お盆だし、帰って来ても良いよね?……あれ?ホシノちゃん、どこ?
prrrrrr……
「もしもし?先輩?久しぶりですね。どうですか?そっちは、……そうですか、元気そうでよかったです。……なるほど、まぁ、人間関係なんてそんなものでしょう?私たちだって元々険悪だったじゃないですか。……え?あれは私が一方的に、って?うっ、それはぁ…そうかもしれませんけど………はい、気をつけますよ。大丈夫です。こっちはこっちでなんとかしますから、先輩は先輩で頑張ってください。それでは」
prrrrr……
「もしもし?先輩?元気ですか?……!うるさっ、はぁ、はいはいわかりましたよ。もう、どこからそんな元気が出てくるんですか?全く、……しっかし、暑いですねぇ相変わらず。夏だからですかね?そっちはどうですか?……え?意外と過ごしやすい?へぇ、意外ですね、良いですねぇ、私も過ごしやすい場所に居たいですよ。あっでも、最近はずっとシャーレに入り浸ってますよ。あそこは涼しいですからね。全く先生サマサマです。……え?夏だけに?…切りますよ?」
prrrr……
「もしもし?先輩?元気ですか?………元気そうで何よりです。……へぇ、スイーツですか。それも新作、一体どんなものを食べたんですか?………それってただのかき氷じゃ?……味を想像することで何味にでもなる?…先輩?それ騙されてませんか?……え?薄々わかってた?分かってたならなんでそんな物食べたんですか?……興味本位…まぁ先輩ならそういうことしそうですね。……え?3500円?なんで食べたんですか!そんなもの!明らかに詐欺じゃないですか!………はぁ、分かりましたよ。全く、相変わらずなんですから、先輩は。変わらないですね。ではそろそろ、切りますね?」
prrrr……
「もしもし?先輩?…………そうですよ。よく分かりましたね?……え?見てた?っ!もう!先輩!……ちがっ!あれはそういうのではなくてですね……っ!せ、先生は関係ないじゃないですかぁ!………っ!まだそういうこと言うんですね?分かりました!そっちがその気なら、先輩の秘密とか、恥ずかしいこととか、全部ばらしちゃいますからっ!………え?秘密にするようなことなんてない?……じゃあ言っちゃって良いんですか?先輩が宝の地図だって言って持ってきたあれに記されてたお宝が、オトナの……っ!うるさいですっ!分かりました!分かりましたから!叫ばないでください!もう、相変わらずですね。先輩は、……え?私も変わらないって?…そう…ですね。変わりません。…変われませんね、私たちは」
ーーーーーー
ある日、ノノミから連絡が来た。
ホシノが失踪した。とのこと。
私は急いでアビドスに向かうことにした。何か、胸騒ぎがする。
アビドスに着き、ノノミたちに現状を伺った。
ホシノが失踪した、しかし自宅や部室にあるホシノの私物は一切無くなっていない。それどころか、ショットガンや盾すら部室に置いてあるままだそうだ。
現状を確認していると、シロコが思い出したかのようにこう告げた。
「そういえば最近、先輩が夕方ごろにいつも誰かと電話してた。何か手がかりがあるかも」
そう言われ、ホシノの携帯を探す。するとすぐに見つかった。ホシノの携帯は部室の隅に転がっていた。
携帯から、通話の履歴を確認する。
履歴にはホシノから、不在着信が十数件ほど、そして、昨日の非通知から、一件。
幸いにも録音してあったので、ホシノには悪いが聞かせてもらう。
「もしもし?先輩?…センパイですよね?ユメ先輩!返事してください!………あぁ、先輩。よかった、よかった…。……弱音、吐いても良いですか?…先輩、私、ずっと、ずっと頑張ってきたんです。後輩たちができて、みんなで頑張って、頼れる先生が来て、……でも、ユメ先輩は…ユメ先輩がいないんです!私!……もう、疲れちゃいました…………………」
ブツリ、と録音が途切れる。あぁ、彼女はここまで苦悩していたのか、ここまで追い詰められていたのか。これに気付けないでいたなんて、教師失格だ。
不甲斐ない自分に打ちひしがれていると、シロコが「もう一回聞かせて、何か…何か聴こえた」と言った。
不思議に思った私たちはもう一度録音を再生することにした。今度は音量を上げて。
「もしもし?先輩?…センパイですよね?ユメ先輩!返事してください!『アツイ…アツイヨォ』あぁ、先輩。よかった、よかった…。『ツライヨォ』弱音、吐いても良いですか?…先輩、私、ずっと、ずっと頑張ってきたんです。後輩たちができて、みんなで頑張って、頼れる先生が『アツイアツイアツイクルシイクルシイツライツライツライツライ…サミシイ』……もう、疲れちゃいました…『イッショニイコウ、ホシノチャン』」
愕然とする。こんなことがあるのか?先輩、ユメ先輩と言っていた。ということは、これは、
「違う」
え?
「これは、ユメ先輩じゃありません……」
顔を青くしながらノノミが呟く。
それからもホシノを捜索したが一向に見つからず、協力を要請した、ヴァルキューレの面々も諦めかけていた。
あれから、1ヶ月後。ノノミから連絡が入った。
「ホシノ先輩が見つかりました!」と。
急いでアビドスに向かい部室に向かう。
するとそこには、気まずそうにみんなを宥めているホシノの姿があった。
………
「あ、先生。なんだか迷惑かけたみたいで、ごめんねぇ〜」
うん、大丈夫だよ。ホシノが無事ならそれで。
…………
みんなが談笑している。大丈夫、ホシノはここにいる。だから、
コレがホシノじゃないだなんて、考えるな。
違和感は消えなかった。