転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

192 / 199
第29話 選択の結果

 

 

【Side 武】

 

 

 

 

殿下を乗せ、塔ヶ島城を出立した俺達207小隊は、伊豆半島を南下していた。

一直線に横浜基地へ向かえば、敵本隊と鉢合わせになるからだ。

もちろん、敵もその辺は承知しているので、追撃部隊が既に迫ってきている。

帝国軍が追撃阻止の為に防衛線を構築していたが、先程からマーカーを見ていても、大した足止めも出来ずに全滅。

クーデター部隊は精鋭揃い。

同じ帝国軍でも天と地ほどの差があるらしい。

追撃部隊が迫ってきているため、初陣の207小隊のメンバーに動揺が走る。

と、言うのが『前』の流れだったのだが、

 

「このまま振り切っちまいそうだな…………」

 

俺は思わずボソッと呟いた。

俺達207小隊の機体は吹雪とはいえ、GNドライブ搭載機。

更にまりもちゃんの不知火や随伴する月詠中尉達の武御雷もGNドライブ搭載機なので、俺達の進軍速度は『前』の比では無かった。

更に、

 

「…………GNドライブ搭載機というのは、これほどまでに揺れが少ないのですね?」

 

『前』と比べて随分顔色の良い殿下が呟いた。

GNドライブを搭載していない戦術機は地面を走る必要がある為、どうしても縦揺れが発生する。

その所為で、『前』は殿下が重度の加速度病………所謂乗り物酔いで体調を崩し、クーデター部隊に追いつかれる一つの要因となった。

しかし、今回はGNドライブが搭載されているため、足を地に付けない浮遊状態での移動が可能となっており、機体の揺れを最小限にすることが出来ていた。

とはいえ、クーデター派にもGNドライブ搭載機はある為、数機の不知火の反応があった。

 

『―――4時方向より機影数機接近!』

 

別動隊だろう不知火の部隊。

この距離でレーダーで確認できる数は4機。

 

『全機兵器使用自由っ! 各自の判断で応戦! 06の生存を最優先せよ! ただし、無暗にこちらからは仕掛けるな! 向こうは迂闊に手出しできない筈だ!』

 

『『『『『『「了解ッ!」』』』』』』

 

まりもちゃんの言葉に俺達は返事を返す。

既に何度も実戦を潜り抜けてきた俺達に気負いは無い。

まあ、今の俺達だったら、シンさんとかアルトさんとかキョウスケさんレベルじゃなきゃ何とかなるだろうし………

その時、

 

『―――国連軍及び斯衛部隊の指揮官に告ぐ』

 

全回線(オープンチャンネル)で通信が入る。

 

『―――我に攻撃の意図あらず。繰り返す。我に攻撃の意図あらず。直ちに停止されたし。貴官らの行為は我が日本国主権の重大な侵害である』

 

追ってきている追撃部隊からの通信が聞こえた。

その物言いに若干イラっとしつつも、俺は前を向く。

以前はこの辺りで米軍が介入して来たが、今回は前よりも大分早い段階で辿り着いた。

もしかしたらまだ米軍が展開してないかも………と思ったが、突然俺達の進行方向に複数の所属不明機の反応が出現した。

 

『前方にアンノウン多数!』

 

委員長の報告が聞こえる。

まあ、こちらに敵意が無いからやはり米軍なんだろう。

 

『こちらはアメリカ陸軍第66戦術機甲大隊』

 

正面の部隊から通信が入る。

 

『速度を落とすんじゃない! 早く行けっ!』

 

『作戦に変更はない。安心して行け! ここは我々が引き受ける!』

 

その機体はF-22ラプター。

当然GNドライブ搭載型だった。

 

『207リーダー了解! 207各機、隊形を維持し、最大戦闘速度!!』

 

『『『『『『「了解!」』』』』』』

 

まりもちゃんの指示に俺達が返事をし、米軍機とすれ違う。

 

「………対戦術機用戦術機………か………」

 

最初から人類同士の戦いを視野に入れている事に怒りを覚える。

そんな暇があるんだったらもっとBETAに対抗するための武器や戦術機を開発してくれと言いたくなる。

過ぎ去っていく米軍機を横目にそう思っていると、突然赤い光が迸った。

 

「なっ!?」

 

次の瞬間爆発音が聞こえた。

再び赤い光が奔り、爆発が起こってクーデター派の機体の反応が消えた。

 

「ビーム兵器!? 何考えてやがる!?」

 

俺は思わず吐き捨てる様に口走った。

対人戦闘でビーム兵器を使うなんて!?

 

『武………! 今は任務に集中よ』

 

俺の気持ちを察してか、委員長から通信が入る。

 

「ッ………! 分かってる……!」

 

俺は歯を食いしばりながらそう言った。

 

 

 

 

それから、米軍の部隊が追撃部隊を足止めしている間に、俺達は亀石峠に仮設された補給基地で補給を受けていた。

粒子残量には余裕はあるが、念のための補給だ。

 

『私は米軍陸軍第66戦術機甲大隊指揮官のウォーケン少佐だ』

 

通信にウォーケン少佐の顔が映った。

『前』はそれなりに尊敬できる上官と言うイメージだったが、ビーム兵器を人に向かって使ったことに、俺は失望感を覚えていた。

 

『現在我がA中隊が時間を稼いでいるが………彼我の戦力差を考えれば楽観できる状況ではない。207戦術機甲小隊は補給が完了次第隊形を維持し先発。両翼と最後部は我々が固める』

 

『207リーダー了解。ですが一つだけ質問を宜しいでしょうか?』

 

まりもちゃんがウォーケン少佐に問いかける。

 

『何だね大尉?』

 

『対人戦闘でのビーム兵器の使用はGGGとの取り決めで禁止されている筈です。大丈夫なのですか?』

 

まりもちゃんが俺の聞きたいことを聞いてくれた。

俺達の装備は対人戦闘を想定して、全て実弾兵装だ。

 

『先にビーム兵器を使用したのはクーデター派だと聞いている。ビーム兵器に対抗するにはビーム兵器を使用するしかない。こちらは正当な防衛による使用だ』

 

ウォーケン少佐がそう言い切る。

………『どのような理由があろうとも』って条件忘れてないか?

簡単なブリーフィングが終わると、俺は殿下に視線を向けた。

 

「殿下………ご気分はどうですか?」

 

俺がそう言うと、

 

「大丈夫です。『前』の時よりも大分楽です」

 

殿下は笑みを浮かべてそう言う。

その様子から、強がっているようには見えない。

本当に『前』よりかは体調が良いのだろう。

 

「それに………この時に備えて戦術機訓練も多少増やしましたから………」

 

「えっ? 増やしたんですか?」

 

「ええ。実機で150時間程まで乗っています」

 

「150ッ!? 前の1.5倍以上じゃないですか!?」

 

思った以上に乗っていた。

 

「ええ、『前』のように途中で倒れれば、無駄な犠牲が増えてしまいますから………」

 

「殿下………」

 

この人は、何処までも国民の命を大事にしてるんだな………

すると、

 

「………フフッ」

 

突然殿下が笑みを零した。

 

「殿下? どうしました?」

 

俺が尋ねると、

 

「『前』の記憶で思い出しましたが、私が『思い出した』前の記憶は1つでは無いのです」

 

「えっ?」

 

「信じられますか? その『記憶』では、地球にBETAが来ていないのです」

 

「ッ!?」

 

それってまさか、『元』の世界の………!?

 

「その世界では、横浜基地がある場所に学校が建てられており、私はそこに通っていたのです。冥夜と共に………その世界では、私と冥夜は普通の姉妹として暮らしていました」

 

殿下が楽しそうに笑みを浮かべながら言葉を続ける。

殿下が冥夜と一緒に白陵高校に!?

 

「そして、その学校には冥夜だけではなく、榊、彩峰、珠瀬、鎧衣の娘達も通っていました……………そして………白銀、そなたも…………」

 

殿下が若干熱っぽい目で俺を見上げる。

だけど、俺にはそんな『記憶』は………

 

「そして驚くことに、その世界では皆で白銀に想いを寄せていたのですよ? もちろん私もです………………『武様』」

 

その言葉を聞いた瞬間だった。

 

「――――ッ!?」

 

突然今まで知らなかった『記憶』が頭の中を駆け巡った。

『元』の世界に近いが、冥夜が転校してきたとき、同時に殿下………悠陽も一緒に転校して来た。

それだけではなく、霞も転入してきた。

 

「…………武様?」

 

悠陽が何事かと俺の顔を覗き込んだ。

俺は、

 

「…………あ~っと………たった今その『記憶』が俺にも流入して来たみたいです」

 

苦笑しながらそう答えた。

 

「えっ………?」

 

殿下………悠陽が素っ頓狂な声を漏らす。

 

「えっと………どういえばいいのか……………とりあえず、久しぶり………かな? 悠陽」

 

俺が彼女の名を呼ぶと、悠陽は感極まった表情をして、

 

「武様っ!!」

 

悠陽は俺の胸に縋りつくように身を寄せてきた。

 

「………………」

 

俺は照れ臭くなって視線をずらして頬を掻く。

 

「えっと……まあ、気持ちはわからんでもないけど、もうすぐ出発だから…………」

 

俺がそう言うと、悠陽は慌てて体を離し、

 

「そ、そうでしたね………はしたない所をお見せしました………」

 

顔を赤くしながらそう取り繕った。

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

――某国某所。

そこで複数の人間が集まって密会が行われていた。

 

「こちらの手の者が上手く戦闘を誘発したようです」

 

「あとはこの争いの中で将軍が死んでくれればな」

 

「ご安心を。かの部隊には我々の工作員が潜り込んでおります」

 

「しかし良かったのかね? ビーム兵器を使用して………」

 

「問題ありません。先にビーム兵器を使ったのは『帝(・)国(・)軍(・)』です」

 

「そうだったな………」

 

「それに、如何にGGGとはいえ、出来る事などビーム兵器が使われた戦場に現れ、使用した機体を撃墜する程度………先のユーコンテロでそれは証明されている。大局には問題ありますまい」

 

「既にGNドライブの増産体制も整っている………」

 

「これほどまで早くGNドライブの増産体制が整う等、GGGの連中も予想外だっただろう。我々の技術力を甘く見たな」

 

「我々がいつまでも下に甘んじていると思ったら大間違いだという事を分からせてやる。そして、いずれはGGGの技術全てを我らが手に…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

『我々がいつまでも下に甘んじていると思ったら大間違いだという事を分からせてやる。そして、いずれはGGGの技術全てを我らが手に…………』

 

「勝手なこと言ってくれてますね」

 

ルリがマクロス・ブレイバーの艦長席で呆れたように呟く。

 

「ユウヤやレオン、シャロンには悪いが、これは擁護のしようが無い」

 

ジェイがそう言うと、ユウヤ達に視線を向ける。

 

「…………………」

 

ユウヤは無言でメインモニターを見つめ、

 

「わーってるよ! こんなもん見せられて、反対する気にもならねえ」

 

レオンは半ばやけくそ気味にそう吐き捨て、

 

「まあ、流石にこれはないわよねぇ………」

 

シャロンは残念そうにため息を吐きつつ言葉を零した。

ジェイはそれを見て、

 

「シンはこれより日本の米軍の下へ向かってビーム兵器の使用を停止するよう呼びかけてくれ、それでダメなら例の作戦を決行する」

 

「了解!」

 

シンは返事をする。

 

「そして、作戦の実行者は…………」

 

「俺が行く」

 

ジェイの言葉にそう言ったのはユウヤだった。

 

「ユウヤ…………!?」

 

クリスカが驚いた声を漏らす。

 

「祖国の犯した罪の尻拭いは………その国の人間である俺がやるべきだと思う」

 

「………………本気か?」

 

ジェイが確認するように問いかけると、

 

「ああ…………俺がやらなくちゃいけない事だと思う」

 

ユウヤは覚悟を持って頷いた。

 

「………わかった。それなら任せるとしよう」

 

「任せてくれ」

 

ユウヤがそう言うと、

 

「…………私も付き合おう」

 

クリスカがそう言う。

 

「クリスカ……お前が付き合う必要は………」

 

「今のお前を見て、放っては置けないと思った。それだけだ」

 

「クリスカ…………ありがとう………」

 

ユウヤは優し気に笑みを浮かべた。

すると、

 

「レオン………」

 

シャロンがレオンに訴えかける様に呼び掛けた。

 

「フン……! 分かってる。 おいユウヤ! 俺達も行くぞ!」

 

「レオン!? シャロン!?」

 

レオンの言葉にユウヤが驚いた声を漏らした。

 

「お前だけに任せておけるか!」

 

「1人で気負う必要なんて無いのよ?」

 

「お前ら……………ッ、ありがとう」

 

ユウヤは2人の思いに心を震わせながら礼を言うのだった。

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

【Side 武】

 

 

 

 

 

 

 

 

補給を済ませた俺達は、再び横浜基地へ向かって移動を開始していた。

その進軍は順調の一言。

『前』は冷川付近で敵部隊に先回りされて強引に突破した場所も、敵部隊が到達する前に突破。

悠陽の体調も悪くないため、このまま休憩を取らずに進めば空挺作戦(エアボーン)でも追いつくことは不可能だろう。

このまま行けば、無用な犠牲を出さずにクーデターを終結させることが出来る………

そう思っていた。

だが…………………

 

『タケルちゃん!!』

 

「ッ!?」

 

純夏の呼び掛ける声と共に、背後から感じる悪意。

移動の最中も沸々と感じていたが、それが一気に膨れ上がった。

 

「GNフィールド!!」

 

俺は咄嗟にGNフィールド展開する。

その直後、紅のビームが背部に撃たれた。

 

「ッ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

衝撃が機体を襲い、悠陽が軽い悲鳴を零す。

俺は体勢を立て直しつつ機体を反転させてビームが飛んできた方を見る。

そこには、1機のラプターがビームライフルを構えていた。

その機体は、

 

『ハンター2!? 何故撃った!? ハンター2!!』

 

ウォーケン少佐が驚愕の声で呼びかける。

ハンター2は、『前』の世界でも『殿下』の説得の最中に発砲して戦闘の発端になったコールサイン。

 

『………………………』

 

その機体から応答は無い。

ハンター2の機体からは2発、3発とビームライフルが放たれ続ける。

GNフィールドで防いではいるが、悠陽が乗っているため無茶な機動は取れない。

 

『タケル! 姉上!』

 

俺の吹雪の前にGNフィールドを展開した冥夜の吹雪が立ち塞がった。

 

「冥夜! 助かった!」

 

『礼はいい! それよりも………!』

 

『ハンター2って…………やっぱりイルマ少尉…………でも、何で………?』

 

たまの動揺する声が聞こえた。

『前』の世界では交流する機会があったそうだが、とてもそのような事をする人物とは思えなかったという。

そして、そのたまの直感は正しい。

 

『ハンター2! 攻撃を止めろ! 繰り返す! 攻撃を止めろ! それ以上は反逆者として処分する!!』

 

ウォーケン少佐が警告するが、攻撃は止まない。

 

『くっ! やむを得ん………!』

 

ウォーケン少佐が苦渋の決断の上でその機体にビームライフルを向けた。

その引き金が引かれようとした瞬間、

 

「駄目だウォーケン少佐! その人は違う!!」

 

俺は叫んだ。

 

『ッ!?』

 

「その人からは悪意を感じない! 多分、暗示か催眠誘導措置を施されてる!」

 

俺は更に叫ぶ。

 

『何っ!?』

 

俺の言葉を信じたわけでは無いだろうが、驚愕からウォーケン少佐の手が止まる。

 

「真の悪意の出所は………………お前だっ!!」

 

俺は感じるままに悪意の出所へ向けて120mm砲を発射した。

そこには傍観していた米軍部隊の1機。

 

『ぐおっ!?』

 

GNフィールドは張っていなかったが、Eカーボン製の装甲は120㎜弾の直撃にも耐える。

 

『な、何しやがる!?』

 

そのラプターの衛士が叫ぶが、

 

「お前が悪意の出所だ! その程度で俺を騙せると思うな!」

 

『何を訳の分からない事を………! 隊長! これは明確な敵対行為だ! 反撃の許可を!』

 

そうは言うが、既に引き金が引かれ、ビームが俺の機体を襲う。

やべっ、早まったか……!?

下手をすれば米軍の部隊が敵になる可能性まで出てきた。

こんな所でモタモタしてる暇は無いのに………!?

その時、上空に機影を捉えた。

 

『何だっ!? 友軍の航空機!? 帝国軍671航空輸送隊? 作戦参加は聞いていないが………』

 

『帝国軍……671ッ………!?』

 

まりもちゃんは驚愕の声を漏らした。

 

『? 如何した大尉? 報告せよ』

 

そう促すウォーケン少佐。

すると、それに答えたのは月詠中尉だった。

 

『少佐……671輸送隊は、厚木基地所属の部隊です………』

 

『厚木基地』。

それは、俺達が塔ヶ島城を発つ前に陥落した基地の名前。

そこから発進した航空機という事は、それに乗っているのはクーデター軍という事になる。

 

『空挺作戦(エアボーン)だと!? バカな!? ありえん! 海上の制空権は友軍が抑えている筈……! 奴ら内陸を飛んできたというのか!?』

 

ウォーケン少佐が驚愕する。

内陸と簡単に言っているが、高度を取れば佐渡島の光線級BETAに撃墜されてしまう。

それを防ぐためには、山よりも低い位置を飛ばなければならない。

小型の飛行機ならともかく、大型の輸送艦でそれを行おうなどとは普通思わない。

大型であればあるほど小回りが利かず、山に激突する可能性も高まるからだ。

それでもクーデター軍はそれをやってのけた。

それだけ必死なのだ。

複数の輸送機から戦術機が投下され、合計30機もの不知火が立ち塞がる。

しかもすべてがGNドライブ搭載機だ。

くそっ! 結局間に合わなかった。

こんな所で裏切りに会わなければ…………

ここは前の通り、冥夜に替え玉作戦で沙霧大尉を説得してもらうしか………

俺はそう思っていた。

だが、

 

『各機! 兵器使用自由! 殿下を米軍の魔の手から救い出すのだ!』

 

「なっ!?」

 

いきなり戦闘開始なんてどうして………!?

『前』は停戦を申し入れてきたのに………

 

『恐れ多くも殿下に銃を向けた米国人を決して許すな!!』

 

「まさかっ!? さっき攻撃された所を見られていたのか!?」

 

どんな理由であれ、殿下を攻撃したという事は、クーデター軍にとって………いやこの世界の日本人にとって決して許すことは出来ない事だ。

次の瞬間、クーデター軍からビームが発射される。

 

『くっ! 各機、応戦しろ!!』

 

ウォーケン少佐が命令を下すと、米軍の部隊も応戦するためにビームライフルを発射した。

 

「や、やめろぉっ!!」

 

俺は思わず叫ぶ。

ビーム兵器は………GGGがこの世界の人類に与えてくれた力は、BETAと戦うためのものであって、人同士が殺し合う為に使っていいものじゃないんだ!

俺は心の中で叫ぶことしか出来ない。

そのまま双方の部隊が激突し、更に戦いが激化する……………

そう思われた瞬間、両軍の間を引き裂くように、赤と青が入り混じった閃光が横切り、両軍の間の地面に深い溝を作り上げ、両者の動きを止めた。

 

『な、何だ………!?』

 

『今の攻撃は………!?』

 

ウォーケン少佐と沙霧大尉が同時に驚愕し、その閃光の出所に振り返った。

その視線の先には、トリコロールカラーの戦術機………いやMSであるデスティニーが高エネルギー長射程ビーム砲を構えていた。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

クーデター軍と米軍の戦いを止めたのは、デスティニーの放った高エネルギー長射程ビーム砲の一撃だった。

その威力に、思わず両軍の動きが止まる。

すると、

 

「米軍、クーデター軍の両軍に伝える。直ちにビーム兵器の使用を停止しろ! その力は、BETAと戦う為に与えた力だ! 人同士の殺し合いに使うんじゃない!」

 

シンがそう呼びかける。

すると、

 

『先に撃ってきたのは奴らの方だ! 我々はそれに応戦したに過ぎない!』

 

ウォーケンがそう言い放つ。

 

『確かに我が同士部隊が先制攻撃を仕掛け、ビーム兵器を使用したことは結果的に事実。だが、それは米国の工作員の仕業! 我が同士部隊内だけでなく、斯衛部隊内にも工作員を潜ませ、ビーム兵器で応戦するように仕向け、結果的にビーム兵器の応酬になっただけの事! 全ては米国の自作自演である! 我々に責任を負わせようとは片腹痛い!』

 

沙霧もそう言い放った。

 

「………………それが、お前達の答えなのか…………?」

 

シンはコクピット内で俯きながら問いかけた。

 

『何………?』

 

『何を言っている?』

 

ウォーケンと沙霧が聞き返すと、

 

「それが………『力』を与えられた者の、『力』を振るう者の答えなのかと聞いてるんだ………!」

 

シンはコクピット内で震えていた。

 

『私も合衆国に忠誠を誓った軍人なのだ! 秩序を護る者たることが我々の矜持! その為には『力』が必要なのだ!』

 

ウォーケンが叫ぶ。

 

『我が行くは血塗られた外道! もはや引き返す事叶わん! ならばせめて殿下の御心を蔑ろにする輩を取り除くのみっ!』

 

沙霧も叫んだ。

どちらにも譲れないものがあり、その為に『力』を振るっている。

信念は人それぞれであり、正義もまた然り。

だが、

 

「ッ! ふざけるなぁっ!!」

 

シンが目を見開きながら叫んだ。

その瞬間、シンの中で『種』が弾ける。

デスティニーが光の翼を広げ、ウォーケンと沙霧の機体に向かってくる。

 

『『ッ!?』』

 

両者は反射的にビームライフルで反撃したが、デスティニーは残像を生み出しながら横滑りするように移動して攻撃を躱した。

 

『『なっ!?』

 

「借り物の『力』で偉そうな事を言うなっ!!」

 

デスティニーが瞬時に2機の間に降り立つと、両手を横に伸ばしては不知火とラプターの頭部を掴み取った。

 

「殺されたから殺して! 殺したから殺されて! それで本当に最後は平和になるのかよ!?」

 

そのままパルマフィオキーナで両者の頭部を破壊した。

 

『隊長!?』

 

『沙霧大尉!?』

 

両者の部隊が思わず武器を向けたが、

 

「これは…………お前たち自身が選んだ選択だ……………ルリ艦長!」

 

シンが通信でルリに呼び掛ける。

 

『わかりました…………』

 

通信に映ったルリが残念そうに目を伏せる。

そしてその顔にナノマシンの光が浮かび上がり、

 

『疑似トライアルシステム………発動します………!』

 

ルリはあるシステムを起動させた。

それは、

 

『な、何だ!? GNドライブが!?』

 

『システムダウン!? 一体何が!?』

 

米軍とクーデター軍のGNドライブが突如として停止した。

それはこの場だけではなく、全ての戦場、全世界で米軍とクーデター軍にかかわるすべてのGNドライブが停止したのだ。

 

『こ、これは………!?』

 

ウォーケンが戦いた声を漏らす。

すると、

 

「GGGは、クーデター軍と米軍には『力』を持つ資格が無いと判断した。クーデター軍と米軍に関わる全てGNドライブを停止させたんだ」

 

『何だと!?』

 

『な、何という事を!? そんな事をすれば、世界の戦力バランスが崩れて………!』

 

「その選択をしたのはお前達だ!!」

 

ウォーケン達の言葉にシンが叫ぶ。

 

「だからあれほどビーム兵器を人に向けるなと言ったんだ! 過ぎた『力』は身を滅ぼす………人に向かって引き金を引いてしまえば、人は慣れて簡単に引き金を引くようになってしまう。その先に待つのは同士討ちによる破滅だ………だからその時はこうすると最初から決めていたんだ!」

 

シンは悔しそうに叫んだ。

 

『何と傲慢な………!』

 

ウォーケンは思わずそう漏らす。

 

「…………確かに傲慢かもしれない。けど、元々その力はジェイさんがこの世界の人々を助ける為に与えた『力』なんだ。お前達に分かりやすく言うなら、子供に護身の為の道具を持たせた。だけど、その子供がその道具で他者を傷つけたなら、取り上げるしかないじゃないか!」

 

『ッ………!?』

 

「そもそも、GNドライブやビーム兵器を人に使わない前提であれば、世界の戦力バランスなんて言葉は出てこない筈なんだけどな」

 

『ッ…………』

 

最後にシンは呆れたようにそう言い残すと、デスティニーが背を向け、その場を飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

――某国某所

 

『報告します! 国中のGNドライブが突如として停止! 復旧できません!』

 

『GGGより報告! 『貴国はGNドライブ、並びにビーム兵器の使用条約に違反した。よって、貴国の全てのGNドライブを停止させた』との発表が!』

 

次々と入る報告に、密会を行っていた者達は唖然としていた。

 

「な、なぜこんな事に………」

 

1人が頭を抱える。

 

「い、いや、まだだ! 例え今使えなくとも、GNドライブの生産体制は整っている! 停止させた原因さえ究明出来れば………」

 

別の1人がそう言ったが、

 

『報告します! エリアNにGGGらしき機体が現れたとの報告が!』

 

「何だと!?」

 

エリアN。

それは、この者が言ったGNドライブの生産拠点工場があるエリアであった。

 

 

 

 

 

 

エリアN。

その上空に、紺色の機体、ヒュッケバインMk-Ⅲと、2機の量産型ゲシュペンストMk-Ⅱが現れた。

 

「GNドライブ生産工場に居る全ての人間に警告する。これより30分以内に工場内から脱出しろ! 30分後にこの工場を破壊する! 繰り返す! 工場内の人間は直ちに脱出しろ! これは脅しではない!」

 

ヒュッケバインMk-Ⅲのパイロット、ユウヤがそう告げた。

その警告を聞き、作業員が我先にと逃げ出し始める。

すると、別方向から攻撃があった。

それは、GNドライブを搭載していない通常の戦術機。

GGGが停止させたのはGNドライブのみなので、通常の戦術機は稼働できるのだ。

しかし、放たれた弾丸はヒュッケバインMk-Ⅲに届く前に重力防御壁、『グラビティ・テリトリー』によって防がれ、本機まで届かない。

 

「…………シャロン、行くぞ」

 

「オッケー!」

 

ヒュッケバインMk-Ⅲに随伴していた2機の量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ。

レオンとシャロンの操るそれが動き出し、応戦して来た戦術機部隊に接近する。

戦術機部隊も反撃するが、この世界の通常の戦術機とゲシュペンストでは性能差があり過ぎた。

メガ・ビームライフルが一撃で戦術機を戦闘不能にまで追い込み、その機動性の前に照準が追い付かず、掠りもしない。

たった2機の量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの前に、50機は居た戦術機部隊は瞬く間に無力化されるのだった。

 

 

そして30分が経ち、

 

「時間だ。やるぞ」

 

ユウヤが複座型に改良されたヒュッケバインMk-Ⅲのコクピットの前の席に座っていたクリスカに声を掛けた。

 

「本当に良いのか? ユウヤ」

 

クリスカは改めて問いかけた。

 

「………ああ!」

 

その問いにユウヤは真剣に頷いた。

一時の気の迷いではなく、ユウヤなりに真剣に考えた上で出した答えだった。

 

「………わかった」

 

クリスカはそれ以上は何も言わないと前を向く。

そして、

 

「クリスカ、グラビトン・ライフルだ」

 

「了解した。T-LINKシステムコンタクト開始。グラビコンシステム、重力結界解放」

 

クリスカの言葉と共に、ヒュッケバインMk-Ⅲの前面にワームホールが出現。

そこから長大なライフルが現れた。

ヒュッケバインMk-Ⅲがその長大なライフル、『グラビトン・ライフル』を掴むと、その砲口を眼下の工場へと向けた。

 

「グラビトン・ライフル…………発射!」

 

ユウヤは一瞬の間を置いて引き金を引いた。

グラビトン・ライフル。

重力制御装置で造り出した超高重力結界を発射し、目標を圧し潰す武装だ。

発射されると、周囲の光が捻じ曲げられ、赤黒いビームが放たれたように見える。

工場の直上から放たれたそれは、工場の中央に着弾。

爆発のような高重力ドームを生み出し、その内部にある物を圧し潰していく。

その光が消えた時、その内部に存在したものは全て押しつぶされ、圧壊していた。

ユウヤはそれを見届けると、

 

「…………行こう。破壊する工場はまだある」

 

「………わかった」

 

クリスカは何も言わずに頷いた。

レオンとシャロンもそれに続く。

 

 

 

この日、アメリカ国内の公式、非公式問わず、全てのGNドライブの生産工場が破壊された。

そして、バックアップを取っていた筈のデータも全てが消されていた。

更に、書面で残しておいた物も、コンピューターに再入力しようとする傍から勝手に消去されてしまい、再生産は不可能になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 







はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第29話です。
やりたい事詰め込んだら纏まりが無くなった感じです。
ビーム兵器を人に向かって使用した結果がこれ。
まあ、皆さま予想していたでしょうけど。
GNドライブと聞けばトライアルシステムを思いつくでしょうし。
後は序に悠陽にはオルフェの記憶ありという思い付きを追加。
それに伴い武にも記憶の流入が起きました。
この辺はその場の思い付きだったり………
そしてヒュッケバインMk-Ⅲはいつの間にかクリスカとの二人乗りに改造されていたり………
そしてクリスカはT-Linkシステムに対応できるという設定追加。
と言う訳で更なるパワーアップフラグが立ちましたね。
どうなるかはお楽しみに。



P.S:本日はやる事があるので返信はお休みします。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。