学生寮に住む姉から「夜になるといないはずの猫の鳴き声が聞こえる」と相談を受けた私は何気なくアドバイスをしたが……
一話完結、微ホラー、微胸糞

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第1話

 夜になると外からいないはずの猫の鳴き声が聞こえる。

 そんな話を聞いたのは上京した大学生の姉からでした。

 

 姉の入居している学生寮は数日前から備え付けのエアコンが壊れたため、夜になっても窓を開けて過ごしていました。

 まだ暗くなってもじっとりと汗ばむような熱気の残る季節のことです。

 寝苦しさに寝返りを打ったりして、なんとか落ち着いてきたころ、甲高い、どこか苦しそうな声が外から聞こえてきました。

 ああ、ネコか。そう思ってその日は眠りについたそうです。

 

 ですが翌日になって考えるとどうにも腑に落ちない。そもそも姉の住む学生寮はペットが許可されていないからです。

 寮の周りは不審者対策で金網で囲われていますし、都内にしては人通りの少ない通りにあるこの学生寮に野良猫が迷い込むとも思えない。

 でもまあ、たまには野良猫が通りかかることもあるだろう。

 そう自分に言い聞かせて昨晩の奇妙な鳴き声は忘れることにしたそうです。

 

 ところが、猫の鳴き声はそれから毎晩のように続きました。

 段々と大きくなるそれは30分ほど続いた後、一際大きな声を上げてピタッと止まるそうです。

 連日のように続く得体のしれない騒音に、姉は辛抱できなくなり、隣室の友人に相談しました。

 ですが友人はそんな声は聞いていないし、姉が聞いたということを誰かに伝えてもいけないと言ったそうです。

 

 ……ちょっと変ですよね。なんで彼女は口止めなんてしたんでしょう。

 不自然に思った姉はこっそり反対側の隣人にも相談したんですが、その方からも友人と同じようなことを言われました。

 姉は内気な人でしたが、それでも何かおかしい、この問題に深く触れてはいけないと感じたようでした。

 ですが、何日たっても猫の声はなくなりません。それどころか徐々に鳴き声のする時間が長くなっている気がします。

 いくら触れてはならないものだとしても、現実としてそこにあるし、誰にもそれを相談できない。

 姉はもうノイローゼのようになってしまって、それで私に電話を掛けてきたとのことでした。

 

 私はそれを聞いて、学生に相談できないなら他の人に相談するしかないんじゃないかと言ったんです。学生寮には警備員や寮母などの大人もいますから、そっちに話を持っていったらどうかって。

 姉はしばらく踏ん切りがつかないようでした。友人からの口止めがよほど気になっているみたいでした。

 そんな姉が気の毒になったのが半分、いい加減面倒になったのが半分で私は言いました。そんなに怖いなら寮から出ればいいじゃんって。

 その言葉にようやく踏ん切りがついたみたいで、姉は翌日寮母に相談したみたいです。

 

 その晩、いつものように鳴き声が聞こえてきて、そしてすぐにピタッと止まりました。それから今度は壁を叩くような音が上の階からどんどん近づいて来て、ドサッという何かが落ちたような音が聞こえてきました。

 

 それ以降、めっきり猫の鳴き声を聞くことはなくなりました。

 また、下の階の住民が足の骨を折って何か月か入院することになったということです。

 でも、怪奇現象はなくなりましたが、結局姉は寮を出ることになりました。

 

 本当に怖いのは人ってことでしょうか?

 それとも、無知は罪だとでも言いますか?

 




補足情報:学生寮は7階建てで2~4階に女性が、5~7階に男性が入居していた。

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