卒業式当日。
温水は八奈見を大事な話があるからと呼び出した。
待ち合わせまでの暇つぶしで校内を回り、文芸部の女子たちと遭遇していく。

最後に温水の選んだ選択は──。

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負けヒロイン八奈見杏菜のエンディング ~四つのリボンと温水君~

 卒業式の朝は、門出を祝うかのような快晴だった。

 澄みながらもどこか暖かな空気が春の訪れを告げている。

 

「お兄様と離れ離れなんて嫌です。あと二年通ってください」

「無茶言わないように」

「お兄様と一緒に通うのも今日で最後なんて、佳樹は耐えられそうにありません」

「中学時代に耐えてた佳樹なら大丈夫だ」

「あの頃は幼かったので」

「それ中学時代出来ていなかったときに言うセリフ」

「佳樹は成長したのです」

「あまり困らせちゃいけません。佳樹は寂しがり屋だな」

「佳樹は寂しがり屋なのです」

 

 成長した結果が兄離れ出来なくなったとか、どんな成長の仕方だろうか。

 

 俺がツワブキ高校に入学して三年が経ち、本日無事に卒業式を迎える。

 佳樹のことを寂しがり屋扱いしたが、俺から二年遅れて入学してきた佳樹と、こうして並んで登校するのが今日で最後になると思ったら、俺も寂しさが込み上げてくる。

 明日から佳樹は一人で大丈夫かな。

 俺がもう一年通っても──いや、もう滑り止めの大学に受かってるし、無理があるか。親に怒られる。なお、本命の国立大は結果待ちだ。手ごたえはあった気がする。

 

「やっぱり佳樹が在校生代表として祝辞を言いましょうか? お父さんもお母さんも来れませんし、お兄様を佳樹が万全の態勢で送り出さないと」

「そういうのは生徒会長がやるんじゃないか」

「まだ間に合います。生徒会にはコネがありますので、手を回せば佳樹が在校生代表に選ばれますよ」

 

 卒業式当日にそんなことされたら大混乱に陥るだろう。

 なにより在校生代表は、二年を差し置いて一年のやる仕事じゃない。

 

「気持ちだけ受け取っとく。それに、佳樹が卒業を祝うのは卒業生の皆さんじゃなくて俺だけで十分だろ」

「何言ってるんですか。完全にお兄様だけにあてた完璧な祝辞を読み上げますよ。実は、一週間以上前から用意してあります」

 

 佳樹は満面の笑みで紙束を取り出してきた。

 分厚い。これを全部読み上げたら三十分はかかりそうだ。

 そのうち一枚だけ受け取って読んでみる。

 

『偉大なるお兄様へ』

 

「アウト」

 

 書き出しだけ見れば十分だった。

 この遺物は封印しよう。残った束もまとめて奪って、俺の鞄の中にぶち込んだ。

 ちょっと重い。いろんな意味で。

 

「ああ、そんなぁ」

「これは後で大事に読んどくから、今日は大人しくしとくように」

「お兄様が抱きしめて頭を撫でてくれたら大人しくします」

「はいはいっと」

 

 佳樹が俺の肩に頭を寄せてきたので、そのまま抱き寄せて撫でてやる。

 佳樹は満足そうに眼を瞑った。完全に身を任せられると結構重いな。

 登校中に何をやっているんだって話だが、佳樹が俺の卒業を寂しく思っているのも本当だろう。

 最後くらいは、甘やかしてやろう。

 

「お兄様に包まれています。佳樹は三河一の果報者です」

 

 俺の妹がなんか言い始めた。

 地域が限定され過ぎだろ。たしかに三河だがそこは愛知とかせめて豊橋で。

 そしてなんとも安い果報者だ。

 

 

「着いちゃいました」

 

 佳樹を慰めるのに少し時間を食ってしまったが、遅刻することなくツワブキ高校まで辿り着いた。

 下駄箱で学年別に別れるので、佳樹と一緒なのはここまでだ。

 

「前から言ってたとおり今日はクラス会があって、一緒に帰れないから」

「はい。寂しいですが、中学の時は卒業式当日も一緒に帰ってくれたお兄様がクラス会に呼ばれるようになったことを喜びたいと思います。佳樹はまっすぐ帰ってお兄様の卒業祝いの準備をしておきますね」

「あまり無茶しないように」

「はい。お兄様、これを」

 

 佳樹が巾着袋を渡してきた。

 

「ピンチに陥ったらあけてください。それではご武運を」

 

 佳樹はそう言ってスカートを持ち上げるようにしてお辞儀をして去っていった。

 

 卒業式にピンチになんか陥りたくないんだが。

 まあいいか。あける機会が訪れなければいいだけだ。念のためにポケットに入れておこう。

 

 本日の予定。

 午前中は卒業式で、少し時間を置いてクラス会に参加だ。

 クラス会に参加する気はなかったが、八奈見から温水君だけ不参加は許さないから参加しなさい。と怒られてしまい、参加することになった。

 幹事は、その八奈見を負けヒロインにした袴田草介とその彼女である姫宮華恋だ。こういうのはリア充の中心がやるもんらしい。

 食事会から二次会でカラオケという流れらしいが、食事会まで顔を出せば十分だろう。

 八奈見達と交流があった程度で、クラスでは相変わらず空気に近かったのは変わらないが、最後くらいクラスメイトと交友するのも悪くない。

 入学した頃の俺では考えられないような心境の変化に、自分でも驚きつつ教室の引戸を開ける。

 

「う、う゛う……また゛会え゛るよね」

「会おうよ、八奈見ちゃん」

「ずっと友達だよ」

 

 クラスメイトに囲まれて号泣する青髪美少女の姿が目に入り、そっと引戸を閉じた。

 なんだこの空気。まだ卒業式すら始まってないのに、既にクライマックスだ。

 八奈見らしいと言えばらしい気がするが、教室全体をセンチメンタルに染めるのはやめて欲しい。

 

「どうしたんだ温水?」

「入らないの?」

 

 教室前で立ち止まっていると、背後から声が掛かった。

 ザ・主人公とそのヒロインの袴田姫宮カップルだ。

 相変わらず光属性のキラキラオーラに溢れていて、思わず後ずさりそうになる。

 

「お先にどうぞ」

 

 ここは譲るの一手で、脇にそれて背景役に徹しよう。

 逃げる俺の先に回るように、姫宮さんが上半身を傾けてじっと俺を見つめてくる。

 その瞳に釘付けになったところで、パチっとしたウインクで我に返った。

 危ない。飲みこまれそうになってしまった。

 

「一緒に入ればいいじゃん」

「温水、変な遠慮するなって」

「遠慮してないから。ただ八奈見さんがアレで入りづらいだけで」

 

 カップルと一緒したくないだけだが、こうなったら八奈見を売ろう。 

 

「ああ。杏菜の恒例のアレか。ちょっと待ってろ」

 

 長年の付き合いの幼馴染だけあって袴田は、八奈見という名前とアレという単語だけで察したらしい。

 袴田が先陣を切って扉を開いて教室に入っていった。

 さすがはイケメン。頼りになる。

 

「杏菜。お前が泣いてるから温水が入りにくいって」

 

 って剛速球をど真ん中に投げんな。

 一気に外に突っ立っていた俺の方に教室中の視線が集まってくる。

 その中心で、泣いてたせいでいつもよりもすごい形相の八奈見さんが睨んでいる。

 

「いや、そんなこと言ってな──」

「──言ってたよ、温水君」

 

 慌てて弁明しようとしたが、隣の一部100インチオーバーによって否定された。

 さすがはカップル。彼氏のフォローも完璧だ。俺のフォローもして欲しかった。

 

「どういうことかな、温水君」

 

 涙目とジト目のコンボが怖い。

 あれ? おかしい。敵しかいなくないか。

 一歩一歩ホラー映画に出てくる未知なる生物な動きで迫る八奈見。

 

「どういうことだろうね、八奈見さん」

 

 佳樹から受け取ったばかりの巾着袋を開けようとしたときには、既に八奈見に両肩をガッツリとホールドされてしまった。

 担任の甘夏先生が入ってくるまで、卒業式がどれだけ大事なイベントなのかを八奈見に説教されるという波乱の幕開けとなってしまった。

 教室のセンチな空気をかえたことは、誰か評価して欲しい。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 卒業式は、何もトラブルは起きず順調に終わった。

 佳樹が祝辞を読み上げることもなく、卒業証書授与で名前を呼ばれて返事で声が裏返ることもなかった。

 文芸部から一名『ひゃ、ひゃい』と言ってしまった子が出てしまったが、武士の情けとして名前は伏せておいてあげよう。

 

 教室に戻り、どこか浮ついた俺たちを、甘夏先生が教卓を拳で叩いて制する。

 

「そろそろ席に着け」

 

 卒業式の余韻でいくつかのグループに固まってはしゃいでいた生徒たちが、大人しく自分の席へと戻っていった。

 

「最後に、お前らに大事な話がある」

 

 この流れで、ろくな話を聞いた覚えがないが、一応耳を傾けておこう。

 

「お前たちは今日ツワブキ高校を卒業したわけだが、3月31日まではツワブキの生徒だということを忘れないで欲しい。お前らはもうしばらく私の大事な生徒だ」

 

 俺を認識するまで一年掛かった先生とは思えない言葉だ。

 俺のことも大事にして欲しい

 

「何が言いたいかって言うと、お前らが飲酒とかしたら私が呼び出されるってことを忘れるな。卒業式後の生徒の責任まで私が取らされるんだ。どっちにとっても得しないシステムを誰が考えたのか。いいか。飲酒は4月1日になってからだ。復唱しろ」

 

 とんでもないことを言い出した。

 飲酒は二十歳になってからだ。

 十八歳が飲むのは、3月31日だろうが4月1日だろうがアウトだ。

 復唱しろと言われても困る。クラス中が困惑している。

 

「どうした。遠慮するな、先生との最後の約束だ。約束してくれ、お願いだ。卒業した後の生徒のことなんてどうでもいいのに、呼び出されたくなんてないんだ。想像してみろ。この時期に酒飲むやつも私のことなんかどうでもいいって思ってるから、お互いによそよそしくしながら形だけダラダラ指導する時間。虚無だぞ虚無」

 

 よほど嫌な思い出があるのか、教卓にだらしなく身体を預け、目が虚ろになっている。

 大事な生徒って話はどこいった。

 

「だから約束してくれ。飲酒は4月1日になってから。せーの」

「飲酒は4月1日になってから」

 

 いたたまれなくなった何人かの優しい生徒が、先生の言葉に合わせて復唱する。

 その中に八奈見の姿もあった。

 その瞬間、甘夏先生の背すじがスッと伸びて、瞳のハイライトが消えた。

 

「何を言っている。お酒は二十歳になってからに決まってるだろうが。やっぱり、お前ら酒を飲む気だな。今、復唱した生徒の顔は覚えたからな。あとで職員室に来るように、最後の説教をしてやる」

「横暴です」

「先生が言えって言ったんじゃないですか」

 

 不満の声があがる。

 

「冗談だ。こんな感じで、大人になれば理不尽な目に遭うこともある。いいか。高校を卒業したらお前らは子供扱いされないことが増える。何事にも責任が生じるということだ。あとからそんなつもりがなかったは遅い。これが先生からお前らに教えられる最後の教訓だ」

 

 最後は真面目な話だったか。

 

「あとは老婆心だが、就職先によっては絶望しかないから、結婚したいなら大学生活を頑張れ。マジで頑張れ。先生みたいになってしまうぞ。先生だって花の女子大生時代はモテてたのに、社会人になってからでいっかって思ってたらこのざまだぞ。教え子の結婚式に呼ばれる独身教師の気持ちがお前らに分かるか」

 

 さっきの話で終わっとけば、綺麗に終わったのに。

 

「いいか。高い金払って悲しくなるから先生を結婚式に呼ばないように、会費制なら可とする。以上だ。それじゃお前らっ! 卒業おめでとうっ! 解散っ!」

 

 どうやらお辛い目に遭われているようだ。

 先生の未来に合掌。

 こうしてクラスは解散となり、俺はツワブキ高校を卒業した。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 クラス会は午後2時からで、今はまだ12時を過ぎたくらいだ。

 どこかで時間を潰す必要がある。

 八奈見さんに話があったんだが、彼女はクラスの輪の中心で、本日二回目の号泣中だ。

 連絡だけ入れとけばいいか。

 再びセンチな空気が流れ出した教室から逃げ出して、中庭へと向かった。

 

「ぬっくん。見ーつけた」

「痛い」

 

 背中をドーンと押されて、前につんのめる。

 こんな呼び方をするのは一人しかない。

 

 焼塩檸檬。文芸部兼陸上部所属の年中日焼けした褐色娘。

 幼馴染の綾野光希と両想いだったが、伝える前に彼女を作られてしまった負けヒロインの一人だ。

 

「いやー、教室見に行ったらもういないんだもん。探したよ」

「えっと、なんか用があった? つーか、なんでそんなに汗かいてんだ」

「女の子に汗とか言わない。そういうところだよ、ぬっくん。汗くさいかな?」

 

 焼塩は、首元を引っ張って手でパタパタとあおぎながら、ほら、と顔に近づけてくる。

 汗をかきやすいところかもしれないが、そこはない。

 汗の前に見えたらいけないところが見えそうで、さっと視線を逸らした。

 汗の中に混ざって柑橘系のいい匂いがしている。

 

「そんなに匂う?」

「いや……どうだろう。走ってたのか?」

「そうなんだよ。ぬっくんを探してたら後輩たちに捕まりそうになってさ。どうにかまいてきたけど速くなってるね、危ないとこだったよ」

「捕まるって何かやらかしたのか」

「違う違う。ほら、なんかリボンを欲しがられてさ。そういうのあるんでしょ? 卒業生のリボンを手に入れたら幸せになるとかなんとか」

 

 そんな話あったっけ。

 一度ももらったことがないからよく分からないや。

 そういえば、一年の時に部長がなんかやってた気がする。

 

「あれ? 男子のボタンと交換じゃなかった?」

「そうだっけ。じゃあ、ぬっくん交換しようよ。はいこれ、私のリボン」

 

 焼塩は、あっさりと一番上の黄色いリボンを外して俺に差し出してきた。

 だから無防備に外すな。

 見えちゃいけないものが見えそうになるから。

 

「って言われても、ハサミないし」

「別にいらないでしょ。ぬっくん、動かないでね」

 

 焼塩はそう言うやいなや、膝立ちになって俺の腰に手を回してのしかかってくる。

 当たってる。リボン越しになんか当たってる。

 硬直しているうちに、焼塩の顔が俺の腹部に近づいて、そのまま俺の第一ボタンを口に含んだ。

 

「はほい(固い)」

「うわっ、なにやってんの」

 

 歯で咥えて引っ張る焼塩。

 ブチッと音とともに、俺の第一ボタンが焼塩の口の中へと消えていった。

 人差し指と親指で宝物を手に入れたかのように、口から第一ボタンを取り出す焼塩。

 唾液のせいでてかってるのが妙に艶めかしい。

 

「ぬっくんのボタンゲットー」

 

 そんなカブトムシを捕まえたときみたいに言われても。

 焼塩は膝についた砂埃を払った。

 

「襲われてしまった」

「奪われたでしょ。それに交換だから奪ってないし」

「受け取ってないし」

「はい、受け取ったから交換」

 

 焼塩が俺のズボンのポケットに、第一リボンを押し込んでくる。

 あまり奥まで突っ込むな。際どい所に当たるから。

 これ以上は抵抗するだけ無駄か。おとなしく交換しとこう。

 

「分かったから。大事にしてくれ」

「うん。ぬっくんのボタン大事にするから。お守り代わりに持ち歩いてさ、オリンピックで金メダル取った時にポケットから取り出すの。ぬっくんのボタンが世界デビューだよ」

「そこまで大事にしなくていいから」

 

 やめてくれ。恥ずかし過ぎる。

 

「そういえば、大学の準備は進んでるのか?」

「なんとかね。ほんとはもっとゆっくりしたかったのに、来週からもう練習に参加しないといけないんだって、だから文芸部の打ち上げが明日になってごめんね」

 

 なんで明日なんだって思っていたが、焼塩に事情があったのか。

 女子部員だけで話し合いが進められて、俺は決まった結果だけ伝えられたから詳細は知らなかった。

 

「……来週って、はやいな」

「ほんとだよ。でも、大学に行けることをお母さんもお父さんも喜んでるから、頑張らないと。寮生活だから用意するものは少ないからいいけどさ」

 

 元々県の陸上界では知られた存在だった焼塩は、二年から中距離に専念して成績を伸ばし、すっかり全国区の選手となっていた。

 最後の大会で高校チャンピオンになったのもあって、陸上推薦の引く手あまただったらしい。

 俺でも名前を知っているような関東の大学に進学するとは聞いてたが、来週にはもういなくなるのか。

 

「寂しくなるな」

「ほんとに? ぬっくんは地元に残るんだっけ?」

「佳樹がいるし」

「あはは、ぬっくんらしいね。でも、そんなに遠くないんじゃない。走ったらあっという間だって」

 

 新幹線を使うような距離を走るな。

 冗談だと思うが、焼塩なら走りかねないから怖い。

 

「あ、後輩に見つかりそう。行くね」

「おう。明日は来るんだよな?」

「うん。それじゃ、また明日ね。会いたくなったら言うんだよ。いつでも会いに行ってあげるから」

 

 焼塩が走り去るのと入れ違いで多数のジャージ姿の女子が現れて、焼塩の後を追いかけていった。たぶん、陸上部の後輩たちだ。

 後輩から逃げるくらいなら俺にリボンを押しつけなくてもいいのに。

 

 焼塩檸檬と温水和彦の関係:陸上の有望選手と応援するファン

 所持品:焼塩の第一リボン

 

 

   ◇◇◇

 

 

「ラストテイストはここだな」

 

 ツワブキ高校を卒業するということは、俺の水道探索も終わりをむかえることになる。

 最後に味わうべき水道として選んだのは、グラウンド脇の水道だ。

 生徒に人気で通としては避けてる水道だが、最後だからあえて多数の生徒に飲まれているポピュラーな水道を選ぶ。

 普段は、体育終わりの生徒や運動部の生徒で賑わっている。

 今日みたいな授業も部活もない日は、誰に気兼ねすることなく飲むことができた。

 卒業生の流れは、東門から続くユリノキの並木道に集中していて、ここには来ない。

 遠くから響く校歌の大合唱を聞きながら蛇口を捻って水を飲んだ。

 味だけなら食堂入口の水道が安定しているが、あれは水道水としては綺麗過ぎる。ツワブキの味だと思いたくない。

 そう、このほのかにぬるく土臭さを覚える味こそ、水道探索の最終回にふさわしい。

 適度に喉を潤して、顔をあげる。

 そのタイミングで向かいの蛇口の利用者も顔をあげてきて、目が合ってしまった。

 

「ぬ、温水、なんでここに」

「最後に飲むならここだろ。そっちこそ同じじゃん」

 

 小鞠知花。俺と同じくツワブキの水道水を極めようとするものだ。

 文芸部のエースで、一年の頃に部長だった先輩に告白してフラれた負けヒロインの一人だ。

 見た目は小動物的な可愛さがあるが、俺に対するあたりがキツイ。

 なにより強烈な人見知りだ。定期的に関係がリセットされたのもあり、親しくなるまでに時間が掛かった。

 

「ふ、ふん。温水はそんなもんか」

「なんだと」

「わ、私は一通り回っている。最後だからな」

「まじか。お腹壊すなよ」

「結構辛い」

 

 だったらやめればいいのに。

 水道水を味わうには一口では足りない。

 カルキ臭だけで終わるからだ。

 一口目でカルキ臭に慣れ、二口目で水温を感じ、三口目でその奥に隠された味わいの違いを知る。

 最低、三度喉を鳴らさなければ、水道水を味わうことにはならない。

 ツワブキの水道スポットは21か所だ。

 階の違い程度の微差を省略しても10か所を超える。

 水中毒になるほどではないが、お腹がたぷたぷしそうだ。

 

「そんな無理しなくても」

「わ、私はこの後予定ないからな。お前のクラスと違って」

 

 文芸部の打ち上げを今日にすればよかった。

 クラス会を優先させた八奈見を恨んで欲しい。

 

「打ち上げ、明日でよかったのか?」

「そ、それはこっちのセリフだ。お前、入試が終わってないだろ」

「前期の結果待ちだ」

「お、落ちてたら打ち上げなんかしてる場合じゃない」

「不吉なこと言うな」

 

 家から通える大学という絶対条件がある。

 落ちてたら後期も、学部を変えて同じ大学を受ける予定だ。

 勉強は続けているが、前期に落ちたら後期で受かる自信はない。

 つまり、文芸部に一日取られようが取られなかろうが、大差はないのだ。

 

「落ちてたら小鞠と同じ大学に通うだけだし」

「ぬあっ!? お、お前、不吉なこと言うな」

 

 小毬は、手をぶんぶん振り回してきた。

 

「そんなに嫌がられるとショックなんだが」

「ち、ちがちがちが……違わない。第一希望を目指せ。絶対に受かれ」

「もう前期試験は終わったけどな」

 

 あとは、神様にお祈りするしかない。

 小鞠の合格している大学は、滑り止めで合格済みだ。

 ただ同じ大学といっても、学部が違うから接点とかは少ないと思うが。

 

「文学部ってなにやるんだ?」

「知らん」

 

 堂々と言い切りやがった。

 

「ざ、在学中にデビューするのが目標だからな。い、いろんな経験できれば、な、なんでもいい」

「最近、好調だもんな。デビューを意識してるのか」

「わ、私の小説、深みが足りない。そ、想像、で書いてるだけだ」

 

 なるほど。それで大学ではいろんな経験がしたいと。

 大学デビューする小毬。

 

「気をつけろよ」

「な、なにが」

「お前、見た目は可愛いんだから、男から狙われるんじゃないか」

「うぇっ!? お前、何言ってる!?」

「いや、いろんな経験って」

「な、なななな……」

 

 小鞠は顔を真っ赤にして、言葉にならない言葉を発し続けている。

 

「落ち着け、水、水を飲め小鞠」

 

 小毬は、蛇口をひねって、ゴクゴクと喉を何度か鳴らした。

 水道水追加して大丈夫だろうか。

 八奈見の胃袋を小毬は持たない。

 

「……さ、最低だな」

 

 どんな経験を想像したのかは、聞かないでおいてやる。

 

「……温水は、小説辞めないよな?」

「たぶん、趣味として続けると思う」

「そ、そうか。か、感想つけてやるから更新しろ」

「感想欄、小鞠だらけじゃん」

「か、感謝しろよ」

「感謝してるけど」

 

 同じ時期にWEB小説の投稿を開始したはずが、小鞠と俺では大差がついてしまった。

 小鞠の作品は感想欄の返信が追いつかないほど感想で埋まり、俺の作品はほとんど小鞠の感想だけで埋まっている。

 完全な敗北だった。

 書籍化なんて夢のまた夢で、趣味で細々とやっていこう。

 少なくても読者いるし。

 

「か、感謝してるなら、お前の第一ボタンよこせ。わ、私のリボンと交換しろ」

「お前、それって」

「か、勘違いするな。これも経験だ。み、みんなやってる」

 

 ああ、そこにつながるわけか。

 小鞠の経験に協力するのは、やぶさかではない。

 だが、問題が生じている。

 

「第一ボタンはもうないから、第二でもいいか?」

「な、お前、誰とだ」

 

 胸ぐらをつかまれそうな勢いで、距離を詰められた。

 

「焼塩に取られた」

「……なら第二でいい。さっさとしろ」

 

 焼塩の名前であっさり引き下がった。こいつら仲がいいな。

 焼塩とは違って、事前に準備していたらしい。

 渡されたハサミで第二ボタンを外して、小鞠に渡す。

 小鞠は代わりに、赤い第三リボンを外して俺に差し出してきた。

 

「第二リボンじゃないんだ」

「それは好きな人とだろ」

「いや、経験じゃん」

「う、うるさい。私だって、え、遠慮する」

 

 第三リボンと第二ボタン。

 バランスが取れているのか分からないが、小鞠が納得しているのならいいか。

 

「しょ、食堂が閉まるから、そろそろ行く」

 

 水道水との別れを続ける気らしい。

 

「あ、明日、遅れるなよ」 

「そっちこそな」

「あ、あと、ず、ずっと一緒にいるって言ったの、わ、忘れるなよ」

「……そんなこと言ったっけ?」

「ぬ、温水、そういうとこだぞ」

 

 小鞠は俺の脛を蹴って、その場から離れていった。

 痛みに耐えていると、LINEの通知が鳴る。

 小鞠から、俺が部長になった日のトークのスクショが送りつけられていた。

 

 こんなものを残していたのか。

 今読み返すと、恥ずかしいから消して欲しいんだが。

 まあ、いいか。

 俺は、やり残してたことを終わらせるために、文芸部の部室へと向かった。

 

 小鞠知花と温水和彦の関係:小説の投稿仲間

 所持品:焼塩の第一リボン、小鞠の第三リボン。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 西校舎片隅の文芸部の部室。

 思い出が詰まった部屋の扉の前に立つと、感慨深いものがあった。

 文芸部の卒業だよみんなお疲れ様パーティー(八奈見命名)は、明日を予定しているため、誰かに会うためにここに来たわけじゃない。

 そして、名残惜しさに来たわけでもなく、ずっと退避させてもらっていた妹モノラノベを回収するためだ。妹持ちとして家には置きづらいし。

 パイプ椅子の上に立ち、女子部員の手の届かない棚の最上段に並んだ海外SF本を抜き取り、その奥へと手を伸ばす。

 

「……あれ。ここじゃなかったっけ」

 

 手に感触が返ってこない。

 仕方ない。その隣の本をまとめて抜き取り、手を伸ばす。

 空振り。

 

「棚を間違えたか」

 

 取り出した本の山を元通りに片付けて、パイプ椅子ごと隣の棚へと移動。

 再び、並んだ本の裏側を探そうとするも、目的の本は出てこなかった。

 

「何かお探しですか? 部長さん」

 

 パイプ椅子の上に立ったまま首を捻っていると、部室に女子生徒が入ってきた。

 

「今の部長は白玉さんでしょ」

「では、お兄様」

「俺の妹は佳樹だけだ」

「甘えさせてくれないんですか?」

 

 テヘ、と舌を出すあざと可愛さ。

 佳樹がいなかったらコロっとやられていたかもしれない。

 

 白玉リコ。文芸部の後輩女子だ。

 幼馴染のお兄さん相手に恋を知ったときには、お兄さんは姉と相思相愛で、チャンスが回ってこないまま結婚(ゴール)されてしまった物心ついたときからの負けヒロインの一人だ。

 可愛さ全開で、本性を知らなければ守ってあげたくなるゆるフワガール。

 だがその実態は、好きな人が結婚しても諦めないガッツあふれるファイター少女だったりする。

 とはいえ、別れさせるのではなく気長にチャンスを待つだけなので、実害はない……はず。

 

「……甘えさせたりしない」

「意気地なし」

 

 言葉とは裏腹にクスリと微笑んでいる。

 完全にからかわれていた。

 パイプ椅子から降りる。

 

「そんな意気地なしの先輩には、素敵な情報をプレゼントします」

「一応聞こうか」

「一応ってなんですか。まあいいです。さっき佳樹さんが部室に来て、そこの棚の裏にあった先輩の本を持ち帰ってましたよ」

「はい!?」

「お兄様の荷物を少しでも減らすお手伝いをするのですって」

「マジか……!」

 

 クラス会に行くって佳樹に伝えてあったから、気を使って持ち帰ってくれたんだろうが、佳樹に見られてしまったらわざわざ部室に退避させていた意味がないじゃん。

 

「できた妹さんをお持ちですね、にーにー」

「白玉さんも読んだでしょ。その呼び方をやめなさい」

「分かりました。バカ兄貴」

「白玉さんみたいな子に罵声されると、ちょっとときめくからマジでやめて」

 

 ラノベ妹はお兄ちゃんの呼び方が多彩なのだ。

 キャラの特徴づけの一環で通常は使われないような呼び方の妹が出てくる。

 毎回バカ兄貴はやり過ぎだと思う。でも、呼ばれるのも悪くない。

 

「吉川英治全集は、そのままでしたよ」

「あれは俺の本じゃないから。って、なんで知ってるの!?」

「分かりました。未来の男子部員のために残しておきますね」

 

 吉川英治全集は、一部中身が入れ替えられていて、男の夢がたくさん詰まった薄い本が入っている。もともとは前部長の私物だ。

 その巻の掲載小説は、読みやすい文庫版も部室に揃っているため、わざわざ全集を手に取る必要はない。だからこその秘密だったのに。

 

「できれば、管理とかせず忘れてくれるのが一番いいんだけど」

 

 そんな都合のいい話はない。

 

「いいですよ。忘れましょうか」

「いいの!?」

 

 できるのかよ。

 

「温水先輩、忘れる代わりに忘れられない思い出をください」

「思い出って?」

 

 白玉さんは、ゆっくりと俺に近づくとパイプ椅子に座る俺の膝に手を置いて、上目遣いで見つめてきた。

 

「私の初めてをもらってください」

 

 ……は、初めてをもらう!?

 まさかの卒業式当日の卒業イベントだ。初めてが部室って難易度が高くないか。

 テーブルを上手く使えば──ってそもそもゴム(アレ)がないし、無理じゃん。

 そういえば、困ったときに開くようにって佳樹に言われていた巾着袋があったっけ。

 まさか、な。こんなこともあろうとはって妹に用意されるのは、いくらなんでも嫌すぎる。

 でも、必要なものかもしれないし、中身を確認するだけ。確認するだけだから。

 

「……もったいぶった言い方してるけど、リボンだよね? リボンを渡すだけだよね?」

 

 巾着袋を取り出そうとポケットに手を伸ばしたところで、ようやく気付くことができた。

 焼塩と小鞠のリボンの感触が、その存在を俺に教えてくれていた。三人目ともなればさすがに分かる。

 俺の初めては、既に焼塩によって奪われてしまっていた。

 

「……そっちでいいんですか?」

 

 さわさわと俺の膝から指が這い上がってきて、ポケット越しに手が触れ合う。

 

「あ、はい。そっちでお願いします」

「なーんだ、リボンじゃなくてもよかったのに」

 

 白玉さんの手がデリケートゾーンまで手が伸びかけたところで、白玉さんが身体を引いて距離ができた。

 待って、リボンじゃなかったら何がもらえるところだったの!?

 そっちじゃない初めてってなに!?

 なんか今、ものすごくもったいないことをした気がする。

 

「では、リボンを外しますね」

「お願いします」

 

 後輩ジョーク。きっとただの後輩ジョークだ。

 俺が動揺するのをからかっているだけだろう。

 白玉さんはリボンに手を回す前に、俺の胸元をじっと見てきた。

 

「それで、部長さんのボタンはどなたと交換したんですか?」

 

 何事かと思ったが、どうやら上着のボタンが消えていることが気になったらしい。

 

「ああ。焼塩と小鞠だ」

「……どのリボンでした?」

「焼塩が第一同士で小鞠が第三リボンだったはず」

「では」

 

 白玉さんは、こくり、と頷く。

 萌え袖からのぞく細い指が一番下の黒いリボンを外していく。

 リボンと言えども衣服であることに変わりない。

 上目遣いで見せつけるように脱がれてしまうと、視線を逸らすしかなかった。

 煽情的過ぎる。

 

「逸らしました。私の勝ちですね」

「か、勝ち負けとかないし」

「……はい、私のリボンです。後輩らしく慎み深く第四にしておきます。交換じゃなくて()()()()()になってしまいますけど」

 

 残念ながら交換しようにも、既にボタンは売り切れだ。

 

「ありがとう。大事にするよ」

「はい。私だと思って大事にしてください。約束ですよ」

 

 形式上の言葉で言質をとられてしまった。

 白玉さんだと思うのは無理だけど、大切にしよう。

 三つ目のリボンをポケットに突っ込んだ。

 

「部長って意外とモテるんですね」

 

 モテるってどうなんだろう。

 リボンとボタンを交換したが、焼塩はその場のノリみたいなもんだし、小鞠は小説の取材の延長だ。思いっきり遠慮されてしまったし。

 

「そう。実は俺、モテるんだ」

 

 でもいっか。最後くらいは、調子に乗っておこう。

 交換したのは事実だし。

 

「私は交換じゃなくても我慢できますけど、最後の一人は怖いかもしれませんよ。では、また明日。文芸部の打ち上げの席で」

「……また明日」

 

 調子に乗ってすみませんでした。

 最後に呪いのような言葉を残して、文芸部の可愛い後輩は部室から去っていった。

 俺もそろそろ時間だ。行こう。

 白玉さんに続いて、部室のある西校舎を出ていく。

 

 白玉リコと温水和彦の関係:可愛い後輩と鈍い先輩

 所持品:焼塩の第一リボン、小鞠の第三リボン、白玉さんの第四リボン

 

 

   ◇◇◇

 

 

 卒業式後の喧騒は、だいぶ落ち着いてきたみたいだ。

 まだ多くの生徒が残ったままのようだが、祭りのように賑やかだった声のボリュームは抑えられてきている。

 中学の時は、余韻とか知ることなくさっさと佳樹と帰宅したことからすれば、成長したと言えるだろう。少なくともこうして残っていることを悪くないと感じるあたり、高校生活の三年間は充実していたと胸を張ってもいいように思う。

 だからこそ、やり残していたことの清算をしなければならない。

 卒業式が終わって解散してすぐに、八奈見には連絡を入れていた。

 待ち合わせ場所に向かうため、旧校舎の非常階段を上る。

 先に着くつもりだったが、既に八奈見が来ていて校舎を見下ろしていた。

 風に吹かれて青い髪がふわっとなびいている。

 こうして黙っていれば──いや、なんでもない。

 

 既に朝の時点で顔を合わせているが、改めて紹介しよう。

 

 八奈見杏菜。文芸部の同級生にして三年間ずっと同じクラスだった女子生徒だ。

 幼馴染の袴田草介と一緒のお風呂に入ったり結婚の約束をしたり(どちらも小学校入学前)と家族ぐるみで相思相愛の仲(八奈見主観)だったが、転校してきた姫宮さん(泥棒猫)にあっさり奪われてしまった負けヒロインだ。

 見た目良し、性格良し、友達も多いリア充だが、姫宮さんという上位互換に負けてしまったのである。相手が悪かった。

 

「ごめん。待った?」

「ほんとだよ。今日は忙しいんだからね。クラスの打ち上げの前に、家族でお昼を済ませなとかないといけないし。青い皿も今日は自由に取っていいの」

「黒い皿以上はダメなの?」

「一種類一皿までだから厳選」

 

 炎。

 黒より上は、黒、赤、紫、銀と金だっけ。

 こいつ回転寿司で五皿以上食う気だ。

 五皿食べたらお腹いっぱいじゃん。

 クラス会は、お好み焼き屋の貸し切りだと聞いている。

 クラスにバイトしていた子がいるらしく融通が利くらしい。

 ピーク時間を避けて14時スタートと遅いとはいえ、昼食を別で済ませておく必要はない。

 親が来ていたら気を使うのかもしれないが、八奈見の場合は自分が食べたいからに違いない。

 

「忙しいところ悪かった」

「いいけどさ。それで大事な話ってどうしたの? わざわざ呼び出すって珍しいじゃん」

「八奈見さんに人前だとしにくい話があって」

 

 そう、大事な話があってわざわざ呼び出していた。

 ずっと考えていたことだ。

 今日中にどうしても決着をつけたかった。

 俺はポケットの中で手を強く握りしめて、八奈見を見る。

 

「人前でしにくい……やっぱりそういうのなんだ。うんうん、そんなことじゃないかって思ってたよ」

 

 頷きながらも八奈見は、手早く身繕いをはじめた。

 制服の襟を正し、残り一つになっているリボンの位置を整え、スカートの裾も何が変化したのか分からないけど弄った。

 

「しっかり考えたんだよね?」

「うん。スルーするのも考えたけど、言っておかないとこの先ずっと後悔する」

 

 胸に手を当てて、正面から真っ直ぐに俺の目を見てきた。

 逸らしたくなる衝動を何とか抑え、八奈見と向き合う。

 

「いいよ。聞いてあげる。温水君の中で二年前の宿題の答えが出たってことでいいんだよね?」

「……うん」

 

 二年前?

 一瞬戸惑ったが、すぐに八奈見の言いたいことが分かった。

 そうか。やっぱり八奈見も察していたのか。

 同じ気持ちだったのなら話は早い。

 八奈見もずっと待っていたのかもしれない。

 それなら、正直に白状するしかない。

 

「八奈見さん」

「は、はい」

 

 俺はポケットの中で握り締めていた()()を差し出しながら、半歩踏み込んだ。

 

「──200円多く取っててごめん」「いいよ。付き合おっか──」

 

 二人のセリフが被った。そして、下から差し出した手に上から八奈見の手が重なった。

 あれ? 前にもこんなことがあったような。

 このタイミングで、普段は登下校時に鳴る鐘が鳴り響いた。

 卒業生を見送るための音なのかもしれない。

 この音を聞くのも最後だと思うと、どこかもの悲しく聞こえてしまう。

 

 たっぷりと時間をかけて音が収まるまで、俺も八奈見も動けなかった。

 重なり合った二人の手の間で、百円玉2枚が存在を主張する。

 

「……どういうこと?」

 

 やがて、硬直が解けた八奈見が俺と右手を重ねたまま、左手でガッツリと肩を掴んできた。指が食い込んで痛い。

 

 それはこっちのセリフだったが、囚われている状況で迂闊なことは言えない。

 これは説明をした方が賢明だろう。

 

「ほら、最初のファミレスのお金。八奈見さんが頼んだものは全部八奈見さんの借金にしたけど、俺もポテトをつまんでたでしょ。何本かだけど。少ない量とはいえ共有したのなら、割り勘にするべきだったかもって、ずっと引っかかってて。お金のやりとりって大事だし、卒業前にスッキリさせようかと──」

 

 ほらお金、と手をひっくり返して2枚の百円玉を八奈見の手に落とす。

 

「あ、ああ。お金ね。うん、そういえば分けたような気もするかな。う、うん。受け取ったよ」

 

 八奈見はオレの掌を指でなぞるようにして、百円玉をもぎとった。

 返済完了。

 喉奥に引っかかっていた小骨が取れた感じだ。

 よかった。これで心置きなく卒業できる。

 

「気にしてなかったし、別によかったのに」

「こういうのはしっかりしないと」

 

 食べ物の恨みは怖い。

 相手が八奈見ならなおさらだ。

 

「それで付き合おっかって、どういうこと?」

「待って。今の話で綺麗に終わったじゃん。どうして流さないかな。そういうとこだよ温水君」

 

 スルーできるようなライトな話題を出して欲しかった。

 喉奥に引っかかった小骨が取れたと思ったら、魚を丸ごと口の中にぶち込まれたくらいの衝撃だった。

 流したくても流せねえよ。

 

「付き合うって俺と八奈見さんが?」

「いや、それは……」

「八奈見さんって俺のこと好きなの?」

「調子に乗り過ぎだよ、温水君。ちょっときもい」

「ごめんなさい」

 

 少し調子に乗り過ぎたか。

 でも、それ以外の解釈のしようがないような。

 

「だいたい温水君が私を好きなんでしょ」

「はい?」

「だ、だって、そう思うじゃん。あのさ、今日が何の日か分かってる? 卒業式だよ。卒業式に大事な話があるから二人っきりで話がしたいって言われたら、普通は告白だと思うでしょ」

 

 言われてみればそんな気がしてきた。

 ラノベでも定番イベントの一つとして色んな作品で描かれている。

 

「でもほら、俺と八奈見さんだよ。付き合うって両想いじゃないとダメじゃん」

「片方が好きなら成立することもあるでしょ」

「あるの!?」

「あるよ!! だから温水君は私のこと好きなんだよね。そうだよね」

 

 八奈見は俺の胸元を掴むと、グッと顔を近づけてきた。

 ちょっと怖い。

 

 俺が八奈見を好き。

 そんなことがあるんだろうか。

 三年間を振り返ってみる。

 

 もともと八奈見は、遠い存在だったクラスメイトだ。

 ファミレスで負けヒロインになるシーンとその後の奇行を目撃してしまい、ファミレス代を貸すことになって俺と八奈見の関係は始まった。

 あの日から俺の孤独な学園生活は終わりを告げたと言っていい。

 その後は、いろいろあったが、三年間ずっと俺の近くに八奈見がいた気がする。

 愚痴られたり、呆れたり、笑ったり、助けてもらったり、振り回されることも多かったが、楽しかった。

 

「……好きかもしれない」

「しれないはいらない」

「……俺は八奈見さんが好きだ」

「ようやく認める気になったか。うん、いいよ。付き合ったげる」

「それはちょっと」

「な"んでだよ"」

 

 八奈見、落ち着いて。どこから声出してんだ。

 

「付き合うなら両想いじゃないと」

「温水君。どちらかが片思いでも付き合うことってあるんだよ」

「でも、八奈見さんは俺のこと好きじゃないでしょ」

「……どうしてそう思うの?」

「俺は八奈見さんが袴田のことを好きだったのを見てたから。フラれても気持ちの整理がつかなくて、袴田と姫宮さんの関係に嫉妬して苦しめられて、それでも健気に振る舞っていた八奈見さんを見ていたから。そんな八奈見さんが俺を好きとかありえないし」

 

 見たくて見たわけじゃないが、負けヒロインが生まれるシーンに立ち会った責任として、気軽に愚痴れる相手に選ばれてしまった。

 俺は、八奈見が袴田に向けていた気持ちの熱量を知っている。

 それと同じ気持ちを俺に対して八奈見が持っているとは思えなかった。

 

「もしかして、草介と比べてる?」

「…………」

「そうだね。草介を好きだった気持ちとは違うよ。草介のことを好きだった頃は、少しでも一緒にいたかったし、草介のことを考えたらご飯が三杯しかおかわりできない日もあったし、夜も日付が変わるくらいまで眠れなかったりしたし」

 

 三杯おかわりしたら十分じゃないかな。

 夜も寝れてるし。

 八奈見って本当に袴田のことが好きだったんだよね。ちょっと不安になってきた。

 

「温水君のことを考えてそうなることはない。むしろ、絶好調でご飯が進むまである」

「あるんだ」

「草介に向けていたみたいな燃え上がるような感情はないよ。でもね、温水君と一緒にいると安心するの。私は私のままでいいんだっていうか。バナナは房から外さなくても一房そのまま食べていい……みたいな気持ち」

 

 うん、全然分からない。

 バナナは家族でわけようよ。

 

「ほっとするというか、温水君にはありのままの私を見せても平気。ぜんぜん気にならないの。温水君のことを男だと思っていないからだと思ってたけど、でもそうじゃなくてさ。私は温水君になら甘えられるんだって気づいたら、温水君と離れたくないなって」

「……好きってこと?」

「そういうとこだよ、温水君。デリカシーがないなぁ」

「いや、大事なとこだから」

「だから……す、好きってことで」

「ありがとう」

 

 家族以外で初めて異性に好きって言われてしまった。

 その相手が八奈見だとは思わなかったが、なんか嬉しくて照れくさい。

 

「それじゃあ、私と温水君は付き合うってことで」

 

 話は終わり、と八奈見は手をパチンと叩いた。

 

「それはちょっと」

「な"んでよ"」

 

 だからどっから声を出しているんだろう。

 

「俺は八奈見さんのこと好きだけど、付き合うのは遠慮したいっていうか」

「理由は?」

「ほら、付き合うと彼氏のおごりとかあるんでしょ? 八奈見さんの胃袋を支える甲斐性とかないし無理だよ」

「別に割り勘でもいいし」

「割り勘? 今割り勘って言った? 八奈見さん、文芸部のみんなで映画を見に行った日のこと覚えてる?」

「覚えてるよ。文豪になろうの原作がどうたらって言ってた映画でしょ」

「焼塩が陸上部で来れなくて、八奈見さんと俺と小鞠の三人で見に行って、ポップコーンを二つ買ったよね」

「うん、キャラメル味と塩味。割り勘だったでしょ」

「三等分して買ってさ。八奈見さんが真ん中に座って両隣に置いたポップコーンを一人で食べつくしたんだ」

「そうだったっけ」

「そうだったよ。本編が始まる前の違う映画の予告の段階でなくなってたから」

 

 俺は三つ、小鞠は二つしか口にしていない。

 キャラメル、塩、塩、キャラメル、キャラメル、塩、塩、塩といった勢いで味を変えつつ、どこかの格闘漫画の必殺技でも繰り出すような手さばきで次々と八奈見の口に放り込まれていき、あっという間にポップコーンは空になっていた。

 あの日以来、八奈見絡みで割り勘はタブーだ。

 

「割り勘ってのは、食べる量が同じくらいじゃないと成り立たないんだ」

「そうだったの!?」

 

 そうだったんです。

 

「分かった。これからは気をつけて遠慮するから」

「待って。遠慮する八奈見さんなんて八奈見さんらしくない。そんな八奈見さんは好きじゃないかも」

 

 豪快に食べてこその八奈見だ。

 食欲が減っていたら心配になってしまう。

 

「私にどうしろっていうの」

「諦めて」

「諦めないし。分かった。自分の分は自分で払おう。それでいいでしょ」

「ごめんなさい」

「な”なななな」

 

 ついに言葉が意味をなさなくなってしまった。

 大丈夫だろうか。

 

「というか、八奈見さんがそこまで頑張る意味が分からない」

「温水君が悪いんだよ」

「はい?」

「大事な話って言うから勘違いしちゃったでしょ。クラスの皆に彼氏できたって言っちゃったし」

「言っちゃったんだ」

「言っちゃったの」

 

 ただでさえ八奈見は遠慮したかったのに、ますます遠慮したいんだが。

 仮に付き合うとしても人前でベタベタするのは好きじゃないし、隠しておきたい派だ。

 

「それに」

「まだあるんだ」

「さっきお父さんとお母さんに告白されてくるからって言ったら、食事会に連れて来なさいって」

「親の挨拶は、飛躍しすぎだろ」

「でも、温水君が悪いんだよ。ここで友達になった日に言ったでしょ。『告白は、告白に先立って2~3年くらい友達付き合いが必要だろ。お互いの好意を確認し合ってから、思い出の場所に呼び出してようやく辿り着く』って」

 

 なんか言ったような記憶はある。

 その言葉を伝えたのは、八奈見の言うとおり友達になったときだ。

 あれは、一年の一学期の終業式だったから友達付き合いをはじめてから2~3年経ってる。

 思い出の場所は、友達になったここで間違いない。

 さっきお互いの好意を確認し合った。

 

「告白じゃん」

「通り越してプロポーズでしょ。それなら親への挨拶も早い方がいいし、いっかって」

「いっかで俺の未来を決めないで欲しいんだけど」

「付き合うってそういうことだよ」

「そういうことなの?」

「付き合ったことないけど」

「ダメじゃん」

 

 なんで付き合う前から外堀が既に埋まってるんだろう。

 どういう追い込み方だ。

 

「やっぱり八奈見さんとは付き合えないから、諦めて」

 

 ここは正直に伝えよう。

 誠意を込めて頭を下げて断った。

 負けヒロインになったことがあるやつだけが、二度目の負けヒロインになることができる。

 八奈見。諦めてくれ。

 

「イヤですけど!?」

「は?」

「私が温水君にフラれるとかないから。認めないし」

「いや、認めるも認めないもフラれたんだから」

「それはどうかな……知ってる? 一人じゃ誰かと付き合ったりフラれたりってできないんだよ。互いの同意があって初めて恋人になったり、フラれたりするの。私が同意してないんだから私はフラれていない」

 

 また、とんでもないことを言い出したぞ、この女。

 

「だから私と温水君は付き合ってるから」

「同意してないし」

「は? 両想いなら同意とかいらないんだよ、知らないのかな。そういうところだよ、温水君。恋愛初心者」

 

 互いの同意があったらはどこいった。

 

「八奈見さんも恋愛初心者だよね」

「片思い歴は大ベテランだから」

 

 やめろ。悲しくなることを言うな。

 

「なら今回も片思いでフィニッシュで」

「ノーマネーみたいに言うなっ」

 

 ノーマネーは出会ったときの八奈見だ。

 

「分かった。付き合わなくてもいいから、付き合った振りだけはしてよ」

「はい?」

「勘違いさせたのは温水君でしょ。その責任を取ってしばらくは恋人同士ってことで通すの」

「それで親への挨拶とかしたくないんだけど」

「それはいいから。私の方でどうにかしとくし」

 

 勝手に付き合ってる宣言されるよりはマシか。

 この状況を作り出した責任が俺にもあるし、それくらいは妥協してやるか。

 

「……じゃあ、振りだけなら、そんな感じで」

「よし。それで許してあげる」

 

 あれ? なんで俺が許される立場になってるの。

 八奈見は、満足そうに頷くとゆっくりと両手を広げた。

 

「はい、温水君」

「え? 何?」

 

 目の前には両手を広げた八奈見さんがいる。

 何かを待っているようだ。

 俺にどうしろと。

 これは付き合った二人がやるハグという行為を待っているんじゃ。

 待って、まだ早すぎる。

 

「何って、私を見て気づかない?」

「ええっと……」

 

 八奈見は両手を広げたまま胸を突き出すようにしていた。

 どうやらそれがヒントらしい。

 胸元には、黄色いリボンが一つ胸の鼓動に合わせて揺れている。

 

「もしかして……」

「うん」

「太った?」

「太ってないし。どこを見てそう思ったのかな」

「いや、リボンが一つしか残ってないし、他は弾け飛んだのかなって」

「苦しくなったら、緩めることだってできるんだからね」

「飛ばしたことはないんだ」

「あるけど。あれは焼肉を食べた翌日だったから」

 

 やっぱりあるんだ。

 

「じゃあ何だろう。リボンだよね」

「あーもう。今日は卒業式でしょ。憧れの人からリボンをもらうのは伝統でしょ伝統」

「え? でも、一部の生徒の話でしょ」

「温水君は忘れてるかもしれないけど、私だって人気あるんだからね。リボンを欲しがる男子に囲まれて、なんとか一個だけ死守したんだから」

 

 そういえば、八奈見は一応4K美少女だったっけ。

 念の為に言っておくが、4Kは画質の話だ。一日の摂取カロリーが4000ではない。

 たぶんカロリーだと4000じゃすまないし。

 他の三つのリボンは、他の男子生徒にあげたらしい。

 

 八奈見は俺に取ってもらうのを諦めて、背中に手を回して自分でリボンを外した。

 

「はい、私の第二リボン」

 

 位置的にそれっぽかったが、第二だったか。

 

「ありがとう」

「温水君の第二ボタンと交換だから」

 

 リボンを受け取ってポケットに入れたところで、要求されてしまった。

 俺は気まずさから目を伏せる。

 

「温水君。ボタンが見当たらないんだけど、どういうことかな」

「焼塩と小鞠と交換した」

「どのボタンを誰と!?」

「焼塩が第一で小鞠が第二」

「小鞠ちゃんのリボンは?」

「ええっと、第三だったはず」

「ならよし」

「いいんだ」

 

 白玉さんもだったが、こだわるなぁ。

 四つもあるんだからどのリボンと交換してもいい気がする。

 

「ってよくない。交換できないじゃん」

「え、えーと。返そうか、リボン?」

「はあ?」

 

 ポケットを漁っても、どのリボンか分からなかったので、諦めて全部のリボンを出す。

 黄色いリボン、赤いリボン、黒いリボン、黄色いリボン。

 って黄色がダブってるじゃん。

 八奈見のリボンの色ってどれだったっけ。黄色だったらどっちか分からないや。

 

「温水君。どうして四つあるのかな?」

「もらったから」

「詳細を教えなさい」

 

 有無を言わない迫力だ。

 

「えっと、焼塩の第一リボンと小鞠の第三リボンと白玉さんの第四リボンと八奈見さんの第二リボン。八奈見さんのリボンの色はどれだっけ?」

「はあ……もう返さなくていいから、私だけ渡さなかったら負けみたいでしょ。どうして温水君がリボンをコンプリートしてるの。モテ期?」

「え……そうなの?」

「他になんだっていうのよ。ああ、もういいから何か代わりになるもの頂戴」

 

 って言われてもなんかあったっけ。

 リボンをポケットに仕舞い込んで代わりになるものをって、佳樹からもらった巾着袋が反対側のポケットに入ってた。

 困ったときにあけるようにって言われてたし、今がそのタイミングだ。

 

「これは……」

「お、いいもの持ってるじゃん。うんうん、そういうのでいいんだよ」

「じゃあ、交換ってことで」

「しかも特選だし、温水君、分かってるね」

 

 八奈見は巾着袋から取り出してものを受け取りながら、俺を肘でウリウリとついてきた。

 八奈見が満足しているならいいか。

 

 佳樹が巾着袋に用意してくれていたもの。

 ヤマサの特選ちくわだ。

 リボンのお礼としては不釣り合いだが、八奈見相手には正解だったってことで。

 白玉さんのときに開けなくてよかった。

 穴が空いてたら意味ないじゃん。

 

 八奈見がちくわの封を開ける。

 

 誰かを好きになったとしても、その誰かがその子のことを好きになってくれるのかどうかは分からない。

 両想いになれて喜ぶ子もいれば、フラれて涙を流す子もいる。

 昨日は笑っていた子が、次の日は泣いて、またその次の日は笑ったり。そんな感情のジェットコースターのような日々が恋をするということなんだろう。

 ボッチが悪くないと思っている俺は、そんな心を揺らす日々からは距離を置いていた。

 俺は、ラノベの主人公じゃない。

 涙にくれるヒロインを前にしても、手を差し伸べたりなんかしたつもりはない。

 たまたま、そのタイミングで近くにいたってだけのモブのはずだ。

 でも、そんなモブが傍にいたってだけで救われたヒロインがいたのだとしたら。

 前を向けたのだとしたら。

 少しでも日々が変わったのだとしたら。

 そんな日常が悪くないと思えたのだとしたら。

 モブから脱皮して八奈見と付き合うというのも悪くないのかも──

 

「んふふっ」

 

 ──うん、やっぱりやめとこうかな。しばらくはモブでいよう。

 ものすごくいい笑顔を浮かべてチクワを嚙みちぎる八奈見を見て、振りだけでいいやって思ってしまったのだった。

 

 

 完

 

 

 八奈見杏菜と温水和彦の関係:恋人(の振り)

 

 所持品:

  焼塩檸檬の第一リボン(黄色)

  八奈見杏菜の第二リボン(黄色) 

  小鞠知花の第三リボン(赤)

  白玉リコの第四リボン(黒)

 

 ツワブキ高校の都市伝説:

 四連リボンの制服がはじまったとき、当時のリア充グループの中心にいた二人の女子生徒がリボンを交換したのが始まりで、女子生徒の間でリボンを交換するのがブームになった。

 最初はただの遊びだったが、次第に勝手に意味を求めるようになる。

 

 親愛の第一リボン……一番仲がいい人と交換する。

 恋愛の第二リボン……特別な関係の相手と交換する。

 友愛の第三リボン……友達同士で交換する。

 敬愛の第四リボン……尊敬している人と交換する。

 

 リボンを交換できない子がいじめの対象になりかけたりしたため、学校側が禁止してブームは終焉。交換したら目立つように第一第三リボンと第二第四リボンは同じ色にしなければならないという規定が生まれる。

 なお、卒業後の交換は禁止する理由がないため見逃されており、卒業式後に交換したりあげたりすることが伝統として定着し、やがて男子生徒のボタンとも交換するようになった。という伝説。




四連リボンってなんだ!?

胸元にある四つのリボンは一つずつ開放することでインパクトを得ることができ、それを利用することで強力なパンチを叩き込む。
衝撃のファースト・リボン
撃滅のセカンド・リボン
抹殺のラスト・リボン
シェルリボン・バースト

というアルター能力ネタが浮かんだ結果、この作品が産まれました。

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