目の前では講義ではなくドワーフの言い合いが起こっていた。
中にはエルフもいてドワーフの言葉に耳を傾けていた。
まさかここでドワーフとエルフに会えるとは思わなかった。
それにドワーフとエルフが親身に話し合っている。
俺の中ではこの二種族は犬猿の仲な印象があるが違うのだろうか?
そしてその中にアリシャさんもいた。
「あ、アリシャさん」
「ん?おお、ジェイルか」
ジェイル───その名前を聞いた瞬間にほぼ全員のエルフとドワーフとエルフ達がバババッ!!!!と俺を見付け雪崩のように駆け寄ってきた。
「お前さん!これはどういう意図で開発したんじゃ!?」
「それは後ででいいだろ!それよりもこの開発した魔術を───!」
「待て待て待て!ここはまず───」
「いいやここは──!!!!」
矢継ぎ早に俺に質問責めだ。
1つ1つに答えたくても如何せん人数が多過ぎる。
どうしようかと困惑していた時だった。
パンパン!!!!
両手を叩く音が響く。
音のした方を見てみるとそこにはスーツを着た初老の男性とローブを着た年老いた御年配の男性がいた。
「はい、皆さん、そこまで。開発者の当人が困っているではありませんか」
初老の言葉に質問責めしてきた方達が「うっ…」とたじろいで引き下がると代わりに先程の2人がゆっくりと近付いてきた。
「彼らの御無礼をお許し願いたい。私はこのラテゼ魔工皇国のギルド長、レリウスと申します。こちらの老人は魔術開発局局長のユリウスと申します。以後お見知り置きを」
そう名乗った2人が一礼した。
…レリウスとユリウスで名前が一文字違いなんだな。
まさか兄弟とか?
俺の顔を見て何かを察したのか、レリウスさんが口を開く。
「お察しの通り、私レリウスが弟、ユリウスは私の兄に当たります」
「あ、やっぱりそうでしたか」
やはり思った通り彼等は兄弟だったようだ。
立ち話もなんですから…と接客室に招かれる事となった。
◇◆◇◆◇◆
接客室のソファーに対面して座り、それぞれに紅茶の入ったカップが置かれる。
「では改めまして、ギルド長のレリウスと魔術開発局局長のユリウスと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。冒険者のジェイルです」
お互いに頭を下げた。
「では早速本題に入りましょう。実を言うと今回ジェイル殿が開発した飛行魔術を新型の魔術として登録させて頂きたいのです」
「…それは全然構いませんが魔術のスペシャリストであるあなた方がなぜ飛行魔術を開発しなかったのかだけは教えて頂きたいのですが…」
「…分かりました…では…」
レリウスによると───
飛行魔術は開発はされていた。
だがそれは風系統の魔術を利用した浮遊系の魔術であり、俺のような魔力を一点に集中させて飛ぶというものではなく、風を起こしフワフワを浮く魔術らしい。
言うなれば気球と飛行機のようなものだ。
その為、浮遊魔術では即座に方向転換出来るはずもなく、飛んで移動する場合は浮遊魔術とは別に石炭で動くエンジンを動かし、プロペラを回して移動するといった方法を使っていたようだ。
だが、今回の俺が開発した飛行魔術でその問題は一気に解消し、様々な分野に活かせると意気込んでいたようだ。
なるほどな…と、思い、カップを持って紅茶を飲む。
「それで今回の新飛行魔術の開発による報酬なのですが…金貨600枚はいかがでしょう?」
「ブホッ!?」
とんでもない金額に思わず紅茶を吹いてしまった。
ゴホッ!ゲホッ!とむせてしまう。
「大丈夫ですか?」
「えっとゴホッ…大丈夫です」
金貨600枚…日本円に換算すれば600万…
まさか俺が試しにやった事でここまでの事になるとは思わなかった…
ただ、この金額で了承となると俺の仮名を入れて「ジェイル式飛行魔術」として登録されるようで、俺は「金貨100枚割引いていいからジェイルの名前は使わないでほしい」という要望を伝えて今日はお開きとなった。