タイトルが平凡、何気ないと続いて、割と平和を謳歌してる転弧先生。
一先ずサブタイトルは置いといて……この作品を投稿してから一ヶ月も経過したことに驚きを隠せません。
え、早すぎない!?と。
一週間に一度ペースならこんな感じなのか?と。
それでも投稿が楽しいと思えたり、続けていきたいと思うのは、読者が読んでくれるからだったり、高評価やお気に入りをして下さったりなど。
まだまだ未熟な部分も御座いますが、どうか何卒宜しくお願いします。
シャーレ郊外地区――更に離れたショッピングモール区域。
大規模な商業施設は、利用者が多いことから人混みが絶えず、絶え間ない人々の活気ある声が飛び交っている。
静かな日など、それこそ平日による一時的な時間帯くらいだろう。
「ゲーセン………連合結成してからあんま行ってなかったんだよな」
黒色の私服で、蒼天の空を見上げながらショッピングモール全体を見上げるように、ボソリと呟いた。
コンビニに行って買い溜めしていた彼が、気晴らしに外へやってきたのはゲームセンターが目的である。
転生する前――子供から大人へと体が成長した後、彼はずっとあの部屋で引き篭もり生活をしていたわけではない。時に外に出て軽い気晴らしやストレス発散を目的に街に出たこともあったりした。
ゲーセンも…本当は週七日 ( ほぼ 毎日 ) の頻度で通いたかったのだが 、余り外出してしまうと情報を特定されてしまうという理由で、頻繁には外出はしなかった。
昔の頃とは違って、かなりバージョンがアップされていたりするのではないか。
因みにシャーレ内部にもゲームセンターは存在しているが、余りにも静寂すぎるのと、一日で遊び尽くした為飽きが生じて外出することになった。…所詮、シャーレ内の設備だとシューティングゲームのギャラオメガや一人用のコマンドゲームが限界か。対戦用ゲームも存在していたが、俺一人なので虚しいだけだ。…そいや、今度シャーレの一階にエンジェル24とかいう購買店でアルバイトの学生が来るらしい。俺もシャーレの室内で籠城する ( 性格上 ) ことがあるから 、アルバイトの休憩時間、軽く付き合うように誘うのも悪くないかもしれない。向こうが拒否をしたらそれまでなのだが。
「……異世界転生しても、食いもんもゲームも変わらないって、俺らの世界と大差はないんだな。個性がない代わりに、銃器を肌身離さず身に付けてる生徒がいるってのは、何かと物騒だな」
個性も目に見えない、個人に携わった異能が潜伏しているだけで、危険度で見ればこっちの世界とはなんら変わらない。
この世界でいつ誰がどこで凶器を振り翳しても可笑しくないように、向こうの世界でも街中で歩く人々の中に個性を振り翳す人種がいても可笑しくないのだから。
そう言った点では、俺らの世界もこっちの世界も大差はないのかもしれない。
……ただ、この世界に住まう人間は何故か耐久性が人並み外れてるのだ。
銃弾一発喰らえば致命傷は免れない。それなのに生徒達はあたかも普通のように、それこそ常識だと示すように皆銃を携帯している。
…この世界――キヴォトスに住まう者達がそういう概念として作られているのだとすれば、連邦生徒会に多大なる苦情が押し寄せてくるのも致し方ない。
銃刀法違反という言葉がこの世界に存在しない辺り、じゃあ作れよと言いたくなるのだが…どういう訳か連邦生徒会もそれをしない。
つまり、この世界の銃とは…俺らで言う個性のような常識的概念なのだろうか?
ユウカ、ハスミ、チナツ、スズミ、ワカモ――銃器のモデルは見解できたとしても、オリジナリティが含まれていた。
「……まっ、考察したところである程度推測は可能だとしても…根本的な部分が謎に包まれてるんじゃしょうがないよな。異世界転生ってなると、大抵がファンタジー系で、魔法とかスキルとか…よく分かんないけどなんか使えて当たり前とか、風潮があるしな」
そう考えると、何からなにまで考えるのは野暮なのかもしれない。ついつい考え込んでしまうのは、先生に「常に考えろ」という教え、そして何かを考察して突破口や攻略法を作ろうとする癖が染み付いてるから、無性に考えこんでしまうのだ。
なので現段階では俺の住まう世界のジャンルがこうなってるんだと、無理矢理にでも納得させる。
逆にユウカやリンに「五指に触れると崩壊するんだぜ」とか「掌から蒼い炎が出せるんだぜ」だの「血を吸うと変身できます」なんてこっちの常識を押し付けると、混乱するかドン引きか、妄想を押し付けてる異常者なのか、様々な理由で変な風に見られてしまうだろう。
なので俺は基本的に前世のことを話さないようにしている。
…流石にスピナーやギャングオルカのような、異形系が存在していたこと位は話しても大丈夫だろう。
「…それでも、生徒が持つ銃が俺に当たれば致命傷なのは変わらない。銃撃がいつ何時、起きても可笑しくないのがこの世界だ――暴力が日常化してるって線も考えて、注意しなきゃいけないな」
不良達の言動、致命傷を負わない生徒達、頑丈な身体――これらの要素は暴力が日常的に使用されても可笑しくないと言う点だ。
大した怪我を負わなければ、何をしてもいいと考え込んでしまう。
特に子供の思想なら尚更である。幼い子供が成長してしまえば、そういう常識で育ってきた子供は暴力を暴力と思わなくなってしまう。
誰かがやってる、自分の武器で身を守る、そのためならやむを得ない――そう考え込んでしまう人間が存在しても可笑しくない。
だからこそ連邦生徒会の言ってたダツゴクの生徒の多くが退学、停学、中退が占めてるのだろう。
「だからハスミのような正義実現委員会って部活が存在すれば、スズミのような自警団っていう非公認の部活、チナツの風紀委員会って取り締まりまである訳ね……」
よくできてんな…と、鼻で笑う。
金の卵とも呼ばれる優秀な生徒達だ――そりゃあ少数精鋭でシャーレ奪還も可能なわけだ。
とまあ、長ったらしい俺の思考的独白はそこら辺にして、俺は10000円の財産を手に、ゲームセンターへ訪れた。
昨日ユウカに節約云々叱られ、5000円以上の買い物は連絡を入れろと言われた翌日、新たな娯楽に耽る俺は自由奔放だろう。
約束するとは言ってなければ、買い物でもないのでセーフだ。そんな屁理屈を本人が聞けばブチギレ不可避だろう。
流石に今日一日で使い切る訳ではなく、保険としてだ。全部使い切るわけではない。
「…そいや忘れてたけど、トガのやつも金遣い荒かったよな」
資格を得るためにマキアと戦ってる真中、トガはドクターから貰った保険金でダッフルコートを買いやがったのだ。
気づいた時にはもう手遅れ――いくら俺が3時間強弱しか睡眠取れない、自由時間も皆無だったとはいえせめて食料の金くらいは残して欲しかった。
呆れて何も言えなかったな。
「まあ…いままで長い闘いとやらに終止符が打たれたんだ。静かに余生を満喫するのも悪かないだろ」
先生という立場は一旦置いといて、キヴォトスのシャーレから離れたショッピングモール広場に足を踏み入れる。
ヒーロー殺しステイン――俺と対極の存在にあり、死柄木弔とステインの違いに、誰も俺を見なかったことに、納得ができずモヤモヤした気持ちがいっぱいになった時、気晴らしに木椰区ショッピングモールに足を運んだっきりだ。
こうして再び賑やかな人混み溢れる区域に足を踏み入れるのは、何という気分だろうか。
……昔の自分は、賑やかに笑う人混みを見て、殺意が沸いてたんだよな。
それも今じゃ全く、痒みも殺意も、苛立ちも不快感も、何もかもが湧かない。
身体の中に蛆虫が這いずるような、蠢く寄生虫に取り憑かれたような、歪な感情もない。
「…えっと、確かゲームセンターは三階か。このエスカレーターで登って…」
―――――――――――――――――――――――――――
看板の地図を確認し、エスカレーターを使い三階まで登った転弧は、轟音賑やかなゲームセンターの独特な空間に一瞬目を瞑ってしまう。
――そいや、ゲーセンってすげぇ煩い場所だったな。
小さいゲームセンター規模なら大した音量ではないにせよ、大規模なショッピングモールに、広大な場所となれば喧騒に包まれるのは当然だろう。
煩い空間に慣れておらず、久方ぶりに訪れたゲームセンターに「やれやれ……」と首を振るう。
「…気を取り直して、今日は一日ゲーセンを楽しむぞ」
特に予定もなく、書類整理も全部とまではいかずとも、ユウカのお手伝いのお陰である程度処理することはできた。
一日頑張ったんだから今日は羽を伸ばしても良いだろう、と楽観的に浸るもこの男、その三日前まではゲームで堕落を貪っていたのだ。
転弧の場合、一日仕事を終えれば五日間は休暇が必要という、燃費が悪い事この上ない非効率の塊である。
さて…いったいなにから手をつけようか、そう考えていると――
「あっ…――」
「…?……は…――?」
隣から漏れた声に反射的に振り返れば、そこにはバッタリと、偶然
「て、転弧 先生!? どうしてここに…?」
火宮チナツ――ゲヘナ学園の風紀委員のメンバーであり回復キャラ。栗色のショートカットと、黒いリボンを巻いた普通…にしては、少々端麗とした生徒である。
シャーレ奪還の為に戦力の一員として協力してくれた常識人枠であり、サポート支援に特化した優秀な生徒だ。
「…奇遇だな。なんだよ、俺がここにいちゃ悪かったか?」
「い、いえ決してそんなことは…!ただ、こうして何の脈絡もなくバッタリ逢うとは想定してなかったので……」
シャーレ奪還以降、暫くは…少なくともエデン条約までは遭わないものだと思っていたが、こうして放課後のオフの日に偶然先生と逢うとは思ってもいなかったのだろう。
学園都市の領地は広大だ――ゲームセンターやショッピングモール、他の店を挙げれば多数存在する。
そのなかで連絡のやり取りもなしに、店も時間帯も偶然一緒に鉢合わせたのだから驚くのは無理もない。
「そうか……」
「先生は、何しにここへ?って…ゲームセンターで息抜き、ですか?」
「じゃなきゃここに居る意味がないだろ。そう言うお前は…一人か?」
「はい…えっとその、息抜きがてらに、私もゲームセンターで遊んでみようかな…とご予定を…」
意外だな――なんて口には出さずに心の中で留めておいた。
外見、性格、大人しめな雰囲気から察して「図書館で本を読む」「書類整理で忙しい」「保健室で静かに放課後を過ごす」とか、そんな感じのを想像していたが、あくまで俺個人の想像である。
人がゲームを好きになったり、ゲームセンターで遊びたいというのは自由なのだから。
「へぇ…。チナツもゲーセン好きなのか?良いじゃん。普段はよく通ったりするのか?」
「いえ、偶に風紀委員の仕事から解放された時には、気晴らしというか、安らぎといいますか……時折羽目を外そうかと…」
確かにストレスや鬱憤の気晴らしには持ってこいだ。
子供大人だった死柄木弔の初期プロファイリングでは、対人ゲームで初心者狩りをして楽しんでたりしたものだ。
他にもスコアの得点順位一位を目指したりと、娯楽に目標を付けて楽しむ過程は思い出すと微笑ましい ( 一部例外 ) ものである。
「意外でしたか?確かに自分でもちょっと似合わないかな、なんて思ったりもしますけど…」
「んなことねェだろ、楽しみ方は人それぞれだ。似合う似合わないの話なんざ俺は興味を抱かない。好きに遊んで好きに生きて、好きに解放すれば良いってのが俺のスタンスだしな」
「……ふふっ、まさか転弧先生からそんな言葉を頂けるなんて。こちらが意外、なんて言葉が出ちゃいます」
「俺をなんだと思ってんだ」
確かに意外性はあるのかもしれないが、人の嗜好や好みにケチなどは付けたりしないのが、志村転弧である。
流石にガチゲーマーだったりしたら驚きくらいはするだろうけど。
「風紀委員ってそんなに大変なのか?」
「ええ、他の自治区はさておき…なにせ私たちゲヘナ学園は問題児ばかりですから…やれ温泉を開発するために整地をしようとか……給食部を襲撃してフウカさんを拉致したり……」
「……なぉ、お前んところの学園は世紀末なのか、犯罪都市になってないか?」
俺が望んだ好きなように生きる世界なのか、解放軍が目指した世界なのか、それとも犯罪率の高い他国を指し示しているのか。
日本も平和の象徴が不在になってから犯罪率は上昇し、最終的には無法地帯と成り果てたが……その前まで先生が形成させた犯罪組織は、海外では多いと聞く。
特にアメリカ、ドイツ、イタリアなどは先生の支配下が息を潜めていたり。だからなのか、スターアンド・ストライプが日本へ手助けに来るという情報も、雄英の内部情報取得と同じような手口を使い、結果として迎撃に成功することができたのだ。それでも数多く保有していた個性が反発して消滅したのは痛手ではあったが。
「仰るのは無理もありません…自由奔放な方々が多すぎて、日々書類整理や問題解決に奔走し、困ってしまう位です…」
それを困ってしまうというレベルで片付けるチナツも相当感覚が麻痺してるんだろうな。
「それで今日一日、平和な時間くらいは羽目外しに背ェ伸ばして遊ぶってわけか。ハッ、そりゃあ良い――それなら他の風紀委員とは遊ばないのか?趣旨の方向性による違い?」
「風紀委員の方と一緒にショッピングへ赴いたり、ゲームセンターで遊ぶことはありますよ?ただ、その……偶には一人の時間も欲しいなって……」
「……俺、来る日間違えたか?」
「違ッ!違いますよ!?ああ、確かに今の話を聞いたらそう誤解を招くのは仕方ありませんけど……えぇっと、先生と過ごすのは嫌ではないと言いますか…その、先生とだったら別に……折角こうして出逢えたのもありますし…」
言ってて恥ずかしくなってきたチナツは、頬を紅潮に染めていく。
元々一人で満喫する気だったのは確かで、先生が来ることは誤算だった。
自分のせいで先生が楽しもうとしてた予定を崩してしまうのも、帰られてしまうのも悪いと思っての発言でもあるのだが、
それでも…シャーレの奪還後、こうして再び出逢えたのだから、せめてこの偶然を、折角だからこの瞬間くらいは、大切にしたいと思うのは、火宮チナツが抱く紛れもない真実なのである。
それにシャーレの先生は業務や仕事に追われたり、各学園の問題を解決する為に奔走するだろう。
シャーレの当番が割り振られるのも先生次第――それなら、今日くらい先生と一緒に過ごしたいという気持ちが勝った。
「その、先生さえ良ければ……一緒に遊びませんか?」
勇気を振り絞ったかのように、緊張した声色で、彼女は俺に手を差し伸べてきた。
……遊びの誘い。
なんてことのない、ごく普通のお誘いなのに、それが温かくて、とても嬉しかった。
手を差し伸べられる、なんて…緑谷出久以来だったしな。
再びこうして、誰かに手を伸ばしてくれるっていうのは、本当に悪くないな。
「……チナツ、その台詞は俺が言うもんだろ。折角だ――俺で良けりゃあ、一緒に遊ぼうぜ。最近ゲーセンがどんな台があったりとか、知らねえんだ。エスコート頼むぜ」
大人になる過程で拾い忘れた子供の青春を、第二の人生で生徒と一緒に拾うとはな。
…友達とゲーセンで遊んだこと、生まれて一度もなかったな。なんて思いつつ
「ッ!はいっ――!!」
輝いた笑顔で応えるチナツと一緒に、なんてことのない一日を、親しい友人と遊ぶかのように、ゲーセンで一日を嗜むことにした。
「先生って…!銃の扱い、上手いんですね…!!」
「実物と比較すれば全然違うからな ッ 、上手いも下手も要領さえ掴めば 、簡単だ っ」
「そう 、なんですね!じゃあ、昔っから、こういうゲームに触れて、たんですか っ ?」
「久方振りにゲーセンで遊ぶから っ 、触れてたとしても 感覚戻すには 慣れてなきゃ 無理だろうな っ!――ただ シューティングゲームの視点に立つゲームは 家でよくやってたから っ、さ!!」
チナツと転弧はそれぞれの台に立ちながら、協力プレイでシューティングゲームを進めている。
モラルハザード――映画ともにゲームシリーズでも大流行しているホラーゲームの一種であり、バイオレンス要素を主張としたゾンビを撃ち倒していく作品だ。
因みに名称からして決してモラハラではない。
チナツを始めたキヴォトス人は、シューティングゲームなどはエイムさえ良ければお手のもの。
転弧はこの手のゲームを腐るほどやってきたので、銃を握る感覚を馴染めれば、後は培ったゲームプレイの経験でカバーすることで立ち回りを良くする。
実物では反動や射撃がブレることもあるので、ゲームの方が却ってやり易いのだ。
「この這いずるクリーチャーは、結構手強いですね…!照準も…っ、素早くて外れちゃいます…!クッ…!」
「……なんか脳無みてぇっ。焦らずゆっくりしてる時に狙えば、案外いけるぜっ。所詮、迫真も子供騙しの演出だなっ!」
「転弧先生はっ、こういう奇襲とか…っ、ホラーゲームは得意、なんですか?」
「得意っつうか、好み の部類に 入るんじゃねえかっ、てくらいには やってると スッとする 」
「あ、転弧先生――もうボス面ですね」
「2Pプレイでやると、楽々と捗るな」
談笑を交えながら、大型のクリーチャーと対峙する二人。
ホラー要素のあるシューティングゲーム――ギミックやゲーム特有の演出、不意打ちによるゾンビクリーチャーの奇襲、醍醐味のあるモラルハザードを二人の連携で難なく突破していく。
出逢ってまだ数日、付け足せば最初に触れたゲームで協力プレイもお互いが組むのは初めて である 。( 転弧の場合、友人がいなかったのでゲーセンでの協力プレイは事実 チナツで初となる )
チナツも決してゲームプレイのスキルが高いわけではないが、それでも流れるような連携とチームプレイができてるのは、転弧先生の経験もあるのだろう。
「ふぅ……終わりましたね。あっ、転弧先生――ランキングが載ってますよ。然も上位…!私、ここまでランキング上位に食い込んだのは初めてかもしれません」
「…俺たちは三位か、初めてにしちゃあ重畳だな。どうする?一位を取るまでやるか?」
「あはは……それも良いですけど、どうせなら転弧先生と一緒に、他のゲームを回ってみたいな、なんて…」
「まあ、そうだな。時間も限られてるし…ランキング一位取りは休日の朝からやり始めるもんだな…それなら次は何する?」
「そう、ですね…次は…――」
「なぁチナツ、見ろよ。対戦ゲームのストファだぜ!?あっちの台はフルゼリー大戦にテトニスか…。レトロな部類から、家庭用でも嗜んでたゲームが台に出てんのは熱いな。こっちじゃゲーセンは結構繁盛してんだな」
「ふふっ♪転弧先生、なんだかゲームを買いに嬉しそうに目を輝かせる子供みたいですよ?」
ゲームセンターを歩き回って数十分後、幼少期の頃から培ってきたゲーム知識が活かされ、次第に興奮が収まらずにいた。
子供のようにはしゃいでる姿はなんともまあ、大人にしては子供のような一面をより強調して晒していた。
転弧という大人の先生が子供のように興味深そうに台に触るのを、遠くで優しそうな笑顔で見守るチナツは生徒にしては大人っぽい一面を。
二人で格闘ゲーム、パズルゲーム、カーレース、音ゲー、エアホッケーなどで遊んだり。
「……なんだこの…デカいべろ垂らした鳥は。他にも訳のわからんキャラがわんさかあるぞ。これゲーセン前に置かれてた等身大フィギュアと一緒じゃね?」
「この不思議な鳥…ほんとにどこにでもいるんですよね。どこが魅力的なのかいまいち理解しかねますが……」
――全く以って同意だね。
クレーンゲームではモモフレンズ…と呼ばれる、理解不可能なぬいぐるみがあった。やれスカルマンだの、ペロロだの、こっちの世界には存在しないキャラクター性のある個性豊かな人形達にはなんとも言えなかった。
基本、やれ 「かわいい」だの「おしゃれ」だの 乙女やぬいぐるみ好きの者の嗜好的感情を持ち合わせていない。
昔俺が通ってた頃のクレーンゲームでは、オールマイトのぬいぐるみが大繁盛しており、山積みになってたエンデヴァーのぬいぐるみが不人気だった記憶が遡る。
……などと、ゲーセンで遊び回ったチナツと俺は、費やした体力を癒そうと ゲームセンターから出ると、2階にあるカフェのお店で休むことにした。
時刻は既に19時30分を回っており、外はすっかり真っ暗な夜景に包まれている。
「先生も、冷静な方に見えて結構子供らしい一面があったんですね。先生の知らない一面を知れたり、なんだか今日はいつも以上に有意義な一日を送れたようで楽しかったです」
「盛りすぎだろ。楽しかったのは俺も事実だが…」
「そんなこと、ないですよ?何気ない いつもの平凡な一日も、先生と遊ぶ貴重な時間は、私にとって楽しい思い出になれたんですもの」
確かに友達と本格的にゲームセンターで遊んだりしたのは、チナツが初めてだ。
幼少期の頃はみっくんとともちゃんでヒーローごっこして遊んだり、モンちゃんとボール遊びをしたっきり、誰かと遊んだのなんて…それこそスピナーとPVPで遊んだこと位だ。
数少ない思い出だけど、それでも自分の中では 欠かせない 大きな なにかになっていた。
意味、価値、影響――そんな大それたコトではないけれど…それでも「楽しかった思い出」とか「忘れられない日常の記憶」というのは、人間を構築する上では大切な要素なのだろう。
誰かと遊ぶのが日常で、それが当たり前の世界でも、誰かにとっては眩しいくらい遠かった世界であったように。
チナツにとっても外の世界からやってきた俺と、こうして楽しく遊べたのは…コイツにとっても欠かせないほどに楽しくて、大切な思い出になったのだろう。
「そうか…。楽しい思い出か……」
前世の俺は、破壊と恐怖を振り撒く悪のシンボルだった。
俺と同じ罪を背負う仲間を除いて、こんな風に誰からとしても 俺と一緒にいて楽しいと思ってくれるのは、また味わったことのない感覚だ。
「はいっ、それにゲームセンターで遊ぶのなんて…普段なら一時間前後で終わるのに、私も久し振りに熱中して遊び尽くしちゃいました。これも転弧先生と一緒だったから、ですね」
「……なぁ、もしまた時間が合えば、ゲーセン付き合うぞ。チナツとゲームやれて…その、案外楽しかったし。俺も有意義だった」
「――っ!!あ、ありがとう…ございます…っ?」
「なんで疑問系?」
「あ、いえ!その……すみません。まさか先生の方からお誘いするとは思ってもなくて……それに、そう言ってもらえるのが、なんだか凄く嬉しくて……」
反射的に俯いてしまうチナツは、嬉しさの余り口角が釣り上がってしまうのを懸命に堪えている。
それを転弧は深追いせず、注文した熱々の珈琲を軽く啜る。
「そ、それと…ゲームセンター以外にも、違う場所で遊んだり、どこか行ったりするのは良いかもしれませんね…?」
「ああ、そうだな……」
……ゲーセン以外は乗り気ではないのだが、それを口に出すと機嫌を損ねてしまうので敢えて言わなかった。
――ゲーセン以外なにがある?と考えるのも束の間、飲食店だったり映画、なんて思考を働かせると 意外にも行ける場所のレパートリーが増えた。
「……その…転弧先生。お聞きしたいことがあるのですが、良いですか?」
「答えられる範囲なら良いぜっ、どうした?」
寛ぎながら、熱い珈琲を少しずつ啜る。無糖なので苦味が口一杯広がる中、眠気が冴えていくのを感じながら彼女の質問を待つと――
「先生は…どうして、あの日…先生はワカモと話し合おう、なんて選択肢を取ることができたんですか?」
ゲーセンの話でも 子供らしい一面の話でも、他愛ない趣味や嗜好の話ではなく、シャーレ奪還日のことだった。
「以前、シャーレの奪還といい…冷静な判断と思考能力、分析力は感服しました。正直、学ばされることもあるのだと…――キヴォトス外部の大人、とはいえ…私たちとの常識に相違があったのは理解しています。だからこそ、危険だと理解した上で飛び込むことを躊躇わない先生が、なぜこうも勇気のある選択肢を取れるのだろうと…それも、一種の経験なのでしょうか?」
「…………」
昨日、ユウカにも聞かれたな。
チナツの質問内容とは違ったけれど、どうしてあんな無茶ばかりするんだってな。まあ、その話はおいといて…。
「あっ…その、申し訳ありません…もし、なにか先生の気に障るようなことでもあれば…――」
「チナツはさ、ワカモに対してどんなイメージ抱いてんだ?」
ハッ、と我に返ったかのように、後々と失礼なことを聞いてしまったのではないか?と疑心に思った彼女が謝罪を口に出す刹那、逆に質問をされた。
「へ?えっと、それは…情報通りに……」
「そうだな。ゲヘナ学園の生徒であるチナツが、百鬼夜行のワカモがどんな奴かって聞いたら、罪状くらいだ。俺もそうだよ――だからこそ、スゲェ危険な奴だなって俺でも理解できたし、俺たちの世界でも名前に恥じない災厄だろうな……なんて思ったりもした」
けどな、と先生は一言口を挟み――
「俺たちはワカモがなんで破壊をしてるのかを知らないじゃん」
彼女がどうして破壊の限りを尽くすのか。
なぜ彼女が不良達を扇動し、暴挙に謹んだのか。
ワカモが百鬼夜行の問題児となったのかも。
「それは……」
「分かるわけないよな。だって他校の自治区所属の生徒だし、原因が理解ってればそもそもの話、こんなことにもなってないしな。
でも、分からないのまま片付けることも正解なのか?って聞かれるとさ、チナツは首を縦にして頷くことができるか?」
俺の問いに、暫し沈黙した後、悩んだ末に首を軽く横に振った。…よし、お前は話が分かる方だな。
「知っていたら、何か変われたかもしれない。ひょっとしたらアイツは、過去になにかあって破壊の限りを尽くしていたのかもしれない。裏切られた、虐げられた、騙された、復讐心があった――理由は幾つもあるだろうな。逆にチナツの思う通り、何気ない衝動に駆られた結果として理由がないのかもしれない…そんな奴に考えるだけ無駄だと、悩まされることもあるだろう。
けどな――そんな可能性がある限り、人の選択肢も、未来も、可能性も、個々人によって存在するんだ。そんな可能性の中、ソイツを知らなかった なんて言葉で片付けて、見てみぬフリをしたくないって思っただけだ。要するに俺の意志で、アイツを知りたいって思ったから動いたってことさ」
考えるのが無駄だと思う理由も理解できる。
でも考えなかった結果として互いが争いを生み、不理解によって排斥されるより、理解しようと 個人 を視て知った方が、救われるんだったらそっちの方が良いじゃん。
俺が、そうだったように――
「危険なのは百も承知だ。でもなチナツ――安全な選択肢が、絶対に正しいって訳でもないんだ。時にリスクを冒しても、動かなきゃならない時ってのは自然と来る。動かなければ安全…だけど何が起きるか分からない。一方で、動けば危険だけど結果として救われる。
元いた世界じゃそれが普通だったんだろうな。俺はさ、そんな普通のことをして貰えなかったから…。
だから、
この世に絶対に安全なんて言葉がないのは、俺もお前も、皆んな知ってるだろ」
虎穴に入らずんば虎子を得ず――危険を犯した結果として大いなる結果を手に入れられる。
安全性を求めて動じずの結果、取り返しのつかないことが起きれば、黙って見過ごしたことを後悔することにもなるだろう。
危険を犯してでも、手を差し伸べようとする――それを、人はヒーローって呼ぶのだろう。
今の俺は先生だけどさ、それでも…先生という立場でも、手を差し伸べることはあるだろう。
例え俺を利用するために、差し伸べられた悪意ある手だったとしても――困っている生徒がいたら手を差し伸べるってのは、先生としての在り方として、間違いではないのだから。
「もう一つは経験だよ。そう…チナツのいう一種の経験――……ご想像に任せるけどさ、理屈だけじゃ物事ってのは解決しないんだよ。それだけは、覚えておいた方が良いかもな」
ポンッと、静聴していた彼女の頭を、以前アロナにしたように、くしゃりと髪を撫でる。
「まあ…あの時、危なっかしい行動に出た俺を心配してくれたのは嬉しかったよ――信じてくれて有難うな。そのお陰でさ、こうして何気ない日常があるんだから」
もしあの時、俺を信じずにチナツやユウカが地下室へ赴いていたら、善くて面倒な話し合い――悪くて被害のある争いが生まれていたかもしれない。
俺も無事では済まず、ワカモとの交渉が決裂していたかもしれない。
小さくて、些細なことが、何気ない日常を築き上げていく奇跡の担いにもなるのだから。
「それでも今みたいな質問があったように、なにか問題が起きて…それでお前が考えてる中で苦悩してんなら……ゲームしながらだろうと、幾らでも相談乗ってやる」
まあ、流石にレイドバトルとか…集中モードに入りながら考察は無理だろうけど…。なんて言ったそばから心の中で思いながら、それでもと お前の相談くらいには乗ってやると口約束した。
「……………」
「チナツ、お前どうした?目ェ開けたまま寝てんのか?」
「………………いえ、その…なんというか……えっと…」
あわあわと、眼を大きく見開いて汗を垂らしながら、りんごのように顔を真っ赤に染め上げる。
頭を撫でられることも既に羞恥の的ではあるのだが、ここまで言ってもらえるとは想像しておらず、いや…想像の斜め上の発言展開に、なんて言葉を返せば良いか、悩みに悩んで思考がグルグルと回転している。
「あ、あの…!えっと……はわわっ、と…とりあえず手を…!」
「ああ、すまねえ…」
アロナの時みたく、ついつい頭を撫でてしまった。
彼女の反応に一言謝意を述べた後、手を引っ込み珈琲を飲み干した。
「…まあさ、俺の歩んだ経験と、導き出した回答だけどさ。結局選ぶのはお前だ――それでも、肩書きや立ち位置関係なく、誰かを救おうとしたり、問題を解決しようってんなら…凡ゆる視点で物事を考えるのも、お前にとっては良い成長にはなれるんだろうなってのは思ってるよ」
「………ふふっ、転弧先生って…シャーレ奪還の日から、大人って凄いと思ってましたけど…改めて、先生の凄いところを再び知れてよかったです♪ それに……先生の言葉はなんというか、哲学書を読んでるような心地と言いますか…。勉強になったりしますし…。今日はいいこと尽くめな気がしてきましたっ」
「そうか…。俺が誰かの日々を幸せにできるってのも、今思えばすげぇ奇跡なもんだ。先生なんて役職、向いてないと思ってたけど……相談とか向いてんなら、いっそのこと相談窓口って役職の方がしっくり来るかもな」
「いっそのこと、ゲヘナ学園の教師を勤めてみたらどうです?なんてっ、冗談ですけども――♪」
「座学を教えるような柄じゃないだろ俺は…。だから相談に乗るッつんだ――まあ、なんだ…シャーレ奪還日、頑張って戦ってくれたのと…ゲーセンで遊んでくれた俺なりの礼ってやつだ。またこうして、話し合ったり遊んだりしようぜ」
「はい!今日はその、有難う御座います。本当に、良い一日でした――その…もし、またこうして会うことができるなら、その時はまた…転弧先生と一緒に、ゆっくり時間を重ねて、過ごしていきたいです」
――ああ、良いぜ。
軽く返事をした転弧。休憩も終わり、会計も済ませ、ショッピングモールを出る二人は隣同士で足を揃えながら、またなんてことのない楽しい一日が過ごせますようにと約束を交わし、其々帰路へ就き、軽く別れを告げて帰宅した。
ショッピングモールの道端で、ヒップホップで荼毘ダンスを踊るハイパー転弧とハイパーアロナ(グラサン)。
火宮チナツはゲヘナでは結構好きです。
上位というかほぼランキング三位というか…。メモロビがエ駄死。
ASMRといい混浴といい、肉食(気絶させて人工呼吸)といい、属性が強すぎる。
「次回、夕焼け小焼けがすげぇ綺麗らしい乞うご期待」