、正直極まっているんだろうね。
流す、避ける、受け止める、距離を取る、距離をつめる、打ち返す、隙を突く。
真似できないと、心底思ったよ」
「私も、どんなに有効的な撃ち込みも対処されるから困ってたなぁ。
景元が居てくれて、なんとか戦いに参加できるかなって」
「…正直なことを言うのなら。
近頃、剣を持って鏡流の動きを想像しながらそれに合わせてこちらの動きも想像することをしていた。
イメージトレーニング、シャドーボクシングに近いか。
でも、鏡流の剣をさばき切れるビジョンがまるで見えてこなかった」
「それで、どうするんだい?」
それを聞いた炎秋は静かに体の胸あたりに左手を置いた。心臓が左にあるように、右側に。
それを見た景元は複雑そうな顔をしていた。
「……制御できるのかい?」
「…さっぱりだ。
コイツに頼ったことがあるやつなんて今まで仙舟に居なかったろ?
制御という概念があるのかすら怪しいだろうな」
「かといって、無いものとしても扱えない…か」
「……どうだかな」
炎秋とて、理解していないわけではない。
そのもう一つの心臓を使うことの意味。
少なくとも鏡流にとって、その心臓を持つものと剣をあわせることの意味を。
目標はこれを最低月1回でお出しすること。
…ホントに?
これを?
一月に一回も…?
で…できらぁ!!!!