それでも俺は彼女が好きだ   作:じーじー

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話したこと

 

 

 

 

 

炎秋は人気の無い道を歩いていた。

『話がしたい』と言われた相手、御空と一緒に。

お互い何を言わずに歩くだけ。

お互いの足音が聞こえてくるだけ。

そんな中、前触れもなく歩みを止めた。

 

 

 

「一般的に公表されていないことではありますが…貴方には伝えておいたほうがいいと思ったことがありました」

 

 

 

そしてこちらを向いてそう話始める。

炎秋にはそれが御空が自分に会いに来た理由なのだと悟った。

 

 

 

「そんな顔してまで伝えなきゃいけないことがあると?

天舶司がそんな判断を下すような話なんて想像つかな_」

 

「関係ありません」

 

 

「…?」

 

 

「今から話す内容は天舶司とは関係ない、私が独断で貴方に話しておきたいと判断したものです」

 

 

「…なおさらわかんなくなった。どんな内容なのか、何故会いに来たのかも」

 

 

「これはいわば、私のワガママです。何かが起こってから伝えたのでは遅いから…だから、これは私の独断です。何かあったら私がすべての責任を負います。だから_」

 

 

「わかった」

 

 

「…え?」

 

 

「アンタの話を聞く。誰も責めない。誰にも話さない。それで良いんだろ?」

 

 

「…はい」

 

 

 

御空は少しホッとしていた。

独断で動いた。

とはいえ聞いてもらえるかもわからない。

だがそれでも聞いてほしかった。

御空には天舶司としての立場もある。

それでも御空は動いた。

だが、これで終わりではない。

ここからなのだ、彼女が頑張らなくてはならないのは。

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 

深呼吸をする。

冷静になるために。

目の前の彼も何も言わずに待ってくれている。

 

 

 

「……よし」

 

 

 

気合いは入れた。

ならば後は話すだけ。

御空は歩みを進める。

自身の身体ではなく、言葉を使って。

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

「伝えたい事は全部で3つです」

 

 

「聞こう」

 

 

「では…1つ目は今の金人巷の状態についてです」

 

 

「金人巷の?」

 

 

「結論から申し上げます。今の金人巷に普通の住人は一人の例外もなく残っていません」

 

 

「何を言って…いや、確かに言われてみればおかしな話だ。

俺が金人巷を見て回った時にも違和感があった。

周りからの目線に少しも怪しむような感じがしなかった。

いきなり金人巷の外れに住み始めたやつなんて怪しくてしょうがないってのに。

まるで普通を演じられてるような…」

 

 

「おっしゃる通りです。今、金人巷に居る者たちは…金人巷に居ることを命じられた者たちなのですから」

 

 

「…だとしても…誰が何のため……いや、それが2つ目と3つ目か」

 

 

「…はい、そういうことになります。

2つ目は誰がそんなことをしたかですが…なんとなく心当たりがあるようですね」

 

 

「ここに案内した奴はいけすかない腹黒将軍だったからな」

 

 

「ならば、3つ目は何故金人巷がそうなったかの理由です。

…呼雷をご存知ですか?」

 

 

「ソイツは…たしか鏡流が討ち取ったあの呼雷か。狐族を自由に操り、冷酷かつ残忍な獣の王…鏡流が討伐したのだと報告を受けたことがある」

 

 

「その認識で間違いはありません」

 

 

「その呼雷の部下が何かをやらかし_」

 

 

「呼雷が討伐されたという点を、除けばですが」

 

 

「……何?」

 

 

「生きています」

 

 

「何故?」

 

 

「『我々狐族を長きに渡り苦しめてきた存在を永久の苦しみに鎮める』ために」

 

 

「曜青か」

 

 

「はい。その結果として呼雷は、幽囚獄に幽閉されていました」

 

 

「…まさかとは思うが」

 

 

「先日、幽囚獄が歩離人による襲撃を受けました。その際に、幽囚獄より脱獄を…」

 

 

「行方をくらませたと。そんな歩離人の王様の王様が脱獄して次にやることといえば」

 

 

「仙舟への復讐。そして_」

 

 

「鏡流への復讐…か。話が見えてきたな。要は今の金人巷は…」

 

 

「鏡流の居場所を知った呼雷をおびき寄せて狩り取るための大きな罠。

貴方が鏡流と一緒に居ることを知っている者もごく一部の者たちだけ。

おそらく最後の砦なのでしょうね、貴方は」

 

 

「ハァ……」

 

 

「信じられませんか?」

 

 

「いや、信じよう。信じたくないが…」

 

 

「…ですが、貴方が今置かれている状況はそういうことです。

私としては…あまり、将軍様を責めないで欲しいのです。

貴方が仙舟から居なくなってから、将軍様より稀に貴方の話を聞くことがあります。

思い出すのも辛いような表情をしながら、それでも貴方を忘れまいと貴方の話を…!

将軍様にも将軍様なりのお考えが_」

 

 

「責めない」

 

 

「……。」

 

 

「最初に言ったろ、責めないって。

そりゃ『なんで言ってくれないのか』って思わないわけじゃない。

でもアイツはそれが一番良いと思って俺に伝えなかったんだ。

アンタも俺に伝えるのが一番良いと思って動いた。

悪意があってやったことじゃないことぐらいわかる」

 

 

「そう……ですか…」

 

 

「仙舟【羅浮】天舶司所属、御空殿」

 

 

「…っ!」

 

 

「貴殿のその報告、しかと受け取った。貴殿より受け取りしその言葉、決して無駄にはしないことを誓おう」

 

 

「…はい…!」

 

 

「…もっとも、今の俺は立場ある人間じゃないけどな。こう言うと気合いが入るんだよ」

 

 

「…はい…?」

 

 

「え?」

 

 

「お言葉ですが…炎秋殿…貴方のかつて羅浮での役職は無くなっておりません」

 

 

「なんだって?」

 

 

「それどころか、元剣首である鏡流…他の仙舟の将軍にも認められており…」

 

 

「…認められており?」

 

 

「立場としては殆ど剣首と変わりないほどになっております…」

 

 

「……ねぇぞ」

 

 

「…え?」

 

 

「そんなこと一回も聞かされてねぇぞ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

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