早くワイルズに戻りたい…
この依頼では同情はするな。
点検ごときで何を同情する必要が?と思う。
だがルーガスさんは言葉を続けた。
「ここには経済的な理由でこの国から出られなくなった奴もいてな、それには未成年もいる。そういう奴らは徒党を組んでこういう依頼を受けてる奴等を襲って金品を奪ってんだ。幼いからといってその境遇に同情しちゃいけねぇ。もしも刃傷沙汰になったら迷わず腰の物は抜け。な?」
その言葉に耳を疑った。
未成年が襲ってくる?
正直想像も付かない事を言われて、現実味を帯びてないのが本音だ。
俺は分かりました。とだけ伝え、パンとスープを平らげると軽く横になって仮眠を取り始めた。
◆◇◆◇◆◇
休憩が終わったようで一斉に動き始める。
俺も残った担当区間の点検を始める事にした。
点検そのものは簡単で順調に終わりが見えてきた。
「未成年が襲う…ねぇ…」
日本にいた俺にとっては本当に襲われるのか半信半疑だったと思う。
だからこそ、俺はバッタリと会ってしまった。
「ん?」
点検をしていると少女が怯えた様子で俺を見ていた。
(近くに住んでる子かな?)
その時に気付くべきだった。
何故────少女がこんな薄暗い裏路地にいたのかを。
突然走り出した少女は誰かを呼ぶ。
すると奥の木の板が動き、そこからナタを持った少年が現れ、俺に走り出したと思うと何の躊躇も無くナタを俺目掛けて振り下ろした。
「うおっ!?」
ギリギリで異変に気付いた俺は一気に飛び退いて距離を取ると咄嗟に竜魔水晶剣を抜いて構える。
「君!待って!俺は敵じゃない!ここ周辺のパイプの点検をしに来てるだけなんだ!」
俺は呼び掛けるもその少年はお構い無しに俺に斬り掛かってくる。
ギィン!ギィン!
剣同士がぶつかり、鈍い音が響く。
「ちょっ!?ちょっとストップ!」
静止させようとしても少年は聞く耳を持たない。
これでは埒が明かないと思った俺は魔力の球体を作り出し、空中に漂わせる。
突然の事に少年は距離を置き、様子を伺う。
そして俺はそれを唱えた。
「【発光】!!!!」
その瞬間、俺の作り出した球体は眩しく発光して辺りを照らす。
ギリギリ少年が眼前に手を翳す姿を見た瞬間俺は来た道を戻った。
◆◇◆◇◆◇
「ハァ…ハァ…ハァ…」
少し走った所で立ち止まり、呼吸を整える。
「武器振り回す少年って…マジかい…」
正直想像もしなかった。
武器を持った少年が本気で斬り殺そうとして来るなんて日本ではそもそもある訳の無い自体だからだ。
ただ1つ、疑問に思った事がある。
あの2人がいた所だ。
地図上だとあのエリアにはパイプなんて無い。
となると何者かが違法的に拡張したに違いない。
だとすると一体誰が?
様々な事を考えていた時だった。
ゴーンゴーンゴーン
終業の鐘が鳴る。
「あの区間見たら終わりだったんだけどなぁ…仕方無い。あの2人の事を報告しに行くか…」
俺は集合場所である広場に帰る事にした。
◆◇◆◇◆◇
「───という訳でして…」
「そうか。それは災難だったな」
集合場所に来た俺は役員の人に自分が見た事を素直に話した。
「次はそんな所に行ってたのか…全く…」
俺はその役員の言葉に違和感があった。
次はそんな所に────つまり役員達もあの少年の事は知っているのだろう。
そして見付ける度に補導されているんじゃないか?
「とりあえず報告感謝するよ。あとは我々の仕事だ」
そう言って役員の人は何処かに行ってしまった。
今日の仕事は終わったが俺の心の中には拭い切れぬモヤが出来たのだった…
3章目も書き始めてますがやっと幕間が終わりそうです…
またお越し下さいm(_ _)m