なんでお気に入り数が日に日に増えていってる…?
「スターレイルの話、誰か書いてないかなー」
そう思って開いた時に見えた閲覧数に思わず頭を抱えてしまったとだけ、お伝えします。
(追記 2024/09/30 23:20)
誤字報告助かりました、ありがとうございます。
炎秋は強い。
その剣は山を裂き、大地を割り、あらゆる敵を斬り伏せる。
仲間に優しく自分に厳しい。
時には冷酷で、時には情に厚い。
褒美を受け取らず、謙虚であり続けながらその一生を仙舟に捧げた存在。
全てにおいて死角があらず、完璧。
それが仙舟の人々が思う無冠剣神であった。
2つ、誤りがある。
一つ、彼は確かに強い。
しかし彼の行動原理にはいつも鏡流が関わっている。
たしかに、彼は仙舟のためにその身を捧げたと言っても過言では無いだろう。
だが、それと同じように一人の女性を追いかけていた。
一人の女性の隣に立つために、一人の女性を振り向かせるために。
結果的に今、彼は鏡流を振り向かせることに成功している。
実力的にも鏡流の隣に立てる存在も彼以外居ないだろう。
……問題があるとするならば向けられた好意が重いということだけだろうか。
そして、もう一つの誤り。
彼は完璧とは程遠い存在であるということだ。
死角無し?
そんなはずはない。
何故断言出来るか?
簡単な話だ。
無冠剣神こと炎秋、彼は今_____
「ふーん…お兄さんが剣の相手をしてくれるって人?」
「…らしいな。俺もさっき聞いた」
景元に見事にハメられ、彼の弟子で。
実力を見定めるような目線を送る彦卿、困惑している炎秋、それを微笑みながらこちらを見る鏡流と景元。
どうしてこうなったのかを説明するのなら……。
審査の件の騒動の後、炎秋は景元に
『宿を探している』
と彼に協力を求めた。
それを聞いた景元は『任せてくれ』とだけ返すととある場所に彼を案内した。
案内された場所、金人巷のとある一角。
そこに誰も住んでいない空き家があった。
そこはなかなかに上等な家だったが、値段を気にした。
だが、景元は
『買い手のつかない家だから金は要らない。代わりに頼みを聞いてほしい』
と返して来た。
本来炎秋が払う必要なお金はかなりのものであった。
それをお願い一つで済むと考えた炎秋はその要求を呑んだ。
結果がコレである。
景元は炎秋を、ひらけた場所へと案内した。
連れてこられた場所には剣を持った少年が一人。
聞けば景元の弟子であると言うではないか。
景元の要求は『自分の弟子との試合形式での試合』だった。
ちなみにだがしっかりと鏡流は後ろから付いてきた。
まるで『面白いものが見れる』と思い浮かれている子供のようにウッキウキで。
炎秋は景元と鏡流の元へ近づき、声を抑えながら文句を言う。
「……なんで俺がお前の弟子と剣を向き合わないといけないんだ。俺よりも、それこそ鏡流のほうが良いだろうに」
「そう言わないでくれ、軽い試合形式だ。そう身構えなくても問題ないよ。君は軽い気持ちで良いさ。それに__」
「我はもう交えた。軽くだがな」
「…で、次は俺と。そんなに大層な剣だと自分では思わないんだがな」
「そこをなんとか頑張ってくれ。それでは無冠剣神殿、私は宿の用意をしてくるので」
「……鏡流、あのムカつく顔面に一発かます許可をくれ」
「景元のそれは叩いても治らんぞ?」
「……しょうがない…か」
文句は言いつつも炎秋は彦卿の前に立つ。
確かに試合はしたくない。
だが、炎秋は景元に大きな借りがある。
なんだかんだ言いつつも炎秋は彼の頼みを断れないのであった。
「彦卿…だったか?軽い試合形式で自分の師匠からの提案だとはいえ俺みたいなやつと本当に剣を交えるのか?」
「うん、だってお兄さん…強いんじゃない?」
そう言われた時、炎秋は内心少し驚いていた。
炎秋は彦卿の瞳の中に何かを感じ取った。
それがなんなのか、炎秋には説明できないだろう。
だが、近しいものを感じたことがある。
愛する女性から感じたことが。
鏡流は後ろから見ていたが、とても機嫌が良かった。
彼女もまた、彦卿の瞳から感じ取っていたからである。
それは彼女にとって、ある男から感じ取ったものと似ていた。
鏡流の視線の先には炎秋の顔が映っていた。
その顔は、笑っていた。
______________________
「双方、準備は良いな?」
「いつでも」「問題ない」
「では、始めッ!!!!」
始まりの合図と共に彦卿は無数の飛剣を炎秋に向けて飛ばす。
彦卿にとって炎秋は初めての相手、つまり情報を何も持っていない相手になる。
懐に潜り込むのは簡単だが、潜り込んだ先に何があるのかはわからない。
よって近寄らず牽制から入るのはある意味当たり前とも言える。
そんな飛剣を前にした炎秋は……。
「……へぇ」
そう一言だけで漏らした。
『なかなか悪くない』
そう思わせる何かを飛剣から感じた。
飛剣という選択肢というよりも、飛剣そのものにポテンシャルを感じたと言ったほうが正しいか。
思わず見惚れてしまった。
そんな炎秋だが、焦ることなく急ぐことなく。
とりあえず距離を取った。
「……え?」
そう彦卿が漏らしたのも無理はない。
瞬きする暇もなく、音もなく。
炎秋は一瞬でその場から姿を消し、10歩分後ろに出現した。
距離を取ったと言うより瞬間移動の域に近かった。
そんな炎秋は彦卿の方に顔を向けたまま、彦卿を中心として円を書くように左側に歩き始めた。
飛剣は依然、炎秋を目標に飛んでくる。
一番先頭、先陣を切った飛剣は炎秋目掛けて飛び込み。
炎秋の横を通り過ぎていった。
続く2本目、3本目…当たらない。
4本目も5本目も。
何本飛んでこようとも、飛剣は左右どちらかを通り過ぎていくだけ。
傍から見れば、少なくともそう見える。
彦卿は剣の量をどんどん増やしていく。
密度を高めていく。
それでも炎秋には当たらない。
無論、彦卿は当てるつもりで飛剣を飛ばしている。
それでも当たらない。
炎秋は、ただ彦卿を見つめながら横に歩いているだけだ。
そして彦卿は
(…このッ!!!)
その光景を黙って見ていることは出来なかった。
飛剣を中央だけでなく、両側面からも飛んでくるように仕向ける。
左か右、どちらかの飛剣を対処させれば隙が生まれる。
その隙を刺す。
そう考えての行動だった。
彦卿は状況を…炎秋を動かそうとした。
そう、よりにもよって無冠剣神を。
左右にも剣を飛ばす。
その発想は悪くはない。
だが実際に行動に移すと出てくるボロがある。
炎秋は最初に距離を取った。
つまり左右に剣を飛ばし炎秋に届くまで、少しだけ時間がかかる。
その間は中央から飛んでくる飛剣の密度は減る。
常人には隙にもならないその弱点を見逃すほど。
「隙あり…ってとこだろうな」
「ッ!?」
炎秋は甘くはない。
密度が減った瞬間、炎秋は彦卿の懐まで潜り込み喉元に寸止めとなるよう剣先を突きつけた。
彦卿は一瞬、目を閉じ状況を冷静に分析した後__
「参りました」
一言だけ告げた。
______________________
その後、用意が済んだと景元が戻って来た。
そしてそのまま金人巷の家まで戻ることに。
なんでか彦卿も付いてきた。
景元はどこか優しく、家の前までついてきてくれた。
「ここまで付き合う必要はなかったろ?それも将軍が弟子まで引き連れて」
「そう言われると少し困るんだが……私も君と久しぶりに会えて嬉しかったのかもしれないな」
「…そうか」
「それから…後日、龍女様をお連れして此処に来るよ」
「……わかってる」
景元とて不思議に思わなかったわけではない。
一度死んだはずの男が蘇る。
ありえないことだ。
炎秋に同行するように動いていたのは、炎秋が本当に本人か確かめるためという意図もあったのかもしれない。
「何かあったら気軽に連絡してくれ。二人には色々と世話になったからね」
「あぁ。…………………ん?」
今何かがおかしかった。
何かとんでもないことを言われた気がした。
炎秋はそう感じた。
「それじゃ____」
「待て、景元」
ゆえに、その後の行動は早かった。
「ん?どうかしたのかい?」
「……今なんて言った」
「何かあったら気軽に連絡して__」
「そこじゃない」
「二人には色々と世話になったから__」
「そう、そこだ」
炎秋は嫌な汗をかいていた。
『買い手のつかない家だから金は要らない。代わりに頼みを聞いてほしい』
思い返してみれば景元は頼み事が一つだなんて言っていなかった。
本当は聞きたくないが、炎秋は覚悟を決めて景元に問う。
「二人って…どういう意味だ……?」
「「「…………。」」」
その場の時が止まった。
誰も何も言わなかった。
まるで金人巷そのものの時が止まったかのように静寂が訪れた。
それは炎秋本人のある種の緊張から来るものであったが、そんなこと考えてる余裕は炎秋には無くなっていた。
怖いほどの静寂に包まれ汗が止まらない炎秋。
そんな静寂を打ち破るように隣から炎秋と腕を組むようにしてくる鏡流。
「……鏡流、何を隠してる?」
「我がお前に隠し事などするものか」
「景元、何を企んでいる?」
「僕達は親友だろ?企んでいることなんてないさ」
「彦卿、なんで目を逸らす?」
「な、なんのこと?」
炎秋はとりあえず、深呼吸をして気持ちを落ち着かせることにした。
吸って…吐いて…吸って…吐いて…。
2、3回繰り返した後一言だけ景元に吐き出した。
「……ハメたな?」
景元は何も言わずに、ただ笑顔を返してくるだけだった。
今一度、断言しておこう。
彼は完璧とは程遠い存在である。
______________________
景元は帰り道、先程隠れて見ていた試合を思い出していた。
炎秋は飛剣を歩くだけで避けていた。
それは真実であり、間違いでもある。
ただ歩くだけで飛剣が避けれるのならば、どれほど楽だろうか。
炎秋は歩く最中、細かく歩幅を変えながら…歩くスピードを微調節しながら飛剣が当たらないようにしていた。
結果、飛剣は炎秋の横を通過するように見えていた。
決して彦卿の精度が悪いわけではない。
炎秋は見切っていた。
金人門番の時と同じように。
飛剣がどの角度から、どのような速度で、どのような意図で飛んでくるのか。
それを完全に理解していた。
(その力、未だ衰えることを知らず…か)
景元は口元を緩めながら金人巷を後にした。
書き終えて思いました。
鏡流要素が少ない…?
ちなみに鏡流さんはずっと炎秋の後ろで後方腕組み彼女面みたいになってました。
鏡流ss…増えろ…増えろ…!!
誰か早く増やしてくれ…!!!