ギルドに行って今日の報酬を受け取り、キールさんの経営する宿に帰ってきた。
キールさんは本を読んでいたが俺が帰ってきた事に気付く。
「おう、おかえ…どうした?」
「え?」
「あー、いや…依頼をこなして来たのに少し表情暗そうだったからな…」
顔に出てしまっていたか…
これは隠せないな…と思い、俺は今日あった事を素直に話した。
◆◇◆◇◆◇
「そっか…ガキがな…」
「正直、その幼い子が襲ってくるとは思いませんでした」
そう、心の底からそう思った。
それと同時にこの世界は日本の様に安心安全では無い事も再認識させられる。
「それでそのガキがいた所ってのはどこら辺なんだ?」
「え?あー、えっと…」
壁に掛けられている地図のある一点を指差す。
するとキールさんは「あぁ、あの男爵の所か?」と呟いていた。
聞く所によると国内での蒸気供給は国営と民営のダブルで行われている。
というのもこの広大な国中にパイプを満遍なく行き渡らせるようにもさすがに無理がある。
そこで細かい所は貴族に任せているのだ。
その際、国営でのパイプと民営でのパイプは必ずコードの振り分けがされる。
そのコードさえあれば違法でパイプを伸ばしてもすぐに分かってしまうのだ。
そういえばあの子達は2人で暮らしているのだろうか?
ならその両親は?と様々な疑問が思い浮かんでくる。
俺が色々と考えてるのを見たキールさんに今日はもう休みな。と言われ、俺は借りてる部屋に帰る。
部屋に入り、すぐさまベッドに横になった。
考えてるのはあの2人の子の事だ
(仮にあの子達2人で暮らしていたとして金はどうしてるんだ?それにこの国では蒸気は生活する上では前世での電気と同レベルで必須になる。…待て?だとしたら地図上に無かったのにパイプが延長されてたのはもしかして…)
もしかしてあの少年が延長したのか───?
金属製のパイプを繋ぐとしたら間違い無くガス溶接。
アーク溶接やティグ溶接、炭酸ガス溶接なんかも考えたがあれらは全て電気を使う溶接方法だから電気がまだ無いこの世界では不可能だからだ。
だがガス溶接であってもアセチレンという可燃性ガスと支燃性の酸素を使うがその比率を間違ってもいけないし、使うにも事前の安全確認が必要だ。
それらを全てまだ年齢が2桁もいかない子に教えるだろうか?
いやありえない。
見た感じ小学4~6年生辺りだ。
この国が何歳から就職出来るかは知らないけどあんな歳から技術が必要な仕事に就けるなんてまず無いだろう。
やれて掃除か簡単な仕分けで両親の手伝いくらいだ。
恐らく───彼に技術を教えた人物がいる。
だがその教えた者が両親ではまず無い。
俺が教えるとしてもせめて高校生くらいの年齢になってからだ。
ましてや中学生や小学生に教えていい代物では無い。
だとすれば全く無関係な大人。
責任も持とうとしない無責任な大人が子どもに吹き込んでやらせた。
もしも延長したのが大人なら違法で捕まるかもしれないが子どもなら大目に見るかもしれない────そう考えて吹き込んだ可能性はありえる。
ベッドから起き上がり、窓を開けて夜のラテゼ魔工皇国の街並みを見る。
工場地帯と思われる方では夜になった今でも煙突から煙が上っていた。
俺がこうやってる今でも違法にパイプを伸ばしている人がいる。
恐らくあの子達もそれが違法なのは分かっているはずだ。
にも関わらずそれをやっているのは"そうしなきゃ生きられない"からだ。
前世の日本みたいにある事情で働けなくなったら生活保護を受ければいい。
…まぁ最近はその生活保護も不正受給してる人もいるけど…
けどこの世界にはそんな制度は無い。
この世界はそれが当たり前なのだ。
俺はとある事を思い付き、明日やってみるかと意気込んで眠りについた。
地元に帰ってきたのは8時40分頃。
そこから13時まで寝ようとしたら15時に…
怖いわぁ…
またお越し下さいm(_ _)m