なわけないですよね。
遅れました。
景元達とのやり取りの後。
約束の日までの16日という日数。
炎秋は剣を一振りもしなかった。
代わりにやったことは2つ。
そのうちの一つは景元に頼み、ある剣を仙舟「朱明」より取り寄せて実質的に”返却してもらう“こと。
ゆえに。
「羅浮に至急の件と言われてこんな外れまで連れてきおったかと思えば。
まったく…」
「…懐炎将軍、お久しぶりです」
「…やめんか。
敬語なんぞ、今は使っておらぬと聞いた。
口調も崩せ。
今のお前には誰に対しても不敬にはならん」
「…ああ。」
「しかし、本当に……本当に生きておったか。
いや、『生き返っておった』が正しいのかの」
朱明の将軍とかつて面識があったゆえに。
その将軍である懐炎に炎秋のことがバレてしまうのもまた道理。
景元の判断により、炎秋の生死は基本的には仙舟同盟の共通情報とせずにしていた。
が、炎秋からの頼みによりどうしても朱明に実質的に預けてあったある剣を回収したかった。
「まさか、俺の剣が死後に朱明で保管されてるとは思わなかった。
…それも、鏡流がアンタに渡したなんてな」
「悪いか」
「いや、アンタは…なんていうかな。
俺のことなんて嫌いだと思ってたからさ。
少し意外っていうか」
「……。」
「で、俺の剣は?」
「…雲璃」
懐炎がそう誰かを呼ぶと後ろの方から一人若い娘が現れる。
「おじいちゃん、この剣重いのにそんなにスイスイと歩いて行かないでよ」
「すまんすまん。
こちらの御仁に返すものでな」
「なんか悪いな。
持ってきて貰って」
と、そこまで言って気付く。
「…ん?
“おじいちゃん”?」
それを聞いた懐炎が誇らしげに笑いつつも言うのだ。
「孫じゃ」
「孫!?」
「ワシの可愛い可愛い孫娘じゃ」
「アンタの可愛い可愛い孫娘!?」
「仲がいいんだね、息ぴったり」
「誰がこんな生意気小僧と!」
「誰がこんなクサレジジイと!」
「ほら、またぴったり」
そうやり取りをしつつも布に巻かれているソレを受け取る。
受け取った時に感じた重さにどこか懐かしさを感じていた。
(そう言えばこんな重さだったな)
と、そう思ってすこし遠いところをみるような感覚に陥りつつも礼を言おうととりあえず雲璃に目線を移した。
…目をキラキラさせながらこちらを期待したように見ている彼女の姿が目に入った。
ちらりと目線を彼女から左奥にずらすと笑いつつも『見せてやれ』と言わんばかりの表情を見せてくる懐炎が居た。
こちらも微笑むような顔になりつつも、頷きながら右手に持ったその布の塊を解いていく。
やがて出てきたその大剣を見て、さらに目を輝かせる雲璃。
その様子を見て、思わず聞いてしまう。
「そんなに見たかったのか?」
「そりゃもう!」
正直に答えられてしまって、もう顔は笑っていた。
右手に持ったその大剣の刀身を地面に突き刺そうとして、一旦そこで止まる。
刀身を突き刺すかつての自分のやり方をすれば、目の前の彼女はおそらく刀身に傷がつくだとか丁寧に扱うべきなんてことを言いかねない。
そう思い彼女に彼女に剣を渡してみると、まるで薔薇の花束かというような丁寧な扱いで両手で受け取っていた。
しかしまぁ、この剣は突き刺さねばとある秘密を知ることもできないのだが。
ソレを知るのは自分と懐炎のみ。
あの鏡流ですらこの大剣をかつての炎秋の愛刀としか知らない。
しかしまぁ。
懐炎に色々と聞いてみたかった。
こうして会えたのだ。
が、懐炎は孫娘を連れてきた。
本来そんな必要は無いであろうに。
わざわざ彼女を連れてきた。
なぜそんなことをと思いつつも、彼女と会話を続けることにした。
自分でも、何故かわからなかったが。
「そんなに剣が見たいのか?」
「うん、剣の一本ごとに『どんな人が使ってたのか』とか『どういう意図で作られたのか』とか。
考えるだけでもワクワクするんだ」
「じゃあ、その剣も?」
「そう!
でも、なんだろう…この剣はあんまりよくわからない」
「わからない?」
「剣なのに、剣じゃないみたい」
「剣じゃないみたい?」
「なんだろう…剣は迷ってないのに、使ってたであろう人も迷ったようには見えないのに。
よくよく見るとなにも考えてないような感じ。
…迷うのが嫌だったのかな?」
「……。」
「でもいい剣だよね。
重くて私には扱えそうにないけど綺麗だし…おじいちゃんが言わなければこの剣を_」
「俺の剣なんだ」
「え?」
気付けば、そう答えていた。
何か思考があったとか、何か意図が出てきたとか。
そういうものじゃない言葉。
反射的に出てきた言葉。
「その剣は結構前に俺が使ってたんだ。
作ったのも俺なんだ」
「あなたが!?
…えっと」
「炎秋だ」
「そう!炎秋さんね!
名乗り忘れてたけど私は雲璃っていうの」
「いい名前…いや、俺のほうが歳上みたいに話すのは危ないんだったな。
基本歳下だし、俺。
あーまぁ、いいや。そういうんじゃなくて。
…なんて言ったら良いんだろうな。
……迷ってるように見える?」
「…うん。
一番決めなきゃいけないことが決められてない感じ」
「…そっか。
いや、そうかもな」
「思い当たることがある?」
「…ある。
すごくある。
……雲璃…あー…もういいか…『雲璃ちゃん』って呼んで大丈夫?」
「いいよ。
こっちも好きに呼んでいい?」
「ああ、呼び捨てでも良い。
ソッチのほうが気が楽なんだ。
で、だ。
そうだな…雲璃ちゃんは剣は好き?」
「もちろん!
見るのも稽古も歴史を知るのも!」
「じゃあ、もし仮に。
誰かから『お前の剣への愛着は周りからの影響によるものが大きくて、ソレがなければ剣に愛着なんて持たなかった』って言われたりしたとして。
それこそ、懐炎という唯一無二と言えるような人が居たからだって言われたとして。
…一度でも、そのことを納得しかけたとして。
雲璃ちゃんは胸を張って剣が好きって言える?」
「もちろん!」
「…え?」
「だって私おじいちゃんも大好きだもん!
おじいちゃんも大好きで剣も大好きで朱明も好きだし。
おじいちゃんのせいで剣に関わることになったなんて考えたこともないよ。
どっちが好きかとかどっちが先に好きかとかなんで好きになったかなんて関係ない!
どっちも好き!」
「………。」
いつからだろうか。
なにかにつけて優劣をつけ始めたのは。
自分のこと、鏡流のこと、産まれのこと、仙舟のこと。
どれを取るのかと聞かれれば鏡流と答えていた。
その結果、自分のことを二の次にして鏡流は何を突きつけられたか。
ならばきっと、私がやるべきことは一つなのだろう。
目の前の彼女のほうが、よほど炎秋よりも上手く物事を考えられている。
…というよりも、大人ぶっているだけだったのだろう。
炎秋はそう思った。
彼女に近付いて、右手を彼女の肩に置いた。
そうして彼女に目線を合わせた。
「…ありがとう。
剣、助かった」
「どういたしまして!」
ニコッと笑う彼女に釣られてこちらも笑っていた。
心が軽くなった気がした。
その様子を見ていた懐炎もまた微笑んでいた。
若者2人を見守るような目線で。
そうして、演武典礼。
その日がやってきた。
長文失礼します。
なんとなく思ってたこと思うこと垂れながしてしまおうかなと思います。
正直、こういう幕間というか会話中心の部分といいますか。
そういう話を書くのがものすごい難しい。
じゃあ、とっとと鏡流との話を書いちまえばと一瞬思いましたがどうにも妥協といいますか話がすごい薄くなる気がしてなんとかこういう話を書いていったという形です。
一度筆が乗るところにいけばポンポン行くタイプだなと自分で自分のことを思いました。他人事みたいですが。
期間も月に1度のさらに不定期であるのに『お気に入り登録が何故かトータル減ってるどころか増えてる…』と申し訳なさと感謝が半端では無かったです。
こうなってくると二次創作の分際ではありますが責任というものをすこし感じることがありお陰様で書き続けてられているのかなと思います。
スターレイルの二次創作をたまに読み漁ると『うわ、こんだけ書いててちゃんと読んでて面白いわこれ』と思うようになる最近ですが、なんとか書き終えたいと思います。
…年内に終わるといいなぁ。