「先生!!セリカちゃんが拉致されたというのは本当ですか!?!」
深夜のアビドス高等学校、作戦会議として利用しているいつもの部室にはアヤネの驚嘆とした声が響いた。
普段人のいない寂れた闇夜を佇む教室も、異常事態により緊急収集を受けたことで騒ついていた。
「ああ、当たりだ。見ろ――現在進行形でセリカのポイント地点が一定の速度で砂漠地帯へと走ってやがる。態々こんな真夜中、好んで砂漠を走る奴でもないだろ」
先生の声は冷静で、端末から表示されたホログラム映像を四人に見せる。
赤い点滅は、もう既に何十キロも市街地から離れていた。
「先生……確認だけど、相手はまたヘルメット団だったり……?」
「いや、そこまでは不明だ。俺も当初、残党が恨みを買って卑怯なやり手を…と考えたが、違う組織がセリカを狙った可能性もある」
セントラルネットワークの権利は確かに万能ではある。然しそれは生徒の名前を検索してこそ表示されるのであって、正体不明の生徒…つまり、名前の知らない生徒を検索することは不可能なのである。
違う組織に関しても、黒幕がカタカタヘルメット団がやられたのであれば、次に違う戦略を投資すれば良いだけ。
アビドス生徒の情報に関しても、カタカタヘルメット団が提示した情報を黒幕が次の戦力に共有すれば良いだけの話である。
或いはカタカタヘルメット団が協力、同盟を結んでいた場合、恨み辛みを買ってアビドスの生徒を…なんて憶測も可能だ。
「……学校を襲うだけじゃなく物足りなく、今度は人質を取って脅迫しようとしてるのかな……尚更、許せない」
「人質……だけとは限らないけどな」
卑怯な手段にシロコは奥歯を食い縛り、苛立ちの顔色に染まっていく。
自分達に勝てないから、今度は一人になったセリカを狙って、手の届かない場所へ連れ去ろうとしていることだ。
対する転弧は、複数の可能性を頭に入れていた。
「あのさ、先生。緊急事態なところ悪いんだけど、質問しても良い?」
「なんだ、ホシノ」
「どうしてセリカちゃんの居場所を特定できたの??」
それは、誰もが思った疑問だ。
セリカが不在だと知ったのは奥空アヤネ――最初に連絡を入れた相手が転弧先生だ。
学園で寝泊まりしている先生に連絡を入れるのは…理解できる。そこからの指示も、流石は大人だと思う。
ただ、行方不明のセリカの居場所を特定するのは至難の業だ。
況してやアビドス砂漠の全域情報に融通してる奥空アヤネならいざ知らず、アビドスのことを全く知らない転弧先生が、セリカの場所をピンポイントに特定できるのは、普通ならありえない。
然も電源が切れてる状態なので、調べようがない。
セリカを助けることは勿論……だが、こればかりは譲れない。
「幾ら先生でも、セリカちゃんの位置を特定なんて、そんな簡単なことじゃないと思うけど……」
「……良い質問だな」
その言葉は、良い方か悪い方か。
含みのある返事をしながら、端末を操作していく。
「アヤネの連絡を聞いた後、即座にア……シッテムの箱、要するに俺の使ってるこの端末な?連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスして、今回だけセリカの居場所を特定した。アヤネが言ってた電源がオフになってたって話も…恐らく一人になった機を狙い、何らかのトラブルで切れちまったんだろう」
「連邦生徒会の…!?そんなことができるんですか!?」
「俺は連邦捜査部シャーレの顧問だ。そしてこの権限を一時的に使えるのは俺だけ……流石に私利私欲では使わねえよ」
「でもさ先生、それバレたら始末書どころか厳重な処罰を受ける可能性だってあるんだよー?」
「ああ、それで?」
「…んぇ?」
「下手すりゃセリカの命が危険に晒されるってのに、躊躇う道理ってあんのか??アイツがもし今でも助け求めてたら、同じこと言えんのかって聞いてんだが?」
いつになく、重圧を含む低い声を発する転弧先生に、ホシノは思わず口を噤むんでしまう。
先生の何かの地雷を踏んだのか、或いは疑い深さのあるホシノが失言をしてしまったのか、冷や汗を垂らしてしまう。
「取り敢えず第一優先は、黒見セリカの救出。これをどうするべきかだ――その為の準備と今自分達にできることをやる。違うか?連邦生徒会が何かしら俺にペナルティ付けるってんなら、その時はその時だ。今やるべきことの為に、言いつけを気にするガキがいるかよ」
俺の知ってるヒーローは、人命救助を第一優先としていた。
俺の知らないところでも、ヒーローってのは如何にどう動くか、ゲームの攻略作戦みてぇに、皆んなで話し合って決めたんだろうな。
だからこそ、群訝山荘や蛇腔病院の対処も完璧だったんだろう。
それに連邦生徒会のセントラルネットワークの権限を救助活動に使うという行為。緊急事態の時にこの手の権限を使わなければ、手遅れになってしまった場合誰が責任を取るという話だ。
相手が卑怯な手段を使うのなら、こっちは裏技で対抗だ。
それに……俺は『きっと誰かが助けてくれる』『きっとなんとかできるから』という他責願望な大人にだけは、絶対なりたくない。
それは、俺の大っ嫌いで、壊したかった世界そのものだからだ。
「……ごめん先生、そんなつもりで聞いてたわけじゃなくってさ」
「ああ、良いよ。怒ってるわけじゃねぇから…」
…嘘だ。
と、ホシノは咄嗟に心の中で呟く。
先生は無意識かもしれないけど、私が見た瞳は、私の知ってる先生の眼じゃなかった。
今回だけじゃない───借金の話をした時の先生の眼は、顔は、灰色に染まっていた。
今のは、遠い憎しみを見ているような、そんな色が灯っていた。
なんだろう……なんとなく、私に向けてじゃない。何かを見据えた瞳の色だった。
怒り、憎しみ、嫌悪、悪意、微かに残る色が、先生が普段見せるさり気ない顔と混ざったような……そんな、歪な感覚だ。
でも……なんだろう…この眼にどことなく、懐かしさを感じるのは…。
「でも待ってください……確かここは、以前カタカタヘルメット団の主力が集まっていた廃墟のエリア…!!」
「知ってんのか?」
「はい!以前からカタカタヘルメット団に対抗する為に、情報を収集し解析していたのですが……特にこの廃墟エリアは、その主力が集まっていると確認できた場所なんです…!治安が悪く、住民もいない、チンピラが集まる隠れ蓑にはうってつけの為、マークはしていたんです…!」
おいおい、凄いぜアヤネ。
お前…そんなポイントまでマークして把握してたのか。
情報収集、分析能力、解析思考は目を見張るものがある。
連合には隠密や偵察に向いてる仲間こそいたが、アヤネほど情報能力に優れた人材はそうはいなかった。
もはや頼もしささえ感じる。
「じゃあ、やっぱりカタカタヘルメット団の仕業…ですか??」
「可能性は高くなったな。アジトをブッ潰したと思わせて、実は数箇所自分達の拠点があった…なんて話もザラじゃねえ。特に指名手配食らってる奴らや、恨みつらみ買ってる反社会勢力に於いて、拠点を替えるなんてのは尚更な」
これは俺たち敵連合にも言えることだ。
先生がいなくなり、戦力を分散し警察やヒーローから行方を暗ます放浪生活に於いて、拠点を作っては捨てての繰り返しだった。
解放軍と組む前など、それこそやれオンボロのプレハブや廃墟、空き巣、工場など拠点を移り変えていた。
なのでアビドス廃校対策委員会と一緒に拠点へ襲撃した際、使い勝手の良さそうなアジトだと思って物色していたな。
とはいえ、拠点を転々と移り変えてるのは自分達以外殆ど知らなかった為、いざ自分達と敵対してる集団がそうなら、尚更気を引けなくなってきたな。
「俺たちが戦った相手が同一の組織なら、集団は思いの外いるってことか。使い捨て前提の駒かと思いきや、氷山の一角だったってことか?まあ、どっちにしろ……セリカを奴らの好きにはさせないがッ───無論、覚悟は決めてるだろ?」
俺の言葉にシロコとノノミは意を決した瞳で頷き、アヤネは親友を拉致されたことに対する憤慨の瞳を光らせ、ホシノはゆっくりと目を細め頷いた。
「こうなった以上、悔やんでも仕方がない。大事なのは次の最善たる一手が重要だ。敵対する奴らが今後とも俺たちに嫌がらせをしてくるってのは、もう反撃する時に話したろ。だからこそ、覚悟を決めなきゃならねェ」
覚悟――これは、アビドス廃校対策委員会が、カタカタヘルメット団に襲撃する前から固めた結束だ。
自分達がカタカタヘルメット団に反撃をする行為――それは黒幕に対する宣戦布告とも言える。
自分達が勝利を収めれば、いつしか敵対勢力は痺れを切らし、自分達を襲うだろうと。
それは転弧先生が教えてくれたことだ。
自分達の行動が、如何にして影響を及ぼすのか。
自分達は常に、理不尽に対して勝ち続けなければならないと。
自分達の決した覚悟とは、生半端ではないことだと。
こうなることが起きて、悲劇に悔やむのではない。
如何なる理不尽に対しても、折れることなく立ち向かうこと。
転弧先生の言ってた『それなりに覚悟は固めておけよ』には、色んな重みのある言葉が含まれていたのだ。
「なら、やる事は一つ――勝つぞ。そんで…アイツらの思惑、ブッ壊してやろうぜ」
先生の言葉に、自分達の心が鼓舞するように奮い立つ。
絶対に勝って、セリカを助ける。
全員が、一つの目的の為にアビドスは動き出す。
ゴトン、ガタッ 、ゴトン……ゴトン!!
「痛ッ …!?うっ……こ、ここは…?」
大きな揺れに、気絶から目を覚ましたセリカは、重い瞼を開く。
意識を取り戻した途端、全身に走る痛覚が働き、痛みに表情が歪む。
知らない空間、知らない暗闇、何故か揺れている。
辺りを見渡すも、光が届かない為、上手く状況が掴めないでいる。
「力が入らない……って、あれ??私、縛られてる!?」
両手共に体を縄で縛られており、身動きも自由に取れない状況下。
どうして?という不安と焦りと共に、次第に記憶が蘇ってくる。
(そうだ……私、確かヘルメット集団からFlak41改の砲弾を喰らって、それで…倒れちゃったんだ……。って、待って…私、じゃあ今ここって…!!)
集団リンチにより気絶を喰らい、
身動きも満足にできない拘束状態、
暗闇の中で揺れる空間、
目を凝らせば部屋には積み上げられた段ボールが重なっているのが見受けられる。
こんな非常事態に於いて直ぐに見解できる答えは
――人身輸送型トラック。
つまり、誘拐。
トラックの荷台に積まれ、拘束状態にされてることにより、現在の行方は不明。
ここが何処なのか、
気絶してからどの位の時間が経っているのか、
そもそもどこへ連れて行かれるのか、
仲間たちはどうしてるのだろうか、
全てが謎に包まれたままだ。
「此方ジャリジャリヘルメット団――現在アビドス郊外。ポイント地点から既に260km経過」
「!?」
などと不安で心が埋め尽くされていくなか、組織の一端の声がトラックの荷台越からも聞こえた。
通信機器で何かを会話している様子は解るが、内容は上手く聞き取れない。
「大丈夫だって、クライアントの意向には必ず応える」
「いやあ、カタカタヘルメット団が潰れて一時期は焦ったけど、まさかウチらに仕事が舞い降りてくるなんてねぇ」
アハハハハハ!!と、嘲笑うヘルメット団に、ふつふつと怒りが湧いてくる。
でも同時にこんな奴らに捕まった自分の情けなさに、悔しさで押しつぶされそうになる。
そんな自虐に耽っていると、ふと先生の言ってた言葉を思い出した。
『今回俺らが対峙したカタカタヘルメット団――大方、ブラックマーケットの闇バイトで釣った即席の使い捨て前提の駒だろうな』
――ッ てことは、コイツらも…先生が言ってた使い捨て?
闇バイトで雇ったチンピラ集団?
いよいよ、黒幕がアビドスを付け狙っている線がより濃厚になってきた。
そもそも、何故よりによって私を狙ったのだろう。
私を付け狙っていたという事は、情報は既に共有されていた?筒抜けだった?
カタカタヘルメット団とどういう関係だったの?
ここで更に先生の言ってた言葉を思い出す。
組織というのは単純ではなく、複雑な構造になっている。
蟻の巣のようにデリケートになっている。
自分達が想像してるように、単体組織で成り上がってるほど、簡単ではないということだ。
……ここにきて、先生の教えが頭の中で過る。
それが、自分達の身の為になって教えてくれてたというのも、今になって漸く実感が湧いてきた。
「……そもそも、ポイントから260kmって……え?待って、嘘でしょ…。まさか……」
もうそんなに時間が経っているのか。
自分が気絶した市街地からトラック輸送で……もう何時間も経っている。
然もアビドス郊外に攫われているとなれば、電波は届かず通信も不可。
辛うじてモモトークで連絡を取れるという選択肢も、奇しくもここで潰えたのだ。
「アビドス郊外の砂漠に、もう何時間も経ってる……どこにも連絡が取れないってことは………辛うじてここから脱出できたとしても…どうやって皆んなに知らせれば…!!どうやってどこかも分からない場所から皆んなの所に帰るっていうのよ……!!!」
ただならぬセリカの、積もり積もった悲痛の叫びが轟く。
運転席の一端に気付かれようと、そうじゃなかろうと関係ない。
そんなの知ったことじゃない。
「どうしよう、皆んな……心配してるのかな……このまま、どこかに埋められちゃうのかな。誰にも気付かれずに……」
俯き、仲間たちのことを思い出す。
のんびり眠たげで、昼寝ばっかりしているホシノ先輩。
アビドス廃校対策委員会の為にと、嗜好品や植物とかを買って、置いてくれるノノミ先輩。
偶に喧嘩っ早いし危なっかしいけど、それでも頼りになるシロコ先輩。
アビドス中等部の頃から親友で、一緒に過ごしているアヤネちゃん。
皆んな、今頃どうしてるんだろう。
大好きな、アビドス廃校対策委員会の顔を思い出す。
一人一人、とっても大切で、大事な仲間だから。
……先生も、心配してるのかな。
ううん、そんな訳ない、か。
だって私…転弧先生にいっぱい酷いこと言っちゃったもん。
アンタなんか大っ嫌いだって、死んじゃえーって、言っちゃった…。
……先生は、私のこと信じてくれようとしてたのに。
私は、先生のこと信じなくて…挙句、自分の変な意地で酷いことばっか言って…それなのに今更、助けてなんて…。
「連絡も途絶えて、私も他の子達みたいに、街を去ったって思われちゃうのかな……」
借金返済に悩み、
治安が悪化して、
環境の悪い砂嵐現象、
アビドスに未来はないのだと、皆んな置き去りにして消えていった。
皆んな、誰も手を差し伸べてくれなかったから、私たちが集まった。
だから…誰かが消えたとしても、不思議ではないのだ。
こんな借金塗れの学園を見捨てたところで、それは当然なのだから。
でも……私、裏切られたって思われるのは、それだけは嫌だな。
だって、その為に毎日コツコツ、アルバイトしてお金を貯めて…借金返済に充てて…それなのに、皆んなに何も言えずに、さよならなんて…!!
「うっ……う゛う゛ッ ……!!!うぅぅ…っ!いやだ…!みんなとお別れなんて、そんなの絶対に嫌だ!!!!」
嗚咽を漏らし、瞳から段々と大粒の涙が溢れていく。
私は、皆んなと一緒に過ごしたい。
皆んなの場所に帰りたい…!!
でも……私にどうすれば――
「ん?あれ?あの車両の上に止まってるの……誰?」
――え?
末端の疑問的な発言に、絶望に打ちのめされていたセリカの涙腺が止まる。
「なぁ、シロコ。将棋って知ってるか?玉を取れば勝ちなんだぜ??」
「ん、知らなかった。私、将棋詳しくないから…それってどういう意味?」
「要するにセリカを救出すりゃあ俺らの勝ち――相手は肝心のセリカ様とやらにご執心だ。だから、それを奪い取り戻す。どうだ、単純だろ?」
「シロコ先輩!!確り捕まっててくださいね!!!!」
黒い車両の上にはシロコが一人、ドローンを携帯したまま低い姿勢で態勢を維持している。
ハンドルを握りながら運転しているのはアヤネ、助手席には転弧がゆっくり座り寛ぎながら、ヘルメット団を睨んでいる。
「待て、この状況で我々を追尾する車両……まさか!?」
「ん、待っててセリカ。絶対助けるからね――」
――――――――――――――――――――――――
「運転上手ェなアヤネ、お前どこでドライビングの腕鍛えたんだ?」
「アビドス郊外の砂漠は交通機関は適用されませんから…!!それに、私なら車の運転だけじゃなくヘリの操縦も可能です…!!」
「………グラセフか?」
「すみません、意味がわかりません…ッ !」
セリカが攫われているヘルメット団のトラックと合流する少し前に遡る。
無人の砂漠を黒い車両で突っ走りながら全速力で操縦しているアヤネの顔付きはいつになく険しく余裕がないものの、テクニックはスピナーとは比較にならない程に手慣れており、フラつきも荒々しさもなく、落ち着いている。
オマケに高校生がヘリも操縦できるときた。
将来有望の金の卵は、俺の予想斜め上を行っている。
「それで先生、計画はさっき話した感じでいいんだよね?」
「ああ、問題ない――」
作戦はこうだ。
相手のトラックに合流すればシロコが車両の上に乗り、相手がシロコを認識する。
ドローンを携帯させることで、精密に火力支援による射撃を行えるからだ。
だがそれはあくまで相手にそう思わせる為のブラフ――本命は相手の進行を邪魔する為の偽装だ。
今回セリカが攫われている為、救助を第一優先と考えるなら、下手な動きは却ってセリカを危険な目に遭わせる要因となると踏んでいる。
「弾薬も体力も温存しとけ。そんで、シロコはセリカを輸送してるトラックのフロントガラスを割るだけで良い。下手な火力は要らない」
「それは、どうして??」
「操縦席は手を離すことができない、だから迎撃は無理。だが相手も不測の事態に備えて隣に用心棒は付けてるはずだ。シロコはそっちの相手をするだけで良い。それに輸送トラックだけじゃなく、複数の戦闘車両が付き添ってる可能性もある。それはノノミとホシノが右翼と左翼での一掃として任せる」
「その後はどうやって助けるの?」
「俺に任せろ――その後はお前達を信じてる」
信じてると投げられたシロコ、アヤネ、ノノミとホシノは、思わずキョトンとしてしまう。
対する俺は二人のことなど気にせずゆっくりと、懐にあったカロリーバーを頬張りながら、夜明けの空を眺めている。
すると小さなトラックの影が微かに見えてきた。
「………そろそろ付くな。準備はいいか?」
「うん、任せて」
「はい――待っててね、セリカちゃん」
「お掃除の時間ですよ〜〜⭐︎」
「さてさて、可愛い後輩ちゃんをオイタする悪い不良達にはお灸を据えようかね〜〜」
―――――――――――――――――――――――――――
「アイツは……アビドス廃校対策委員会だ!!どうしてここに!?!」
ジャリジャリヘルメット団は、シロコの姿を見るなり驚愕の声を曝け出す。
信じられない。
作戦は完璧だった――1人になった黒見セリカの隙を狙い、火力で制圧し、気絶したところを拉致。
電波も届かない場所なので、位置情報の把握も不明。
にも関わらず、自分達の前にはカタカタヘルメット団を完膚なきまでに潰した廃校寸前の勢力が、自分達の前にいる。
「えっ?アビドス廃校対策委員会……?」
絶望に染まり、諦念と反対のアビドスに戻る望みを、二つの矛盾に葛藤しながら抗っていたセリカの瞳に希望が灯る。
そんな、どうして?
位置情報も、電波も届かない。
真夜中での襲撃で誰も気付かなかったのに、助ける手段なんて……
「どうしてここが解った!?発信機でも付けられてたか?いや、何にせよ……おい!戦闘車両――援護射撃だ!撃て!撃てェ ───!!」
――ドゴオォォオン!ボガアァァアン!!
砲弾がコチラに向かって火を放つ。
重々しい砲弾が戦車から放たれ、アビドス廃校対策委員会の車両を狙い撃ちされるが、アヤネのドライビングで的確に避けていく。
砂漠地帯――捨てられた線路、凹凸する砂丘、この状態で走行するのでさえ下手すれば車が横転しても可笑しくないだろうに、的確に避けては爆破の影響を受けながらもギリギリの形で運転を駆使している。
「ははっ!やっぱ護衛いるよなぁ!!戦闘車両は二機か、輸送トラックの後方で待機……立ち位置的に向こうもよく解ってんなぁ、だるい!よし、シロコ…ドローンでまずは威嚇射撃だ。相手の出方を見るぞ。アヤネは先回りでトラック輸送車の前を防ぐように走行だ」
「ん、了解」
「了解です!!」
転弧の的確な指示に、シロコとアヤネは軽く返事をする。
火薬を詰めた弾薬は、スイッチ一つで作動する。
ドシュルン、ドシュルルン─────ドガアァアァン!!!!
小型ミサイルのように、放たれた弾薬はトラックを敢えて狙わず左右に衝突し、爆発を引き起こす。
トラックは大きく左右に揺れ、相手の操縦席も直撃しない為にと運転するのに精一杯だ。
「なっ!?こいつ……私たちの邪魔を――!!」
「邪魔は貴女達」
「!?!」
ダン!ダンダン!ダァン!!
――パリィン!!
数回の射撃の元、フロントガラスが割れた。
ドローンの威嚇射撃は、敢えて砂漠に火力を打ち込むことで砂煙を巻き起こし、視界を遮る。相手の視覚が遮断したことで心置きなくフロントガラスを破る。
防弾ガラス製になっていたにしろ、何度も銃弾を受ければヒビが入る。特にシロコのアサルトライフルにかかれば、割れることなど些細なことだ。
「おい!!なにボサッとしてる!!早く迎撃しろ!!」
だが砂埃もその場凌ぎの期間だ。
砂嵐とは違い直ぐに視界が晴れれば、問題はない。
況してやヘルメットを装着しているので、砂埃による目潰しは効果などない。
「てンめぇ!!よくも――!」
「…………」
相手の怒りの銃口には目もくれず、シロコは一瞬だけ先生を一瞥する。
――先生の指示はない。
えっと、その場合は実力行使で護衛を気絶させれば良いんだっけ。転弧先生は、必要な時は指示を出すから…。
するとシロコも直ぐにリロードをして構える。
だが相手の護衛も黙ってはいられない。戦闘車両は自分達に狙いを定め、標準を向ける。
…ああ、待ってたよ。
「よしっ、アヤネ!減速!!」
「えっ!?あ、はい!!」
まさかこの走行で減速指示を送られるとは思ってもいなかったアヤネは、驚きつつも直ぐにブレーキを軽く踏み、減速する。
先回りしていた車両は、どんどん輸送トラックの距離を縮めていく。
「ッ!!おいおい、なんで距離を縮めて……」
「バカがよ――幾ら火力の高い戦闘車を護衛に付き添っても、俺らが核の輸送車近くに居れば援護射撃したところでお前らの仲間ごと巻き添え喰らうだろうが」
距離を縮めることで、相手が迎撃を試みたくともセリカの輸送車ごと爆破させかねない。
それはつまり、自分達が手に入れた人質や、運搬している仲間にも危険が及ぶということ。
人質は生かしてこそ価値がある。
そして人質を運ぶ仲間がいれば、簡単に援護射撃など行えるはずもない。
だから幾ら戦闘力の高い戦闘車がこっちに砲弾向けたところで、そう簡単に撃てないんだよ。
志村転弧は敵の人身輸送トラックを、自分達の身を守るためのセーフティーゾーンに作り変えたのだ。
「ノノミ、ホシノ――チャンスだ」
「はい、先生!!」
「うへぇ、先生ってばとんでもない位の策士だねぇ」
ドパパパパパパン!!
ドパパ!!ドパパパパパパン!!
的確な射撃の乱射は、鼓膜を揺さぶる。
射撃の交戦は、お互いの皮膚を掠めていく。
キヴォトス人にとって銃弾を喰らうのは致命的ではないものの、限度もあれば微かな痛覚も働く。
とはいえシロコの腕は有象無象とは比較にならず、難なく護衛のヘルメット団を撃沈させた。
「ッ た!?!」
「ちょ、お前大丈夫か!?」
ノックダウンしたヘルメット団は、意識を失いぐったりと座りながら力なく脱力する。
よし、狙い通り隣の用心棒は気絶させたな。
ノノミとホシノも……左右の窓から身を飛び出しては、其々愛用する武器を手に持ち、銃口を相手に差し向ける。
火力特化に秀でてる二人は、態勢的に戦車を撃墜させることこそ難しいが、それでも一方的に戦車の外装を傷つけることはできるだろう。
向こうも深傷を負いたくないのだろう、後方へと下がっていく。
「転弧先生、戦車二機が視界から外れました!!」
「よし、OKだ――……俺らがセリカを救出した後に、再び攻めに入る算段か?埒が明かないからって様子見だろう…そいつは重畳。よし、後は俺が起点作りに活かす」
すると転弧先生は助手席の扉を開け、シートベルトを外す。
「ちょっ!?先生何を……!!」
突然の行動にアヤネは運転しながらも動揺を見せる。
これにはノノミとホシノも、驚きを隠せず、先生の行動に固唾を飲み込む。
「先生、流石にそれは危ないからやめておきなよー!怪我だけじゃ済まなくなるよぉ?」
「言ったろ、俺に任せろって――シロコ、俺がトラックをブッ倒す。倒れた直後、俺と一緒にセリカのやつ救うぞ。ホシノはタンク要員として人質諸共、盾として守ってくれ」
「先生、それ無茶じゃ――」
「常識破りの戦いも、立派な戦術の一つだぜ?俺を信じてくれ――」
先生の言葉に数秒黙り込んだ後、「ん、解った」と軽く答えた。
何か算段があると踏まえたシロコは、先生の手段、指揮能力、作戦、計画性の高さに信頼を得ている。
「せ、先生無茶ですってば!!」
「そうですよぉ!何かあったら――」
「何かを起こさせない為にノノミとホシノがアイツらを引き剥がしてくれた。だから安心して起点を作った」
アヤネとノノミは制止の声を投げてくる。冷静さを取り戻しつつも、ゆっくり鎮めた怒りを瞳に灯し、車両の上に身を乗り出す。
「それに……腹の底に、怒りが湧いてんのは俺も同じでね。ちゃあんと、一発くらい泡吹いてる姿拝めておきたいしなぁ」
減速とはいえさも当然のように車両の上で悠々と立ち上がる転弧先生に、シロコは目を疑った。普通の人間なら走行中、足が震えて簡単に体勢を崩してしまうのだが…。
「……倒れないんだね、バランス…軸が良いんだ」
「ハッ、気にするとこそこかよ。シロコ、俺が飛び移ったと同時にタイヤを狙え」
「?ん、解った」
車間距離は完璧、
運転手は慌てながら武器を取り出そうとしているが…運転席の背後に武器を置いてるから、一旦俺に目ェ 離す隙見せないといけないよなぁ。
二機の戦車は俺たちが救助する隙を見せたところで迎撃しにくるに違いない。
なら、今が好機――
何の躊躇いもなく、身を低く屈め、そこから跳躍と直進を促すように、猫のようなしなやかさでアビドス車両から人身輸送トラックまで飛び移る。
俺の合図と同時に、シロコが前輪タイヤに一発ずつ射撃を打ち込む。
「なっ!?!なんだお前ッ ――!!?」
「よぉ、お姫様を拉致してるところ悪いんだけどさ。俺の大切な生徒の一人なんだわ――俺から生徒、奪うなよな」
ダンッ――!!
操縦席でなんとか武器を手にしたヘルメット団末端の前に、割れたフロントガラスから転弧先生が飛び乗り、顔を前に突き出し破顔を見せる。
タイヤがパンクを起こした為、トラックは少しずつ減速を引き起こしている。なので無理にアクセルを踏もうと俺を引き剥がすことも、アビドス達が事故るケースも無くなりましたとさ。
なにより……うん、矢張りな。
俺の顔を見ても何も言わないってことは、俺にだけ情報共有されてないってことだよな?
嗚呼、検証成功だ――心置きなく、ブッ倒せる。
「そんなにドライブが好きなら、俺が操縦してやるよ。ほら、笑えよ」
相手が銃口を向ける前に、ハンドルに手を置き、そのままずっと右へグィーーっっと傾ける。
急ハンドルにタイヤのパンク、荷台付きのトラック、下手な武器を使わずとも簡単に右へと斜めっていき、輸送トラックは重心に耐えきれず傾いたままゆっくり倒れていく。
「なっ、しまっ――」
ハンドルを奪われ、急いで元に戻そうにも操作は効かず、気が付いた時には目の前の大人は消えていた。
既に転弧先生は減速したトラックが倒れ込むのを理解し、即座に飛び降りた。
幸い地面が砂で覆われているので、クッション代わりとまではいかないが、アスファルトなどに比べれば大分負荷は掛からないだろう。
ドガアアァァン!!
結果、人身輸送トラックは横転し、不味いと判断した操縦者は直ぐに扉を開けて脱出を試みたものの、不恰好な状態でうつ伏せになりながら砂漠に倒れ込んでしまう。
「ぐへっ…!!アイツ、なんなんだよ……やばすぎるだろ……生身の大人が真っ向から……意味、わかんねぇ…」
「やあ〜〜ホントだよねぇ、先生ってばおじさんでさえ肝を冷やす無茶振りするんだから」
舌打ちをし、拳を強く握りしめながら砂漠の地面へ悔しそうに叩き込む。
折角作戦が上手く行ったのに、アビドス廃校対策委員会は謎の大人率いるメンバーが、カタカタヘルメット団のみならず、自分達さえも邪魔をする。
そんな悪態混じりに愚痴をこぼしながら、ふと声がした主へ視線を送ると、小鳥遊ホシノが目の前に立っていた。
見下ろす少女の眼は、対策委員会や先生には見せない、暗くて冷徹な…ソレ。口調は穏やかで何も変わらないのに、顔は……後輩を攫ったことへの怒りを押し殺していた。
「へっ……?あ……」
「うん、解るよ。多分あの人は…おじさんでも知らない未知の大人だから。おじさん達の味方でいてくれるウチはね、正直心強さがあることは認めるよ。それはそれとして、さ――何か言い遺すことはあるかな?」
銃口を向けて、遺言なないかとでも言わんばかりの圧をかける。
「ひっ………お、お願いだ…せめて、私だけでも見逃して……」
ダァン――!!!
結果、戯言はホシノの無慈悲な銃弾一つで掻き消えた。
「……セリカちゃんを痛めつけて、誘拐しといて、よくもまあ…そんなことが言えたね」
硝煙の香りが鼻をくすぐり、意識を途絶えたのを確認したホシノは、ゆっくりと輸送車へと振り向いた。
「さぁってと、先生の頼みだぁ。あ、序でにシロコちゃんと先生を守りながら、セリカちゃんの可愛い顔でも拝めておこうかな!!」
「痛ッつつ……――な、なに!?何がどうなってるの……それに、今…先生の声が聞こえて……」
状況がサッパリ読み込めないセリカは、横転したトラックの影響で壁に頭を打ちながら、痛みで表情こそ歪めてはいるものの、大した怪我はない。
縛られたまま身動きが取れないので、仕方ないと言えば仕方ないのだが…。
縄が頑丈に縛られているので、さっきから解こうと力を入れても解けないのだ。
「なにが、どうなって……」
何より外からは喧騒と爆撃、銃弾を発砲する嵐の騒音が絶え間なく聞こえてくる。ホント、一体何がどうなって…――
ガチャ――ギイィ……
「!」
瞬間、固く閉ざされたトラックの荷台扉の外付けの鍵が開き、ゆっくりと扉の隙間から光が差し込まれていく。
一日しか経過していないのに、懐かしささえ感じさせる朝日の光と共に、輝ける砂漠の一面、そして…
「ん、泣きっ面のセリカ発見」
「よォ、おはようさん――勝手にあんな三下共に攫われてんじゃねえよ、お姫様役かよ」
「あらま!!なんてこと…!こんな所にウチの可愛いセリカちゃんが泣いてるなんて…!そんなに寂しかったの?ごめんねーー!!ママが悪かったわー!!」
アビドス廃校対策委員会と、転弧先生がそこにいた。
シロコは優しい笑顔で、ホッとしたような…
転弧先生は呆れながら満更でもなさそうに、
ホシノ先輩は……相手の対空砲から盾で私たちを守りながら、余裕そうに後ろ振り向いて、揶揄って…。
「み、んな………」
助けにきてくれた。
シロコ先輩も、ホシノ先輩も、見捨てないでいてくれた。
「セリカちゃん!もう泣かないで下さい!私たちがその涙を拭ってあげますからね!」
「ううッ …!!セリカちゃん……本当に、ホントに良かったです…!!!私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって…!」
ノノミ先輩が急いでリトルマシンガンを抱えながら此方の安否を確認してくれて、アヤネちゃんはポロポロ涙を流しながら心配そうにしてくれてて、
「まっ、そういう事だ――もう大丈夫だぜセリカ。俺たちがいる」
転弧先生は掌をクイッと差し伸べてきた。
皆んな、みんな……アビドス廃校対策委員会も、転弧先生も、私が裏切ったって思わなかった。
見捨てないでくれた。
私のために助けにきてくれた。
それが凄く嬉しくて、胸の奥が暖かくなって、じんわりと沁みるように、目頭が熱くなる。
「な、なな…泣いてない!!!泣いてなんかないってば!!」
「嘘!この目で確り確認した!半泣きだった!」
「煩い!うるさい煩い!!」
セリカは強がりな口調で否定するも虚しく、シロコが追い詰めるように食い込んでくる。
「取り敢えず、縄解くか…セリカ、痛い所ねえか?」
「ッ!………先生っ」
「よし、ホシノ。もう一踏ん張りだ――助けたら全員で大暴れ競争してやろうぜ」
「ん、賛成。私、先生に言われた通りずっと怒りを溜め込んでたよ」
「ああ、偉いよシロコ。ちょっと待ってろよセリカ…」
転弧はさりげなく会話を交えながら、セリカの背後に回って縄を解いていく。頑丈に結んでいるので硬い。
「なんで………どうして……」
「んぁ…?」
「どうして、助けてくれたの、先生……?私、アンタのこと邪険に扱ったわよ……それなのに、どうしてこんな危ないところにまで首突っ込んで…」
「そうですよぉ先生!!もうあんな無茶して!セリカちゃんを助けるのに、もし撃たれてたらどうしてたんですか?!」
――え?
思わずセリカは後ろの俺に振り向いた。
その眼は心配と、信じられないモノを見る、安否の優しい瞳だった。
「………
「もう、先生!!!冗談でもそんなこと言わないで下さい!!!」
「…………」
「冗談で気を紛らわせようとしたが逆効果だったか。まっ、それにアレだろ。囚われの姫様を、
「なっ…!!?何言ってんのよ!!ばっっかじゃないの!!?」
俺のブラックジョークにガチで負い目を感じたセリカも、今の発言には一気に顔を赤らめ、いつもの罵詈雑言を浴びせてくる。……解りやすいな、コイツ。
「は?カッコいいだろ――涙を流してる
「そんな恥ずかしいことの為に私を使わないでよ!!!ほんと、バカ!!!先生のバカ!!ぶん殴られたいの!!??」
早く解いてよ!!と言わんばかりに暴れようとするセリカに「おい暴れんなッ 、取れねえだろ…」と悪態混じりに文句を溢す。
………ガキの頃、憧れてたってのは本当なんだがな。
死柄木弔としての幼い頃も、RPGで気に入らない魔王を倒して姫様を救うという王道ルートも…まあ憧れこそはなかったが、カッコいいとは思った。
でもまあ、元気そうで何よりだ。
――もう、本当に……転弧先生の、バカ。
何にも知らないくせに。
助けて、なんて言ってないのに。
酷い事いっぱい言ったのに。
差し伸べた手を拒絶したのに。
それでも手を差し伸べてくる。
危険な火の海にでも飛び込もうとして、そのヘラヘラ顔を絶やさない。
……でも、俺たちがいるって、あの時見せた笑顔は、凄く輝いて見えた。
「よしっ!解けた。武器は……ちゃんとあるな。どっかに放棄されてたら積んでたが……弾抜かれてんな。よしっ、こんな時のために沢山補填しといて良かったぜ」
縄が解き手首が自由になったセリカは、両手をグッパーグッパーしながら、縄が食い込んでた手首の痕を見つめる。
転弧はホレッ と荷台の奥に立てられてたセリカの愛用『シンシアリティ』を手渡す。
手慣れた動作で即弾薬をリロードする。
どうやら故障もしてない様子だ。
「よぉっし、セリカちゃんも救出した事だし!」
「玉を取ったらゲームクリア…が将棋なんだっけ?」
「は?将棋?なんの話?」
「実質俺たちの勝ちだろ。戦力も取り戻した、セリカを人質にされる最悪なケースも無くなった、それに伴い充分に手加減する必要もない。あとは俺たちが大暴れする。どっちが暴れるかの競争だ」
成る程、とシロコは納得いった顔立ちで、セリカは何を言ってるんだろ…と顔を顰めている。
「…後気をつけて。アイツら、ジャリジャリヘルメット団ッて言ってたわ。カタカタヘルメット団の情報を持ってたし、オマケに対空砲のFlak41改を所持してるわよ」
「ジャリジャリ…対空砲…ロケラン??おいおい、とんでもない情報収穫だな……!!」
苦しみながらも、抵抗した際に得た情報だろう。
然も対空砲を知っていたとなれば、恐らく火力兵器でセリカの奴やられちまったって訳か?
おいおい、おいおい……許せねえなソレ。
「テメェら!!よくも人質を…!我々の計画を壊しやがって!!!」
「関係ない!こっちにはまだ火力兵器や改造重戦車だってある――相手はたかが6人だ!!」
「いっそのこと全員沈めちまうか!!ぎゃっはははははは!!」
向こうの嘲笑う声が天に届く。
おぉ、おぉ……火力重視の武器の寄せ集めか。
こっちの世界でもあったよ――威力重視の闇アイテム。だが、全てが全て高性能って訳でもなく、大抵のモノが粗悪品だった。
こっちの世界でも粗悪品が出回ってるのかは知らないが…死ぬ気で暴れれば、こっちが負ける見込みは毛頭ない。
例え相手が数を束ねようと、
火力武器で物を合わそうと、
こっちの数が少なかろうと、
――信念だけは負けてない。
たったその信念だけで、前世は最後の最後まで戦い抜けたんだ。
「…………よし、パーティーも揃った事だし、戦るか」
俺の言葉に、アビドス廃校対策委員会は一丸となって頷く。
……初めて、全員の意見が一致したな。
ホシノは盾を構えながら弾薬を装填し、
シロコは火力支援のドローンと同時に、愛用のアサルトライフルで銃口を向け、
ノノミも同じくリトルマシンガンを構えながら膨れっ面を浮かべ、
セリカに至っては殺意にも似せた、かつてない程に怒りを蓄積し、
苦笑が多いアヤネも、怒りに眉間を寄せながら、既に背後には支援物資型のドローンや爆薬ドローンを端末一つで操作している。
「と、言う訳で第二ラウンドに突入だ――俺達の戦いは問い。怒りと信念で俺たちの実力を示してやろう。
ブッ壊してやるぜ、アイツらの面子と矜持ってやつをな」
涙を流してる少女に手を差し伸べるヒーローって言えば、ミリオと壊理ちゃん。緑谷と壊理ちゃんだったり。
原作シャーレ先生では、ブルアカ世界に馴染めない初心者の人からすれば「痛くね?」となるのに、転弧が言うと全く別の意味合いになるの狡くない??
転弧先生こんなにも仲間が傷つけられてキレる人間でしたか?と思うかもしれませんがよく思い返してみてください。
トゥワイスの二倍が制限(トラウマの為)付きになっていたのを、解放軍との戦いでバイバインした時のことを。
死柄木は最初こそ「凄いぜトゥワイス!」と褒めてはいたが、彼がトラウマを克服したと知り、仲間の心を弄んだことに対してただならぬ顔でブチギレておりました。
もしトゥワイスの身に置きてたことを死柄木が知ってたら恐らく黒髪ロン毛は塵にされていたでしょう。
なのでセリカが手の届かぬ場所で、皆んなが見てない所で、卑怯にも集団リンチしたのを知り、めっっちゃキレてたんです。
というか絵面的にロケランぶっ放して銃弾めっちゃ浴びせました!は、想像容易いのとエグいので拍車かかってますル。