魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
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ではよろしくお願いします。
〜陸飛サイド〜
「師匠? 何してるんですか? 」
目の前に師匠がいた。その顔は俺が尊敬している師匠の笑顔で。俺に向かって何かを言っている。でも聞こえない。でもそんな筈はないのだ。聞こえない距離じゃない。しかしそう思った時突然周りが暗闇に包まれた。そして声が聞こえる。
【師匠より先に死ぬ事など私は許さんぞ陸飛。まぁ……弟子を殺そうとした私が言うことじゃないがな? ……フフフ。最後に私に見せて見ろ。お前の守るという覚悟と信念を。そして私達が目指した理想の管理局……その未来を私に見せてくれ。さらばだ陸飛……】
「俺を殺そうとした? 何を言っているんですか? 師匠!? どこにいるんです!? 待ってください!? 」
師匠の声だ、師匠がそう言っている。でもここは暗闇の中だ。何処にも師匠の姿なんてない。どこにいるのか分からない。それに言っている意味が理解できない。いつ師匠が俺を殺そうとしたのか……しかしその時だった。突然目の前に光が溢れこの空間を照らし、崩壊させていく。そして俺は目を覚ました。
「うっ……俺は……生きてる? 」
俺は目を覚ました。でも意味が分からなかった。極式を撃てば確実に俺は死ぬ、それは避ける事が出来ない事だった筈だ。なら何故生きているんだ。そう疑問が俺の頭を駆け巡る。しかし、横を見ると師匠が俺の真横で倒れていた。
「師匠……どうしてこんな所で…………」
俺はこの異様な光景にますます訳がわからない。攻撃を撃ち合って、この距離で倒れたなんて事はあり得ない。だとすれば師匠は死んでなかったという事だ。俺は殺す気で極式を撃ち込んだ。だが極式を撃つ瞬間、昔の……俺の好きだった頃の師匠の笑顔が走馬灯の様に頭に浮かんだ。だから俺は無意識に力加減を緩めてしまったのかもしれない。その所為で師匠は死なず俺の近くまで来たのだと。
「師匠……っ!? 」
うつ伏せの師匠を仰向けにし、顔を見ようとした時だった師匠の胸に穴が空いていたのだ。それだけじゃない、師匠の右手は血だらけだ。まるで自分で何かを抜き取った様な……そう思った時懐かしい感覚が俺の身体を駆け巡った。胸の辺りから身体中に行き渡るように巡る物。血液のように循環し、自分の意思でそれを集中させることも出来る。
「魔力? どうして……俺にはもうリンカーコアなんて……あ! まさか……そんな、冗談……だろ? 」
自分に流れる物が魔力だと気付いた瞬間俺の中で全てのピースが揃った。俺は生かされた……他ならぬ師匠に。今思い出した。俺はしっかりと聞いていた。あれは夢なんかじゃなかったんだ。結局俺は師匠を助ける事が出来なかった。逆に命を救われてしまったなんてとてもじゃないがシャレにならない。それで師匠が死んでしまってはやりきれない。
「クソっ!?……ちくしょぉぉ……俺はまた救えなかった!!! また貴方を殺した。でも……これは貴方に救って貰った命だ。絶対に無駄にはしない。師匠、ありがとうございました。やはり貴方は俺が尊敬する最高の師匠です。……師匠……安心して眠ってください。貴方の目指した物……貴方が見たかった物……必ず俺が……俺が」
◇
〜クロノサイド〜
「クソっ!? ……このままじゃミッドは終わりだ…………」
僕はゆりかご撃墜ポイントで船を複数配備させ、ゆりかごが浮上してくるのを待っていた。しかし作戦は大きく崩れゆりかごは浮上どころか降下し始めている。どうやらゆりかごや周りのガジェットを管制していた戦闘機人がこちらの作戦に気づき手をうっていたようだ。この状況を打開しようにも今のゆりかごは魔導師程度の攻撃など外から一切受け付けない。中に入ろうにもそれでは入った魔導師が危険に晒されるし中では魔法は使えない。もはや完全に手詰まりだ。こんなんじゃゆりかごの中で犠牲になった陸飛に申し訳が立たない。陸飛が生存しゆりかごの中ではやて達を助けたのは脱出したはやて達の報告で僕も知った。実に残念な話だった。当然他のみんなもだろう。せっかく生きていたと思った人間が目の前で今度こそ確実に死んだのだから。
「陸飛……すまない…………」
「……提督ともあろう人がもう諦めたんですか? まだ早いと思うのですが……そんな情けない事言うのでしたら奥さんに言いつけますよ? 」
「……陸……飛……なのか…………」
「ええ、ちょっと……この世にまだ未練がありましたので」
突然僕の前にモニターが開いた。聞き覚えのある声、そしてこの言い草……映像は乱れていて分からないが間違いなく陸飛だ。どうして生きているのかは分からない、でも彼の生存はとても喜ばしい事だ、みんなも喜ぶ。しかし今はその喜びも浸っている場合ではない。ゆりかごは今も止まる事なく下に沈み続けている。このままではいずれ…………
「陸飛今どこにいる? ゆりかごを止める方法を考えなければならない。君にも力を貸して貰いたい。その身体ではしんどいだろうが頼む。それから六課のみんなに生存の報告をしてやれ。みんな心配しているぞ? ……ん? どうかしたのか? どうして黙っているんだ? 」
「……いえ、俺の生存は報告しなくていいです。それより手はあります。俺を信じて頂けるのなら」
手はある、その言葉に僕は希望を持った。他ならぬ陸飛の言葉だ。僕が信頼しな訳がない。でもこれは陸飛の事を知っているからと言う物ではない。彼がこれまでやってくれた仕事の実績を考えても信頼するには十分だからだ。この状況では知っている仲間の信頼だけでは運命は任せられない。しかし最初の言葉が僕は引っかかった。生存報告はしなくていい、一体何をするつもりなんだ……と。
「君の事は信頼している。でもみんなに生存報告をする時間ぐらいあるだろう? 通信でも入れればいい。それとも……生存報告をしてはマズイような作戦なのか? 僕は誰かを犠牲にする選択なんて認めないぞ? 陸飛……死ぬ気じゃないよな? 」
「……その……フフ、提督そんな気はありません。俺だって生きていたいんですから。取り敢えず提督はそのままゆりかごがポイントに上がるまで待機していてください、後は俺がやりますんで「ダメだ」……ダメ、とは?」
「言ったままの意味だ、陸飛? 僕は君とは長い付き合いだ。信頼もしているし君が作戦をしくじる事なんてある訳ないと思っている。だが死ぬつもりの人間をこのまま行かせる事は出来ない。僕を見くびるな、それくらいわかる」
僕がそう言うと陸飛はため息をつく。いつもの事だが陸飛は何でも一人でやろうとし過ぎだ。たまには僕に愚痴の一つでもこぼしてくれてもいい。彼をこのまま行かせれば恐らく帰ってこない。
「では他に手はありますか?」
「手があるないではない、もう君にばかり危険な目には合わせられないと言っているんだ。どうしても行くと言うのならその作戦、一から説明してみろ。君が確実に帰ってこれる方法ならば僕は許可する」
「……わかりました。」
陸飛は承諾した。そしてモニター越しで作戦の内容を説明していく。しかしそれを聞いた時僕は背筋が凍る気持ちになった。いや、それ以前にそんな事が出来るのかどうか……陸飛一人にしか出来ないし誰かを近づける訳にもいかない。完全に陸飛任せになる。
「くっ……やっぱり、ダメだ……それは失敗したら陸飛……君は助からない。だから許可する訳には…………」
「提督、俺はみんなの為に出来る力を使いたい。今の俺にはこの状況を打開する事が出来ます。何も最初から諦めて死ぬ気で行くわけじゃない。気持ちは帰って来る気でやる。最後まで俺は諦めない。俺を……信じてください! 」
僕は陸飛の目を見て頷いてしまった。みんなに何の相談もせずに。これに失敗して陸飛が死んだらみんなに殺されるんだろうな〜と僕は心の中で恐怖した。
◇
〜キャロサイド〜
ゆりかごに潜入したチームと合流し私達はそれぞれ出せるだけの知恵を絞ってこの状況を変える手を考えていた。でも何も思いつかない。全員が全員頭を抱えるだけ。陸飛さんが生きていたが犠牲になった、と言う情報はもう管理局全員の耳に届いている。陸飛さんはまた無茶をした。私が介入する余地もなく……今度こそ失われてしまったのだ。なのはさん達が確認したのだから今度は間違いない。しかし不思議と涙は出て来なかった。この戦闘が始まる前に沢山泣いた所為だろうか? いや、違う。ヴィヴィオが代わりに泣いているからだ。ヴィヴィオは八神部隊長が陸飛さんについての報告をしている時タイミング悪く起きてしまった。それで陸飛さんが死んでしまったと言う事を知りもうずっと泣き叫んでいる。正直ヴィヴィオが泣いてくれるから私は泣かずに耐えられる。陸飛さんが守ったヴィヴィオをこれ以上泣かせるわけにはいかないから。私はそう心に決め再び考え始める。
「うわぁぁぁああああああああん……ひぐっ、うっ、うっ……お兄さぁぁぁぁぁあああああああん!? 」
「ヴィヴィオ……ごめんね、守れなくて……ママ、お兄さん守れなかった……ヴィヴィオごめんね」
なのはさんが泣き叫けぶヴィヴィオを抱きしめ何とか落ち着かせようとするが一向に泣き止む気配はない。それ程までにヴィヴィオにとって陸飛さんの存在は大きかったのだ。なのはさんにしがみ付き力強くなのはさんに回す力が強まる。
「うわ゛ぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!! なんで!? どう゛してぇぇぇぇぇえええええええ!!! 」
向こうの方ではギンガさんが機能停止したガジェットの残骸に拳を叩き込み何やら近づき難い状況になってしまっている。と言うか……怖い。軽く半狂乱している。声をかけたら一緒に殴られそうな程に。
「アレは外から破壊できないですですか?全員で攻撃すればあるいは」
「リンさんそれは無理や、ゆりかごの装甲は私ら魔導師程度がいくら集まっても破壊しきる事なんて出来へんよ。でもかと言ってこのまま手をこまねいている時間なんてないし……ん? ……あれ? 」
「どうしましたですです? 何か思いつきましたですですか? 」
「い、いや……止まって……へん? 」
はやて部隊長が突然ゆりかごを見てそう答えた。私達もそれにつられてゆりかごの方を見る。するとさっきまで下に沈み続けていたゆりかごの動きがピタリと止まっていた。私達は全員それを見て必死に何故止まっているかを考え始める。そんな時だった。ゆりかごを中心として黒の魔力光で巨大な魔法陣が展開された。しかもかなり広範囲迄魔法陣は広がっている。何せゆりかごから距離を取っている筈の私達の所まで魔法陣が広がっているのだから。
「な、何!? これは……一体誰が!? はやて! 」
「ロングアーチ!? 何が起きてるんや? 急いで状況を! 」
「ゆりかごの真下から見た事のない術式が展開されています!? 攻撃や防御の術式じゃありません、一体これは……っ!? 解析終わりました、きょ、強化魔法です! それもそこら辺の単純物なんかじゃ……」
「っ!? な、なんやこの揺れ!? 」
ロングアーチからの報告がきたその瞬間、私がいる場所が揺れ始めた。そしてよく見なければ分からないがゆりかごはゆっくりと少しずつ上へと上がって行く。私達はそれを見て驚きで固まっていた。しかしそんな中リンさんは涙を流し始める。私達は理由が分からなかった。
「陸……ちゃん……生きて……いるです? 」
「え!? リンりん、今のどう言う事!? リッ君が生きてるって」
「こ、この術式を扱える人なんて世界中探しても陸ちゃんしかいないですです! この魔法は対象の強度を上げる為の物でも威力を高める為の物でもありませんです。これは筋力強化の魔法、それも陸ちゃんオリジナルの……」
「で、でもそれっておかしいやろ!? 鈴木君は魔法はもう使えん筈や、仮に生きてたとしてどうやって魔法使ってるんや? 」
みんなが混乱している中ゆりかごの方へ向けウイングロードが伸びた。みんなそれに気がついて誰の仕業かを確認する。しかしそれは言うまでもなく…………
「ギン姉!? ダメだよ!? どこ行くの!? 」
「ギンガあかん!? 戻ってき! 」
それを行ったのはギンガさんだ。どれだけだけ呼ぼうが叫ぼうがギンガさんは振り向きもしない。ただゆりかごの方へ全速前進だ。恐らく陸飛さんの名前を聞いて飛び出して行ったのだろう。
「フリードお願い!! 」
「キャロ!? ダメ、戻って! 」
ギンガさんにつられる様に私もフリードに乗り後を追う。陸飛さんが生きているかもしれないのだ、だから今度は私が陸飛さんを守る、もう私のいない所で陸飛さんが傷つかないように。
次回もよろしくお願いします。