「待ってよおじさん」
やっと、兄の方が声を掛けてくれた。
その言葉に俺は立ち止まって振り向き、近付いてみる。
「敵意は無い事は分かってくれたかな?」
「そりゃあ毎日ここに来て金貨だけ投げ渡せば気付くよ。まぁそれで妹とまともな食事を取れるようにはなったけど…」
それを聞いて一安心した。
俺が中に入ってもいいかを聞くと無言ながら招き入れてくれた。
◆◇◆◇◆◇
中は案の定というか、家と言うには程遠かった。
どちらかと言うと捨てられた木の板や鉄板をどうにか組み合わせて繋ぎ目を補強してるだけの所でよくあるホームレスの人が作ったダンボールの家を見てるような感じだった。
だが生活する為の工夫はしているようで手作りのベッドの下を収納空間にしたり、お手製の折り畳みテーブルを作ってそこで食事をしているようだ。
そして気になるその鉄板の繋ぎ目、その繋ぎ目はやはり溶接特有の"ビード"があった。
やはりこの子は誰かから技術を学んだ可能性がある。
「…何も出せないけどいい?」
「うん、大丈夫」
なら適当に座って。と言われドア側の空いてるスペースに座る。
「それでおじさんは何が目的なの?」
「目的…と言うより聴きたい事があるって感じかな」
聞きたい事?と自分の想像とは違ったのか少し驚いていた。
「この鉄板の繋ぎ目って溶接だよね?誰からこれを学んだの?」
その問いに少年は、あぁ…それか…と拍子抜けした感じを取る。
「誰からも学んでねぇよ。それに親がいなくなった俺らにそんなの教えるよりかはその技術をそいつが独占した方がいいだろ。…その溶接?っていうの?それは俺が夜の工場で隙間から盗み見てやり方は学んだんだよ」
「え?盗み見るって…というか道具は!?」
少年が言うには時折溶接機の型落ち品が廃品としてこういった所に捨てられるらしい。
それらは型落ち品だが勿論使える物もある。
だがホームレスになった大半の人は使えない物として金属の廃材として売って小銭を稼いでいるらしいが少年はそれを使えるようになれば自身の技術として使えると考え、工場の一部に穴を空け、その隙間から扱っている様子を盗み見ていたらしい。
更には無人となった工場内に忍び込み、まだ使われてない在庫品の溶接機を1つだけ盗み出して練習し、この家を作ったらしい…
最後の方は窃盗罪だけど中々に逞しいな…
だがどうやらこの少年はこの国で生きる事を諦めてないようだ。
これならまだやり直せる可能性はまだ全然ある。
そしてそのチャンスを生み出せるのはここにいる俺だ。
「えっと…今更だけど名前は?」
「ルイン。妹はネビ。おじさんは?」
「俺はジェイル。今日はもう帰るよ。またね」
俺は立ち上がり、家を出る。
2人と出てきて手を振ってくれた。
さて、あとはあの人に説得するだけだ。
◆◇◆◇◆◇
「ん?おかえり」
俺が帰ってきた所でキールさんが出迎えてくれた。
「キールさん、ちょっといいですか?」
俺に呼ばれてキールさんが立ち上がり、待合室の椅子に対面してくれた。
そして俺は今回あった事、今まであった事を話した。
◆◇◆◇◆◇
「話は大体分かった。けど1つ聞きたい」
「なんですか?」
「お前さんがその兄妹を助けたいってのはいい。が、その行動はお前さんにとってどんな得がある?そんで今までのお前さんの行動に得はあったか?」
メリットときたか…
当たり前だがそんなものは今回の件では全く無い。
むしろ金貨を渡してるんだから損をしてる。
正直分かりきってる。
その答えは────
「損得関係無く…ですかね」
「はぁ?」
「もちろん損なのは知ってますよ。それにこの国には俺がいた国みたいな生活を保護してくれる制度なんか無い事も知ってます。けど彼は生きようとしてる。身寄りもない、頼る事も無い上に妹さんも守らなきゃいけないという状況下に置かれてます。その子達に1回でもいい、そこから抜け出すチャンスを与えたい…ってだけです」
その言葉に、ハァ…と溜息をつかれた。
そういう反応が来るのは分かってただから俺は、それに───と付け加える。
「それに────そんな状況下に置かれても大丈夫だろ。と高を括ってる人はそういう環境を体感した事の無い人だと思ってますから」
その言葉にピクッとキールさんが僅かに反応した。
少しだけ俺を見て目を閉じる。
「明日…鐘が鳴ったらその少年を連れて来な。そこまで言うんだ。一度だけ見てやろうじゃないか。けど条件だ。仮にその少年の技術があまり良くなかったらアンタはここでしばらく働いてもらうよ」
「…分かりました」
一応見てくれるようだ。
俺は一安心して明日に備えた────
TPSはあまり経験無いけど慣れてみます
またお越し下さいm(_ _)m