「おい、私のシマで堂々と営業妨害とはやってくれるじゃねぇか?」
その赤いポニーテールをした女性は立ちながら痩せた男性を睨む。
「キ…キール……ッチ…」
痩せた男性はバツが悪そうに立ち上がり、足早にどこかへ去って行った。
するとすぐにそのキールと呼ばれた女性は俺に近付き、耳に顔を寄せる。
『ここはアンタみたいな奴が来るところじゃない。宿を探してんなら来な』
そう囁いてキールと呼ばれる女性は外に出て行った。
「あっ!?ちょまっ!?」
俺はサンドイッチを持ち、店を出てキールの後を追うと店の前で待ってくれていた。
「こっちだ」
俺の返事を待たずにズカズカと進み、俺はその横に並んで歩く。
「聞いてたと思うが私はキール。このラテゼ魔工皇国で正式な宿を切り盛りしてる」
キールの説明によると俺が入ったあそこは詐欺紛いの商売をしてる奴らの溜まり場で行き場を失った奴を引き込んで法外な金を要求し、払えないならとタダ働きさせたりその場でイカサマの賭博をするなどやりたい放題の場所らしい。
「特にお前さん見たいに押しに弱そうな奴は絶好のカモだ。分かったらあそこにはもう近付くな」
「すみませんわざわざ…それと正式っていうとキールさんの所はギルドが経営してるって事でいいんですか?」
「まー、そんな所だ。私の宿は1階が武器の販売整備や必需品を揃えてて2階を宿として貸してる。あ、それと…」
ピラッと腕の腕章を見せてきた。
「これはラテゼ魔工皇国の正式な紋章だ。これが付いた店は全てギルド公認だからそこは安心して買い物が出来るから覚えときな」
「分かりました…けどその場合その紋章を無断使用する人達もいません?」
「それなら安心しな」
俺の不安は杞憂だったようでギルド公認の紋章がある店の場合、騎士団が定期的に見回りをしてギルド公認で商売をしてるかどうか確認を取っているらしい。
そして無断使用が発覚すると問答無用でそこの営業は全て停止の上、罰金が課せられ、何度も繰り返すと永久追放とされるようだ。
それを聞いて安心した。
俺は持っていたサンドイッチを早く無くしたいと思い、1つをキールさんに渡し、お互いに食べながら歩いた。
「着いたぞ。ここだ」
キールさんの宿はラテゼ魔工皇国で見てきた建物の中では一際目立つ建物だった。
「1泊朝夕の二食付きで銀貨5枚だけどどうする…っつっても他に泊まる場所は限られてるから冒険者にとって財布に優しいのはここだがな」
「まぁ選択肢無いので…」
俺はキールさんに銀貨5枚を出しながら中に入る。
建物の中には壁に値段の札が付いた武器が飾られていて奥では巨大な砥石で武器の刃を研いでいる男性がいた。
「アンタの…ってそういや名前聞いてなかったな?」
「あ、名前ですか。ジェイルです」
ここで自分の偽名を使う。
そして鍵を渡された。
部屋は全て2階から上にあり、俺はすぐに逃げられるようにと2階にしてくれた。
…そんなに弱く見えるのかな?と思いつつも鍵を開けて中に入る。
中はベッドにテーブル、デスクとアイルミロクと余り変わらなかった。
それならそれで別にいい。
個人的には必要最低限の物さえあれば泊まるのには十分だ。
俺は荷物…とは言ってもバッグ1つを椅子に掛けて窓を開ける。
外の工業地帯はまだ煙突から煙が登っていた。
こんな夜遅くまで煙が立ち込めてるって事はそれ程仕事をしてるか夜勤なんだろう。
お疲れ様です。
それにしてもこの国の景色は中々いい。
ちょっと夜の散歩でもしたくなる程だ。
「ここの生活に慣れてきたら散歩してみてもいいかもな…」
という事で明日は軽くここで受けられる任務を受けて、慣れてきたら夜の散歩という事で予定は決まった。
果たしてこの国ではどんな出会いが待っている事やら…
俺は期待半分不安半分でベッドの中に入り、明日が来るのを目を閉じて待つ事にした。
実際押されるのには弱いです…w
前なんてどこかも分からないWiFiの契約の訪問販売が来たけどサインさせられそうになったくらいです…w
またお越し下さいm(_ _)m